ワタシの好きなジェーン・オースティン・ワールド



秋に入って久々に「いつか晴れた日に」(分別と多感)を映画チャンネルから高画質で捕獲したので、久々にじっくりと観賞し、あぁやはり何度観てもアン・リーの構築するジェーン・オースティン的世界(というか脚本も書いたエマ・トンプソンのこの作品への想いの強さだろうか)は心地よいわ?、と目を細めていたら「ジェイン・オースティン 秘められた恋」が封切られて、一応それも劇場に見に行った。そんなこんなでジェーン・オースティンね…と思い出した感じで、久々にキーラとマシューの「プライドと偏見」も観たし、師走に入って2年半ぶりぐらいにコリンのBBC版「高慢と偏見」も再見した。

その他、手元にはないがジェーン・オースティン物としては「エマ」というのもありますね。BBC版ではケイト・ベッキンセイルがエマを演じ、映画版ではグィネスが演じている。映画版の「エマ」はフランク役で登場したユアンがあの18世紀的衣装が似合わなかったなぁという印象(何しろあのファッションは長身で手足も首も長い人が着てないと観ていて辛い)だけしか無かった。あれこれと再見してみて、ワタシは、ジェーン・オースティン物の中ではアン・リーの「いつか晴れた日に」とBBCの「高慢と偏見」がやはり格別に好きだなぁ、と再認識した。
どちらについても以前にレビューを書いているので、ここでくだくだしく筋などは書かないし、重複はなるべく避けようと思うけれど、とりあえず「いつか晴れた日に」について。



久々に再見して新たにこのシーンが好きだなぁと思ったのは、父の死後、まだ兄に屋敷を引き渡す前で、母と娘3人で住んでいるところに、兄嫁の弟のエドワード(ヒュー・グラント)が館を訪ねて逗留しているシークェンスで、エドワードがピアノの調べにつられて廊下を歩いてくると、次女マリアンヌ(ケイト・ウィンスレット)の弾くピアノ曲を、部屋の入り口にすがるようにして姉のエレノア(エマ・トンプソン)が聴いている姿に出くわす。エレノアは佇んだまま、一人静かに泣いていた。そのピアノ曲は亡き父の大好きな曲だった。はっとしながらも、エドワードはエレノアに歩みより、涙ぐむ彼女に白いハンカチを差し出す…。このシーン全体のトーン、そして父の好きだった曲として流れるピアノ曲(この曲はこの映画の主題曲にもなっている)が、ワタシはとても好きだ。
そのシーンがYoutubeにUPされていたので、ご興味ある方はこちらをどうぞ。(4:15あたりからそのシーンが始まる)





激情家の次女マリアンヌは常に嵐の中を遠くまで出歩いては怪我をしたり病気になったりして、そのつど男に助けられる人騒がせな娘である。助けられた男に詩を朗読してもらって、余計にその男が好きになるというのも彼女のパターンらしい(笑)見た目だけの女蕩しウィロビーが捻挫したマリアンヌを助けた翌日にコテージに現れて、シェークスピアの詩(ソネット116)を口ずさむ。

「誠実な人の結婚に障害はない 
時が変わると変わる愛など 本当の愛ではない」


そんな詩をお前が読むか、という感じ(笑) 不誠実な人が口ずさむ誠実な愛の詩

北極星のように 大嵐でも揺れはしない…と続くこの詩は、熱情家マリアンヌの胸にウィロビーのハンサム顔とともに深く刻まれる。ウィロビーとの恋に燃え上がる妹を、厳しい家計費という生活の現実に追われながら、ふと眩しく、切なく眺める姉・エレノア。このシーンもしみじみしてとても良いですね。



その後、唐突にマリアンヌを振り捨てて愛より金だ、と持参金付きの女と結婚するウィロビー。失恋のショックで嵐の中をさまようマリアンヌが大佐(アラン・リックマン)に助けられ、死の淵をさまよって生還する。大佐の想いをついに受け入れる準備が出来たマリアンヌが庭で大佐の朗読を聴く。

「この地上で失うものはない
高きより落ちても 潮が他所へ運んでくれる
いかに捜せど 見つからぬ失い物などない」

アラン・リックマンはこの作品では徹頭徹尾儲け役なのだけど、純愛に挫折した過去を持つ
ロマンティストのオッサンという感じがよく出ていた。



また、未亡人の母&三姉妹にコテージを提供するジョン卿とその義母(ジェニングス夫人)は常に軽躁で、善人ではあろうが俗物で、なんとなく人を苛々させるコンビだ。エレノアたちの叔父にあたるジョン卿の屋敷は広い立派な屋敷である。部屋数だってたんとあるんだから、コテージなんかを恩着せがましく貸すぐらいなら、広い屋敷の一角に住まわせてやればいいに、と思ってしまう。


ジョン卿の屋敷での会食 

このジョン卿の義母の娘シャーロット(ジョン卿とはどういう関係になるのかサッパリ分からない)は、政治家のパーマー氏に嫁いでいる。このパーマー氏というのも味わい深い人物。演じているのはヒュー・ローリーという人で、ワタシは多分この作品でしか観た事はないのだけど、長身で無口な彼は、ちんころで不細工で騒がしい妻とその俗物の母ジェニングス夫人に心底ウンザリしているようでいながら、浮気をするでもなく(分からないけど何となく)、赤ん坊も作って、その結婚に甘んじているという様子が、なんとなくほろ苦くて可笑しい。


騒々しい里芋みたいな妻(左)にウンザリしつつも沈黙を守るパーマー氏(右)

「意に染まない結婚」の一典型として、ジェーン・オースティンが描きたかった人物像なのかもしれない。とにかく財産だの肩書きだのが全ての英国18世紀においては、意に染まなくても気が合わなくても家格と年齢が釣り合えば縁組は進んでしまったのだろう。財産や家格のためには仕方なく気にいらない女を貰ったり、気にいらない男に嫁いだりしていたに違いない。18世紀の英国には、そこらじゅうに不幸な結婚生活を我慢している男女がワンサカ居たような気がしてしょうがない。(笑)まぁ、このちんころの奥さんは騒々しいけど愛嬌があって憎めないので、パーマー氏もげんなりしつつも少し許容する部分がある、のかもしれない。


なにげなく室内を撮っていても印象的な映像

そして、人知れず涙にくれつつも、常に人の為に尽くしてきた報われないエレノアに、最後の最後に訪れる待ち人。エレノアの号泣シーンは何度観ても、じんわりしてしまうワタクシ。そして生涯の悔恨とともに丘の上から大佐の妻になったマリアンヌを見つめるウィロビー。どのシーンを切り取っても絵画のような美しい映像。薄くグリーンのフィルターがかかったカラーの色調が絶妙でいつ観ても目に快い。脇までドンピシャリとハマったキャスティング。(エレノア役のエマ・トンプソンは老けすぎだけど、それには目を瞑らなくては)控えめでいながら情感豊かな演出とすぐれた脚本、そして意外に音楽もいい。やっぱりこの作品は何度観ても良いですね。
マイ・オールタイムベストの1本。

コメント

  • 2009/12/26 (Sat) 00:34

    kikiさん、こんばんは~。私もこの「いつか晴れた日に」、結構好きな作品です。
    確かにエマ・トンプソンが老けすぎなんですけどね(爆)。でも、あのラストの泣いてしまうシーンは、確かにジーンときますよね。「良かったねえ・・・」と心の底から思えるんですよね。
    マリアンヌに想いを寄せるアラン・リックマンも良かったですね~。最近では「ハリポタ」のイメージが強いですが(笑)。
    ところで、ジェーン・オースティンということで、「ジェーン・オースティンの読書会」はご覧になりましたか?結構面白いですよ。

  • 2009/12/26 (Sat) 17:37

    うふー、ジェーン・オースティンやはりいいですよね。時々ふっと見たくなりますわ。私はもちろんマシューの「Pride and Prejudice」が一番好きでといいたいところだけど、映画で言えばやはりこのアン・リーの「いつか晴れた日に」(ってどういう邦訳なのか、でもわりに合ってもいるのがこれまた。)がやはり完成度の高さから言っても一番でしょうか。エマ・トンプソンとアラン・リックマンはキャスト的に年取り過ぎだろうと思うけど、そこを割り引いてもまだおつりがどんどん来る素晴らしさ。
    ちなみにBBCのテレビ版では、アランの役をウォーターホースにも出ていたデビッド・モリッシーがやっていてこっちの方が私にはドンぴしゃり!だと思いましたが。
    あとLaLaTVでやっていたジェーン・オースティンシリーズで見た「説得」も好きでした。

  • 2009/12/26 (Sat) 20:35

    mayumiさんもお好きですのねん。これ好きな人けっこう多いですよね。地味だけどいい作品ですからね~。脚本が良く出来てるし、他の映画を見て、この映画を見ると画面の色調の美しさに「あ~、なんかやっぱり違うわ、本当に綺麗だわ」と毎度思います。エマ・トンプソン、取敢えずもっと老けないうちに映画化できて良かったですよね。もうちょっとしたらお母さんの役になっちゃうかもだし(笑)アラン・リックマンもここまで儲け役を演じている作品はあまり無いですよね。で、「ジェーン・オースティンの読書会」は公開時にどうしようかと思ったんだけど見送ったんですわ。DVDで観ようかしらんなんて思っていたけど忘れてました。これもそのうちに。

  • 2009/12/26 (Sat) 20:49

    Sophieさん。下手すると通俗的にもなりかねないテーマ(とにかく登場人物の関心事は1に結婚、2に財産って感じもなきにしもあらず)なれども、ジェーン・オースティン物には捨て難い良さがありますね。ことにここ10~15年ぐらいの間に映像化されたものに良いものが多いのは、現代人には特に彼女の作品に共鳴するところが強いからですかね。マシュー・ファンの人はやはり「プライドと偏見」が一押しなのねん、ふふふ。ワタシは久々にBBC版コリンにウットリしたざんすわ。すら~っとしてて綺麗だわ、あの頃のコリンは。で、「いつか晴れた日に」(邦題は型通りの「分別と多感」にしなくて意外に正解でしたね)も、いつ観ても良いですよね。アン・リーの静かで情感のある演出と世界観が合ってるのね。そして美しい映像。BBC版の「分別と多感」は未見なのだけど、大佐役の人、アラン・リックマンより良かったんだ。まぁ、ジェーン・オースティン物はしょっちゅう流しているからまたチャンスもあるでしょう。「説得」、斜め見はしたんだけど、ちゃんとは見てないんですわ。これもまたそのうち放映するでしょね。次はちゃんと見てみるわ。

  • 2009/12/27 (Sun) 22:39

    初めて観たオースティン映画です。なんと試写当たって・・・。昔はよく当たって行ってたけど、今は早くから並んでるのがおっくーで腰痛くなるし。ヒューさま、首きつそ~ってのが印象的で。エマ・トンプソンがグジグジしてるのがイラつきました(自分の意見はさて置きな、そんな時代だったのよねー)
    この映画で好きなシーンは、ケイトがヴェートーベン弾いてるのと、それを聴いてるリックマン大佐。ダイ・ハードの後に観たので、え?あのハンス?ってビックリ。以来リックマンキライじゃないです。ケイトもこのマリアンヌ役が1番好きかも。今、また見直したら、違う感想持ちそうで、何年経っても何度も観たい作品です。

    • 吾唯足知 #uqr/pqJA
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  • 2009/12/28 (Mon) 07:12

    吾さんはこれがオースティン物のお初だったのねん。しかも試写会で。ワタシもこれが初オースティンですが劇場では観てないのよねん。ヒューは本当に案外この手の衣装似合わぬのがバレてしまった作品ですわね。間抜けなラクダみたいでお気の毒。18世紀の男子の衣装はかなり着る人を選ぶ服。二枚目俳優にとっては踏み絵的衣装かもね。そうだ、リックマンはハンスもやってたよね。顔つきからしてもヒールの方が多い印象だったわ。で「いつか晴れた日に」。吾さんも今現在の眼でもう一度この作品を観てみては?きっと今はエマ・トンプソンのエレノアにそう苛々はしないと思うぞよ。

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