「ブラックホーク・ダウン」

~モガディシオの男たち~
2001年 米 リドリー・スコット監督



友達にバックパック旅行の大好きなS君という人がいる。日常は大企業で営業マンをやっているのだけど、休みともなると一人辺境にバックパックでぷらりと出かけるのが趣味の御仁。で、このS君、映画も結構好きで、飲むと映画の話で盛りあがったりするのだが、彼がやたらに強力推薦で「絶対に観るべき!」と言い、頼みもしないのにDVDを貸してくれたのがこの作品。2年ほど前である。
ワタシはユアンが出ていたことは知っていたので、「ユアン、どう?」と聞いたら「へ?ユアン。なんかコーヒーばっかり淹れてたなぁ。それよか、エリック・バナだよ。シブいよ」とひたすらバナ一押しのご託宣だった。ワタシはそれまでバナを観たこともなく、その頃は丁度「ミュンヘン」が封切になった頃だったのだけど、食指が動かぬなぁと思っていたところだったので、甚だ気が進まないながらもユアンを鑑賞するために観てみたのだった。で、この都度CSで久々に再見したら、随分色んな人が出てたんだなぁと改めてその忠臣蔵的顔見世度合いに感心した。

あらすじはこちら
というわけで、実話に基づいたお話。レンジャー部隊とデルタ・フォースの主導権争いなど、内輪な問題も絡めつつ灼熱のソマリアに繰り広げられる壮絶な市街地戦が描かれる。まぁ、平たく言えばいつものようにアメリカがよその紛争に正義の味方ヅラをして乗りこんでいき、予想外の事態に陥り、パニクったのをなんとか収拾した、というだけのお粗末な顛末なのだが、そんな国の思惑に命がけで振りまわされる兵士は毎度、大変なのである。
バナ演じるデルタの腕っこきフートが言う。「弾が頭をかすめた瞬間、政治や下らん話はふっとんじまうさ」 結局は、そういう事なのだろう。クソ真面目なハムレット気質のレンジャー・ジョシュと、産まれつき兵士のようなデルタ・バナのキャラをくっきりと対比させるシーンは何度が出てくる。

middle_1188619375.jpg
バナ これがベスト1か

ビリングトップはあのジョシュ・ハートネットなのだが、群像劇だし他が濃いのでジョシュなど出ていたのか、という感じ。S君強力推薦のバナも他の作品で観るよりずっとシブいのは確かにそうだと思ったが、印象に残ったのはお騒がせ男、トム・サイズモアだった。文句を言いながらも砲弾の中、装甲車を操るタフな姿に「お?!」とニヤニヤした。
ユアンは確かに何かと言えばコーヒーばかり淹れていたが、本来前線になど出る筈ではなかった事務系兵士の彼がひょんな事からへっぴり腰で銃を持ち、戦場を右往左往しつつも、いかなる時にもうまいコーヒーを淹れるという拘りをなくさないあたりが、明るい顔つきのユアンならでは。年はずっと上なのに、若造のジョシュよりももっと小僧に見えてしまうユアン。ラブリーである。「いつもコーヒー係だ」とボヤいていたのに、戦場に出ることになるや「え?どうしよう」という顔つきになるのがまたもラブリー。

middle_1188619472.jpg
ラブリー・ユアン

「トレスポ」仲間のユエン・ブレムナーも顔を見せ、オーランド・ブルームも早々に負傷する新兵で出ている。そしてサム・シェパード。この人は監督もやる才人で、かっこいいオヤジ系ではポイントが高い人である。今回は作戦失敗で疲労困憊の少将役。

middle_1188619414.jpg
シェパードとサイズモア

また、ユアンやジョシュなどのレンジャー部隊の刈上げは「ジャーヘッド」のジェイクよりも登頂部の剃り残し部分の毛が長めである。対する精鋭部隊デルタの兵士は髪も伸び気味で無頼な様子。個人の能力を重視するデルタと集団の規律を重んじるレンジャーはいかにしてもソリは合わない。が、合同で任務を遂行するハメになるのだ。

とにかく戦闘シーンはリアルで迫力満点。耳の傍で銃を撃たれて難聴になる兵士や、墜落したブラックホークに群がるソマリアの暴徒など、臨場感に溢れている。が、それはそれとして世界の警察顔でよその国の内政に干渉し、兵を入れた挙句になまぬるい作戦が失敗して兵士を路頭に迷わせる米軍の無様さもくっきりと浮き上がる。ベトナム以来の激しい銃撃戦の結果、撤退することになったソマリア。戦闘のさなかにも朝夕に祈りは欠かさないソマリア兵士の姿に、その国にはその国の事情と固有の文化や物の考え方があり、手前勝手な思惑で強引に介入するなど思い上ったことであるというメッセージも伝わってくる。

BGMもさすがにハンス・ジマーなので、場面場面で印象的である。祈りを思わせるコーラスが荘重に流れて耳に残るかと思えばロックでガンガンと飛ばすシーンもありで、ジマーに任せておけば映画音楽はほぼ間違いはない。

全体主義で規律に縛られたレンジャー部隊よりも、デルタの方が身軽で自在な印象だったのは、エリック・バナのキャラが立つような脚本だったからなのか、実際にもそういうものなのか…。

最後は物量にモノを言わせて立ち往生の味方を救出し、いがみ合っていたデルタとレンジャーも一丸となって、安全地帯のスタジアムに生還する。なんだかんだで最後は「やったぜアメリカ」にしないと収まりがつかないのはアメリカ映画である以上、お約束なので仕方ない。でも、ホロニガ感は十分伝わってきて、リドリー・スコット作品としても出来がいいと思う。

「We gotta Black Hawk down ! We gotta Black Hawk down ! 」という通信の声が耳に残る。ヘリって尾翼撃たれたらもうアウト。最新装備で便利で高価だが、案外弱弱しいんだな、という事も分った。

     コメント(10)