「シャロウ・グレイブ」 (SHALLOW GRAVE)

~浅墓な企て~
1995年 英 ダニー・ボイル監督



95年?96年頃のユアン・マクレガーは「トレイン・スポッティング」で人気急上昇だった。
あの頃は、友達に会うと「トレスポ、観た?」というのが挨拶がわりになっていた。
そして、このあたりから、ハリウッドに行ってスター・ウォーズに出る前の数年間が、
ワタシがユアンを最も好きだった時期だった。

「シャロウ・グレイブ」は「トレインスポッティング」の前にダニー・ボイルとユアンが組んだ作品。殊にこの「シャロウ・グレイブ」のユアンはルックスに華があり、キャラには毒があっていい。最近のユアンはルックスはトッチャンボウヤみたいな雰囲気になり、キャラも、素の「いい人」な空気が全てを覆ってしまうのか、善人の役が多くなり
何かいまひとつ、物足りない気がして仕方が無いのはワタシだけだろうか。

観たいなと思っていると放映されたりするのが映画チャンネルのありがたいところ。
久々に「シャロウ・グレイブ」を観て、つくづくとこの頃のユアンはキラキラしていたな、と思った。生意気なワルガキ、という感じで活き活きしていた。


人をおちょくって楽しむ3人組だったが…

梗概:グラスゴーの瀟洒なフラットで共同生活を送る記者のアレックス、会計士のデヴィッド、医者のジュリエット。三人は募集していた4人目のルームメイトを自称作家のヒューゴに決めるが、入居してほどなく彼は自室で死んでしまう。そこには麻薬とスーツケースいっぱいに詰まった大金があった。彼らはヒューゴの死体を森に埋めて大金を手に入れるが、死体の始末を担当したデヴィッドは日増しに病的になり、スーツケースと一緒に屋根裏に立て籠もるようになる。一方、ヒューゴの金を追いかけていた組織の殺し屋二人組はついに三人のフラットにたどり着いた……。(all cinema onlineより)

グラスゴーが舞台だったなんて、再見するまで気づかなかった。冒頭、フラットをシェアする3人組が新たな同居人を募って面接するシーンがある。タカビーな調子でいい気に同居の応募に来た人間をあしらうのだが、こんなに条件がややこしいなら、3人の中で一人浮いている感じの会計士デヴィットは、そもそも何故、同居人になれたのだろうと思ってしまう。ユアンは新聞記者だが、クソ生意気な大学生みたいに見える。そういえば、このころのユアンは肩までのロングヘアだった。「ベルベット・ゴールドマイン」など、ワタシは髪の長いユアンがけっこう好きだった。


猛烈にかわいかったユアン 少年老い易く…

3人の中で紅一点のおいしい役・医師のジュリエットを演じる女優にあまりに華がないので、ほんとにUKは美形の女優が少ない…と改めて思った。まぁ、女優に華が無くてもユアンに華があるからいいと言えばいいのだけど、同居人の男二人から惚れられている役なのに…これですか、という感じは否めない。地味で平凡なクセに、けっこう男を顎で使うし我儘なので、観ていて「は?」という気分になってしまう。この医師ジュリエットと記者のアレックス(ユアン)は精神的に双子と言ってもいいぐらいに似ている。いわば同類なのだ。一人だけ異質なデヴィッドは最初から浮き上がっている。


他は申し分ないが女優があまりにも…この紅一点、オバチャン臭いし、地味過ぎる
もうちっとどうにかならなかったの?

散々候補者を篩いにかけて決めた四人目の同居人は、入居するものの、あっという間にオーバードーズでご臨終となってしまう。彼は大金を持っていたからさぁ大変。3人は極秘裏に死体を処理し、金はいただく事にする。3人の中で常に貧乏くじを引く会計士のデヴィッドが、指紋や歯型から死体の身元が割れないように死体を損壊する役目を負わされる。

何も起らない時から、一人暗い顔のデヴィッドを演じるのはクリストファー・エクルストン。観るからにすぐに神経症になりそうな融通の効かない感じがする。口だけ達者でずるっこい他の二人に貧乏籤を引かされ、一番嫌な役目を負わされた彼が、死体を浅い墓穴(シャロウ・グレイブ)に埋めた後からおかしくなり、一人、金を持って屋根裏に籠もる。懐中電灯を使った演出がしんしんと自分の内側に降りていくデヴィッドの心象を表している。


この顔だけで既にこの役は合格のC・エクルストン

それまでは3人の中の味噌っかすで、口の達者なワルガキのアレックスといい気なジュリエットに、小突き回されるようにあしらわれていたデヴィッドが屋根裏に籠もったあたりから、3人のパワーバランスがガラリと変容していくのが見所。その先も二転三転、中盤から終盤にかけて、3人の関係性がドラスティックに変化するのが面白い。ふいにもたらされた他人の死と降って沸いた大金が全てを狂わせる。ある意味、世の中と他人をナメて、調子こいて暮していた3人にとっては、当然の帰結だったのかもしれないけれど…。
仲良し倶楽部が一転して仁義無き闘いのコロシアムに変貌する。
冒頭からC・エクルストンのナレーションで述べられているように、友人同士の関係性の変化や、互いのささいな心理戦などは、こんな特殊な場合でなくても日常茶飯事に起きていること。その普遍的な心理がサスペンスに巧く繋がっている。

波打つ長髪のユアンは、カワイイが鼻持ちならない“ワルガキ”のムードが全開。とにかく態度も言う事も余すところなく小憎たらしい。が、活き活きしていて華がある。キャラとしては「時計じかけのオレンジ」のアレックスなどに近いキャラ。プチ・アレックスという感じだろうか。最近のユアンは毒のないキャラを演じてばかりいるので、ワタシとしてはこの頃のささやかに邪悪な“アンファン・テリブル”のユアンが好ましく感じる。威勢のいい憎まれ口を叩いているわりに、痛めつけられるとヒィヒィ喚き、泣き叫ぶ。悪夢に魘される繊細さを持ち併せていたかと思えば、ヒィヒィと叫びつつもちゃっかりと抜け目がないキャラをキュートな顔で元気に演じている。



ユアン演じるアレックスが事件現場にミニ・クーパーで向かうシーンがある。ユアンとミニは、当然のようによく似合っていた。その他、ソファでプリングルスを齧りつつクイズ番組を観るシーンだの、ユアンを観ているだけでも飽きない。言いたい放題にからかって小突き回していたデヴィッドがシリアスになると、アレックス(ユアン)が全く勝てないのも何だか小気味がいい。


ユアンとミニ・クーパー 似合いすぎな組み合わせ


秘密を内包した薄暗い森と、ポップな色使いの3人のフラットの対比が効いている。
3人が住む、広いフラットの部屋毎の壁とドアの配色や、インテリアなども観ているだけで楽しい。


秘密はあまりに浅い穴に埋められた…


色使いと家具の取りあわせもいい、住み易そうな部屋

時折、他人を踏みつけるような冗談に大笑いしながら、気儘な生活をたのしんできた3人に訪れる泥仕合の結末はいかに? 最後に笑うのは誰なのか?

というわけで、1時間半の短さの中に最後まで気の抜けないストーリーが展開し、最後まで飽きさせない。音楽の使い方もいかにもダニー・ボイル。シワひとつないユアンに「若かったのねぇ」と目を細めつつ、やはりこの頃が、ダニー・ボイルもユアンも、一番輝いていた頃じゃなかろうか、と改めて思った。

コメント

  • 2009/12/01 (Tue) 01:38

    kikiさん、こんばんは。
    ユアン好きですが、この作品は未見です。でも、写真見る限りユアン可愛い♪見なくっちゃ!
    そして、kikiさん仰るとおり、ヒロイン・・・おばちゃんですな。ユアンのお母さんの役かと思えぐらいに老けてる・・・何故このキャスティング・・・。
    ちなみに、私はちょっと気弱なユアンが好きなんですよね。「ブラス!」とか「普通じゃない」とか。
    最近は優等生的な役が多いですよね。今度はウディ・アレン映画に出るらしいですが、これは結構楽しみです。

  • 2009/12/01 (Tue) 07:21

    mayumiさん。この頃のユアンは本当にカワイイです。最初から色々なタイプのキャラを演じているユアンですが、ワタシはこういう「小生意気なガキ」という感じのユアンがけっこう好きですねぇ。まぁ、若いうちだけしか出来ないキャラなのでちょうど良かったのかも。そして、一人しか出て来ない女優がこのありさまなんですよ。不思議ですよね、このキャスティングは。もうちっと他にもいたでしょうに…。ワタシは若い長髪のユアンの他に「アイランド」や「恋は邪魔者」のユアンが好きです。で、ユアンが次回はウディ・アレン作品に出るんですか。ふ~ん。新しい組み合せですねぇ。ウディ・アレンがユアンをどう使うのか、楽しみです。

  • 2009/12/03 (Thu) 20:24

    私もこういう髪の長さのユアン大好きでした。
    元々人柄良さそうなのはよくわかるんだけど、ここ数年はどうも毒気のないキャラで
    悪にもどうもなりきれないという感じで、キャスティング的にもちょっと中途半端な
    立場になってしまってるのが残念よね。
    この映画、私も大好きで、未だに録画したビデオテープ持ってます。
    そーか!紅一点ってこんなおばさんくさかったのか~とビックリしました。
    あと、クリストファー・エクルストンもどこへ行ってしまったんだろう~?!

  • 2009/12/04 (Fri) 00:14

    acineさん。この頃のユアンはキラキラしてますね。長い髪もよく似合っていて。出てくるだけでニヤニヤしちゃう。どうも最近はトッチャンボウヤ化が進んで心配な限りですが、40代50代でもうちょっと色んな役をやってから、60代に入ってカワイイおじいちゃんとかになってもいいんでは?と思います。40を前にしてアクが抜けすぎの最近のユアンにはちょっとイライラ。
    で、この女優、老けすぎよね。ユアンと並ぶとおばさんと甥っ子みたい。そしてC・エクルストン、最近はあまり出てないのかしらん。

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