「悪女について」

-ある女についての27の考察-
有吉佐和子著 新潮社刊



この小説はその昔、単行本が出たときに買ってすぐに読んだ。本が出版されて暫くすると、それがテレビで連続ドラマ化された。主演の影万里江は舞台女優だったのかワタシには馴染みがなかったが役のイメージにピッタリで、他の出演者も豪華だったし、ドラマもよく出来ていた。それはなによりベースとなったこの原作が非常に面白い小説だったからである。有吉佐和子は多方面に関心を持ち、常に話題作、問題作を世に問うて、若くしてデビューしてから53歳で突如亡くなるまでべストセラー作家の地位を降りなかった人。「恍惚の人」「複合汚染」など社会的な視野に立つ代表作もあるが、映画化、舞台化された作品も枚挙に暇がない。「紀ノ川」「香華」「花岡青洲の妻」など代表作中の代表作はもとより、大女優競演芝居の舞台にもなっている「木瓜の花」「芝桜」はいまだ人気演目として上演されつづけている。(かなり前に舞台中継で杉村春子と山田五十鈴という2大女優競演の「木瓜の花」を放映しているのを見た事がある。すごい顔合わせである)

「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」

-パーフィディア、というドラマ-
ジョン・ル・カレ著 菊池 光訳 早川書房刊



UKでは今年9月に封切られた映画「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」。アメリカではこの師走に封切り予定だが、日本ではおそらく来年の封切りになるだろうので、とりあえず原作を読んでみる事にした。他の本を探しに書店の洋書コーナーに行った時、映画化された事で新版が出たのであろう本書が平積みになっていたが、あまりの分厚さにギョっとした。たまに洋書コーナーで短編集などを買って、興味半分、勉強半分で英語の小説を読んでみたりするのだけど、この分厚さでは、原書で読むのは殆ど刑罰。途中で放り出すのは分りきっているので、日本語訳の早川文庫を図書館で借りてみた。これも分厚い事に変わりはないけれど、ひとまずは日本語だものね(笑)映画の日本公開日も未定だし、ワタシにできる範囲でのネタバレなしの感想をUPしてみた。

「池波正太郎の銀座日記」(新潮文庫)

-食べて、書いて、映画観て-



いわゆるタウン誌、PR誌の草分け的な存在であり、最も有名なものに「銀座百点」がある。銀座百店会に加盟する店舗のPRや銀座の情報だけでなく文化的な面にも力を入れた雑誌で、執筆陣の顔ぶれが多彩なのも定評がある。あの池部良も亡くなる前に銀座百点にエッセイを連載していた。
この老舗PR誌「銀座百点」に連載されたエッセイをまとめた本で、まず第一に名が挙がるのは向田邦子の「父の詫び状」だろう。そして、銀座百点から生まれたエッセイ集で「父の詫び状」と双璧をなすのが、池波正太郎の「銀座日記」だろうと思う。

「高峰秀子の流儀」 

新潮社 斉藤明美著
~わかっちゃいるけど難しい~



日本映画を愛好すれば、高峰秀子の主演映画は全部じゃなくてもどれかは必ず観る事になる。この人のフィルモグラフィは半端じゃない作品ばかりだ。とても素通りすることはできない。高峰秀子を上手い女優だと誰もが言う。確かに凄いほど上手い女優だ。でも、ワタシは上手いなぁとは思いつつ、人としての彼女については余り興味を持たずに来た。ところが先日、書店に平積みになっていたこの本を見て、ふと気になり、手にとって最初のページを読んだ時、お!と思った。買って帰ってあっという間に読んでしまった。高峰秀子本人の筆になる「私の渡世日記」よりも、ワタシにとっては面白く、示唆に富んだ本だった。

「約束された場所で」 

~何があなたをそうさせる?~
村上春樹著 文藝春秋刊



メインで読んでいる小説の合間に全く別な種類の本を読みたくなって、刊行時から興味がなくずっとスルーしてきた本書を今ごろになってふと読んでみた。これはいわゆる1995年の3月20日に起きた地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教の信者だった人々に村上春樹がインタビューしたもので、事件の被害者にインタビューした「アンダーグラウンド」と対をなすノンフィクションだ。