少女時代

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桃井かおりの歌に「少女時代」というのがある。
作詞はモモイ自身で、作曲は当時彼女のアルバムをすべて
プロデュースしていた荒木一郎(女優・荒木道子の息子)だったと思う。
そのころ、シャンプーか何かのCMにモモイが出ていて、
その背後にこの「少女時代」が流れていたのだった。
その歌詞と、さりげなくダルそうなヴォーカルが耳に残り、
ワタシはモモイのアルバムを2枚ほど買った。
親からお小遣いを貰っていた小娘の頃のお話だ。
曲はアコースティックギターだけのシンプルな伴奏で、歌詞は

♪誰も知らない頃だったから
 何にも分かっちゃいなかったから
 あたしは ふぅんふぅん 
 いい夢ばっかり見てたのよ

というもので、

ダハハレェモ? シラナイ コロダッタカラァ
ナンニモ ゥワカァッチャ?? イカナハッタカラァ
アタシハ フフフフ?ゥ
フ イヒユメバァッカシィ ミテタハハァ?ノ?ヨ?

という具合にモモイが例のダルそうな声で
ブルース調のヴォーカルを聴かせていた。
憂歌団ともコラボしていたような気がする。

そういえば、少女時代ってそんな感じの時期である。
ワタシもそんな感じだった。
ボヤ?っといい夢ばっかり見ていたような少女時代だった。

ワタシは長男の家に生まれた最初の子で、その頃は父の弟妹たち、
つまりワタシの叔父、叔母たちがまだ独身で家に何人も居た時期だった。

大人ばかりの中に赤ん坊が降って湧いたので、ワタシはいわばペット状態。
とにかくやたらに可愛がられた。
ぼ?っとしていると周囲の大人が何でもやってくれた。
叔父も叔母もその後順次、結婚して独立していったのだけど、自分の子供が出来るまで、あるいは出来てからもワタシと弟のことは特別に可愛がってくれた。それはありがたいことではあるのだけど、シャカシャカしているようで、妙にノンビリして、どこか抜けているのは、こういう環境と無縁ではない気がする。

トロいというのではなく、運動神経はけっこうよくて、
徒競走で一等、二等はよく取っていたし、
近所の子供と、しょっちゅう屋根や塀の上に上って走り回っていた。
ウンテイの上を走ったり、高い鉄棒から飛行機飛びでギュ??ンと
半回転して飛び降りたり、とにかくオテンバには違いなかった。

そういうオテンバでシャカシャカしたところと、妙にオットリして人が何かしてくれるまで待っている面というのは同居しなさそうだけど、ワタシには双方の面があるらしい。

幼稚園から小学校を卒業するまでピアノを習いに行っていたのだけど、
このピアノの先生の家は近所の子供の集まる公園の裏手にあって、練習を怠けたいワタシはよく教則本の楽譜の入ったカバンを放り出して砂場で遊んでいた。ピアノの先生は心得たもので、時間になってもワタシが来ないと庭石の上に乗って塀ごしに公園の中を見渡し、砂場のワタシをすぐに発見して
「kikiちゃん、お稽古の時間よ、いらっしゃい!」と呼ばわるのだった。
たぶん3年生ごろの冬、ワタシが買ってもらったばかりのオーバーを来て、この先生の家へピアノの稽古に向かっていると、向こうから少し年嵩の少女が勢いよく歩いて来た。ピアノの先生宅は通りから公園の裏手へ一本入った細い道に玄関が面していた。
その少女とワタシはこの細い道を両極から歩いてきたのだが、すれ違うときに
彼女は、ワタシを見て「ふん!」と言い、やにわに手を伸ばすとワタシのオーバーの胸についていた造花の飾りをブチっとむしって、道端に投げ捨てた。
そしてまた「ふん!」と言うと振り返らずにさっさと歩き去ってしまった。
ワタシはあまりのことに呆然とし、折角買ってもらったばかりのオーバーから
飾りを引きちぎられたショックもあって、ピアノの稽古など放り出し、
ウエウエと泣きつつUターンして家に戻った。
少女は、その日初めて出くわした相手でしかも2歳ぐらい年長だった。
ワタシは見も知らぬ他人から、いきなり予期せぬ悪意をぶつけられて心底たまげたのだった。
あれはなんだったのか、今だによくわからない。
何か面白くないことでもあったのか、日頃からどこかでワタシを見ていて
面白くないと思っていたのか
とっさに何かムカついて、そういう行動をとりたくなったのか
そのどれでもないのか、さっぱり理解不能である。

ただ、男勝りのオテンバだったくせに、そういうときには妙にオットリして、
見知らぬ少女の悪意にたまげ果て、
ウエウエと泣きながら家に帰ってしまうワタシであったのだった。

小学校の高学年から中学生のころは、ボンヤリと自由業の自分を空想していた。会社勤めなど絶対にしない。1枚の履歴書も書かないもん、と思っていた。
学校では周囲のミーハーな少女たちに少しウンザリしつつ、
自分は勝手にいい夢ばっかり、見てたのだった。


♪あっという間に 過ぎるなんて
 いいことばかりじゃないよ なんて
 誰も はぁは はぁは 
 教えてなんかなんか、くれなかったもん
 いやぁね、アタシだって
 思ったりなんかなんか しなかったもん


桃井かおりの「少女時代」をたまに聴くと、そんな風にボンヤリと空想しながら
日を送っていた、少女時代の自分を思い出す。
今だになんとなく、ボンヤリと空想しながら日を送っているようなワタシだけれど…。

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