「グラディエーター」 

~Strength & Honor~
2000年 米 リドリー・スコット監督

 花吹雪

なんだかこの映画が懐かしくなったので、もの凄く久々に観てみた。ワタシにとってこれはハマった経緯や、その時の気持ちの高揚感が凄く「カジノ」と似ている作品だ。とにかく予告編を観た時に「お!行かなきゃ」と思って劇場に行った。「カジノ」は四度行ったが、これは二度行った。(ちなみに「アイランド」も二度行った。特に基準はない)そもそも余程気持ちが動かないと映画館に行かないワタシ。複数回見るというのはかなり異例な事なのだ。予告編で闘技場から振ってくる花吹雪を浴びてヒゲヅラのラッシーが甲冑を着て立っている姿に「ははぁ、大昔のリチャード・バートン(クレオパトラのアントニーなど)に似てるからキャスティングされたな?」などと思ったりした。いずれにしてもそのラッシーの面構えに、何かこの映画に期待してもいいような空気を感じた。無条件に面白そうだと思った。その時点では監督もリドリー・スコットだし、などとは特に考えなかった。
観て、予想通りハマった。けれど「カジノ」ほど長くハマっていたわけではなく、映画館に2度目に行った時には既に少しアラが見え、飽きが来ていたので、 DVDが出る頃にはすっかりと醒め果てて、レンタルで一度観たものの「あ?、やっぱり妙に劇場で見ていいと思ったものはDVDで観ると興ざめしてダメだなぁ」と思ったりした。そのあたりから急速にラッシーにも興味がなくなった。この人については「クイック&デッド」、「L.A.コンフィデンシャル」そして「グラディエーター」がワタシの萌えBest3である。「クイック&デッド」なんて、ほんとうにしょうもない映画なのだが、この作品でのラッシーは彼的にはかなり細身でしかもロンゲ。これが割合に似合っていて、シャロン・ストーンに弄ばれるガンマン牧師という奇妙な役柄にはとてもハマっていた。ラッシー唯一のイケメン映画である。まだ細かったデカプーも出ていた。シャロンの一人よがりのなんちゃって西部劇なのだが、妙に記憶に引っかかっている。

さて、話を「グラディエーター」に戻すと、男の中の男、男は黙って○○ビールな空気横溢のラッシー=マキシマスもさりながら、仇役のヘタレ皇帝コモドゥスを演じるホアキン・フェニックスが非常に印象的である。ほんとに兄弟?と思うほど兄リバーとは似ていないが、色々な作品に出て昨今は演技派として評価も高い。この作品のホアキンを見ていると、敬愛するオヤジにどうしても認めてもらえない不詳の息子、というありようが「ロード・トゥ・パーディション」のダニエルの役柄と被る。結局それが原因で、裏で糸を引き、親父の愛を独占する男を破滅に追いやることになる。その「ちちうぇ?」という半べその表情が、憎たらしいのか物悲しいのか、仇役なのに同情を誘うあたり、なかなかである。姉に近親相姦的な妄念を抱いたり、甥にも手を出しかねない「狂った血」をその濃い顔で存分に表現している。



ラッシー=マキシマスは冒頭から陥れられるまでの将軍サマ時代よりも妻子を殺され(大鼻水を垂らして嘆く場面は有名)死んだように倒れていたところを捕獲されて剣闘士に売られてしまってからが俄然良い。まぁそこからが本題なので良くないとマズイわけだけど、本当にいい。しびれるカッコ良さだ。基本的にラッシーのようなタイプを好きではないワタシだけど思わずハマってしまったほどに良い。昔はラッシーにウットリしながら見ていた「グラディエーター」だが、今はこのマキシマスをダニエルが演じたらどんなだろうかしらん、などと思いながら観ている。ダニエルもどうもブレーク後の役選びがイマイチ腑に落ちないものばかりで、幅広く選べるようになったんだから、もうちょっと面白そうな映画に出たらどうか、と思う事しきり。ヒネらなくていいので、単純に面白そうなカッコイイ役をやっちゃくれまいか。遠い東の地よりお願いする次第だ。  閑話休題。

案外小柄で肩幅も狭いラッシーだが、とにかく剣闘士になってからは怒涛のカッコ良さでスクリーンからオーラを放つ。見るだに重そうな剣を振りまわしてアクションシーンも切れがいい。白馬にまたがり、槍を構えて疾走する姿の決まっていること。(なんとなく「隠し砦の三悪人」で両手に日本刀を持ち、裸馬を手放しで全力疾走させていた敏ちゃんの姿を思い出したりもする。)常にそこはかとなく眉のあたりに憂いをたたえた表情もマル。その無表情が、先帝の娘ルッシラの息子ルキウスを見る時、父親のような慈愛を湛える。失われた家族を想うときの表情と闘技場で戦う時の表情の変化にメリハリがあっていい。これはラッシーにとって空前絶後のハマリ役で儲け役だった。

 汗臭そうではある

存在感のある奴隷商人のオリバー・リード、元老院議員でこんなところにも顔を出していたデレク・ジャコビ、先帝アウレリウス役のリチャード・ハリス。奴隷仲間のジャイモン・フンスー。それぞれにいい仕事だが、音楽のハンス・ジマーがこの時も物凄くいい仕事をしている。格調高く、高揚感があり、そして悲壮な色合いも帯びたスコアの数々が悲劇の英雄の勇姿に映える。
映像も迫力あるが、CGのコロッセオよりも、空をゆく雲や一面の麦の穂にそこはかとない郷愁が感じられる。

これですっかりスターダムに乗ったラッシーだがその後の暴れん坊将軍ぶりは周知のところ。メグを振った後、普通に妻子もちになったのはちと意外だったが、とにかく行き過ぎて手が後ろに回ってばかりにならぬように、気をつけていただきたいものである。

      コメント(12)