「恋は邪魔者」

~かわいいお遊び~
2003年 米 ペイトン・リード監督



格別出来がいいわけでもなんでもないのだけど、なんだか好きな映画というものがある。ワタシにとってこの映画などはその最たるものかもしれない。マンガチックなコメディで、映画としては50~60年代の脳天気なラブコメのパロディなのである。全編これパロディ。昔のコメディをいまどきの俳優で作りなおしたらどうなるか?というお遊びの映画である。パロディとしては本当に良く出来ている。だからパロディとしての出来映えをうふふふふん、と面白がる観客にしか受けない。そうでない人には、ただの馬鹿馬鹿しいコメディに過ぎない。だから興行成績も悪かった。さもありなんと思う。これが今の世の中で大ヒットしても奇妙なものだろうと思う。ただ、そこそこお金をかけてこういう徹頭徹尾趣味的な映画を作るというマインドには拍手を贈りたい。たまにはこんな無駄があってもいい。無駄だけれど楽しいお遊び、それをこそ贅沢と言うのではあるまいか。





ドリス・ディとロック・ハドソンが60年代に連発していたラブコメのパロディだというのが製作者側の意図らしい。いずれにせよハッピーで可愛らしく、カラフルなのである。そして主演コンビのユアン・マクレガーとレネ・ゼルウィガーのかわいいこと、かわいいこと。レネもユアンもすっきりと痩せていて非常にキュート。殊にレネはブリジョンを思えば嘘みたいにほっそりとしてカラフルな衣装をとっかえひっかえで出てくる。脚がとっても綺麗である。この人はほっそりしてる方が常体で、太ってブリジョン体型になるのはかなり大変らしいのだけど、顔の丸さに少しブリジョンの面影が残っている。



筋立てなどはあれども無きがごとし。まぁ、筋なんかどうでもいいのである。60年代風のファッションをとっかえひっかえで出てくるコケティッシュでスリムなレネと、ダークヘアを七三分けにしたユアンのプレイボーイっぷりと、脳天気な空気をうふふんと楽しむ映画である。この映画のユアンがちょっと007が入っちゃってることについては前に「キャスティング考」という記事でもちらっと触れたが、とにかく登場はヘリから縄ばしごにつかまりサングラスに白タキ。ナイトクラブの美女たちに見送られて調子ぶっこきまくりで意気揚揚と現われる。やってるやってる、ユアンたら、という感じである。

 調子こきまくりユアン

二人がNYのナイトクラブをはしごして遊びまくるシーンは、店のネオンサインが左右に流れていく中を二人が笑ったり踊ったりしているというもので、昔のミュージカルなどにはよく見られた手法である。同じくタイトルバックがこじゃれたアニメーションというのも60年代のコメディでお馴染みの手法。オードリー映画のタイトルバックのアニメーションにもなかなかステキなものがあるが、これもそんなテイストで小粋なアニメーションがウキウキ気分を盛り上げる。

また、主役二人のそれぞれのマンハッタンのタウンハウスがそれぞれゴージャスでこれまたうふふんとほくそ笑んでしまうセット美術である。摩天楼の眺望がテラスから一望。夜は殊更ステキ度UPである。とにかく無茶苦茶に広く、大きなスタジオ一杯にセットを組んだのねん、という感じ。私が殊に好きなのは「Fly me to the Moon」をバックにデートの予感に浮き立ちながらレネとユアンがそれぞれに部屋で準備をするシーン。同じ歌でもレネのバックはボサノヴァでアストラッド・ジルベルトの歌声、ユアンのバックはスインギーなフランク・シナトラのジャズ調ヴォーカルが流れる。このへんの演出もニヤリとしてしまうところ。



また、よく画面が二分割になり、電話で話す二人の様子が対比されて現われるのだが、デートの約束をしながら画面左右の二人の動きが何かを連想させるような動きになるのも、いかにも60年代風セックスコメディのパロディという感じでクスっと来る。ユアンとレネのコンビネーションも良く、とにかくコジャレてて、小味で、カワイイ映画である。ただ、良く出来た60年代ロマコメのパロディではあるのだが、それ以上でもそれ以下でもない。それがこの映画の良さでもあり、また限界でもある。



タイトルバックで歌うのは原題でもある「DOWN WITH LOVE」。レネはコケティッシュなスーハー調のボーカルで、途中からスイッチするユアンは小気味いいスイング調である。ユアンて、本当にほんとうに歌が上手い。ワタシは正攻法に歌いまくっていた「ムーランルージュ」にはなにやら気恥ずかしいような気分になって引いてしまったのだけど、ジャズを軽く小粋に歌っているこの映画のユアンの歌の上手さには毎度ウットリと聴き惚れてしまう。エンドロールでは、スインギーな歌とともに、キレのいい踊りも見せてくれるのだけど、体の動きにセンスがある。歌もうまけりゃ踊りも達者。ユアンて、ほんとうになんでもできる人だなぁと改めて感心する。「トレスポ」だの「アイランド」だの言っているけれど、なんだかんだ言ってユアンの出演作の中では、ワタシは他愛のないこの映画が一番好きなのかもしれない。

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