「レイヤー・ケーキ」

~Tシャツマン~
2004年 英 マシュー・ボーン監督



この作品については、いまさらとやかく内容についてレビューするなんていう感じではないので、そっちの方面では何も書かない。いかにもなUK発のスタイリッシュ・クライム・サスペンスといった色合いの作品である。うっすらとグリーンのフィルターがかかった画面がしんと落ち着いていて綺麗だ。そして、この映画を観ていると漂う空気感が「トレイン・スポッティング」を思い出させる。作品全体のテイストとか、編集のテンポとか、なんだかよく似ている。そう思っていたら、どこかに同じような事が書いてあった。やはりみんなそう感じるらしい。
とにかく物凄くUK臭がぷんぷん漂ってくる。改めて、ダニエル・クレイグはイギリス人であったのだなぁと再認識した。余談だけど、「トレイン・スポッティング」も封切り前から怒涛の前評判で、待って待って観に行った覚えがある。細かったなぁ、ユアン。(ため息)「シャロウ・グレイヴ」「「トレスポ」から「ベルベット・ゴールドマイン」のあたりまで、ワタシはユアンにちょっとホの字だった。今はむかしの物語だ。
まあ、「トレイン・スポッティング」は脇へ置いておいて、今回は「レイヤー・ケーキ」。

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とにかく、この映画でのダニエルはかっちょいい。何がって、Tシャツとジーンズとレザージャケット姿が、もう、本当に激しく板についている。並の似合い方ではない。またこの映画の冒頭のシーンでラフにTシャツの上に羽織っているジャケットが、ほんとうに、ほんとうにカッコイイのだ。

何を隠そう、ワタシは基本的にはTシャツよりもスーツとネクタイの似合う男が好きである。きゅっと締めたネクタイも好きだし、少しそれを緩めた襟元なんかも、味わい深い。様子のいい男性がふと煩わしそうに襟元を緩めたりすると、その瞬間だけ惚れてしまいそうになる。ついでに言うと、前髪パラリでハイネックのセーターなんていうのも、ひそかに、かなりの好物だ。だから、ボンドさんにも当初はタキシードとか、襟を立てたコート姿とか、そのへんで入ったのであるが、そのうちにだんだんと例のグレーのTシャツ姿が網膜に焼き付くようになった。なんせもう、ハっと目をひく似合いっぷりなのだ。
「似合う」というのは、つまりはそういう事で、他の服を着ている時よりも殊更に、その服を着ると俄然輝きを増すというか、別物になるというか、印象が強力に脳内に染み入るような、鮮烈なオーラを放つのだ。ダニエルの場合は、それがスーツよりも、Tシャツにジーンズ姿であることは、もう疑いがないだろう。(これまでずっとどっちも捨てがたいので、どっちも同等に似合うと思ってきたが、やはりTシャツの似合いっぷりはスーツ姿を凌駕すると最近、結論が出た。なんだかもう、しっくり来てる度合いが別次元だ)無論のことスーツもよく似合っている。それなりに着こなしていて素敵ではあるのだけど、似合い度合いからするとTシャツ姿に軍配が上がる。上げざるを得ないという感じだ。そして、この「レイヤー・ケーキ」はワタシにとってはダニエルのTシャツ姿を鑑賞する作品なのである。

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そんなワタシを喜ばせるためでもなかろうが、とにかくこの映画でもグレーのTシャツをよくお召しになっていて、その上に無造作に羽織っているジャケットぐるみで、理屈抜きの男前っぷりである。(黒いTシャツも召されている。これもいい。けれど何と言ってもグレーがやっぱり映えている。)ダニエルは基本的にはカジュアルの方が似合うし、独自の魅力もそこから発生するもののほうが強力なように思われる。おまけにこの時は筋肉を付け過ぎていないので、ジーンズの腰や腿のあたりがまだすーっと細くてなんとも言えない。

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そんなわけでスーツ族を支持するワタシをダニエル・クレイグは無造作なTシャツ姿で制圧した。カジュアルとフォーマル。双方の面をバランスよく持った上で、どちらかを着た時に、より輝きを増すような男は味わい深い。多面体ダニエル・クレイグはこのへんの兼ね合いも抜群なのである。例によってこの作品でも、大半のシーンで眉毛は見えないが、ダニエルのステキングぶりはそんなことでは小揺るぎもしない。そして、ボンドヘアとほぼ同じスタイルのショートヘアが、その無敵の素敵ぶりを否応無しに鉄板にするのである。

<この先ネタバレありなのでご注意を>
この映画のDVDはメイキングだのインタビューだの特典が多いのも結構なシロモノなのだけど、ラストシーンについて他に2パターンあったなんて余計なものまで入っている。あのラストはワンアンドオンリー。あれ以外にはあり得ない。ダウナーをガンガン飲んで覚悟を固め、身に降りかかったヤバイ事を知恵と度胸と運で乗りきって、いい調子で生き延びて金を儲け、レイヤー・ケーキを這い登り、さあ、引退してこれからバラ色の人生だ、という時に全てが終わる。この、それまで散々命の危機を潜り抜けてきたのに、最後の最後にふと油断したスキに敵とも呼べないような雑魚にとどめを刺されるという結末は、「BANANA FISH」(白泉社・吉田秋生)のラストをちょっと髣髴させる。そういえば、「BANANA FISH」のアッシュもTシャツも似合い、礼装も似合うというブロンドの若者だったなぁ。コミックだけど。

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