「アリス・イン・ワンダーランド」 (ALICE IN WONDERLAND)

~飛び出し無用~
2010年 米 ティム・バートン監督



ここのところ、猫も杓子も3Dという状態なので、何か1本、3Dモノを観ておこうかしらん、ということでワタシは「アリス」をチョイス。特にティム・バートンにもジョニデにも思い入れはないのだけど、他の3Dモノに食指が動かなかったのと、唯一観に行ってもいいかも、な気分になった3Dモノのトレーラーが、この「アリス・イン・ワンダーランド」だけだったからである。ティム・バートンというと、むか?し観た「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」では、あまりに画面の中でビジーに至るところであれこれと何かが動いていたので、今回もそういうごちゃごちゃしたテイストかと思いきや、さにあらず。全体の世界観やキャラのルックスなどがオリジンのジョン・テニエルの挿絵に近いムードなのがワタシ的には好印象だった。

「セルロイド・クローゼット」

~検閲との暗闘30年史~
1995年 米 ロブ・エプスタイン監督



「セルロイド・クローゼット」(1995年)というドキュメンタリーは、ハリウッド映画の中に隠された同性愛をテーマに、検閲と制作サイドとの攻防が脚本家や俳優の口を通じて語られる面白い作品。
「セルロイド・クローゼット」とは、映画に堂々と存在できないゲイの登場人物、及びそれを観るゲイの観客は、声高に自己主張できずに、ひっそりとクロゼットの中にいるようなものだという意味。
あの「スパルタカス」のカットされたシーンだの、「ベン・ハー」における検閲をおちょくったお遊びなど、いろんなエピソードに結構ニヤニヤします。

BOND23 資金難で無期延期ですってよ


やれやれ…

なんとなく前作「慰め~」よりはずっと面白くなりそうで、来年までの遠い楽しみだわね、と思っていたダニエル・ボンドの3作目(通算で23作目)の007次回作が、資金難のため、無期限にお蔵入りとなったらしい。
Movie Walkerによれば、007シリーズを制作しているMGM社が財政赤字に陥っていることが昨年発覚、その後、出てくると思った買取企業が出て来ず、BOND23も企画倒れに終わりそうだ、とのこと。
リーマンショックの余波でどこも財政に余裕がなくなり、MGMを買い取るだけの体力がなくなったという事なんでしょね。

BOND23は、「スラムドッグ・ミリオネア」のインドの美人女優をボンド・ガールに予定するなど、キャスティングも新鮮で、なかなか期待してよさそうなムードだっただけに、残念無念。まぁ、スポンサーがつけば制作できるのかもしれないけれど、あのシリーズは毎回たいそうもない制作費がかかりそうだし、撮り始めて資金が続かず結局お蔵入りって事になってもねぇ。資金は現時点では全く見通しが立たないという事のようで…。

う~む。
まぁ、ダニエルもボンドに関連する拘束が宙に浮くことになるので、
他の作品に出られる時間が増えるってことにもなりますが、
ダニエル・クレイグはやはりボンド役が真骨頂。
他の役でよりも、ジェームズ・ボンドを演じている彼をこそ観たいわけですわね。
しかし、何事も金が全て。ない袖は振れません。 やんぬるかな。
久々のダニエル関連ニュースが、こんな残念なお知らせというのはまさに残念至極なれどもせんかたなし。

映画業界というのも、世の中に余分なお金がくるくると廻っていないと成り立たない業界だけにこうやって不況のあおりで人気シリーズも制作不可能という事が出てくると、本当にアメリカの体力も落ちたんだなぁと実感しますね。 疲弊しちゃってるのね。
完全に主権がアメリカから他の大国に移行しつつある(もう移行している~)21世紀。
こうなったら中国資本でもロシア資本でも、現在、金廻りのよいところから資金を調達するというのを検討してみては~ ブロッコリさん。

「地上5センチの恋心」 (ODETTE TOULEMONDE)

~ホワホワと生きるということ~
2006年 仏/ベルギー エリック・=エマニュエル・シュミット監督



原題はヒロインの名前である「オデット・トゥールモンド」。でもこの邦題はいいですね。
「譜めくりの女」は未見なので、カトリーヌ・フロはこれが初おめもじ。作為なくかわいいおばさんを軽やかに演じていて、観ていてついつい頬がゆるんでくる。ロマンス小説と人形と夕焼けの写真をこよなく愛するオデット。頭の中には常にジョセフィン・ベイカーの歌声が流れている。主演のフロもホワホワとしているし、お話もホワホワしている。しかも音楽がとても良いですね。効果的に挿入されているジョセフィン・ベイカーのハイトーンの歌声も相乗効果で物語を盛り上げる。全編にヒロインを演じるカトリーヌ・フロのほわりとした可愛さが効いている。ブリババ(死語かしら?)でなく、さりげなくカワイイというのはなかなかに至難の技だ。
そして「何があってもホワホワと生きる」というのも、また、なかなかに至難の技である。

「乾いた花」

~松竹ヌーヴェルバーグのニヒリズム~
1964年 松竹 篠田正浩監督



随分昔にTVの深夜枠で放映されたのを観たきりだったのだけど、ふと思いだして観賞。
モノクロの映像と演出、編集がスタイリッシュで、小悪魔盛りの加賀まり子と、ニヒルな中年ヤクザを演じる池部良のコンビネーションが映画的な魅惑に満ちている。一応、盆ござの上の賭博がハイライトなのでそういうシーンもふんだんに出てくるのだが、東映映画のそれとは異なり、丁とか半とかやってても妙にクールで浮世離れしている。映画全体のムードは限りなくフレンチ・ノワールに近い。原作はオレサマ都知事・石原慎太郎の作家時代の短編小説。なお、篠田作品にはかならず出演しているという印象の岩下志麻は、結婚前だからか、ふさわしい役が無かったからか、本作品には出ていない。

「男ありて」

~昭和の家族、昭和のオヤジ~
1955年 東宝 丸山誠治監督


レアな小品ながら、志村のおっちゃん(志村喬)の主演ものに敏ちゃん(三船敏郎)が付き合って、ごく普通の男を演じているのが観たくて、東宝がレンタルビデオを出さなかった時期に仕方なく旧作ビデオを販売する東宝の会員制クラブに入会してVHSを買った作品。弱小野球チームを率いる島村は野球野球で家庭を顧みない男だが、熱意も虚しく今季のチームは低迷している。そんなチームに期待の新人ピッチャー大西(藤木悠)が入ってくるが、昔堅気の島村とソリが合わない。妻(夏川静江)はハラハラと気を遣うが、島村の頑固はますます嵩じ、チームはますます低迷するが…というわけで、敏ちゃんは監督の右腕を務める、監督思いの温厚なキャプテン・矢野を演じている。頑固で融通の利かない監督をカバーしつつ、見えないところで気を遣い、監督の作った人間関係のほころびを裏に廻って繕う。温厚なオトナの男の味わいが自然に醸し出されていてさらっと素敵だ。

春の京都に逢ってきた



ワタクシ、9日から桜狙いで京都に旅行に行っておりました。
一度、桜の頃に京都に行こうと思いつつも、なかなか果たせずに来たわけですが、今回遂に桜シーズンの京の都に足を踏み入れました。春の桜と秋の紅葉の頃は、最も京都に行きたい時期でもあるわけですが、なかなか狙い通りにいかないのも事実。とにかく季節ものは天候に左右されるし、いつが旬かは毎年まったく予測もできないわけなので、ドンピシャで行き当てるのが難しいですわね。2年前に紅葉狙いで11月初旬の京都に行ったものの早過ぎて狙いは大外れ。旅そのものは楽しく満喫しましたが、紅葉どころか霜月というのに猛烈な暑さに見舞われて毎日汗みずくというテイタラク。
今回はとにかく桜の時期に必ず行くぞよ!と思ったのだけど、例年、東京よりは開花が遅い筈の京の桜が今年はけっこう早めに咲いたので、3月末からはヒヤヒヤでした。毎日桜情報をチェックしつつ、とにかく間に合って貰いたいと、そんな時だけ神様お願いモード。お願いが聞き届けられたか、日頃の行いか(?)京の桜の最終コーナーに滑りこみセーフというところで、春の古都を満喫して参りました。


「酔いどれ天使」

~闇市の泥池~
1948年 東宝 黒澤 明監督


闇市でハバを利かす松永(三船敏郎) この眼光を見よ  左は木暮実千代

随分久々なのでやはり劇場で観たいと思い、その回しか都合が合わなかったので休日の初回に観賞。「酔いどれ天使」を全編きちんと見るのは、実に10年ぶりになるだろうか。とにかく本当に久々の観賞になる。
敗戦後、一面の焼け野原になった東京にバラックの闇市があちこちと出来ていた、そんな頃のお話だ。闇市はマーケットと呼ばれ、そのすぐ裏には汚いどぶ泥の池がメタンガスの泡を浮かべている。

「暗黒街の対決」

~白いトレンチの伊達男~
1960年 東宝 岡本喜八監督


岡本喜八的リズムと遊びに溢れたアクション映画。原作が大藪春彦だというのは今回久々に観て初めて気づいた。乾いたコメディタッチながら、和製ハードボイルドなわけなんですね。この作品での敏ちゃんは男盛りのしびれるような男っぷりで、苦みばしってカラっと凄腕な刑事を演じている。油をつけた黒髪の艶や、広い肩幅で着こなす背広、背広を脱いだ時の拳銃ホルダーをつけたYシャツ姿、バーのカウンターで煙草をくゆらせる様子など、敏ちゃんファンには堪えられないお宝ショット満載。極めつけはオフホワイトのトレンチコートを羽織った姿。あまりの男前っぷりにこちらは始終、顔がゆるみっぱなし。
鶴田浩二との共演で、敏ちゃんとしては数少ない現代劇の娯楽アクション作品だ。

「椿三十郎」

~鞘のない刀~
1962年 東宝 黒澤 明監督



2本の三十郎ものでどちらが好きかと言えば、ワタシはやはり「用心棒」の方が映画として好きだけれど、娯楽性という視点で観れば、トントンとテンポもいい「椿三十郎」は「用心棒」より上かもしれない。でも、なんといってもこれは出演者のアンサンブルですね。我らが敏ちゃんこと三船敏郎が輝きわたっているのは当然として、若侍たちは目立つところに加山雄三を始めとする当時流行っていた若大将シリーズからの顔ぶれを配して時代劇に新鮮な空気を入れたな、という感じ。(でも田中邦衛は案外これというところはない)最も際立っていたのは入江たか子と小林桂樹。アンパンこと団令子も意外におっとりといい味を出していた。
ワタシ的には入江たか子のフィルモグラフィにこの作品が加わって本当に良かったとしみじみ思う。