日光ケッコウ



夏の終わりごろから今年の秋の紅葉見物はどこに行こうかねぇ、とあれこれ考えていたのだけど、どうせ行くなら温泉もセットじゃないとね、という事で、温泉といえば伊豆だの箱根だのはなんだかんだでよく行くけれど、北関東の方へはあまり行っていない。そうだ、久々に日光&鬼怒川だ、と膝を叩いて行き先が決まったところで、紅葉シーズンの日光は、いろは坂や帰りの高速など激混みで運転も疲れるだろうので、自分たちは何もせず、時折うたた寝しつつも乗っていれば勝手に運んでくれるバスが楽でよいでしょう、という事でバスツアーに決定。あまりバスツアーに行った事が無かったせいもあり、何かと新鮮な小旅行になりましたざんす。

日光にこのまえ行ったのはざっと6年前。その前になると20代の頃になるから更に昔の事になる。というわけで北関東方面というのは数える程しか行っていないワタシ。一般に東京の北側や埼玉に住んでいる人は日光や那須方面によく行くし、東京の南側に住んでいる人は伊豆・箱根方面によく行く。西側の人は山梨や長野へ行き易い。それぞれそっち方面に伸びている高速に乗り易いからでしょね。

そんなこんなで久々の日光へはバスツアー。新宿に早朝6:45集合ときた。うひゃ?!5時起き?いやしかし、シーズン真っ盛りの紅葉を愛でるためにはウダウダ言ってはいられない。そういうツアーでもなければ絶対に早起きなどできず、大渋滞にハマリ込んで泣きを見るのがオチだからバスツアーにしたのだもの。頑張って起きました。でも殆ど人の居ない副都心の高層ビル街に朝日のあたる光景はなかなか新鮮で、そういえばこうして三井ビルだの安田ビルだのを眺めるのも随分久しぶりだなぁ…と思ったりして。

時間が来て、バスは出発。池袋、埼玉新都心と廻って参加者を拾い、東北自動車道で一路、日光へ。
日光といえば、まずは東照宮を筆頭とする世界遺産の社寺でございます。小学5年の時にクラス旅行で初めて来て以来、日光に来ると東照宮にも寄っていたけれど、紅葉のシーズンは初。バスツアーは混雑回避にとても神経を配っているので、午後一の時間帯に東照宮を含む世界遺産見物と自由昼食を設定してあった。大混雑というのでもなく、ほどよい参拝者の中に混ざって久々の東照宮(*一応書くと、徳川家康の霊廟として元和3年(1617年)に創建。現在の主要な社殿は、寛永13年(1636年)、三代将軍徳川家光により造営が行われたもの)参拝。


巨木に囲まれる社殿


杉の巨木が参道を守る

東照宮界隈は紅葉見ごろとあって、いやいや、素晴らしかったです。そして紅葉よりも今回改めて感じたのは東照宮の何とも言えない空気感の良さ。杉の巨木が参道の両脇を守るその風情。まっすぐに伸びた杉の古木ときらびやかな社殿の取り合わせがえもいわれない。花粉は困るけど杉って寺社の風格を高める木だな、と改めて思いましたね。そして、東照宮や、その傍の輪王寺などの横をまっすぐに通っている道の広く長い事は、何かを思い出させた。そう、奈良の寺の佇まい。その整然として広い感じが奈良の寺社と日光山はとても良く似ていた。そんなこんなの日光東照宮とその界隈の佇まいの良さに、今回初めて気がついた。



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東照宮 鳥居から陽明門を臨む


悠々の奈良の寺社とよく似た日光山内の道

快晴ではないもののお天気も良かったので、もみじの紅も陽に映えて一段と目に鮮やかだった。そして東照宮といえばきらびやかな社殿と彫刻群。陽明門の両脇に伸びる回廊の彫刻も、今回じっくりと見物してみたが、その色彩とありありとした立体感は見ごたえ十分。前に来た時に奥社などには行っているので、今回は奥までは行かずに水屋や神厩(三猿の彫刻がある)などをじっくりと眺めた。実はゴテ趣味な陽明門にはあまり興味がないワタシ。今回もごくアッサリと確認する程度に見物。陽明門より周辺の他の建造物の方が魅力があるように感じる。いずれにしても国宝、重文級の彫刻や建造物ばかりだから、いつ見ても見応えがあるのは間違いない。
名物の眠り猫を眺めるために「猫さま行列」が出来ていたのには驚いた。


すっきりとした美しさで人目を引く水屋 陽明門よりも美しいような気がする


一応、東照宮といえばお約束なので陽明門


同じく、お約束の神厩の「三猿」 これ以外にもユーモラスな猿の彫刻が7つある


回廊の見事な彫刻 やはり見応えアリ


猫さま拝観行列 
この奥に猫さま が居眠りをしておられるのだった


鮮やかな朱に木漏れ日が斑を落す

まぁ、写真を撮り出すとキリも果てしもない場所で、載せだすとキリも果てしもないのでこのへんで。
こういう寺社仏閣は、その敷地内に足を踏み入れた途端に感じる空気感がとても大事なような気がする。福井の永平寺に行った時も、その参道のえもいわれないよい雰囲気をいいなぁと思ったのだが、今回、久々に日光山を散策してみて、キラキラの建築や彫刻よりも、ワタシは東照宮や隣接する輪王寺(ここも悠々として風情が奈良の寺と似ている)の風情の良さがとても印象に残った。その良い風情は悠々とした空間と、杉の巨木により造り出されているのだと思うのだけど、日光は旧街道の杉並木でも有名なところだけに、すくすくと伸びた杉の古木が両脇に聳え並ぶそのありようが、何かとても快いものを参拝者に感じさせるのだと思う。花粉症なので春にここを歩きたくないけれど、杉並木っていいもんです。



一渡り見物し、長い参道をそぞろ歩いて外に出る。すぐ脇を流れる川の上に「神橋(しんきょう)」が架かっている。この橋は、昔は将軍・勅使・行者以外の往来を禁止されていた橋だったとか。今はお金を払えば誰でも渡る事ができるらしい、って有料なの?しっかりしてるわね。…でもまぁ、誰にでもドカドカ渡られたら橋も傷むし、有料にしておけば幾らか修繕費のタシにもなるというわけで、ベストな運営法かもしれない。


なにやら後光がさしているかのような神橋 さすが神橋

日光山内を出て来て、川沿いをぶらぶらとこの神橋に向かって歩くと、対岸の高台に、木の間隠れに見える雅びな建物。


「おぉ、あれに見ゆるは金谷ホテルじゃないか」

というわけで、集合時間までの残りの数十分間、創業130周年を迎える金谷ホテルで暫しお茶などつかまつろう、ということで、神橋を右手に見ながら川を渡り、金谷ホテルへと続く急な坂を上る。坂の入り口に金谷ホテルベーカリーの趣ある直売店があるのだが、パンを今買っちゃってもねぇ。まだあと1日あるし、固くなってもつまらないので店には入らず、うんうんと坂を上る。




金谷ホテルベーカリー

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このアプローチが急な坂なんざます         名前入りの灯篭がお迎えする坂道


ホテル正面

金谷ホテルは富士屋ホテルを全体にこぢんまりとさせて、あの派手派手なケレン味を取り去った感じのホテルである。日光に来て、東照宮に参拝するとついでに必ず金谷ホテルに寄って御茶を飲むことになる。なぜなら、日光山から出てくるとすぐにその姿が丘の上に見えるから。クラシックホテルが大好きなワタシだが、宿泊した事があるのは箱根宮の下の富士屋ホテルのみなので、機会があればクラシックホテル探訪などもしたいものだと思う次第。


富士屋ホテルと似た造りの別館


ホテルの庭に鮮やかな紅葉 優雅な空間

金谷ホテル1Fの内部を少しだけ撮影。天井の低さなど、やはりどことなく富士屋ホテルと似た佇まい。インディラ・ガンジー女史やらルーズベルト大統領夫人やら、VIPのご宿泊記念の写真もあり。ラシャ張りの古い撞球台がさりげなく置かれてあった。ラウンジから見渡せる中庭に鮮やかに色づいた紅葉。
金谷ホテルにも錦秋が訪れていた。




時代を経たラウンジで時のはざまに憩う

 
ドアマンが迎えてくれる玄関とエントランスの上部

 
「撞球台」と呼びたくなるこの佇まい


インディラ・ガンジー女史もご宿泊

ここはコーヒー・ラウンジがもうちょっと素敵だといいのだけど、わりにぞんざいな造りなのが残念。素敵なコーヒー・ラウンジがあることもクラシック・ホテルには欠かせない条件だと思うので、出来ればもうちょっとどうにかなさってみてほしい。昼はダイニングルームでお茶が飲めるようにするとか…。金谷ホテルは中善寺湖にも素敵な姉妹館のリゾートホテルを建てているので、今度は是非そちらにも宿泊で行ってみたい、などとも思った。

というわけで、かなりの時間を世界遺産・NIKKO見物に割いた初日。しめは龍王峡の散策だったが、龍王峡は紅葉の盛りを過ぎていた上に、秋のつるべ落しの日暮れの早さで、16時を廻って早くも夕闇が迫り初め、なんとなく水音を聞いた、ぐらいなざっとした見物でバスに戻った。(申し訳なし)

ふと見上げると山の上の雲の間に煌々と月が輝き始めていた。東山魁夷の絵みたいな月じゃなくてかしらん、とシャッターを押してみる。一応、月は撮れた。


月に群雲? ともあれ、秋ですねぇ

夕食はきのこの炊き込みご飯。目の前の小釜で炊き上がったほくほくのご飯を食す。味噌仕立ての小鍋にお刺身、天ぷら、鮎の塩焼きなど、いかにもなメニューなれどもとにかく満腹。日光名物のゆば料理は無かったような…あ、宿は鬼怒川だから?
一休みしたらお風呂に入るつもりだったけれど、馴れない早起き(グータラなので5時起きはキツい)の上に結構歩きまわったのでどっと疲れて、一休みのつもりがそのまま就寝。翌朝またも早起きして朝風呂に入ることにして、怒涛の睡魔に身を任せた。あぁ、早くもふくらはぎが筋肉痛であるぞよ…。明日は滝の見物が多いというのに、滝つぼまで行かれるかしらん、と思う間もなくブラックアウト。



さて、秋の日光を楽しむ旅、二日目のハイライトは紅葉と滝の見物。


いろは坂の紅葉はてっぺんあたりは終わっていたものの、中腹から下は今が見頃で、
い、ろ、は と登り専用の第2いろは坂を登りつつ、山と木々の紅葉を観賞。
いろは坂を経て華厳の滝を見物したあと、紅葉名所の道路・日本ロマンチック街道
(こういうネーミングはちと恥ずかしい)こと国道120号線を通ったが、
ワタシの感じでは、いろは坂よりも日本ロマンチック街道の紅葉の方が綺麗で印象に残った。
ただ、今回はバスツアーで自由が効かぬ為、途中見晴らしのいいところで停まって写真を撮る事が
できず、紅葉はバスの車窓を流れ去って行き、その残像が網膜に残るのみとなった。


山の紅葉

日光は滝が多い。中でも華厳の滝は一等有名な上に、あまり北関東に行っていないワタシでも
これまでに何度か見物に行っている。

 

このたびの見物は午前中の時間帯で、早朝は雲の多かった天気も次第に陽がさしてきて
陽光の中でどうどうと垂直に落ちる滝を眺めた。

その他、日光の滝は、霧降の滝、龍頭の滝など代表的なものでも6つはある。
今回は華厳の滝の他に日本ロマンチック街道を経て吹割の滝を見物。
これは初めての見物だったので、とても新鮮な気持ちで楽しめた。
川底の岩が割れて、その落差に水が流れ落ちて短い滝になっているというもので、
「日本のナイアガラ」などと、またも気恥ずかしいキャッチフレーズがつけられていて、
なんとなく他人事ながら赤面、という感じだったけれど、ナイアガラを100分の1にしたぐらいな
「箱庭的なんちゃってナイアガラ」という雰囲気は、ちょこっと漂っていたかもしれない。
キャッチはともかく、ここは川の上に吊り橋が架かっていたり、川の形状が変化に富んでいたりと
なかなか素敵な景観だった。





今回の日光の旅では、観光地の土産物屋につきものの定番的ご当地土産の中に
個人的にやたらに受けてしまったものがあった。

普段はありがちなご当地ものの土産には興味がないワタシなのだけど、
一目見たとたんに受けてしまったのが「猿きゅーぴー」のストラップ。

日光は三猿に猿軍団の土地なので「猿きゅーぴー」となったんでしょうが、
この猿きゅーぴー、ミョ?にかわいい。その横に姉妹品のご当地キューピーとしてもう1つ
「華厳の滝きゅーぴー」というのもあり、これもミョ?にかわいかった。
しゃれで友人に買っていこうかどうしようかと迷った末に写真を撮るだけにしたのだけど、
うっかりして近距離モードにするのを忘れ、写真はボケボケになってしまった。
その他、「サルサルサ13」(ゴルゴ13の猿版)のストラップなどもあり、不覚にも受けてしまった。
またご当地スナックとして「宇都宮餃子チップス」「下仁田ねぎチップス」などもあり、
ポテチは買うまいと思っていたのだのに、誘惑に負けてつい「宇都宮餃子チップス」を買ってしまった。
ニンニク風味の少しすっぱい味(餃子のタレの味ですかね)のするチップスだった。


どうしてそんなにウケたのか自分でも分からないけどウケた「猿きゅーぴー」その他

締めはりんご園でのりんご狩り。
こういうのは、自前でドライブに行ったら、ワタシや友人の場合、まず参加しないだろうアトラクション。
バスツアーに参加した新鮮さは、日頃は行かないだろうところにその機会に参加してみる、
というところにもあるわけですね。実のところ、最後の行程のりんご園はパスして
バスの中で休んでいようと思ったぐらいに足が疲れてパンパンだったのだけれど、
とにもかくにも折角だから一応行って、1個だけ食べて来ようか、とバスを降りた。



りんご畑に一歩はいると、そこにはたわわに実った真っ赤な果実が
丈の低い樹の枝のあちこちにぶら下がって時折の涼しい風に揺れていた。
途端に気分一新。無精してバスで一休みしないで良かった。
確か品種は「陽光」だったかしらん。畑のルビーと呼ばれている
だけの事はある、深い紅の皮が柔らかい緑の葉に映えて鮮やかだった。
1つ林檎をもぐと、皮むき器であっという間に剥いて4つに割ってくれる。
1つ食べたらもうお腹いっぱいという感じだったが、もぎたての果実。
確かに美味しかった。林檎よりも梨を愛好するワタシだけれど、
久々に林檎を美味しいと思って食べた気がした。

滝を見物するための上り下りだの、世界遺産の散策だので、思ったよりも
脚(特にふくらはぎ)の疲労が激しかった日光の旅だったけれど、強行に組まれた
スケジュールに沿って動くという旅も、たま?の事なら面白いかも、と思ったりした
紅葉と滝と世界遺産巡りの小旅行、でした。