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“Born to be wild” デニス・ホッパー爺 みまかる



少し前から末期癌を伝えられていたデニス・ホッパー爺が、29日に74歳でみまかった。
寿命が長くなった昨今、74歳と聞くと早いな…とも思うのだけど、若い頃からハチャメチャをやってきての74歳は割に長生きした方だと言えるのではなかろうか。
癌にならなければ90歳ぐらいまでは生きたかもしれないものね…。



ホッパー爺と言えば、何といっても監督、脚本(ピーター・フォンダ他と共同脚本)、出演を兼ねた「イージー・ライダー」ってことになるんでしょうけども、この映画については、すっかりアメリカン・ニュー・シネマの代表作という評価が定まってからTV放映かビデオで観たのだけれど、そして、ホッパー爺よりは、何といってもクールなピーター・フォンダの印象が強いのだけど、それでもラストシーンの衝撃はいまだに忘れないインパクトだし、何度観ても「アメリカって…」と首を横に振りたくなる気分は変わらない。60年代末という時代を背景に、良くも悪くもアメリカという国が鮮烈に描き出されていたと思う。凄いのはラストシーンが今観てもいっこうに衝撃力が衰えていない事で、アメリカの中西部などに行けば、いまだにあんなんじゃなかろうかという気がしてならない。この感じはスピルバーグの「激突」が、何度観てもそのスリルとサスペンスが新鮮で活き活きしていて、観るたびに、「アメリカって…」とやれやれなため息が出るのと、メキシコとの国境だとか、田舎のハイウェイなんかじゃ今だにこんな感じなんじゃなかろうか、という気がする点で共通している。



ホッパー爺といえば、アラン・スミシーの名で映画監督もしているのはつとに知られているが、彼はジョディ・フォスターを大好きだったらしく、89年の「ハートに火をつけて」ではジョディを主演女優に迎えて、自らアラン・スミシー名義で監督もし、俳優デニス・ホッパーとして共演もしている。一緒に映っているシーンで、とにもかくにも嬉しそうにヤニ下がっていたのが印象深い。89年ゆえ、ホッパー爺もまだ爺ではなく元気な中年で、ジョディも勿論まだカサカサしてなくて綺麗な頃だった。筋も何も忘れてしまったが、ジョディが何となく魅力的に映っていたのだけは覚えている。



また、比較的最近DVDで観たので、ヴィム・ヴェンダースの「アメリカの友人」(77年)に、いわゆるトム・リプレイ=アメリカの友人として出演していたのが印象深い。この映画、けっこうインパクトがあってそれなりに面白かったのだけど、なかなかレビューの書けない映画でして…。「アメリカの友人」はパトリシア・ハイスミスのトム・リプレイ・シリーズの1つ。「太陽がいっぱい」で、あのアラン・ドロンが演じていたトム・リプレイの、30代のエピソードをデニス・ホッパーが演じているというのが、また、なかなかに興味深いところなのである。しかも、デニス・ホッパーのリプレイは、カウボーイ・ハットでハンブルグの町を闊歩し、白血病で余命いくばくもない額縁職人ヨナタン(ブルーノ・ガンツ)の前にメフィストのように現れて殺人を教唆する一方で、ヨナタンとの間に奇妙な友情を育むトム・リプレイを文字通り怪演していた。


カウボーイハットのトム・リプレイ

若かりし頃にはあのジェームズ・ディーンと「理由なき反抗」「ジャイアンツ」で共演し、かなりジミーに心酔していたらしい。「ジェイアンツ」では後半、中年になったロック・ハドソン演じるビックに反抗する長男役で登場。七三分けのお行儀のいいヘアスタイルで、メキシカンを差別するジミーのジェット・リンクに殴りかかるシーンがあった。考えたら50年代から出てるんだもの。長い芸歴ですわね。

とにかく出演作品の多いのは気軽に脇役でも出演していたからだろう。あっという間に殺されるような役でも友情出演的に面白がって出ているような気配が漂っていた。ことにこの10年ばかりは、友達や後輩の監督作品にほいほいと気軽に楽しんで出ている、という印象が強かった。ホッパー爺の衣鉢を継ぐのは、なんとなくショーン・ペンかな、という気もしているが、監督としてはペンの方が才能がありそうなれども、人物としてはホッパー爺の方がずっと面白い人なんじゃなかろうかという感じがする。

反逆児も、最期は静かに家族に看取られて自宅でやすらかに生涯を終えた。
薬と酒からうまく抜け出せなければ、どんな死に様が待っていたか知れないところだったけれど、平和な最期で良かったな、と思う。
かくして骨のある不良爺さんが、またひとり逝ってしまった。

コメント

  • 2010/05/30 (Sun) 23:48

    「イージー・ライダー」・・・その昔、自分の部屋にこのポスター飾ってる男子、多かったですねぇ~。
    私も彼を初めて見た「ジャイアンツ」の長男役は印象に残ってます。
    強烈だったのは「ブルーベルベッド」!!
    残念ながらJ・フォスターとの「ハートに火をつけて」も「アメリカの友人」も未見です。
    「アメリカの友人」はトム・リプリーの話なんですね、面白そう。
    わたし、ホッパーって、顔立ち、映画制作上でのトラブルの多さとか、なんだかショーケン(萩原健一)に似てるなぁ~といつも思ってましたヨ(笑)。 ショーン・ペンはなるほどね。

  • 2010/05/31 (Mon) 00:34

    「イージー・ライダー」のポスター貼ってる男子、多かったんですか。なるほど。ホッパー爺は「ブルー・ベルベット」にも出てましたっけ?そうか、色々出てますね。そして、あ~、ショーケンね。確かに顔も似てるし、問題児なありようも似てますね。卓見ですねぇジョディさん。
    「アメリカの友人」は不思議な雰囲気の映画で、「太陽がいっぱい」の雰囲気とは全く違いますが、それなりに面白いですよ。

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