「骨折り山」おまけのおまけ

胸キュンジェイキーことジェイク・ギレンホール。この人は本当に目が効いている。切なさ度メーター振り切れの「ブロークバック・マウンテン」昨今はラスト近くのこのシーンがお気に入り。

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「立ったまま馬みたいに眠るのかい?」「………」 いつになく優しいイニスと甘えた感じのジャックがキュート。原作でもジャックの忘れられないとっておきの想い出として綴られる場面である。

ハマリついでに近所の図書館に原作本があったので、読んでみた。短くて簡潔。でも何か独特な味わいのある文体で興味深く読んだ。映画よりも原作の方が、イニスがジャックの事をもっと強く想っているし、あそこまで無口ではない。映画は原作のエピソードを削った部分と、原作にないものを追加した部分があって、双方味わうのは趣きがある。何故原作を読みたかったかというと、ジャックの最期は結局どっちだったのかを知りたかったのだ。そして映画を見た限りでのワタシの思いこみは誤りだったことが分った。あくまでイニスの根深いトラウマを示そうとした場面だと思っていたのだけどそうではなかった。これは過去の遺物的なお話ではなく、つい最近1998年にもワイオミングで実際にゲイの青年がリンチに遭って殺害されるという事件が起き(今でもそんな?と驚くが風土の頚木というのは異常に根強いものであるようだ)、それを題材にした映画「ララミープロジェクト」がAXNチャンネルで放映されたのだが、映画専門チャンネル以外にはなかなか目が行き届かずにチェック漏れ。ワタシが居酒屋で気持ちよく角玉梅酒やマグロとアボカドのタルタルを味わっている間に放映されていたのだった。ジーザス! 気づいた時には後の祭り。
ともあれ、ワタシは一人の人間を根深く縛るトラウマが周囲の人間を不幸にする話だと思っていたので、ゲイへの偏見から死に至るといったような妙に社会的な構図にはまりこんだ、図式的な最期をジャックが迎えたとは解釈したくなかったのだ。でも原作を読んだら疑問の余地はなくなった。

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だとすれば、イニスの、あの人目を懼れ、山里に逃げ隠れしていたありようは結局、正解だったという事になる。無防備なジャックは、世間の目など気にせぬあまりに、イニスが懼れていた非業の死を遂げることになってしまうのだ。う?む…。そして、原作にはハッキリと書かれていて、映画ではサラっと流していたが、煮え切らないイニスに愛想を尽かして、女房と離婚し、他の男と牧場をやろうとした事で、ジャックは命を落すハメになったのである。最終的に、ジャックはあれほど愛していたイニスを裏切ろうとしていたのだ。それゆえ、昔、甘やかな思いでうっとりとイニスに背後から抱かれていたジャックと、20年後、どうしても状況を変えようとしないイニスを見送るちょび髭のジャックの表情は截然と変わっている事をありありと対比させてみせているのである。
…結局、イニスが固執していた方法以外に、二人が逢瀬を続ける道はなかったのだ。発展的に関係を変えていこうとしないイニスに業を煮やして裏切った途端に、ジャックを襲う非業の死。…今更そんな偏見が、と思っていたが現実に1998年などという直近で、いまだにそんな事件が起きている事を思うと「骨折り山」の悲劇は過去の遺物ではないのである。

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