「眺めのいい部屋」

~♪Oh mio babbino caro~
1986年 英 ジェームズ・アイヴォリー監督



本当は「ラヴェンダーの咲く庭で」について書こうと思っていたのが、見ていてあぁマギー・スミスとジュディ・デンチを初めて見たのは「眺めのいい部屋」だったなぁ、などと思ったらふとこっちについて書きたくなってしまったので、急遽、題材変更した。これは、小娘のワタシが初めて「いいなぁイギリス映画って」とイギリス映画を意識した作品であり、イギリス発音てアメリカみたいにミャアミャアレロレロしてなくて心地よいなぁ、と思ったのもこの作品からだし、 M・スミス、J・デンチにくわえてデンホルム・エリオットも、ティム・バートン夫人になったヘレナ・ボナム・カーターもこの作品で初めて見た。これで暫くジェームズ・アイヴォリー作品にハマって「モーリス」「ハワーズ・エンド」「日の名残り」と観ていく事になるのだけど、ワタシは最初に見たせいか、この作品が一番好きである。内容が大らかで優雅なのもその一因かもしれない。
middle_1174313643.jpg
ノッポとズングリ 昔からいいコンビ

ヘレナ・ボナム・カーターは当時チャーチルの孫が映画女優になったとちょっと騒がれていたのを思い出す。将棋のコマのような四角い顔で美人とは言えないのだけど、育ちから来る争えない品があり、ヒロインのルーシーにはぴったりだった。大顔・ジュリアン・サンズもこの頃はまだ純粋にブロンドの二枚目として機能しており、ぷぷ、という感じの存在感ではなかった。

middle_1174313734.jpg

そして何よりも潜在的なプッチーニ好きを完全に呼び覚まされた作品としてもワタシには特筆すべき作品なのである。それまで漠然とあの有名なアリア「ある晴れた日に」しか知らなかったワタシだが、「眺めのいい部屋」では美しいタイトルバックとともにソプラノの歌声が流れてきて、聴いているだけでウットリした。クレジットを観たらプッチーニの「私の大好きなお父様」というアリアだと分った。以降、プッチーニにもハマった。オペラ全般に好きというわけではないが、プッチーニだけは大好きである。

映画に話を戻すと、ペンションで同宿している数人が馬車を雇って郊外にピクニックに行く場面がとてもいい。この馬車の御者がとてもイケメンで最初に見た時からジュリアン・サンズよりいいじゃない、と思っていた。このイケメン御者がまた、波打つブロンドの妖精のような美少女を同伴してきて御者台でイチャつくので、少女は途中で下ろされてしまうのだけど、この二人の似合っていることと来たら主演の二人そっちのけだった。

作家とイトコの中年女子コンビにしめだされたルーシー(ヘレナ)は神父のところに合流しようと御者に場所を尋ねる。彼は何も訊かずに訳知りの微笑を浮かべて彼女をジョージ(J・サンズ)のところに案内する。

middle_1174313780.jpg
牧神とニンフという感じ

middle_1174313819.jpg
イケメン御者 ワタシならJ・サンズよりこっちが良い

ジョージは何も言わずに彼女の元にずいずいと近寄り、抱きしめてキスをする。イギリス式の無意味な建前を取っ払って本音に従って自分を解放しましょう、というのが作品のテーマなのである。ルーシーは上流階級の娘なので、労働者階級のジョージとは本来、到底結ばれるご縁ではない。ルーシーもイタリア旅行を終えて国に戻ると許婚のバイズ(ダニエル・デイ・ルイス)と結婚することに疑いを持たないが、奔放な情熱家の彼女はロクにキスもできない男では物足りない自分に気づいていない。思えばダニエル・デイ・ルイスもこれで初めて観たのである。キスしようとして眼鏡を落しかける堅物のすっとこどっこいな男を達者に演じている。そしてルーシーの弟を演じるかわゆいルパート・グレイブス。

middle_1174313921.jpg
かわいいルパート

そしてデンホルム・エリオット。ワタシはこのおぢさんも密かになんとなく好きな俳優なのだけど、出てくると自然と微笑ましい気分になるのは、最初にこの作品のエマソン氏として見たせいかもしれない。イタリアのペンションで同宿の老姉妹に矢車草を摘んで来て、その髪に飾ってあげるシーンがほのぼのしていてとても好きである。ジョージの下らぬことにこだわらない性格は、この父譲りなのだ。このエマソン氏がルーシー達に眺めのいい部屋を譲ってあげよう、と申し出たことから全てが始まるのである。

この作品では、いまでも活躍する色んな俳優が一番輝いていた時期を捉えているという事でも貴重な作品かもしれない。厭な気分になるシーンがひとつもなく、陽光のイタリアは元より、イギリスでも芝生の庭がどこまでも続いているハニーチャーチ家の庭と屋敷が主な舞台なので、見ていて優雅でのどかな気分になる。おまけに自然光を思わせる美しい画面。脚本がいいのか、さしたる起伏もない話なのに全く退屈もせず、よどみもせず、おしまいまでとても気持ちよく見られる。

新婚旅行で思い出のフィレンツェのペンションに泊まったルーシーからの便りを一人ベッドで読むシャーロット。彼女の顔に安堵とともに一抹淋しげな影がさす。結婚をしないで年をとってしまった自分の人生を振り返っているのか、少ししんみりするシーンである。

middle_1174313898.jpg
髪が多???い

それにしても、ヘレナ・ボナム・カーター。多毛である。ポンパドールにしても頭の上で髪が大きな渦を巻いているが、おろすともっと凄いボリュームである。それがまたこの時代の女性らしい感じをよく出していたように思う。

       コメント(6)