「ブロークバック・マウンテン」 おまけ

~またも、雲と山と羊~



別に格別そういった題材が好きだというわけではないのだけど、「切なさ」に弱いワタシは、ちょっと「ブロークバック・マウンテン」にプチはまり状態なので、続けてしつこいようだが、ちょこっとまたこの映画について、思いついたことを幾つか書きたいと思う。
二人が最初に会う場面が、いかにもそんな感じだろうなぁって感じがよく出ていて好きなのだが、この場面では殊更にヒースが巧い。仏頂面も極まっているが、対人関係がとにかく苦手で、悪気はないものの口をきくのが面倒というか、かなりの努力を要するので、「話しかけられたくない」という空気を出す感じがうまい。割に人懐っこいたちのジャックが後から車で来て、先客がいるので取り敢えず挨拶ぐらいしようかな、と近寄りかけるのだが、"コミュニケーション拒否" の空気を出して、近寄らせない。

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仏頂面で胡散臭そうにジャックを見る のちに熱烈キスをするとは到底思われない

一方、ジャックはなんとなく、うっすらとこの初見の時からイニスが気になっている。なんとなく目の端でちらりちらりと彼を見る。どこらへんからジャックがイニスを意識し始めるか、という点なのだが、ワタシはズバリ、出会った時に、だと思う。

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バックミラーでイニスを見る

二人は分担が分れていて、当初はジャックが夜、寝ずに羊の番をして、イニスが野営地で食事を作り雑用をする係だった。火を焚くなといわれて一番中、羊がコヨーテに食われないように放牧場で寝ずの番をするジャック。月がこうこうと明るい。彼はふと遥か5キロ下の野営地から上がる焚き火の煙を見る。火の傍にはイニスがいるのだ。じっと谷あいからうすい煙が立ち昇るのをみつめるジャック。畜生焚き火が羨ましいぜ、ではなくて、今ごろ、もう寝たのかな。(俺もあっちで一緒に寝たいな…)とイニスを想っている顔だな、と2回目以降は思えて来る。

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羊の見張り番

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野営地をじっと見る

放牧場の寝ずの番がきついとジャックがブチブチ言うので役目を交替し、途中からイニスが寝ずの番になる。朝、戻ってきてお湯で体を洗うイニス。何気ない顔で芋の皮をむいているジャックが手前に映っている。背後にイニスが無造作に裸になって体に湯をかけたりしている。殊更にジャックはそっちを見たりはしない。けれど、芋を剥きながらジャックは割りに大きなため息をつくのだ。これは「ああもう、芋の皮むきなんてタルいなぁ、くっそぅ」という事ではなく、背後で裸になっているイニスが物凄く気になって仕方がなく、そんな自分の気持ちがもう抑えられないので思わずついたため息だと思う。

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…ふぅ?

アン・リーは、いつから気持ちがどうなったとかいう事を敢えてはっきりと描写しないで、間接的にぼやかして表現することにしたのだろうと思う。ここでため息をついているのも最初に見た時は気づかなかった。

ワタシがちょっと胸キュンなのはこの顔。
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なんか、この目がねぇ

雇い主のアギーレ(ランディ・クェイド。いつのまにかやたら太って憎たらしい親父になったなぁ)にじゃれあっている現場をみつかり山を早めに降りるハメになった二人。山を降りることは別れを意味する。ジャックは気軽に来年も山で会えると思っているが、イニスはもう二度と会わないつもりなのだ。禁忌の思いが強い彼は、なんとか「まっとう」な方向に人生を持っていかなくてはならないと必死なのである。前の記事にも書いたが山を降りて別れ際、来年は山には行かないというイニスをじっとみつめるジャックの眼差しが、超胸キュンである。

その後、歩き出したイニスを追い越してボロトラックで走り去るジャックだが、バックミラーで小さくなるイニスを見る目、その後視線を外して前を見る時の目、このへんが実に、語る眼差しなのだ。

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語る眼差し



***
主演の二人がいい感じの若い衆で、演技も達者。景色も綺麗で音楽もいい、となるとやっぱりお気に入りにならざるを得ない。ジェイクはとにかく眼差しがしみる。一方、むっつりイニスを演じたヒースも実に良かった。あの独特の西部訛りだろうか、ぶっきらぼうでボソボソして投げ出すような喋り方と、雰囲気がよく似合っていた。とても愛していたのに、それを表に素直に出すことをためらうイニスを、巧く表現していた。ということで、最後はやはり、この写真でシメなくてはいけますまいね。


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永遠に重なった2枚のシャツ

エンドタイトルが出て、最後に2曲めの唄「The Maker Makes」が流れてくるとさらにしみじみ。
「神様がオレの造り笑顔をつくる、俺が悲しいと知っているから…」
う?ん。切ない。

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毎度仏頂面もなんなので、爽やか笑顔も1枚

うすいグリーンのフィルターが、画面をいっそう綺麗に見せていた。マイ・オールタイム・ベスト入り確実の1本。

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