「アリス・イン・ワンダーランド」 (ALICE IN WONDERLAND)

~飛び出し無用~
2010年 米 ティム・バートン監督



ここのところ、猫も杓子も3Dという状態なので、何か1本、3Dモノを観ておこうかしらん、ということでワタシは「アリス」をチョイス。特にティム・バートンにもジョニデにも思い入れはないのだけど、他の3Dモノに食指が動かなかったのと、唯一観に行ってもいいかも、な気分になった3Dモノのトレーラーが、この「アリス・イン・ワンダーランド」だけだったからである。ティム・バートンというと、むか?し観た「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」では、あまりに画面の中でビジーに至るところであれこれと何かが動いていたので、今回もそういうごちゃごちゃしたテイストかと思いきや、さにあらず。全体の世界観やキャラのルックスなどがオリジンのジョン・テニエルの挿絵に近いムードなのがワタシ的には好印象だった。

とにかくやたらめったら大ヒットなのでサービスデーはジョニデ大好き女子その他で劇場は超満員。ワタシと友はレイトショーで観ることにして、先に飲食を済ませ、のんびりとお茶をしてから劇場へ。が、21時過ぎに始まる回でも、やはりほぼ満員になっていた。…おそるべし。
前回ティム・バートン物を観たのは「スリーピー・ホロウ」だったろうか。それも劇場では観ていない。それぐらいご無沙汰だったティム・バートンだが、懸念されたケレン味はあまりなく、全体として割に気持ちよくワンダーランドの世界観に入れた。



これは『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』を基に、19歳に成長したアリスの新たな冒険を描く、というもの。少女の頃に落ちたうさぎの穴を19歳になって人生の岐路に立ったアリスが再訪する、というお話になっている。

ワタシがこの映画で気に入ったのはアリスを演じているミア・ワシコウスカ。(「ディファイアンス」にも出ていたらしいけれど記憶にない)とにかく、ウサギの穴に落ちてウェイビーなブロンドの長い髪を解き放ったあたりから実にいい感じになる。アリスの幼女時代を演じる少女も、モロにテニエルの挿絵から抜け出して来たようなブロンドの少女だったのも○。いずれにしてもアリスのキャスティングがバッチリだった。ミア・ワシコウスカはセンター・パーツのブロンドの巻き毛がクールな顔にとても似合っており、容姿や雰囲気が物語に合っていた。
余談だが、ワタシが欧米人に生まれて、かつブロンドだったら、ヘアスタイルは絶対にこの巻き毛のロングヘアにする。別に日本人だってそうすればいいじゃない~と言われそうだけど、黒髪はストレートの方が似合うし、ムリに脱色した赤茶けた髪のウェイブ・ヘアというのはどうもいただけない。センターパーツのウェイブ・ヘアはブロンドにこそ最もふさわしいヘア・スタイルなのである。


これですよ、これ

ねじくれて横に曲がったような樹など、いかにもティム・バートン的な背景の中、アリスが大きくなったり小さくなったりするお約束のシーンを観ていて、メルモちゃんを思い出した。あれは手塚治虫の「アリス」だったのかな。

赤と白、それぞれの女王の城のデザインも○。殊に白の女王の城前に咲き乱れる枝垂れ桜は美しかったですねぇ。桜とはいいチョイスなり。



赤の女王を演じるヘレナ・ボナム=カーターの頭デッカチぶりはトレーラーで観ていたが、物語の中にあの面妖な姿がうまくハマっていた。あれはキャラもルックスもエリザベス1世のパロディみたいな意味合いもあるんでしょうね。暴君で独裁者。ちょっとした言葉の端ですぐに表情が変わるところなどぴりぴりした女王の感じが出ていて、実にハマリ役。この赤の女王に仕える魚の従卒や蛙の従卒に妙な愛嬌があって、彼らが出てくるとワタシは3Dメガネの奥で密かに受けてしまった。殊に魚の従卒が尾っぽで立って、にょりにょりと体を左右に振りながら歩くところなんて笑わずに観ることはできない感じ。愛嬌満点。ナイス。
また蛙の従卒は一列に並ばされて「私のタルトを食べたのは誰!」と女王に難詰されるシーンで、全員が蛇に睨まれた蛙状態になり、びくびくしているのがヤケにかわいくって、これも受けてしまった。


赤の女王にビビリまくる蛙の従卒たち かわいすぎ

ワタシは、実物の蛙は見るのも嫌なぐらいに苦手なのだが、こうやって擬人化されたキャラクターになっていたり、置物になっている蛙などは割に好きだったりする。これは何故だろう~と昔から自分でも不思議だ。

赤の女王の妹で、対立している白の女王にアン・ハサウェイ。今回は彼女の化粧の濃さにかなりドン引きした。3Dメガネのせいでいつもより画面が暗く見える中で、彼女のどっぷりつけた濃い口紅は赤黒く見え、やたら濃い眉毛とともに、暑苦しい印象が強かった。そもそも彼女は顔のパーツが顔の輪郭からはみ出しそうな程に全部大きい。暑苦しいほどに大きいのに、そこに濃い色を塗り苛んだら暑苦しさは天井知らずである。白の女王で、髪だってプラチナ・ブロンドだのに、あの黒い濃い眉毛や黒い唇は一体なんとしたこと~裏のあるキャラ~などと深読みしそうになってしまった。


とにかく濃い 濃すぎるアン・ハサウェイ

そして、観客にとっての誘蛾灯であるジョニー・デップ。今回は脇に廻っているので出ずっぱりというわけでもないし、メイクやCGによる効果で、ぱっと見てジョニデ、と分る感じでもないので、それもティム・バートンジョニデといういつもの図式からは少し外れているために、作品としてやや風通しが良くなって、この作品を観てみる気になった一因かもしれない。もちろんジョニデ氏は相変わらずちゃんと仕事をしていたし、キャラ造形的にもジョニデのマッドハッターはそれなりに雰囲気が出ていたと思う。
また、モニョモニョとしたまるっこいデブの双子も変な愛嬌があってティム君の狙い通りにかわいかったですね。はい。





ただ、それまではちゃんと観ていたのに、クライマックスなのであろう赤の女王と白の女王の決戦の火蓋が切って落とされたあたりで睡魔に襲われ、闘いの間ずっと船を漕いでしまい、闘いが終わって帽子屋とアリスが語らっているあたりで我に返ったので、赤の女王が子飼いにしている、なんとかいう怪物は結局見ず終いだった。そして帽子屋が言ったのであろうキメ台詞も居眠りしている間に終わってしまったというテイタラクだった。やれやれ。でも、こういう話に、よくあるCGアクション的な闘いのシーンって何かそぐわないというか、別に要らないんじゃない~と思ってた事もあってつい睡魔に襲われてしまったらしい。後で聞くと友も全く同じところで船を漕いでしまったとかで、揃って同じシーンがすぽりと抜けていたのには大笑いした。

ちなみに、アリスに登場するので知られているDODO(ドードー)という飛べない鳥は、空想の産物ではなく南洋に実在した生物だが、乱獲されて17世紀ごろ絶滅してしまった。図体が大きく、退化した羽は申し訳のようなのがついているだけで飛べない鳥。そのユーモラスな姿は童話や寓話に登場するのに似つかわしいが、飛べないのに鳥というこの矛盾。ワタシはドードーと聞くと、その骨を発掘しに、あるいは生きているかもしれない姿を求めて、探検隊を結成して南洋に遠征した蜂須賀侯爵を思い浮かべる。あの蜂須賀小六の子孫で、「空飛ぶ侯爵」と呼ばれて赤いセスナで飛び廻り、冒険と女性とジャングルと自由をこよなく愛した蜂須賀正氏。この人の、熱海にあったスペイン風の、パテオのある別荘というのを一度目の当たりに見てみたかった。(昭和50年代末に敢無く取り壊された)


ドードー 飛べない鳥

で、3Dとしてどうか、という事だが、これは全く3Dにする必要がない映画のように感じた。むしろ普通の状態で観たほうが余程良かったのではないかと思われる。IMAXで観てないからという事もあるかもしれないが、別にさして飛び出しても来なかったし…(って決戦シーンで寝てしまったので、そこでは大いに飛び出してたかもしれないのだけど分らない)かくのごとくに今後、さしてその必要もない作品まで、ファンタジーやアクションというジャンルは全て3Dになったら鬱陶しいなぁ…と嫌な予感がした。割高だし、あのゴーグルみたいな飛び出しメガネも邪魔くさいしねぇ…。



と居眠りしてしまっただの、3D甲斐もないだのと文句ばかり書いているようだけれど、ファンタジーとして、また「アリス・イン・ワンダーランド」としての世界観はとても心地よく観られたし、異世界に入った時のビジュアル的にもワタシは「Dr.パルナサスの鏡」よりこちらの方が好印象だった。エンディングのタイトルバックも美しかった。3Dじゃなくてもいいとは思うけれど、それなりに楽しめた。

コメント

  • 2010/04/29 (Thu) 13:10

    kikiさん
    私も一度は3Dをみておこうと。先日、最終日のアバターを観にいってきました。
    アリスにしようかと迷ったのですが、アバターで正解だったと思ってます。
    3Dは確かにこれから流行るでしょうけど、やはり主流は2Dで結構。
    生まれてから3Dしか見たことなくて、2Dに逆に違和感をもつ世代
    もでてくるんでしょうね。これからアリスも見てきます。2Dで。だってやはり目が疲れるんですよ

  • 2010/04/29 (Thu) 21:58

    思わず「きたーーーっ!」と叫びましたよ。
    kikiさん行くんだろうな、と思っておりましたから。
    こっちも完売続きでなかなか観れません。
    レイトショーなどはワタシが完敗ですから・・・。
    赤の女王の暴君ぶりが楽しみです。うふっ

  • 2010/04/30 (Fri) 07:06

    ふうさん。確かに3Dで観るならアバターの方が正解でしょうね。でもアバターはどうも食指が動きませんでねぇ、ワタシ(笑)
    で、これは2Dで観る方が良いと思います。邪魔なゴーグルなしにユーモラスでキッチュなイマジネーションの世界を楽しんだ方がよさそうです。そのうち主流が3Dになるかどうか、ですが、3Dとか言っても、本当にもっと立体的でアリアリしてないと(そして、そういう映像がその作品の中で何か意味を持ってないと)、そのうち廃れるような気がしますね。進化するか、廃れるか、さてさてどっちでしょうね。

  • 2010/04/30 (Fri) 07:08

    吾さん。そっちもやはり超満員状態ですかいな。
    こっちも凄いわよ、ほんと。行き易い時間帯のは忽ち席が予約で埋まって
    希望するあたりをチョイスできないので、レイトショーで観ました。
    赤の女王の暴君ぶりと、白の女王の濃い顔をご堪能あれ。

  • 2010/05/01 (Sat) 02:34

    うわあ、そんなに混んでるんですか。
    私は前売り買ってあるんですけど、スケジュールが合わなくてまだ観に行ってないんですけどね。
    で、やはり2Dの方がよさそうですね。っていうか、3Dはやはりそれ専用のカメラで撮られたものじゃないと立体感が出ません。「タイタンの戦い」などは後からデジタル処理して3Dにしたようなのですが、「は?3D?どこが?」という感じでした。字幕のみ、3Dという感じで。
    ただ、やはり「アバター」はスゴイですよ。これぞ3Dでした。映像に奥行きがあるんです。kikiさんは食指が動かないようですが(笑)、本物の3Dは今のところこの作品しかないような気がします。

  • 2010/05/01 (Sat) 09:18

    mayumiさん。ワタシは基本的に映画はサービスデーに行くので、他の日よりは混んでいる状態で観る事が多いんですよ。でも前売りを買ったなら、サービスデー以外の日に2Dを観に行けば問題ないかもですわ。
    そうそう、これも字幕のみ3Dって感じでしたね。なんでもかんでも後から3Dにしなくてもよくってよ!と呆れました。ホンモノはアバターだけだから、やたらめったらアバターがヒットしたんでしょうね。(でもどうしても観る気になれないのだけど)この先、専用のカメラで撮られた3D物がジャカジャカ出てくるんでしょうが、ワタシはあまり3Dに意味を見出してないので当面、3D物はいいや…って感じです。(笑)

  • 2010/05/19 (Wed) 00:35

    2Dで観ました。3Dじゃなくてもいいですね。これは。
    そして、kikiさん、クライマックスで寝たとは・・・(笑)。でもレイトでご覧になったそうなので、それは仕方ないかもしれませんね。
    で、アン・ハサウェイ。私も厚化粧だと思いました!なんであんなメイクなんでしょうね?あと白の女王って、心優しい設定だけど、自分は殺生はイヤ、なんて言ってアリスに戦わせるあたり、結構したたかなんじゃないかと・・・。

  • 2010/05/19 (Wed) 07:21

    そうそう。3D効果は殆ど生かせてなかったので2Dで十分でしたね。ちょうどすっぽりと闘いのシーンだけ寝てしまってねぇ。何か眠気を誘う空気が流れていたんじゃないか、と(笑)
    そして、アン・ハサウェイの黒い化粧には、白の女王の裏性格が隠されていたりしてね。深読みしすぎかな。ふふふ。

  • 2010/06/15 (Tue) 22:47

    見ましたわ、やっと。私もアン・ハサウェイのメイクはどうなんだろうと思ったクチです。ヘレナ・ボナム・カーターも楽しんでやってそうな役柄でこちらも見ていて楽しかった。アリスの彼女は、私にはグウィネス・パルトローが若かったらこの役もらってたんだろうな、でももうそれをする年頃でもないし、彼女に白羽の矢がたったのかなと思うほど、グウィネスを思い出させ、かつ私はグウィネスが好きではないので、ちょっと今ひとつ肩入れできなかった・・・ですわ。まあ物語としては可もなく不可もなく。戦いのシーンは別に寝てしまっても問題なかったでしょう。なんかこれみよがしにあの時代の女の子が男性にプロポーズされて人生終わるだけでなく、自分で人生切り開いていくのよ的風が吹いているのはちょっとなあ~、と。まあそれくらい。

  • 2010/06/16 (Wed) 00:31

    あらら。Sophieさん。これを観に行くとは意外でしたわ。はてミア・ワシコウスカ。グィネスに似てたかしらねぇ…。グィネスよりも基本的に美形だと思うのだが…。ワタシはガルボのファンだから、ああいうむっつりしたクールな顔の女子は好みなのよね。で、アン・ハサウェイ。なんか西の魔女って感じでしたね。最近ますます顔のパーツが顔面からはみ出しがちになってるのにねぇ。あの大きな口に黒い口紅で…。で、これはストーリーどうこうという映画じゃないから、ワンダーランドのビジュアルが楽しめたか否か、ということじゃなかろうかと。ワタシはいつものティム君臭のぷんぷんしたコテコテ映画よりもさらっと観られて良かったわ。戦争シーンはやはり大した事なかったのね。ふほ。でも、今ごろこれを観るよりも、お子たちを連れてぜひ筋肉王子をご覧あれ。早くしないとあっという間に終了しちゃうかもしれなくてですわよ。日本じゃ殊更に入りが悪い気配ゆえ…(笑)

  • 2010/06/16 (Wed) 10:48

    そうか、グウィネスに似てるなんて思ったのは私だけだったのかしら。ははは。考えてみれば確かにお話よりはビジュアルか。そういう意味では楽しかったかな。
    そういえば筋肉王子のプレビューを子どもたちに見せてみたのですが、「んー、別に」みたいな反応で食指が動いてくれませんでしたのよ。残念ながら。も一回見せてみようかね。早くしないと終わるよね。

  • 2010/06/16 (Wed) 23:04

    「アリス~」にはお子たちは満足してたかしらん?(笑)そこそこ外さないラインだものね。映像は印象的ではあるし。
    で、「筋肉王子」。子供にもそっぽ向かれるとはいかなる事か。いかにもティピカルな話で子供でも見られるし、オトナが観ても楽しい映画なのだが…。ま、お子ちゃまには王子をオーリーが演じてた方が受け入れ易かったかもだけどね。王子をジェイキーがやっているところが子供向けでない証左なのよね。ふふふ。しっかし、よほどアピール施策がなってなかったのね~この映画。投げ捨てているとしか思えぬわ。失敬なり。ディズニーの責任よ。「アリス」ばかり売り込みおって。「筋肉王子」観た人はみんな面白いと言ってるのだけどねぇ。ワタシは毎回違う人を伴ってもう3回見たわよ。終了しないうちにあと1回ぐらい行くわ(笑)デートムービーにも向いてるから子供はほっといて、旦那さんとお行きなさいな。DVDでもいいけど、あれはやっているうちに劇場で観なくっちゃ損!な映画ですわよん♪

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