「イン・ハー・シューズ」 

~姉妹はウザくて愛しい?~
2005年 米 カーティス・ハンソン監督



これは、カーティス・ハンソン作品だからというのもあって、封切時に劇場に観に行った。何故かこういう小味な映画をふと劇場に見に行きたくなるのがワタシのクセである。

ワタシは弟がいるせいか、年の近い女のきょうだいというのを実感的には分らない。どうせなら、弟より兄貴の方が良かったのだけど、まぁ、2歳下の妹がいるより、2歳下の弟の方がまだしもだったかな、とは漠然と思う。父の妹たち(つまり叔母たち)に一歳違いの姉妹がいて、この二人は年の近い姉妹ならではのイザコザが若いころには特にすごかったらしい。二人ともオシャレ好きで、体型が小柄で細身で服や靴のサイズが同じ。若い頃にはしょっちゅう、どっちがどっちの靴を穿いていったの、バッグを持っていったの、着ようと思ったワンピースを着ていっただのと揉めていたという。他の誰に対してよりも互いにライバル意識が強いんだろうなぁ、とは子供心に感じていた。どっちの叔母にもとても可愛がってもらったのだけど、年の近い姉妹ってややこしそうだな、と感じたりもしていた。
それにしてもトニ・コレットとキャメロン・ディアスとはいい人選である。似てないにも程がある。けれど世の中には1ミリも似ていない兄弟姉妹というものが確かに存在するのだ。
姉は頭がよく弁護士として有能だが、容姿に引け目がある。妹は男好きのする顔と体だけが取り柄。難読症があり、何をやっても長続きせず、男遊びに憂さを晴らしている。絵に描いたような設定だ。しかし、この姉妹は常にいがみあっているわけではない。幼い頃に亡くなった母を恋い、再婚した父に違和感を持ち、父の再婚相手とその連れ子に不快感を抱いている点は共通している。が、冒頭、姉の部屋に転がり込み、ものの弾みで姉の好きだった男と寝てしまった妹と姉が罵り合うあたりまでは画面も暗く、観ている方もゲンナリする。姉の部屋をたたき出された妹がフロリダで老後を送る母方の祖母(シャーリー・マクレーン)の元に転げ込むあたりからお話も動き出して、画面も明るくなり、キャメロンも本調子になる。が、最初の澱んだ感じ、男と寝ること以外は何をやってもうまく行かないダメダメ娘の雰囲気も上手く出していた。記号的演技ばかりでなく、やればちゃんと芝居も出来るのだ。姉はクロゼットに異常な数の高価な靴をコレクションしている。殆ど穿かずに飾ってあるだけ。妹がこれを勝手に穿いてヒールを折る。「私のジミー・チューの靴を!」と姉は叫ぶ。(またしてもジミー・チューの靴なのだ)姉が折れたヒールを持って「ハーイ!ってホラしゃべれるのよ!!」とパクパクやるシーンに笑った。

失恋で長期休暇を取った姉が、ひょんな事から犬の散歩代行というバイトをやることになり、犬を散歩させているうちに自身も活力が甦ってくるあたりは、うまい設定だなと思う。ドッグ・セラピーというのは確かに効果があるのだろう。市庁舎だかの前の長い階段を犬達とロッキーのように駆け上がる。そして、姉を密かに思っていた職場のユダヤ系の男性が、道端で会った彼女を寿司に誘うシーンが印象に残る。とにかく妙にこなれた注文っぷりで、「マサゴ」だの「ハマチ」だのメニューにない「タラ」まで注文する。勝手に自分の分まで注文されて呆れる姉の前で、彼はこなれた手付きで割り箸を割ると片方で片方をシャッシャとひしぐ仕草をするのである。(どこで教わったの?こなれてるねぇ)事ほどさように、アミャーリカ人の間で寿司は浸透しているという事なのだ。この映画を観た時ほど、寿司のアメリカでの浸透度合いを痛感したことはなかった。道理でマグロが払底するわけなのだ。

あまり身なりも構わず篭っているような女性を、密かにずっと恋うる男性が出てきて、一生懸命彼女を元気づけようとする設定が結構好きなので、この映画もユダヤ系男性サイモンが姉をその気にさせようと懸命にアプローチするシーンが微笑ましかった。「プルーフ(オブ・マイ・ライフ)」におけるグィネスとジェイクの関係と同様である。トニ・コレットは休暇に入って元気になってくるシーンでは化粧けはないがキレイである。ふとした表情がイキイキしていてチャーミング。

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そして、シャーリー・マクレーン。昨今のハマリ役は、リタイアしたけど頭は若く、茶目っけと余裕を持って若い世代にアドバイスしたり、自らも生活を楽しんでいるグランマの役である。そういえばこの人はウォーレン・ビーティの姉。この姉弟も全く似ていない。シャーリー・マクレーンは婆さんになってもなんだか目元がカワイイ。

当初フテ腐っていた妹だが、フロリダで難読症を克服し(この過程がちと安易すぎるが…)本を読んであげた老人に「頭がいい」といわれて気分晴れ晴れ、甦るのである。リタイアしたジジ・ババばかりの中で、自慢のボディをプールサイドに横たえてビキニで日光浴をするシーンは面目躍如。まぁ、ここまでスタイル良かったら、ワタシだってビキニでそこいらをのし歩いてさしあげますことよ。ええ。

姉はマイアミへ妹の様子を見に行き、久々に再会した祖母に「あなたは美しいわ」と言われて積年のコンプレックスが和らぐ。

コンプレックスのない人などいないが、それが人の心と行動に及ぼす影響はかなり大きい。それをプラスに転化させるか、マイナスにしてしまうか、は本人の気の持ちようだけではなく、周囲の人の些細な一言が大きく作用したりもする。姉妹は離れていた心を寄り添わせ、それぞれに人生の転機を迎えて旅だっていくラストは予定調和でもあるが、小品ながら、なんとはなしに好きな作品の1つである。

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