語るまなざし ジェイク・ギレンホール

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My favorite Stars、久々の第4弾は昨今イチオシ、赤丸付き急上昇中のラッキー・ボーイ、ジェイク・ギレンホールでいってみたいと思う。ギレンホールは英語読みだとジレンホールと発音するようだが、本来はどこの苗字だろうか。ジェイク中毒の人をジレンホリックというらしいが、ワタシも昨今はジレンホリックの末席についた感じである。
この人の最近の仕事のツキっぷりには目を見張るものがあるけれど、それは何も運だけでもたらされたものではない。その演技力とその人柄がいい役を引き寄せるのだ。むしろ彼の本当の運の良さは、ハリウッドのど真ん中にありながら、良識を保ち、温厚で、思慮深くインテリジェントな、その両親の元で愛情いっぱいに育った事だろうと思われる。特殊な環境でまっとうに育つには、親の見識というものがかなりのレベルにないと難しいと思うのだけど、実に見事な子育てっぷりだと感嘆する。ジェイクのオヤジさんは映画監督スティーヴン・ギレンホール。(お母さんは脚本家)この二人の映画ではガブリエル・バーンが主演の「欲望」を観たが、子役で出ていたというジェイクと姉マギーについてはさっぱり記憶にない。ビリー・クリスタルの「シティ・スリッカーズ」も随分前に観たのだけど、やはり子役については印象がなくすっかり忘れていた。(これではジャック・パランスが渋かったという事以外なにも覚えていない)そこで youtubeの出番である。

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うっひゃっひゃ

ひゃ?、そのまま子供にしただけという感じだが、ハイトーンボイスでほっそりした様子がマコーレー・カルキン系である。そのまま普通に子役をやりながら育つとどうなっていたのか分らないが、彼はティーン時代はショービズ界を離れ、普通に学校生活を送った。これが子供の稼ぎにたかるような親を持ってしまうと子供の頃からショービズ界の泥にまみれ、カルキン君の二の舞にもなりかねなかったかもしれないが、どういう親の元に生まれるか、というのはつくづく大きいのである。姉のマギーと大人になってもとても仲が良いというのも、その家庭の雰囲気が想像される。果敢な役選びにも、その親の感化が見て取れる。両親が七光りといわれるほどのビッグネームじゃないことも良かったのかもしれない。とかく、子役出身は20歳になる前になんとなくヒネてしまい、身長も伸び悩み、すっきりと大人にならないという印象があるのだけど、彼は背丈もすーっと伸びて、歪められずにスクスク育ったな、という雰囲気があるのが良い。(顔だけ見ていると小柄なように思えるのだが、長身なのでホっとした。でも姉は彼に輪をかけた長身で、ちょっと伸び過ぎである。弟はハンサムマンだが、姉はどんどんファニーフェイスになってきて、女優よりも母にならって脚本家かプロデューサーを目指したほうがいいのでは?と余計な心配をしてしまう)

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いろんな番組に出て、インタビューを受けている様子をYoutubeで見ると、周囲を楽しくさせる人柄がにじんでいる。たくまざる愛嬌があり、多分、周囲に気を使うタイプなのではあろうけど、そんな気配は感じさせず、相手に無理なくホスピタリティを与えている。この天然の「感じの良さ」があの複雑でドロドロしたハリウッドにあっても、その人柄を愛されて、なにがなしスイスイと順調なキャリアをはぐくんでいく原動力なのだろうなぁという気がする。その、作っていない自然な人柄の良さ、チャーミーでナイスな感じというのは、対する者に漏れなく伝わるのだろう。ワタシはいわゆる八方美人とか、いつも意味なくニコニコしている人、というのは得体が知れない感じがして些か苦手だったりするのだけど、ジェイクに関してはそれがフェイクではないという感じが伝わってくるので、「ナイスな奴だなぁ」と観ていてついつい微笑んでしまう。しかし、彼は単純に人がいいだけのナイスな奴などではなく、物事に影があることもちゃんと知っている。その爽やかで屈託ない笑顔と、時に憂愁を、時に満たされぬ想いを湛えてじっとみつめる語るまなざしの両面を持っている事が、彼を特異な存在にしているのだ。そして、スーッと役になりきるその演技力。それにプラスしてセクシーであること。これは彼が意図的に、自分のイメージの中にさりげに盛りこんでいこうとしている部分だと思うが、俳優には演技力と同じ比重でセックスアピールがあるかないかというのが重要なポイントになる。

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彼は、その「語るまなざし」が時にセリフよりも雄弁に物を言い、時に非常にセクシーでもあるが、肉体もきちんと鍛えて脱いでも勝負できる体をちゃんと作っているのだ。その鍛えた肉体は「ジャーヘッド」で鑑賞できるが、これはジェイクの持ち味を両面にわたってよく引き出している作品だと思う。繊細な内面演技と生々しい肉体の持つセックスアピールである。観れば観るほど、だんだん好きになる映画で、ジェイクの良さを十全に活かしている作品でもある。女性プロデューサーが、この役は絶対にジェイクで行こうと思った、と語っていたが、半年無為に待機した後で、戦闘が始まり、塹壕の縁に佇んで爆音と爆風の中に真空状態で身をさらし「僕の戦争が始まった…」と放心するアンソニー・スォフォードを表現できるのは、ジェイクを置いて他にいなかったと思う。

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見せられる体

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そして言葉よりも雄弁な"まなざし"

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眼差し+ボディ 右はP・サースガード


姉マギーの彼氏(現・夫)、ピーター・サースガードと斥候狙撃兵としてコンビを組んでいるのも、「家族熱」の高いジェイクらしい。先日、これの吹替え版をスタチャンで観たが、昨今の吹替えはあまり好きではないワタシだけど、ジェイクの吹替えの声がぴったりだったので(声優さんの名前を失念)、違和感なく観られた。吹替えといえば、この前「インサイド・マン」の吹替え版をやはりスタチャンでやっていたので少し見たのだが、クライヴの声は多分ダニエルの吹替えと同じ人(小杉十郎太氏、だろうと思ったが未確認)が担当していた。クライヴの方が声がハマっている気がした。ダニエルにぴったりの声はなかなか難しいのである。  閑話休題。

憂わしげな目つきというとトニー・レオンを思い出すが、男同士のラブシーンの自然さではジェイクに断然軍配が上がる。「ブエノスアイレス」でのトニーは、ホンマモノであるレスリー・チャンのリードにお任せで、「あぁもう髭が当たって気持ち悪いなぁ。早く切り上げたいなぁ」という感じがそこはかとなく伺われた。女性専科のトニーには難行苦行の撮影だったのだろう。剥き卵のようなレスリーはああ見えて髭が濃く、頬をつけると痛かったらしいのだ。(笑)

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ブエノスアイレス

しかし、「骨折り山」ではヒースもジェイクも、その道の人ではないにも関わらずエモーショナルな表現が非常に自然で、観ていて「そんなに好きならしょうがないよね」という気持ちになる。お互いイヤイヤ頑張っている、という感じがしないのが実に見事。二人とも若いけどプロなのだ。なんだかんだ言いつつも保守的な気風の強いアメリカで、この作品に出るのは非常な勇気がいったことだろうと思う。まかり間違えば順調なキャリアもふいになりかねないし、西部や南部でヒステリックな反応など起こされて妙な奴に命を狙われないものでもなかったろうし。ニコニコして優男のようでもあるが、コホーネス(肝っ玉)を持っているのだ。何より作品が高いクォリティで出来あがって良かったが、そこまでの出来でなかった場合には犬死という可能性だってなくはなかったのだ。かなりな大博打である。しかし、結果はかくのごとし。まことにご同慶の至り。(それにしてもあのギターのBGMは本当に良かった。しんと冷たく澄んだ山の空気が耳から流れ込んでくるようだ)


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映画を撮り終わったあとの身の処し方も非常にスマートだった。妙な勘ぐりをされずに映画の出来、演技の出来をちゃんと評価されているのも、ジェイクとヒースが主演だったからである。撮影で一緒になった人とフレンドリーな関係をキープしているのもジェイクらしいありかたで、ヒースが多産系のミッシェル・ウィリアムズとの間に娘をもうけた時、その名付け親になったのはジェイクだという。誰とでも気持ちのよい関係を築くことができるのは一種の才能だと思うが、彼の人柄が、そういう空気を作り出すものでもあろう。仕事も順調で誰からも愛されるゴールデン・ボーイ。あまりに色々いい調子で進んでいるとなんだか観ていて恐くなる。神様に愛でられて早死にしたりしないでね。まだまだいろんなあなたを観たいから。 
そんな老婆心を抱くのも死ぬ役がけっこうハマっていたりするせいなのだ。「ドニー・ダーコ」といい、「骨折り山」といい…。死ぬ役ばかりやる人は長生きするらしいので(アラン・ドロンしかり。彼の役はほぼ7割、ラストで死ぬ役である)杞憂だとは思うけど。(笑)「ドニー・ダーコ」での屈折した内面を抱える高校生も、彼の演技の幅を測れる作品である。上目遣いでどんよりしている。カウンセリングに通う複雑な高校生。あの時期に特有なもわりとした憂鬱感が漂っていた。制服を着た高校生なので、なんだか大林作品の尾美としのりを想起させる。(※吾唯足知さん、観たけどちょっとレビュー書けませんわ、これ)

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昨年12月にダニエルにハマった時以来、久々に海外サイトに写真を探しに行ったり、youtubeをチェックしたりした。贔屓の俳優がいるっていうのは、やっぱり楽しい。ましてジェイクは伸び盛り。これからどんな変容や成長を見せてくれるのか、キャリアはまだ始まったばかり。とても楽しみである。


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