「ミニミニ大作戦」

~ミニとおサルと金塊と~
2003年 米 F・ゲイリー・グレイ監督

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ふと思い出して久々に観てみた。これって、そんな雰囲気の映画でもなさそうなのに雨上がりのベネツィア・ロケ・シーンから始まるのも捨てがたいし(タイトルバックも思い切りベネツィアをフィーチュアしている)、ドナルド・サザーランドは冒頭にしか出てこないのだけど非常に印象的だし、セクシー・ハゲことジェイソン・ステイサムも出ているし、ヒロインのシャーリーズ・セロンも役柄に合っていたし、おサル1号ことウォルバーグも好演で、ちょび髭を蓄えた仇役にエドワード・ノートンというのもあははは、という感じで適役だった。

だが、それより何より主役はミニ。ここで登場するのは今のミニ・クーパー。2000年までの昔のモデルのとぼけた味はなく機動力があってよく走るというイメージだ。ワタシは昔のミニが好きだったのでそこは少し残念な気もするけど仕方がない。

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いや?ミニらしい走りだね

ワタシには個人的にミニには思い出がある。ローバーよりも前、モーリス・ミニだった時代のお話。うちの父は車道楽で、あれこれ車を取り替えては楽しんでいた。ワタシが幼かったころ、イケイケなファイヤーバード・トランザムに乗っていた時期もあった。さすがにボンネット一杯の大きなファイヤーバードのステッカーは貼らなかったものの、ボンネットから飛び出たエンジンのカバー部分に小さなファイヤーバードを貼っていた。この車で父が東名を飛ばすたび、ワタシと弟はダッシュボードにかじりついて大はしゃぎだったが、母は一人狭い後部座席で「ダメよ、やめてちょうだい、怖いこわい」と異議を申し立てていた。続いてビュイック・スカイラークやBMW3.0CSAにも乗ったが、父が一番気に入っていたのがモーリス・ミニおよびモーリス・ミニ・クーパーSの2台の小型車だった。ミニはとにかくビックリするような車で、窓は横にスライドして開く形式で、指をひっかける溝が切ってあった。茶箪笥のガラス扉みたいな窓だった。シートもチャチな藤椅子みたいな感じ。ウインカーもカッチンカッチンと古時計のような音がした。父はミニは元の仕様そのまま、ミニ・クーパーSはフルチューンして乗っていた。ミニ・クーパーSのダッシュボードの計器類が目の形の枠の中に収まっていたのを今でも思い出す。とにかくしょっちゅう故障したり不具合だったりして手のかかる車だったが、出来の悪いやつほど可愛いのか、父は小さなミドリガメのような2台の車をそれはそれは愛していた。我が家は土曜日には家族で夕食を食べに出るのが習慣だったのだけど、ある時、ミニで夕食に出掛けたらいくらも走らないうちにエンコしてウンともスンとも動かなくなってしまったので、仕方なく路肩に寄せてJAFを呼び、タクシーを捕まえて食事に行った。エンコした車に乗ったのは後にも先にもあの時だけだ。普通はゲンナリするところかもしれないが、父は「まぁ、ミニだからしょうがない」と言って、終始楽しそうだった。だからワタシ達も、そうかミニだからしょうがないんだな、と思った。結局楽しい思い出となって記憶に残っている。ミニ・クーパーSの方は父が気合を入れてチューンアップしていただけによく走る車だった。クーパーSに乗って伊豆の温泉に行ったりもした。父の持っていたミニは多分2台とも60年代末のモデルだったのだと思う。(乗っていたのは70年代)この作品のオリジナルは69年に制作されたので、うちの父が愛用していたミニやミニ・クーパーSが登場したのかもしれない。そちらは未見なのだけどそのうち見てみなくっちゃ。

長く脱線してしまったが、この「ミニミニ大作戦」は初めてジェイソン・ステイサムを見た作品でもある。「なんだか気になるなぁ、かなり薄いのに」などと思っていた。この映画の彼は最もいい感じに映っていると思うのだけどいかがでしょ?なにせ役名は「ハンサム・ロブ」。モテモテ野郎という設定なのだ。「トランスポーター」の成功を受けて、彼の役割はホイール・マンだが、結局みんなミニを操って快走するので、ホイール・マンとしては単独であまり見せ場はない。またシステム系に強いライルを演じるセス・グリーンは「ラジオ・デイズ」でウディ・アレンの子供時代を演じた僕ちゃんなのである。大人になってもちっこいが、かわいい顔もそのままでなんとなく好感が持てる。「ラジオ・デイズ」の子役だというのは今回初めて気づいた。

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子役出身のセス君

シャーリズ・セロンも若くて可愛い。この人は贅肉はないが肩幅があって割にゴツい体つきをしている。下手な男よりよほどパワーがありそうなので、ぐいぐいとステアリングを操って強引に車を転がしている姿もよく似合っている。ベテランの鍵師だった父ジョン(D・サザーランド)が最初のヤマでE・ノートン演じるスティーヴの裏切りにあって死に、その一人娘である美人の彼女がおサル1号演じるチャーリーの招きで鍵師として現れても、チャーリーの仲間たちが彼女を警戒してなかなか心を開かない様子がちょっとプロっぽい。美人だからって簡単にはほだされないのだ。ふふふん。

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シチュエーションにかこつけて、やけにシャーリズにくっついているおサル1号とセクシー・ハゲ

おサル1号ウォルバーグはどこがどうという事もない感じだけど、性格がいいのかよく使われる俳優だ。あまりそんなイメージもないが結構鍛えていて、Tシャツから出ている腕がかなりぶっといのに今回気づいた。天才的な閃きと頭脳を持つプロの窃盗犯チャーリーを演じるのがおサル1号だというのも、ちょっとヒネりのある、味なキャスティングかもしれない。
だけど、俳優はまぁ脇へ置いといて主役はクルマ。ミニ・クーパーである。車で疾走するシーンの出てくる映画はなんだか心惹かれるのだが、これはもうミニ・クーパーがけなげに走り回るので、それだけでも爽快なのだ。昔いすゞ・ジェミニのCMで欧州の石畳の町をワルツに乗って一糸乱れずシンクロして走る2台のジェミニをフィーチュアしたものがあったけれど、(あれは凄かったなぁ、ドライビング技術が)これでは白、赤、紺のミニがミニ的機動力を活かして地下鉄の構内をキュルキュルと走ったり、あまつさえ線路に降りてかっ走ったりするありさまは痛快だ。

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システムおタクのライルが信号を勝手に切り替えたり、道路をその車の面積だけ爆破して輸送車をスポンと地下に落としたり、なんだか手口がルパーン三世チックなのも微笑ましくていい。

最近では荒唐無稽な盗人集団といえばジョジクル一家の「オーシャンズ13」(あぁとうとう13人にまで…)があるが、既に11人の時から人多過ぎで、メインの3人以外はほとんど居なくても困らないメンバーばかりだったのに、(雑技団の中国人だけは目立っていた)13人にも膨れ上がった今はいったいどんな事になっているのか見るのも気疎いが、これはせいぜい5?6人程度なので見ている方としても頃合な人数だ。その程度じゃないと脇のキャラなんてその他大勢に近くなってしまう。

オチャラケ盗人映画といえば、「黄金の七人」(65年)ていうのもあったっけ。ロッサナ・ポデスタがセクスィで良かったが、いかにも60年代色に溢れた映画だった。7人ともなるとそうそう端までキャラは立たない。あれはイタリアの映画だったが、この「ミニミニ大作戦」、原題は「THE ITALIAN JOB」という。イタリアは全体の4分の1ぐらいしか出てこないけど印象に残る。

見終えてみて、ふと69年のオリジナル版も観てみたくなった。マイケル・ケインのチャーリーに、ノエル・カワード(!)のブリッジャー(D・サザーランドの役)なんて、ちとそそられる。

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