ブロンドあれこれ



ワタシはヒッチ先生ほどじゃないけれど、ブロンド好きである。別に実生活において、白人でブロンドのハンサムマンを追い廻す、というような事はないのだが(実生活ではヤマトオノコが好きですの)、もっぱら映画でブロンドを眺めて、ああだ、こうだと品定めをするのが好きである。だって、ブロンドって観ていて目に楽しいじゃありませんの。その艶だの、無造作ヘアでもサマになってしまうさりげなさだの…。



ワタシのブロンド好きの起源は、幼少のみぎりに買ってもらったディズニー絵本の「眠れる森の美女」の挿絵に、糸車の鍼に指を刺されて眠りについたオーロラ姫のアップが見開きで展開するページを見た時に遡る。幼稚園の年少さんだか年長さんだったか忘れたが、幼いワタシはオーロラさんの閉じた長い睫と艶々と波打って輝く黄金(こがね)色の髪に魅せられた。それはまさに「古い絵画の金色」ともいうべき金髪で、丹念に面相筆で描き込まれた髪の一筋一筋と、光の加減で明るい部分と暗い部分が際立っている金髪の陰影、というものに何か妙に絵画的な興味をそそられたのかもしれない。って、う?む…どうだろ。が、ともかくその頃、幼稚園でお絵描きというと、ワタシはオーロラさんばかりを描いていたような記憶がある。

そんなわけなので、少し大きくなって映画を観るようになると、女優のブロンドの色艶というものが妙に気になるようになった。そうこうするうち、有名なブロンドは大抵、偽物であるという事に気付いて唖然としたりした。そもそも、日本人が思っている程には、欧米だってブロンド率は高くないという事があるのかもしれない。ヨーロッパでもブロンドが多いのは、やはり北の寒い方の国々(ドイツとか北欧三国とか)になるのだろう。

有名どころを挙げていくと、モンローちゃんは実は赤褐色だし、バルドーもブロンドではないし、ドヌーヴに至っては限りなく黒に近いダークヘアが生来の色なのだ。グレース・ケリーだって実はブルネット。徐々に話を最近の人にもってくると、マドンナも偽ブロンド、メグ・ライアンも偽ブロンド、多分、昨今のロマコメ女王、リース・ウィザースプーンも実際はあんなに明るいブロンドじゃないんじゃなかろうかと推察される。(わかんないけど。本物だったらシツレイつかまつり) 本物のブロンドなんて数える程もいないのではなかろうか。だが、まぁ、本来のものであろうと、偽物であろうとその人に似合っていればそれでいいわけで、本物かどうかなんてことにさして意味はない。が、生来のものでなかった場合にブロンドでいるための手間は大変だろうなぁと思うわけである。


モンローちゃん 右は駆け出しモデルの頃


グレース・ケリー 右はまだ素人の頃


カトリーヌ・ドヌーヴ 右はデビュー作で。見事に真っ黒

ブロンドで有名な女優に偽ブロンドが多い、という事は、人間必ずしも自分にもっとも似合う髪の色が生来の色とは限らない、という事になるかもしれない。ついでに言うと、欧米人なら皆ブロンドが似合うかというとそんな事もなく、オードリー・ヘップバーンなどは、全くブロンドが似合わない顔であるし、その最たるものはあのプレスリーだ。彼はあまたの偽ブロンドとは逆で、生来の髪はブロンドだったのだが、ロッカーとしてはシマらない上に、あまりに似合わないので、逆にブルネットに染めていたらしいのである。実に、持って生まれた色が一番似あうというわけではないのだ。

ドヌーヴが黒い髪のままだったらどういう感じだっただろうかというのは、双子のようにそっくりだった姉フランソワーズ・ドルレアックと共演した「ロショフォールの恋人たち」を見ればよく分かる。同じ顔だちで体型もよく似ている二人の姉妹がポップに歌い踊るおフランス製ミュージカルだが、黒髪の姉はブロンドの妹よりやはり地味な印象にはなる。が、フランソワーズ・ドルレアックは黒褐色の髪がよく似合っていて、派手な妹と比べて、その魅惑にさほど遜色はない。この姉が長生きしていたら、いいライバルになったのかもしれないが…。ともあれ、ドヌーヴは長い年月、実は真っ黒に近い髪を、しかもあんなに量が多いのに、ずっとブリーチしてブロンドにし続けてきたんだから大変な根気である。「維持・継続」にかけるエネルギーは並々ならない。体型だって長らくずっとほっそり型をキープしてきた。そのドヌーヴが更年期を過ぎて遂に太りだしたら、大貫禄のマダムンムンになった自分をそのまま堂々とさらけだすという潔いまでの開き直りに出た。ドッカリはしたが、ドヌーヴだけに醜くはなっていないのもさすがである。


ドヌーヴと姉フランソワーズ・ドルレアック(右)


俳優に目を向けると、ここ15年の間では、ブラピ先生がブロンドで売ったスターの筆頭かもしれないが、彼も実際はブロンドではなく明るい栗色が本来の色のようだ。しかし、ワタシには「リバーランズ・スルー・イット」及び「セブンイヤーズ・イン・チベット」はたまた「ジョー・ブラックによろしく」などのイメージが強いため、ブラピはブロンドのイメージが数年前までかなり強かった。最近は違うけれど。


ブラピ 「ジョー・ブラック?」は彼のブロンドがいやにキレイに見えた

生粋のブロンドの俳優といえば、我らがアイドル、ダニエル・クレイグもそうだが、彼のブロンドは砂色っぽいブロンドでキンキラキンではない。その色合いなどもスティーヴ・マックィーンと似ている。金髪といえば誰もがイメージするような王道のブロンドで本物というと、思い浮かんでくるのはロバート・レッドフォードにジェームズ・ウィルビーあたりだろうか。思いだすとついぷふふと笑ってしまうウィルビーであるが、その髪はまばゆいようなこがね色の髪である。また、「ベニスに死す」当時のビョルン・アンドレセンの髪は、ひと色ではなく日焼けや何かで明るい部分や暗い部分のある暗めの金髪で、ウェーブのかかったその金髪が細面の白い顔の周囲を彩っているのはやはり、何度観ても美しい取り合わせである。タッジオがブロンドでなかったら随分地味になったことだろう。


ジェームズ・ウィルビーとビョルン・アンドレセン

昔はプラチナ・ブロンドというのにも興味があった(今は無い)。白髪のようで白髪じゃないその微妙な金髪ぶりがアジアからは最も遠いところにある髪の色だなという感じだった。かなり白髪に近いので微妙なのだが、若い肌に白金の髪というのも不思議な色気があるようだ。この衝撃力でスターになったのがジーン・ハーロウ。彼女のプラチナ・ブロンドは本物だったらしい。肌も抜けるように白かったようで、彼女はいわゆるアルビーノだったのか、色素が薄い人だったようだ。


ジーン・ハーロウ

金色の絹糸のような髪にも心惹かれるが、アッシュ・ブロンドなど、ひと色でなく灰色がかって微妙に暗い色や薄い色も混ざっているような、ニュアンスのあるブロンドはクールで知的なムードがある。「マンハッタン」や「クレイマー、クレイマー」の頃のメリル・ストリープがアッシュ・ブロンドのロングヘアだった。この頃のメリルには強くヨーロッパの匂いがしていたので、それがハリウッドで殊更に受けたんじゃなかろうかと思う。

それと文字ヅラで見るだけで、一体どういう色合いのブロンドなのか、イマイチよく分からないのがストロベリー・ブロンドというもの。赤みが勝ったブロンドだろうか。どんな色だろう?誰の髪の色がストロベリー・ブロンドなのかしらん。昔からどうも、このブロンドの色だけが感覚的に掴めないまま今日に至っている。

ともあれ、ブロンドは目に楽しいだけでなく、ブロンドであるというだけで特に何もしなくても潜在的に装飾性を兼ね備え、無造作にバサバサと乱れていればいるほどブロンド本来の存在感とその色だけが持っている特別な視覚的魅惑を醸し出す事ができるという点で、やはり他の色の髪にぬきんでた特徴を持つと思う。
それにしても、人の頭から金色の毛が生える、ついでに蒼い目や碧の目がある(その鮮やかな発色の具合はどうだろう)というのはなんとマカ不可思議な事だろうかしらん。(なんだか明治初期の人間みたいな事を言っているけれど)まぁ、欧米人から見ればアジア人の黒い目や黒い髪は、なんであれ一色しかないの?って感じなんだろうけれど(笑)

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