「アラン・ドロンのゾロ」 (ZORRO)

~爽快 痛快 ドロンの活劇~
1975年 仏/伊  ドゥッチオ・テッサリ監督


アラン・ドロンの出演作の中では、一押しでないもののこれも好きな作品。前にも書いたがドロンといえば「太陽がいっぱい」に「サムライ」が何といっても良いのだけど、この「ゾロ」もその次くらいに良い。文句なしの娯楽作品としてよく出来ているし、ギターをフィーチュアした主題歌(こんな感じの曲)が明るく軽快で、ヒーロー物の主題歌らしい雰囲気をよく出している。昔から何度も映画化されているらしいゾロ。近年ではバンデラちゃん(アントニオ・バンデラス)も演じているが、ワタシは、子供の頃に野沢那智の吹替えで民放の洋画劇場で家族揃って観た記憶も後押しして、ゾロと言えばやはり「アラン・ドロンのゾロ」じゃなくてかしら?という印象が強い。黒い帽子に黒マント、黒いアイマスクのドロン、いやいや、もう、ひゅ?ひゅ?、なヒーローぶりである。

今回は映画チャンネルの放映で、本当に随分久々に観賞した。
あぁ、懐かしいな、この主題歌。ドロンが砂丘や波打ち際を白馬で駆けている。こういうオープニングだったっけ。まぁ、あなたったら絵に描いたようなヒーローっぷりね。むほ。ところが主題歌が終わって本編が始まると、何か違和感が…。この作品はイタリア語なのである。監督もイタリア人だし、劇場封切り版もイタリア語なのだろうけど、だからドロンの声も吹替えでイタリア語をしゃべっているのだが、ドロンの声も好きなワタシは、え゛??!吹替えの上、イタリア語なの?…とちっとガックリした。どうせ吹替えなら日本語吹替え版で観たい。昔のイタリアの映画によくあるが、俳優は別の言語をしゃべっているのに、声が吹き替えられてイタリア語になり、俳優の口の動きとセリフが全く合っていないし、第一本人の声でない、というのは、ワタシはけっこう興ざめしてしまう方で、これなら子供の頃に馴染んだ野沢那智吹替え版で観た方がずっと良いなぁ、と思ってしまった。

新大陸のスペイン植民地・ニューアラゴンに総督として赴く途中の友人ラファエロと再会したディエゴ(ドロン)。友のあまりの理想主義に危ういものを感じるディエゴだが、友人は食後の散歩中に暗殺されてしまう。新総督が来るまでの間、代理で実権を握っていたウェルタ大佐(スタンリー・ベイカー)の放った刺客の仕業だった。ディエゴは友の復讐を誓い、新総督に成り澄まして任地に赴くのだが…。

というわけで、大佐の警戒を解き、油断させるためにへちょへちょのオカマちっくなキャラで新総督を演じるディエゴと、さすらいの剣士としての素のディエゴの2つのキャラをドロンが演じ分けるというのがミソ。このドロン演じるオカマキャラの新総督がコミカルでとても良い。亡き友人の従者だった忠実な唖のベルナルド(エンツォ・セルシコ)とのコンビネーションも見所だ。このヘチョヘチョ総督のシーンでの野沢那智のオカマちっくな吹替えも印象深かったので、余計に昔の日本語吹替え版が懐かしかったりもするのである。
平和主義で流血を嫌った友人の遺言も尊重しつつ、友の仇も討たねばならない。おまけにニューアラゴンは問題山積の状態で、大佐の圧制が民衆を圧迫していた。お忍びで市場を視察に出たディエゴは、そこで民衆の中に強く根付く黒狐の魂?ゾロ?への信仰を知り、これを利用することを思い付く。


ナヨっちい新総督を装うディエゴ 愛嬌のあるドロンのヘチョヘチョ演技にもご注目

大佐に抵抗して逮捕された神父(ジャンピエロ・アルベルティーニ)を救いに、早速、黒装束でジャーン!と現れるアラン・ドロン。黒馬に跨り、鞭を振るって兵士を言うなりに動かし、神父を逃がす。鞭をふるっての「Z」のサインも忘れない。ドロンの体を使ったアクションというのはけっこう珍しいと思うのだけど、走るのも早いし、動きも機敏で、無論、殺陣も上手い。キメるところは逃さずビシっとキメて、シメに黒いマスクから覗く青い眼と、ニッと笑う口元の白い歯もバッチリ。さすがにドロン。昨日今日二枚目を始めたわけではない。ひんやりとした目つきを活かした殺し屋の役や、刑事役などがハマリ役のドロンだが、こういうエロール・フリン的といおうかタイロン・パワー的と言おうか、な活劇ヒーローを演じても十二分にその個性と二枚目っぷりを輝かせているのはさすがと唸るほかはない。新総督としてよわっちいオカマキャラを装うなど新生面を開いているのもツボを押えているし、こういう作品で観た方が、アラン・ドロンという俳優の得難さが今更によく分るような気がする。


黒装束がバッチリと決まって、たいそうカッコよろしくってよ


後半、新総督としてのディエゴが自らゾロの囮になると言い出し、新総督とゾロの早変わりで大佐の軍をかく乱させるシーンなども楽しい見どころ。このあたりになると、当初違和感のあったイタリア語の吹替えもあまり気にならなくなってくる。
新総督も死に、ゾロも去ったと思った大佐が強引にオルテンシアと式を挙げようとするシーンは、「カリオストロの城」の伯爵をちらっと思い出したりした。そこにジャーンと現れるのはルパン三世ならぬアラン・ドロンのゾロ。ここからゾロと大佐の長い長い一騎打ちシーンが始まる。屋外から屋内に闘いながら場を移し、スリリングな殺陣とカメラワークの工夫でかなり長いが飽きさせずに見せる。




長い長い一騎打ちシーン

どこでロケをしたのか(メキシコかな?)、とにかく建物の外は常にもうもうと埃が舞い上がり、新大陸に急拵えで出来た植民地という雰囲気もよく出ていたし、屋外の埃っぽさに対して、総督の邸などの屋内の重厚な内装などにきちんと時代色も表されていた。また、大佐に横恋慕されるヒロイン・オルテンシアを演じるオッタヴィア・ピッコロもこの手の役にはよく合っていて違和感がなかったし、敵役の大佐を演じるスタンリー・ベイカーも、スペイン人のような面差しで、憎々しげで冷酷な敵役にドンピシャリだった。



ゾロの活躍にかぶって、ここぞ!という時に流れ出す軽快なテーマ曲もカタルシスを煽る。唖しの従者を演じるエンツォ・セルシコもコメディ・ロールとしてコミカルな動きと表情に愛嬌があって良い。そして、なんと言ってもアラン・ドロン。先に、2つのキャラを演じ分ける、と書いたが、実はドロン、本作ではゾロになった時のキャラを入れて3つのキャラを演じ分けているのだ。
第1のキャラは幾つもの死闘の果てに、うっすらと苦悩と虚無感とを漂わせる素のディエゴである。友の死に際し、暴力で物事を解決してはならない、という友の「遺言」を受けた彼は自分以外のキャラクターを創造する必要に迫られる。そこで登場するのが、第2のキャラ。ナヨっちくて愛嬌のある新総督。このキャラを演じる時の裏返った声などは、素のドロンの声で聞きたかったなぁと思うのだが、コメディロールとしてもいい味である。ナヨナヨ総督の仮面を被りつつ、実際的な活動をするのが第3のキャラ、黒狐の精・ゾロである。ゾロは悪を成敗して得意満面のヒーローだ。ひたすら痛快なキャラで常に民衆受けを狙って動くところなど、大衆演劇の役者のようでもある。それもこれも、ディエゴが意識してゾロという英雄を人前で演じているから。ゾロや新総督を人前で演じていたディエゴが、他人が消えて、全てを知る友の従者と二人、あるいは自分一人になった時にすっと戻る彼本来の、やや暗い、思慮深げな表情も翳りがあっていい。このディエゴ役はいつものドロンのキャラでもある。そのへんの演じ分けが物語に合わせて実にスムーズに成されており、活劇としてもよし、ドロンを楽しむ作品としてもよし、という仕上がりになっているゆえんだ。


マスクを取って素のディエゴに戻る シブくてよ

高い塔の上で大佐との一騎打ちの果てに決着をつけるゾロ=ディエゴ。
民衆の喝采を受けながら、黒馬に乗っていずこへとも無く去っていくヒーローの後ろ姿にかぶる軽快なテーマ曲。 いいですね。
とにかく、娯楽映画として各ポイントをキッチリと押さえ尽くし、アクションとアクションの間を笑いで繋いだ演出も冴えている痛快な一篇。ドロンの黒装束剣士ものには「黒いチューリップ」というのもあるが、若くてまだ甘っちょろい感じの「黒いチューリップ」よりも、男盛りのシブさが爽快さの中に漂う「ゾロ」の方がワタシの好み。久々にこうして観てみると、次はやっぱりあの野沢那智の吹替えの日本語版をもう一度見たいなぁ、という気持ちがどうしても湧きあがってくるのを禁じえない。DVD版の日本語吹替えって野沢那智なんだろうか、どうなんだろうか…。気になります。

コメント

  • 2010/03/13 (Sat) 16:58

    こんにちは。
    私がドロンにはまっていた高校一年の頃を思い出しましたよ。
    テレビの洋画劇場で、数週間特集を組んでいて、「ゾロ」も放映されました。
    もう、ハンサム過ぎましたよね~。あの黒装束はやっぱりアラン・ドロンのもんでしょう。
    図書館で日仏辞典を見ながらファンレターを書いたのが懐かしい思い出です。
    結局、手紙自体を完成させることができず、出さずに終わったのですけどね。

    • ようちゃん #4ihH6cqY
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  • 2010/03/13 (Sat) 23:24

    ようちゃんはドロンにハマっていたざんすか。ワタシはハマッたという程ではないけど母がドロン大好きだったし、70年代後半から80年代にかけて「ル・ジタン」などを家の近所の3番館に母と弟と3人で観に行った記憶もあったり、例のダーバンやマツダ・カペラのCMなども覚えているし、何とはなしに好きな俳優という存在です。で、ゾロはやっぱり痛快でね。主題歌とドロンの黒装束は最初にこの映画を観た時からもう随分たっているけど、やはり印象深くて忘れませんね。フランス語でファンレター書こうと頑張ったなんてようちゃんらしいなぁ。ふふふふ。ドロンは爺さんになってもドロンらしい雰囲気で、なかなか大したもんですわね。

  • 2010/03/15 (Mon) 23:54

    若き日のアラン・ドロン、かっこいいですよね。「太陽がいっぱい」「若者のすべて」くらいしか見たことないですが。
    リヨン留学時に、「クイズ・ミリオネア」にアラン・ドロンが出てるのを見てビックリした覚えがあります。テレビのクイズ番組にも出るんだなあ~、と。
    日本でいうと敏ちゃんが「アタック25」(でしたっけ?)に出演する感じでしょうか???
    ドロンさんはあんまり正解率高くなかった気がします。向こうでは必ず二人ひと組で解答するんですよね~。
    告知も大いに兼ねてるようでした!

  • 2010/03/16 (Tue) 00:34

    ミナリコさん。へ~。クイズミリオネアにね~。目的は他にあって正解率は二の次なんでしょね。敏ちゃんがクイズ番組に出てもきっとあまり正解率は高くなかったんじゃないかしらん(笑)ドロンは90年代以降、俳優としてよりも実業家としての活動の方がメインだったような気もするけど、一度引退宣言したものの、また映画やドラマに出たりしているみたいですね。カンヌやセザール賞のプレゼンターなどで出てくる姿を折々ちらっと垣間見たりもしますが、白髪になってもドロンはドロンだな、ドロンらしく年を取っているな、と思いますわ。やっぱりこの人も、なんとなく好きな俳優の一人です。敏ちゃんもダニエルもそうだけど、肩幅が広いので背広姿がカッコいいのもポイント高いんです。

  • 2014/01/16 (Thu) 20:12
    中学2年の時

    またまた古い記事へのコメントですみません。
    この映画、かつて阿佐ヶ谷駅前にあった2番館「オデヲン座」で友人グループ
    と観ました。
    すごく楽しい気分になったことを覚えています。
    イタリア語だったんですね~
    その時は全く気づきませんでした。

    その後、テレビの洋画劇場で野沢那智さんの吹き替えでも楽しみましたよ。

    雑誌に、息子さんから「ゾロ」を演じてって言われたことが書かれていたと
    思います。


    この映画を観てから、ファンレターをフランスの事務所宛てに
    送ったら、数か月後にサイン入りポートレートが送られて来て、
    狂喜しました。

  • 2014/01/17 (Fri) 00:12

    ユートーモさん
    何かこれ、懐かしいですよね。古典的だけど楽しい映画でした。オッタビア・ピッコロが演じる令嬢がたいしてキレイじゃないな、とか思いつつ観た記憶が(笑)
    これって、ドロンが息子さんにねだられて演じた役なんですか。ふーん。知らなかったですわ。
    当時、ファンレターを出されたんですね。ちゃんとサイン入りポートレートが送られてくるなんて律儀ですね。まぁ、この映画が公開されたころは、まだまだ日本でのドロン人気っていうのはかなりのものでしたよね。日本では本国のフランス以上に人気があった時期もあったので、ドロンも日本のファンは特に大事にしていたのかな、と思ったりして。 いずれにしても、よき時代ですね。

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