「アサシン」

~魅惑のガブさん~
1993年 米 ジョン・バダム監督



またも微妙に古い作品で恐縮なれど、今回は「アサシン」。ムービー+が放映したのを捕獲しておいたので、久々に鑑賞。この作品は欧州映画のハリウッドリメイクとしては割合に出来がよく、ブリジット・フォンダも好きな女優なので、ワタシの中ではささやかな好物という類の作品。父親のピーター・フォンダが「どうだい?俺の娘、イイ女だろう?」と言ったとか言わないとかのブリジット、確かにフォンダ一族のDNAを受け継いだスレンダーな骨細の姿態が目に涼しい。アンヌ・パリローほどの迫力はないが、それなりの味わいも出していて良かったと思う。が、何と言ってもこれはガブリエル・バーンの男盛りの色気を堪能する作品。ガブさんの出演作の中でもけっこう上位にランクインするカッチョ良さだとワタシは思っている。
middle_1191331290.jpg

この人を、エージェント役に持って来た時点でこの映画は成功したといえる。本家のチェッキー・カリョよりもリメイク版のガブさんの方がハマっていた。哀愁とシブさと中年のセクシーさが混ざってなんとも言えない。また彼以外にも、マナーコーチにアン・バンクロフト、掃除人にハーベイ・カイテル等、ハリウッド流に置き換えたキャスティングもうまかったと思う。

荒みまくった凶暴なジャンキー、マギー(B・フォンダ)を裁判所でも、処刑場でもじっと見ている男ボブ(G・バーン)。最初に彼女を見た時からこの凶暴な女に職業上の関心以上の何かを抱く。彼女はかつての自分であり、昔自分の辿った道をこの先辿るであろう分身のような存在なのだ。
このマギー。突拍子もなく凶暴なくせに死刑が執行されると知るや、「ママを呼んできて!マミ?!!」などと叫ぶ甘ったれ。実は平凡な中産階級の娘だったりするのかもしれない。とにかくエージェント・ボブが見こんだごとく、素質はたっぷり。よからぬ方面にしこたま才能があるなら、殺すよりも、政府機関の汚れ仕事をさせる方がずっと資源の有効活用である。

かつては自分もそのようにして死刑の身から政府機関の人間へと生まれ変わったボブ。凶暴なマギーに手を焼きながらも、彼女の気持ちは痛いほどに分かる。そのボブの心情を、目の表情だけでも有り余るほど伝えるガブさん。こんなメフィストにだったら誘われてともに地獄へまっしぐら、というのもロマンティックかもだわぁ、などと思ってしまうほどにいい男っぷりである。
アメとムチでマギーをいっぱしの暗殺者になるための訓練に耐えさせる。誕生日に小さなケーキを与えて喜ばせた後で、「もう半年訓練して、反抗的な態度がおさまらなければお前は始末される」と告げる。その後呆然とするマギーに「俺には何もしてやれない」と言い、その頬にそっと口づける。…か???、ガブったら!!

さすがのマギーも従順になって訓練を重ね、ある日外出を許可される。正装をして、パリっとダンディないでたちのボブとリムジンで晩餐に。プチプチ・マイフェアレディである。ジャンキーの時にはダークヘアで地味な印象のマギー。髪もブロンドにして洗練された女性に変身している。こういう場合、垢抜けるとブロンド、という表現はお決まりだ。
ともあれ、久々に娑婆の空気を吸ったマギー。嬉しくてボブにキスをする。ほろにがな微笑を浮かべてそのキスを受けるボブ。この後、彼女に初仕事の指令を下さねばならないのだ。

middle_1191331388.jpg

マギーの初仕事。ターゲットをしとめたあと、銃撃戦の果てにロケットランチャーを交わしてダストシュートから脱出するまでのシークェンスは迫力十分。命からがら抜け出したら、外は大雨。おまけに待っている筈のボブの車はどこにも無い。踏んだり蹴ったり。ワシントンの静かな夜。かぼそい女殺し屋が雨の中をひとり走る。

ニヤニヤして迎えるボブを思い切り殴るマギー。甘んじてパンチを受けるボブ。馬乗りになる彼女と体勢を入れ替えるボブ。「最終テストだ、明日出られるんだ」という言葉に静かになるマギー。ふと彼女に体を重ねていることに気付くボブ。この時、身を起こしながら彼女の体側をなぞるように手が引いていくあたりがエロい。「とても寂しくなる」とつい本音を言うボブにキスするマギー。応えて本気モードのキスを返すボブをつと遠ざけた彼女は「お別れのキスよ」と言う。部屋を出たボブが舌を左右にぺろぺろやるのがなにがなしヤクザっぽい。

やがて新しい身分証が与えられ、外の世界に出ていく彼女。この時B・フォンダの着ている白いハイネックのインナーに黒いタイトミニのスーツが非常にシックでカッコいい。こういう服装をして似合うのはキム・ベイジンガーとか、とにもかくにも脚のきれいな細身の女性に限るわけだが、ブリジットも非常に似合っている。

middle_1191331617.jpg

娑婆に出て、一人前の殺し屋として仕事を始めた彼女が出会うBF(ダーモット・マローニー)は、不精髭のイケメンではあるが、こんな若造にイカレたりするもんかぃと思ってしまう。このBF役は誰がやっても間抜けに見える損な役ではあるのだけど…。
まぁ、とにかくこのBFとイチャついていようが何をしていようがお電話一発で呼び出されて指令が下る。油断している暇はない。そんな仕事にいつか耐えられなくなるのも自然の道理。叔父さんとして彼女の周辺に目配りを欠かさないボブだが彼女の気持ちは先刻ご承知だ。最終的にボブが彼女にかける恩情は、若い頃の自分に中年になった自分が、もうひとつの道を歩ませるようなものなのかもしれない。去り行く彼女を車の中からほろにが目線で見送るボブ。こういう哀愁と色気のないまぜになった眼差しをさせたらガブさんは天下一品である。

     コメント(8)