14歳という年齢 その2

そして14歳というともう一人、即座に脳裏に浮かんでくる少女がいる。ナディア・コマネチである。14歳当時の彼女の写真をみると、本当に「サブリナ」のヘップバーンを思わせる美少女で、ヘップバーンから愛嬌を除くとコマネチになる、という感じである。彼女は愛想がなく、かわいげもなく、ニコリともしない美少女で、その動かない表情の背後には、鉄のムチが唸る共産圏のステートアマシステムが厳然として存在していた。そして彼女はそのシステムが生んだ最大のスターであり、犠牲者でもあった。

middle_1179925668.jpg middle_1179925709.jpg
ワタシは笑わぬ彼女の面差しに何かひどくドラマティックなものを感じた。「共産圏の体操少女」というもの自体が、なんだか物語の中の人物のような設定であるし、ほんの小さな頃から金メダルを取るために、体操体操また体操で生きてきて、常に勝たねばならないという使命を課された彼女は優勝してもニコリともしない…というような胡散臭いスポコン漫画のようなシチュエーションが現実に存在し、そんな現実の中にどっぷりと首まで浸かりながらも、傍目には妖精とまで言われるほど軽やかな動きと美少女ぶりで、過酷な現実の上にふわりと浮いているようにも見えた。その体のバランスの良さ、高い身体能力、床運動での動きのセンス、競技を終えたあとのポーズの決まっていることなど、美少女であると同時に彼女は稀有なアスリートでもあった。彼女のように均整のとれた美少女でありつつ体操選手としてもピカ1であるなどという存在は、何年たとうともその後体操界に登場していない。アテネ五輪時、アディダスだかのCMで、現役の体操少女とナディアの14歳当時の段違い平行棒演技を合成して、後輩に目配せしてエールを送るナディアで締めくくるCMがあり、14歳のナディアの時を越えた姿に、ワタシは暫し瞬きもしないで見入った。エターナルな美少女・白い妖精。が、妖精は年を取らない。年を取る時は妖精であることをやめる時なのである。アメリカ亡命時のコマネチや、その後田舎町でバート・コナー夫人になって体操を教える彼女をTVの番組で見たことがあったが、14歳当時の彼女からはちょっと類推しにくい、やけに四角い顔で性格のキツさがモロに表情に出た、頑固そうな中年女になっていた。折々かなりの厚化粧でマスコミの前に現われることもあり、そんな時にはついつい「魔女?」と思ってしまう事もある。

middle_1179926278.jpg
ナディア近影(Nadia comaneci.comより)

人生の苦難がそんな苦みばしった顔を作ったのかもしれないが、やはり彼女も14歳をピークとして、その後は下りつづける一方だったのかもしれない。その波乱万丈の半生を経て、今は子供も生んで幸せに安定した生活を送っているので、本人的には今が一番幸せなのかもしれないが、コマネチといえばあの十点連発のモントリオールが人生の最上の到達点であることは疑いがない。14歳を頂点として徐々に下る人生というのも、いかがなものであろうか…。運命とはいえ、あまりに早い時期にプライムタイムが来るというのも考え物だ。

この二人の伝説的な14歳の美少年・美少女を見てくると、「14歳」というのがそれより1年早くても遅くてもならない少年期の美のピークなのだということが、なんとなく察しられるのである。そして、もう一人、私の中で永遠の14歳を代表する少年がいる。肉体を持ってはいないが、その生命の永遠度では前出の二人に勝るとも劣らない少年、「ポーの一族」のエドガー・ポーツネルである。


middle_1179926354.jpg
そして永遠に14歳 エドガー

エドガーも14歳。13歳でも15歳でもましてや16歳でもない。14歳である。どうして14歳なのか。漠然と観念的なことしか言えないのがもどかしいのだけど、「少年」として最高の時期は14歳の1年間にしかないということが、何か暗黙のうちに真理として横たわっているからなのではないかと思うのである。エドガーは永遠の少年である。永遠にその姿を止めるならば、最も少年として美しい時期にしくはない。だからエドガーは14歳なのだ。そして、ビョルンも、コマネチも人々の記憶に生きるのは14歳の時の輝かしい姿である。遥かにはるかに時を越えて、彼らは人々の胸の中でずっと14歳のまま生きつづけるのだ。
***
そういえば梅図かずおが昔「14歳」というタイトルの漫画を描いていた。チキン・ジョージというのが主役だったと思うけれど、記憶が定かでない。14歳について、梅図先生がどういう切り口で話を転がしていくのか興味があり、途中まで読んでいたのだけど連載が中止になったかして、おしまいまで行きつかずに終了してしまったような気がする。なんということもないけれど、いまふと思い出したので「14歳」ついでに書いてみた。

     コメント(4)