「真昼の死闘」 (TWO MULES FOR SISTER SARA)

~ラバと聖女と金塊と~
1970年 米 ドン・シーゲル監督



監督になってからはシリアスモードのヘビーな作品を得意とし、ついには名匠と呼ばれるようになってしまったクリント・イーストウッドだが、ワタシは俳優時代の彼の方がやはり好きだ、というのは前にも書いたと思う。
で、この作品だが、これは数あるイーストウッド主演の西部劇の中でも一番面白いとワタシは勝手に思っている。とにかくイーストウッドとシャーリー・マクレーンという顔合わせが最高にナイス。どちらも持ち味と魅力を思いっきり発揮し、互いが互いを輝かせ合って相乗効果でより面白くなっている。脚本も秀逸だし、殊にシャーリー演じるシスター・サラのキャラクターがえもいわれない。作品の肝だ。昔、民放の洋画劇場で観たきりで、ヒドい邦題がついていたという記憶はあったのだけど「真昼の死闘」なんてダメダメなタイトルだったのねん。
あまりにイケてなさすぎて、タイトルだけだったら見過ごしてしまうかもしれないのでご用心。
監督ドン・シーゲル、主演クリント・イーストウッドというコンビに、シャーリー・マクレーンという素材を加えた逸品。が、これは1にも2にもシャーリー・マクレーンありきの映画。イーストウッドはいつも通りだが、シャーリーが立っているので作品には新鮮な魅力が漂っている。彼女が演じる尼さんは、賢く可愛いく裏がある。これは当て書きでしょうね。シャーリー以外の人がこの役を演じてもこんな魅力は出せないだろう。ちょっと肉付きがよくなってぽちゃぽちゃしている感じなのもまたナイス。マシュマロちゃんみたいで、いかにもおいしそうだ。

カラカラの西部の荒野で数人の男どもにからまれている女を助けた流れ者ホーガン(イーストウッド)。メキシコのゲリラを支援するためにチワワまで行くというその女サラは尼さんだった。ホーガンもまた、ゲリラの助っ人に雇われていたのだが、サラの情報からフランス軍を出し抜いて、ゲリラ戦のさなかにフランス駐屯軍のお宝をいただこうと目論んだホーガンは、サラとともにチワワに向かうが…というわけで、そうとは知らずに助けた女が尼さんだったので、マシュマロみたいな裸を見ちゃったのに手出しもならず、悶々としながら旅を続けるイーストウッドのホーガンと、いざとなったらカワイイ顔で男も顔負けの度胸と機転を発揮するシスター・サラの掛け合いがとにかく楽しい。


キュートなシスター・サラ シャーリー・マクレーンがとにかくカワイイ

一見合いそうもないイーストウッドとシャーリー・マクレーンの意外なコンビネーションの良さが新鮮な印象の元だろうか。シャーリー演じるサラが尼さんという設定なので、うまいぐあいに収まっているとも言える。白くてプクプクしていて顔つきなども似ていなくもないので敢て引き合いに出すが、「アパルーサの決闘」で西部劇のヒロインにしてはブサ度が激しかったレネ・ゼルウィガーと比較すると、シャーリー・マクレーンのキュートさと、ここ一番という時にはちゃんと綺麗に見えるあたりはさすがだな、と感心するし、やっぱりこうでなくちゃね、とも思う。また、無頼の一匹狼だが尼さんには敬意を表するイーストウッドのホーガンもはまり役。


なんちゅう男前か この頃はやっぱり特筆ものの男っぷりだ

なんといってもイーストウッドは男前盛り。あの逆立った山嵐ヘアもバッチリ決まっている時期で、無精ひげに皮の帽子、細長い足で歩く姿は飄々としてカッコいい。この頃のイーストウッドはやっぱり捨てがたくステキングだと思う。そして清楚でかわいく、いざとなると肝っ玉の座っているシスター・サラのシャーリー・マクレーン。このシスター・サラのキャラこそは女として最強かもしれない。男はこういう女にかかったらひとたまりもありませんわね。賢くて抜け目がなくて愛嬌がある。ふだんはニコニコして上品だが肝心な時には喝を入れてくれる上に、下手な男よりもずっと頼りになる。


意外な組み合わせながら、とてもいいコンビネーションをみせる

シスター・サラはならず者のために苦労して墓を掘ったり、なけなしの水を礼拝のためにかけてしまったりするが、一方で切り取られたガラガラ蛇の尻尾でフランス軍の斥候を追い払ったり、十字架をかざして気迫でインディアンを撃退したり、取り澄ましていながらも、ホーガンに隠れてシケモクをふかし、窮地を潜り抜けるとウィスキーをラッパ飲みしたりもする。シスター・サラがどうもただの尼さんじゃなさそうな事はかなり早くにシケモクをふかすあたりで暗示される。ずっとガマンしていた煙草を吸い込んで陶然とする表情がまたカワイイ。


こらこらシスター

途中、フランス軍をかわしたり、ヤキ族(インディアン)に襲われたりしつつも二人はチワワに辿りつく。ヤキ族に矢で射られたホーガンを介抱し、彼の言う通りに猛烈な荒療治で矢を抜いて傷を消毒するシスター・サラ。ユーモラスでいながら緊迫感溢れるシーンだ。魅力と実力のある俳優同志のかけあいは本当に観ていて楽しい。またホーガンが負傷した事により、シスター・サラの見せ場もより増えてますますキャラが立つように出来ている。チワワのフランス軍駐屯地に着くまではシスター・サラの見せ場が多く、駐屯地についてからはアクションが増すのでイーストウッドの見せ場にスイッチするという感じだろうか。こういう配分もストーリーと絡めてよく出来ている。




目的を遂げたあとで、散々お預けを喰らわされたホーガンがバスタブの中に土足で侵入するシーンは、そのお預けがいかに限界に達していたかを端的に示すもので微笑ましいが、それはそれとして、ホーガンは先々大丈夫なのだろうかと些か気になったりもする。つまり下半身は満足しても、段々不満が出てきはしないのか、と。ホーガンが惚れたのは“シスター・サラ”であって、素のサラではないのではないか?ラストシーンを観ていると、いいの?それで本当にいいの?と思ってしまう。自分の事は自分でできるし、女はそこら中にいるので不自由はしない。あれこれと束縛されるのは嫌だから結婚なんて、ケ!と結婚を嘲笑っていたホーガンは見事に恋の罠に落ち、要求の多い我儘な女を養うハメになる、というアイロニカルなオチもクスっと笑えていい。シャーリー・マクレーンにとってはたやすい事だが、清楚で控えめなコケットリーのあるキュートなシスター・サラと、赤いけばけばしい衣装の好きな素のサラとを鮮やかに演じ分けている。素のサラをみていると、あの尼僧姿のシスター・サラが懐かしく思えてくるように計算して演じているのだと思われる。
尼僧服を脱いであばずれに戻るとなんだか魅力が半減して見える。

シスター・サラの表の顔と裏の顔は、女という女が持っているであろう二面性をカリカチュアライズしたものとも言えるし、シャーリー・マクレーンという女優の特質と魅力をこれ以上はない形で表現したものでもあるだろう。またホーガンとサラの関係性を描きつつ、男にはお預けを食わせるのが何より有効だという示唆もあるかもしれないし、なんだかんだ言っても、男は日常性という罠に陥りたがっているという見方もあるかもしれない。女は衣装によって別人に成り変われるという事も示唆している気もする。
いやはや、それにしてもサラは大変な女優の資質をお持ちである。


尼僧姿が第二の性格を作るのか…なりきり尼僧のサラ 女はコワイよ

活劇としても楽しく、スター同志の共演という華も存分に味わう事ができ、さらにはあれこれと示唆に富んでさえいるという、まこと一粒で3度美味しいドン・シーゲル+クリント・イーストウッド+シャーリー・マクレーンの、西部劇のスタイルを借りた“男と女の不都合な真実”。
あ?、面白かった。イーストウッドも監督として、こういうノリの映画を撮ればいいのに。

コメント

  • 2010/03/04 (Thu) 23:30

    約四十年ぶりの再会でした。
    髭面のイーストウッドを見て、ヒュー・ジャックマンに似てるなぁと思いましたです。

    動画付きの記事、名前から飛んでいけま~す。

  • 2010/03/05 (Fri) 07:20

    十瑠さん。ワタシも数日前、随分久々に再見しました。若いイーストウッド、確かにちょっとウルヴァリンのヒュー・ジャックマンに似てなくもないですかね。この頃の彼は好みの男前です。シャーリー・マクレーンはキュートで賢く女盛りの色気もあって、やっぱり良いですね。

  • 2010/03/05 (Fri) 16:47

    こんにちは。また失礼します
    異色とされているようですが
    ドンシーゲルコンビの名作ですよね!
    エンニオモリコーネの音楽も印象的です(サラのテーマ?とか)。
    (西洋でも、尼僧もの[エロな意味で]ってあるんでしょうかね)

    クリントイーストウッドはダーティーハリー2くらいの頃はもう痩せた狐みたいですが
    その前の、まだ水分量が多いというか
    金髪ふさふさ、ほっぺバラ色時代、かっこいいですよね。

    シャーリーマクレーンもモチモチで可愛いです。このとき35歳くらい?
    レネー・ゼルウィガー、なるほどです。
    顔の造作そのものが福々しいというか
    タフさやユーモアを感じさせる点も似てますね。
    (この人が出てきたら、まあ辛気くさいことにはならなそうだな~みたいな)

    ではでは♪


    • 五郎島金時 #-
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  • 2010/03/05 (Fri) 22:48

    五郎島金時さん。いつでも大歓迎ですよ~。五郎島金時さんもこれお好きですか?異色かもしれないけど面白いですよね。エンニオ・モリコーネが作曲するマカロニ・ウェスタンの音楽ってみな同じような感じがするのだけど、ひとつの味になってますね。そして、西洋でもアヤシイ尼僧ものって定番的にありそうだし、コスプレとか制服フェチとかもありそうですわね。
    あはは。「ダーティハリー2」では既にして痩せたキツネですか、イーストウッド。今やついにダチョウ状態ですね。イーストウッドは60年代が最もハンサムマンの時期ですが、70年代もいい感じですね。80年代後半になると現在への過渡期に入ってくるような…。いずれにしても俳優時代の彼は好ましい気がします。監督としても、今後はウィットに富んだ娯楽路線の映画などを志向してくれると作品も抵抗なく観てみる気になるかも、なんですけどね。(笑)
    シャーリー・マクレーンは顔立ちがカワイイので年とってもカワイイし、得してますわね。むろん演技力もあるんですけど。観た限りの出演作の中では「アパートの鍵貸します」が一番好きですが、このシスター・サラも捨て難い味で脳裏に焼付いてます。モチモチでぷわぷわで抜け目なくていい感じですよね。

  • 2010/03/05 (Fri) 23:55

    kikiさん、これってひょっとして先月あたりBS2で放映してたアレかしら?
    イーストウッド主演で「真昼の死闘」っていうのは確認してたんだけど、まあいいかって録画しなかったのは悔やまれるなぁ。たしかにこのタイトルがいけない。「ご用心」遅かりし~(泣・笑)
    以前、kikiさんがS・マクレーン共演の面白い西部劇があると言ってたのは、これだったんですよね。
    また観れる機会はあるでしょうから、その時はイーストウッドのハンサムマンぶりをたっぷり堪能したいと思います。
    「インビクタス」、行きそびれてまして。近くのシネコンはもう夕方だけの時間帯になってしまい・・・う~んDVD鑑賞になっちゃうかな?

  • 2010/03/06 (Sat) 00:35

    ジョディさん、そうらしいですね。BSで放映したみたいです。ワタシはそれを録画したんじゃないんですけどね。たまたまふと思いだして観たくなったらDVDが出てて。そうです。前にシャーリーとの共演作について書いたのはこれの事ですわ。ほんっとダサいタイトルですよね。何考えてんだ!?って感じ。このタイトルで日本では随分損しちゃってるんじゃないかしらん。観る気しないものね。世にもつまらなそうだもの。「真昼の死闘」…アホかって感じですね(笑)また、きっとどこかで放映しますよ。その時はダサいタイトルで逆に思いだしてすかさず録画ですね!イーストウッドは超男前時代ですから、それを観ているだけでも楽しいですよん。ちゃりんちゃりんと拍車の音を立てながら長い脚で歩く姿がサマになってます。
    あ~、「インビクタス」ね~。個人的な意見を言わせていただくと、DVDでいいかも。なんかこう、ワタシには何も残りませんでしたね。観終って「あ、そう」って感じ。ザッツオール。上積みをさらーっと掬った、という感じの映画でした。(あくまでもワタシの感じでは、ですけれど)映画館で観る価値があるのは、スタジアムの上をジェット機が超低空飛行で過ぎていくシーンだけだった気がします。(笑)

  • 2010/04/25 (Sun) 02:08

    kikiさんのレビューを読んで、観てみたいなあ、と思ったのでDVDレンタルで鑑賞しました!
    面白かったです~。でもやっぱりシスターであるサラにホーガンは惚れたのではないかしら、と思ってしまいます。魅力半減ですよねえ。
    それにしても、この頃のイーストウッドは本当に素敵ですね。

  • 2010/04/25 (Sun) 21:50

    mayumiさん。そうそう。あれ、一緒になっちゃったら年々歳々イヤになるだけですわね。いつまでもシスターの幻影は続かないのだし。そもそもサラが素に戻ったところで百年の恋も醒めて、お宝を山分けして「あばよ」って事になっても不思議はないという気がするんだけど。ホーガンも気の毒に…。 そして、昔のイーストウッドはいい男でしたよね。まぁ、今も爺さんとしちゃ上の部だろうけど、禿げなきゃもっと良かったなぁ。

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