「遠い空の向こうに」

~スプートニクの恋人~
1999年 米 ジョー・ジョンストン監督


ウル・ジェイキー

やっとその気になったので、半額を利用して観てみた。原題「October Sky」
あまりにもストレートに「いい話」で、おまけに実話なので、まっこうからレビューというのも「てへへ」という感じになるため、感じたことをぽつぽつと。
時代は1950年代半ば。ところはウエスト・ヴァージニア州の炭坑町。炭坑町というのは妙にうら寂しい。それが物語の舞台になるのは、大概、活況を呈していた時代ではなく、時代の変遷や資源の枯渇で閉山に追い込まれる寸前だったり、もう閉山した後だったりするためかもしれないが、すすぼけて、うら寂しいのは洋の東西を問わない。日本でも炭坑町といえば北の夕張、西の筑豊などドラマや映画になるのは、もうその最盛期を去った時代からである。

そんな炭坑町の平凡な高校生ホーマーを演じるのがジェイキー。親父さんは炭坑の主任だか、責任者の立場に居る。炭坑仕事に誇りを持つ親父だが、息子は炭坑も死にかけた町も嫌いで仕方がない。いや?、ジェイキー。顔がもろに子供時代から青年期への過渡期。子供の顔のまま背が伸びている感じだが、ちらほらと現在の顔になりつつある"途上"が仄見える。こうして成長してきたんだねぇ。でも出てきてすぐにアップになるシーンで、早くもあの「まなざしパワー」が画面から溢れている。栴檀は双葉より出でて芳し。
でも、カワイイがちょっとクニョクニョしている印象もある。
口元が常にルパン三世のようにクニョ?ンとなっているのと、歩き方がなんとなくひょろひょろして頼りない感じがするからだろうか。このときは19歳ぐらい。子供子供して微笑ましい。

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10歳当時(左)とさして変わらず

頑固な炭坑親父を演じるクリス・クーパーは「ジャーヘッド」でも共演。炭坑の中をはいずりながら文字通り真っ黒になって働いて家族を養ってきた頑固親父の自負。息子にも同じ生き方を望むが、長年の坑夫生活で肺を病みつつある。

親父にも親父の生き方にも不満を抱く息子が、ある夜、10月の夜空を輝かしくよぎって行くソ連の衛星スプートニクを見る。このとき深く心に刻まれた感動が、のちの人生を決定する。人が若い時期に強い印象で掴まれたものは、その一生を左右する。17か8のころのワタシは何に掴まれていたかなぁ。あれこれ掴まれてはいた筈なんだけど…。

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フットボールで奨学金をもらって大学に行く兄に対抗し、「ボクはロケットを作る!」と宣言するホーマー。仲間を巻き込んで試作をはじめる。いつもの悪友だけではラチがあかず、仲間外れで誰とも交わらない変人の科学マニア・クエンティンをチームへ引っ張り込む。このメガネ君を演じているクリス・オーウェンが、なかなかいい。

試作品の材料を買う金を工面するために、廃線になった鉄道の線路をひっぺがしてクズ鉄屋に売り払うシーンで、レールの上をかけていく4人の高校生を見ていたら、あの「スタンド・バイ・ミー」の少年たちが少し大きくなった姿のように見えた。そういえば背後に流れる50'sのポップスも、あの映画と少し被る。「ヤキティヤック!」。

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とにかく、当初は上に上がったかと思えば、とんでもない方向へネジくれ曲がって来るボクたちのロケットは一歩間違うと人も殺しかねない危うさである。人死にが出ないでよかったね。

無理解な父に苛立ちつつも試作を続ける彼を応援してくれるのは、長い顔のライリー先生(ローラ・ダーン)まさに適役。科学フェアへの出場も彼女の薦めだが、ライリー先生は難病を持つ身で、生徒たちを励ましながらも、自らは病に倒れてしまうのは、実話とはいえ、なんだかホロリとする。

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山火事が起きたのがロケット実験のせいだと疑われ、実験を中止せざるを得なくなり、しかも落盤事故が起きて頑固親父が負傷したため、ホーマーは学校をやめてあんなにも嫌っていた穴掘りに従事するハメになる。なんでかよわい高校生の弟が?そういう場合はゴリラのように屈強なフットボール野郎の兄貴の出番じゃないの?奨学金を棒に振っても。 だが「僕がやるよ」と健気な弟。憧れの彼女を兄貴に取られた上に、一家の犠牲まで買って出るとは…。このあたり、ジェイキーのまなざしビームがまたビュービューと炸裂している。坑内に沈んでいくエレベーターの金網天井の向こうに見える遠い夜空をじっと物言いたげに見上げるその目。

すんでのところで夢を諦めて炭坑町の煤煙の中に埋もれそうになったホーマーだが、山火事の疑いを晴らしてやはり夢に向かって生きる決意をする。

実験結果をひっさげて科学フェアに出場し、めでたく最優秀賞の金メダルを貰い、それで奨学金を得て仲間4人は大学へ進学することになる。
故郷に凱旋し、1基残ったロケットを打ち上げて有終の美を飾るシーンで、これまでのどのロケットよりも高く、垂直に上っていくロケットの白い煙の筋が、病床のライリー先生にも見えるシーンではちょっとジンワリ。親父ともついに和解する。親父の命あるうちでよかった…。
こうまで夢一途に打ち込めば、やはりNASAのロケット技術者になるのは当然の帰結だろう。最後に4人の仲間のご当人たちが当時の8ミリの映像で登場する。実物は主人公ホーマーがメガネ君であった。

ジェイキー、初主演作から作品に恵まれているなぁ。下から苦労して這い上がっていないので、作品系列に無駄やB級がないのだ。まさに幸運の星の元に生まれた「幸福の王子」だが、なぜか哀しげな憂いのにじんだまなざしの似合うところが、またニクイのである。

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