「ゴスフォード・パーク」

~イギリス俳優名鑑~
2001年 米 ロバート・アルトマン監督



つい最近まで、ワタシはこの映画の事を知らなかった。映画ブログをやっているにしては迂闊な話だけれど、2001?2年あたりは、あまり新作映画に興味がなく、劇場に映画を見に行くこともあまり無く、映画界の動向にもさして興味がなく、だからアカデミー賞にも注目していなくて、すべての面でこの映画が意識から抜け落ちてしまっていたらしい。そんなわけで今ごろになって初めて観たわけなのだけど、観たら昨今気になる俳優がテンコモリに出ていて、今観て正解だったのかもしれない、と思った。
いまやすっかり女王サマの威厳を備えたヘレン・ミレンのメイド頭。この時から既に威厳たっぷり。この人を初めて観たのは NHKが放送していた「第一容疑者」というBBCの地味なTVシリーズだった。確か女刑事の役で疲れた顔のコワイおばはんだな、と思った記憶がある。この映画では最後に芝居の見せ所があり、たっぷりと見せる。大女優の貫禄である。その他、倣岸で好色で鼻持ちならないゴスフォード・パークの主人・マッコードル卿にマイケル・ガンボン。お、ガンボンさんやっぱりこんな傲慢オヤジの役で、とニヤニヤしながら見ていたら割にアッサリ殺されてしまった。「レイヤー」のエディのようにしぶとく裏社会で生き残り、若い奴に説教を垂れるわけにはいかなかったようだ。このガンボンさんと不倫をしていたメイドにエミリー・ワトソン。相変わらず上手い。金目当てでガンボンさんと愛のない結婚をした妻にクリスティン・スコット・トーマス(長い!)退屈凌ぎに若い男をベッドに引きこむ有閑マダムの退廃が顔にも雰囲気にもよく出ていた。



すがれたトーマス

そして、スノッブに黴が生えてしまったかのようなマギー・スミスの伯爵夫人も、登場からワガママをカマシまくりでいい味を出している。ポットの蓋が開かないからってあんた、大雨の中をわざわざ車を停めさせてメイドに蓋を開けさせる。この車、前と後ろの間仕切は開かないのか、なんでメイドは車外に出て大雨に打たれつつ車を半周して老婦人の側に行かなくてはならないのか、何事も持って回るイギリス上流社会への諷刺が早くも現れたシーンだ。そして、この老婆に仕えるかわいいメイドさんにケリー・マクドナルド。カワイイけどちょっと太ったかな?「some voices」の時よりも、もうちょっと姉さんになった感じだったが、適役だった。
そして、驚いたのがジェームズ・ウィルビー。顔が随分前に見た「ハワーズ・エンド」の頃と全く変っていない。(身勝手な役柄も「ハワーズ・エンド」とちょっと被る印象だ)さすがに「モーリス」の時ほど若くはないが、それでも驚くべき不変ぶりである。顔は好みじゃないけれど髪は生まれつきのブロンドらしく、いつも綺麗なこがね色。今回もこがね色だったがてっぺんがかなり減っていた。そこにだけ歳月が感じられた。


ジェレミー・ノーサム

実在の俳優・アイヴァー・ノヴェロを演じていたのは「理想の結婚」でケイト・ブランシェットに愛される夫役を演じていたジェレミー・ノーサム。「理想の結婚」の時よりハンサムに映っていて、ピアノの弾き語りで甘い歌声を聴かせるシーンがけっこうある。ピアノは吹替えのようだが、歌は本人の歌声らしい。またしても結構上手い。余技のように軽くうまい歌を聴かせる俳優って多いものである。毎度驚く。

そして、誰よりワタシの目を惹いたのはクライヴ・オーウェン。やっぱりなかなかいい持ち味。生立ちに秘密があり、すこしだけ太々しいロバート・パークスを演じているのだが、召使部屋でベッドに寝転がって本を読んでいるシーンには「お!」と思った。


クライヴ!

すらりと長身でダークヘア。顔はそんなに好みじゃないのだけど、やっぱりこの人には何か雰囲気がある。彼の「マーロウ」が待ち遠しい気持ちしきりである。この分なら、かなり期待して良さそうだ。彼とケリー・マクドナルドのラブシーンもとてもコンビネーションが良かった。ノッポのクライヴとちっちゃなケリー。微笑ましいカップルだった。


チッチとサリー

殺人事件については途中で察しがついてしまうが、アッパークラスとその使用人たちの織成す人間模様に主眼が置かれた諷刺の利いたサスペンス・コメディ。召使たちは、主人が招かれていった先の屋敷では、召使同士、その主人の名前で呼ばれるなどというのも初めて知った。「日の名残」にはそんな事は書いていなかったし。(笑)
「愛の悪魔」でデカパンのダニエルを狂気に追いこんでいたデレク・ジャコビも使用人の役で出ていた。その他、俳優のくせにゲストの使用人に化けて入りこみ女の尻ばかり追い回している生意気なクソガキにライアン・フィリップ。正体がばれたあと、給仕が彼の股間にコーヒーをかけるシーンが小気味よかった。
ロバート・アルトマンというと「M★A★S★H」や「ロング・グッドバイ」がすぐに思い浮かぶけれど、「プレタポルテ」もこの人の作品だった。ちょっと「ゴスフォード・パーク」とテイストが似ている。多くの登場人物に過不足なく陰影を与えるその手腕。皮肉と諷刺の利いた群像劇に冴えを見せたアルトマン。いい感じのお爺さんで、なかなかカッチョイイなと思っていたら、昨年亡くなってしまった。遺作をまだ観ていないのだけど、また忘れた頃に鑑賞してみようと思っている。

    コメント(6)