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「私の愛情の対象」

~妊婦のShall we dance~
1998年 米 ニコラス・ハイトナー監督



小品だけどなんとなく好きだ、という系統に入る1本。
手っ取り早く言うと、ゲイの男性を好きになってしまう女の子のお話。凄く感性が合う、この人といるとなんだか楽しい。ホっとする、フィーリングが合う。巡り会った!と思ったが彼は女性を愛さない男性なのだ。最初から知っていたけど今更に辛い。だって私はマジだもの、という主演のジェニファー・アニストンがなかなか良い。彼女は顔つきもキュートなファニーフェイス系だし、ロマコメに向いているようでもあるが、案外シリアスな役でもイケる。この作品では双方イケるという可能性を出していた。

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相手役のゲイ男性を演じるのはポール・ラッド。この人を最初に見たのは消えたアイドル、アリシア・シルバーストーン主演の「クルーレス」だった。なんだかモサっとして冴えないわね、と女子高生アリシアに思われている血の繋がらない大学生のギリの兄の役。当初は視界にも入らないこの彼が、段々気になって最後には大好きになってしまうというお話。それに説得力を持たせていたのが、一見なんの変哲もなさそうに見えるポール・ラッドという俳優だった。平凡そうだけれど、何か不思議な魅力がある。おとなしいけれどなかなか譲らない芯の強い役などやると似合う。でも「サイダーハウス・ルール」では、あのシャーリズ・セロンを孕ませる兵士の役をやっていた。
この人を見ていて思ったのは、村上春樹の小説に登場する「僕」とは、こういう感じの人じゃないのかな、ということだ。ワタシが抱く「僕」イメージにピッタリなのだ。

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「僕」

そのポール・ラッドがゲイの小学校の先生ジョージをなかなか魅力的に演じている。清潔で育ちが良さそう。身勝手な大学教授の恋人(ティム・ディリー)に一方的に別れを切り出されて、同棲していた部屋を出るハメになり、ニーナのアパートの空き部屋をシェアすることになる。
ニーナは彼がゲイだからこそ部屋をシェアすることにしたのだが、そのゲイの彼を段々に好きになってしまうのである。彼女にはイケてない貧乏弁護士の彼氏がいるのだが、(火野正平に似て蝶)結婚はしないで距離を保っている付合いだ。そして、失恋でメゲ気味のジョージをチアアップするため二人でダンス教室に通うことを提案する。このシャル・ウィ・ダンスなシーンがなかなかスイート。曲は「巴里のアメリカ人」からジーン・ケリーの歌うナンバー。二人でベッドに寝転び、アイスクリームを食べながらこの映画を観るシーンもほのぼのしていい。ジョージと暮して心がどんどん惹かれるニーナは、弁護士の彼と自分が合わないことにもはっきりと気づいてしまう。彼氏が泊まりに来ていても、夜中にジョージに「お休み」を言いに行き、そこでふっと気持ちが安らかになる場面など、ニーナがジョージをとても大事な相手だと思う過程が自然に描かれている。そして、彼が男オンリーではなく、思春期に女性と初体験した事を聞いてから、ニーナの気持ちには拍車がかかってしまう。まるっきり女がダメってわけじゃないのね?と。そんな折も折、ニーナは弁護士カレの子供を妊娠してしまう。カレとの結婚に踏みきれず、子供を産む事もどうしたものか悩む彼女は、ジョージに一緒に子供を育てて欲しいと頼む。困惑するジョージ。家族のようにずっと一緒にいて、と言われてもそりゃジョージだって困る。
弁護士カレは当然子供には大喜び。だが、彼女は彼に知らせたくなかった。子供の父親なのに知らせたくないという時点で、もうこの関係は終わっている。また、そんな状態で子供を産もうなんてちと傲慢。子供は誰のものか。自分だけのものでもなかろうに。
ジョージは考えた挙句に子育てを手伝うことを了承し、ニーナは弁護士と別れる。大きくなるお腹を抱え、セックスレスの共同生活はうまく滑り出したかに見えたが、ジョージには新しい男性の恋人が出現する。

このジョージの新しい恋人のパトロンは演劇評論家の老人。老いた彼が面倒を見ている若造をジョージに取られてしまったのを知り、ほろ苦く笑うのが印象的だ。心得ているこの老人はジョージとニーナを交えて4人で食事したりする。老いたら寛容でないと若者は繋ぎとめられないのである。この老人がニーナに「君を取り巻く3人はゲイだ。それぞれが新しい男をみつけて去ったら君は一人だ。楽に生きろ」と言う。が、ニーナはジョージの新しい恋人ポールに激しく嫉妬する。ジョージはゲイだと最初から分っているのに「人生の伴侶は一人だけにして!」と叫ぶ。
今更そんな事を叫ぶのはルール違反だとわかっちゃいても、抑えられないのだ。「あなたをゲイだと思いたくないの」と泣きながら訴えるニーナに「僕が欲しいのはポールだ」と静かに言うジョージ。穏やかだけど、譲らないのだ。
ラスト近く、ジョージの弟の結婚式で、大きなお腹でドレスを着たニーナとジョージが習い覚えた見事なダンスを披露するシーンがハイライト。ダンスが終わって軽くハグしながら「あぁ、やっぱり私にはこの人しかいない」と思うニーナだが…。アニストン、この時の表情がいい。

自分が最も愛する人が、自分に与えられた存在とは限らない。出会ってこの人だと思っても一緒になれないこともある。軽やかなラブコメに見せかけて割合シリアスな問題を孕んだ作品なのだけど、生まれた子供を弁護士カレや、ジョージが折々ゆるやかな家族のように面倒を見つつシングルマザーのニーナを支える、という事で終わる。
どうすることも出来ない相手に恋したニーナを、ジェニファー・アニストンがせつせつと演じている。

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