「ロバと王女」 (PEAU D'ANE)

~キッチュでシュールなお伽話~
1970年 仏 ジャック・ドゥミ監督



童話というのは、「ほんとうはコワイ話」が多いというのは定説だが、これも妻を失った悲しみを妻と同じくらいに美しい自分の娘と結婚することで埋めようとする王様が登場して、さもありなんと思うわけである。原作はシャルル・ペローの「ロバの皮」。王様にジャン・マレエ。父親に求婚される王女にカトリーヌ・ドヌーヴ。このコンビがなんの捻りもないただのファンタジーに出るわけもない。ロバの毛皮を被り、嬉々として走り回るカトリーヌ・ドヌーヴジャック・ドゥミが撮るドヌーヴは常に遺憾なく美しいが、コンビ作4本(他は「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「モン・パリ」)の中で、ワタシはこれが一番好きかもしれない。




分厚い本のページがめくられてお城が映り…というお約束の導入部でスタートする物語。一見ノーブルそうな城の中はなんだかキッチュでシュールな内装、というのも面白い。ジャン・マレエ扮する王は、王の中の王として民衆に慕われているというのだが、やたら我儘でひたすらに美人を求め、全然そんな名君らしい気配がないのもニヤニヤする。妻の死を悲しむあまりに、娘の肖像画を見ても自分の娘と気づかないなどおトボケが過ぎるって感じだけれど、この王様。衣装といい、セリフ回しといい、まさにジャン・マレエ以外の誰が適役か、という役である。マレエは結構長身なのに、銀色のブーツは明らかにシークレット・インソール的なあげ底になっているのだが、それは肩が大きく膨れた衣装を違和感なく着こなす為の工夫ではないかと思われる。


王様の玉座を見よ

そして、この父に求婚されて戸惑う娘は名づけ親のリラの精に相談に行く。リラの精にはデルフィーヌ・セイリグ。これも見事に適役。昔の恋愛の縺れから王を苦しめてやろうと王女にあれこれと入れ知恵する計算高い妖精を楽しそうに演じている。妖精の衣装もそれらしくてナイス。魔法の杖にスペアがあるなんて知らなかったざますわ。うふふん。



空色のドレスも、月の色のドレスも、太陽のドレスも着こなした輝けるカトリーヌ・ドヌーヴだが、一番嬉しそうにウキウキしているのはロバの皮を被った時である。このロバの皮は王様が大事にしている、宝石を排泄するロバの皮なのだが、王は実の娘を妻とするためにアッサリとお宝のロバをも皮にしてしまう。このへんがいかにもシャルル・ペローな感じ。皮を被り、王宮を抜け出した王女が月の光に照らされた庭に出てからのスローモーションのシークェンスが夢幻的で美しい。


嬉々として森を駆ける

また全身真っ赤な衣装で隣国の王子を演じるジャック・ペランも「ロシュフォールの恋人たち」の時よりグッドルッキンな王子様っぷりがナイスである。森でキラキラの王女姿に戻った彼女を見た王子が、その名前を「ロバの皮」だと聞いても、綺麗な名だ、とウットリしているのも素直に受けてしまった。ただ、ドヌーヴに対するとどうも小僧っ子過ぎるような印象を受けてしまうのは致しかたないところだろうか。なんとなく姉さんと弟みたいに見えてしょうがない。


王子らしいルックスのジャック・ペラン

どうも貫禄の違いはいかんともしがたい

また大詰めで、王子が森の中で出会った謎の美女の指輪で花嫁捜しをするシーンはシンデレラのガラスの靴そのままだが、ドヌーヴの指より細そうな指の女性にもはまらなかった指輪が王女のそれほど細くもない指(のように見える)にスーっと入る様子もご愛嬌だった。

屋外でのロケーションの自然の美しさに対し、屋内でのセットは極度に人工的で芝居がかってキッチュなテイストなのもジャック・ドゥミの狙いなのだろう。そのどことなくキッチュなテイストは、ラスト間近で青の国の王(ジャン・マレエ)がヘリコプターに乗って王子と王女の婚礼に割り込んだりするシーンに繋がっていくんでしょね。


ロバの皮さえ被りこなすカトリーヌ・ドヌーヴ

ミュージカル仕立ての童話なんてこのキャスティングでなければ観ないだろうけれど、ただの童話というにはビザールで、そんな中にも美しかるべきところは遺憾なく美しく、また、清純そうな王女を演じていても、どこかにドヌーヴらしい表情が折々出るところなども、観ていて楽しかった。

コメント

  • 2016/11/07 (Mon) 02:20
    よみがえる青春!

     この映画は、私は高校生の時に見ました……と言うと歳がばれる。もうン十年前の事で記憶もおぼろですが、確かに、単なる童話の翻案ではない、一ひねりも二ひねりもしてある演出は今でも印象に残っています。カトリーヌ=ドヌーヴって、こんな役もできるのですね(女優なら当たり前田のクラッカー、ですが)。王女と王子の結婚式の場に父王と妖精がヘリコプターでやって来たのにはズッコケましたわ。
     映画を見た際にパンフレット(冊子になって、あらすじや出演者等が記述してあるもの)を買ったのですが、どこかへしまい込んで行方不明です。あるのは間違いないので、いつか家じゅう引っ掻き回して見つけ出そうと思います。

    • へそ吉 #sZ0LT6Cw
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    • 編集
  • 2017/02/20 (Mon) 00:02
    Re: よみがえる青春!

    へそ吉さん こんばんは。
    カトリーヌ・ドヌーヴはこういう役もしれっと、そして軽々こなしてしまうところが、ただの美人女優じゃない所以なんでしょうね。でも、この頃はまさに綺麗の真っ盛りなので何をやってもOK!みたいな時期でもありますね。
    最近、「モンパリ」を見る機会があったんですが、やはり60年代、70年代のドヌーヴは格別に美しいなぁ、と改めて感心しました。

    (長いこと、他の方へのコメントの返事を、この記事のへそ吉さんにいただいたコメントの返事にUPしてしまっていて気がつきませんでした。先日、他の方からご指摘をいただいて初めて気づいた次第です。大変、失礼つかまつりました)

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