MI-5(SPOOKS) シリーズ1?3

~国家保安の名のもとに~
2002?2004年 英BBC



前から面白いという噂はチラホラと聞いていたのだけど、TVドラマまで手が廻らぬ状態だったりしてなかなか見られなかったBBCのヒット・シリーズ。4月から5月にかけて劇場封切りの新作映画に殆ど食指が動かなかったこともあり、ふと思いだして折に触れぽつぽつと観賞。

ワタシは殆ど海外ドラマを(国内ドラマも)見ない方だけれど、それでもアメリカ製のドラマよりはイギリス製のドラマの方がずっと肌合いがいいというのはある。これまでイギリス製のドラマといえば2本の探偵シリーズ「ホームズ」(グラナダTV)と「ポワロ」(LWT)及びジェーン・オースティン物(BBC)などを主に観てきたけれど、どれもクオリティが高かった。特にBBC制作の番組というのはドラマでもドキュメンタリーでも、必ず一定水準以上のクオリティを保持しているのがお見事。但し、BBC制作のドラマは女優の美人度が低めなのが難点ではある。

利用しているビデオ・オンデマンドサービスで、毎月定額のサービス料の範囲でラインナップされた洋邦の映画やドラマを見放題に観られる(でもラインナップされているものしか観られない。だから、どうでもいいものもかなり混ざってはいる)状態なので、その中の海外ドラマコーナーの中にMI-5のシリーズ1~3が入っていて、わざわざレンタルしてこなくても見られるので観てみようかしらん、という気持ちになった。

で、この「MI-5」はあの007の「MI-6」が国外の諜報活動を行う組織なのに対し、英国内の治安保持が任務の情報機関。諜報員たちは英国内でテロリストや反政府主義者たちによって企てられる陰謀や組織犯罪に対する諜報活動を行う、らしい。国家保安の名の元に、けっこう無茶な事をやりまくっている。

これを見るとMI-5とMI-6は互いに「ファイブめ!」とか「またシックスが!」とか張り合っている。諜報員を束ねる部長(ですかね)ハリーを演じるピーター・ファースが味のある存在感を出していてシブい。彼と同じポジションらしい「シックス」のジュールスを演じるのはヒュー・ローリー。どこかで観た人だと思ったら「いつか晴れた日に」に出ていた。(尤もジュールスはシリーズ1でしか見かけないけど)
ピーター・ファースが演じるハリーはコワモテのようだが基本的には部下想いの親分であるものの、ダメな時には即時にダメと判断を下す性根の座った上司である。


腹の座ったボスっぷりがなかなかシブいピーター・ファース

シリーズ1、2を通してメインの登場人物トム・クインを演じるマシュー・マクファーディンも、このシリーズでの姿が一番すっきりとしてスマートな印象だ。そらまめに青い目がついているような、子供みたいなかわいい顔だけど、もちろん仕事っぷりはシビアで切れ者である。
シリーズ2の冒頭まで登場するマシュー・マクファーディン扮するトムがやたらに熱愛して同棲している子持ち女エリーを演じている女優が地味で可愛げがなく、おそろしいほど魅力薄。実は少し前にもシリーズ1を観ようとして何度か挫折していたのだが、それは、トムの私生活がウジャウジャと描かれる部分がかなり邪魔に感じたからというのが大きい。毎度この子持ち女が出てくるたびに早送りしたくなった。BBCドラマの通弊ゆえ美人度は低いなぁ、とため息が出たが、MI-5のチームにいるブロンドのゾーイ(キーリー・ホウズ:実生活でマシュー・マクファーディン夫人)はキュートだし、シリーズ2からは徐々に美人登場率も上がってきて(でもシリーズ3からまた美人率は降下気味となる感じ…)、エピソードも面白くなってくる。


昔のトム・ハンクスにもちょっと似てる時があるようなマシュー


同僚ゾーイを演じるマシュー夫人キーリー・ホウズ

シリーズ1では、同棲する子持ち女に正体を打ち明けざるを得なくなったトムが、女に愛想を尽かされながらもいつまでも未練げにつきまとっている様子を見ると、とほほな気分になる。一体に、こういうお国の機関で働いているような男とつき合っている女が、男が言えないと言っているのにしつこく仕事の内容を聞き出そうとしたり、どこに行くのか、何をしに行くのか、根掘り葉掘り問い詰めたりするのをみていると、「だから、こういう女はダメに決まってるでしょうに」とウンザリしてしまうのだ。「アメリカを売った男」にもこの手のしょうもない女が出てきてかなり苛々したが、機密で言えないと言ってるんだから聞かないでおいてやる、という事ができないような女とは付き合うなかれ、である。面倒の元である。だから結局、この地味な子持ち女とはシリーズ2で早々にブロークアップするのだが、その後、近づいてきたCIAの美人スパイ・クリスティンに関わった事がトムに最大の危機をもたらす。相手も同業だったら具合が結構というわけにもいかないのが辛いところ。二重底、三重底のある諜報員の世界は泥沼の闇なのだ。このCIAの女スパイはブロンドでなかなかの美人(メイガン・ドッド)だと思ったらやっぱりアメリカ産だった。いずれにせよ、エスピオナージ物にはやはり裏のあるブロンド美人というのは必要不可欠である。さるにても、スパイの色恋沙汰はリスキーだ。


まぁ、たまにはこのぐらいな美人も出てこないとね

こういう仕事をしているからって人並の生活を望んじゃいけないって事はないだろうけど、おのづから制限はある。いずれにしたって一般市民のようなわけにはいかない。そんな彼らが一般市民と個人的に接触して付き合ったり、部屋に入れたりするのを見ていると、あらあらプライベートなお部屋は危険よ、やめたら~なんて気を揉んだりして。

ともあれ、シリーズ1ではIRAがらみの事件が多かったがシリーズ2以降ではアルカイダ関連のテロリストネタが多くなり、その時々の政権や情勢をきちんと反映させたストーリー作りが興味深い。熾烈な「シックス」とのライバル意識と合わせて、払い除け切れないCIAの影響力なども、現実にありそうな事だなと頷ける。また政府内部からの様々な圧力などを適宜交わしたりねじ伏せたりしつつ、MI-5は今日も任務に邁進するのである。

このドラマを観ていると、ヨーロッパはあちこちから移民がなだれ込んで来て厄介なのと、地理的にアラブとも近いというややこしさがあるのをリアルに感じるし、またMI-5の活動と来たら、事件を捏造するのも思いのまま。貸しを作って忘れた頃にそれを回収すると称して危ない事に一般人を利用したりもする。人ひとりの人生をネジ曲げる事も辞さない。また、ストレスの多い仕事に従事する諜報員たちの心の揺れなども1話完結のエピソードの合間、合間を通して描かれていく。


スパイ稼業は悩みが満載 …あぁ辛いなぁ

こっそり忍び込んだり盗聴したり、誰かに成りすましたり、二重スパイを摘発したり、なんて事を毎日毎日やってると根は真っ暗になるでしょうしねぇ。性格も歪むわね。あんな状況の中で平常心を保っていくのは尋常ならざる客観性と平衡感覚を要するだろう。時には全てがイヤになり、投げ出したくもなるだろう。でも実在の組織ゆえ、日々任務に勤しんでおられる諜報員の皆さんが存在するわけですのでね。みんな、そういう状況の中で頑張っておられるという事ですわね。平均的に年収はどのぐらいで、何年ぐらい仕事を続けて、定着率や生存率はどのぐらいなのか、というのもちょっと知りたくなったりした。最初は皆、国の為という使命感に燃えて入局するんだろうけど、それがいつまで保つものなのか。任務という名の偽りの人生とギリギリの綱渡りに、いつまで耐えていけるものなのか。また、任務を遂行しているうちに、いつの間にか陥る落とし穴に嵌らずに切り抜けて行くのは至難の技だろうとも思われる。
ハリーのポジションまで行き着けるのは、一体、何人に一人なのか、などなど。

そのハリーが辞めざるをえなくなったトムに一言「羨ましい」と言うのは、偽らざる本音のような気がする。

マシュー演じるトムが組織を去るのと前後して補充された新メンバーとしてMI-6から投入されたアダム・カーター(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)が加わり、シリーズ3からは、それなりにまた面白い展開になっている。ルパート・ペンリー=ジョーンズはなかなか男前で、陽気で洒脱な感じがいいですわね。でも、彼とても一応結婚はしているものの、女房も同業者で家庭生活は実質的に存在しない状態。子供のためにそんな事でいいのか、と彼もやはり懐疑的になっていくわけで、何も考えずに天職のようにやっていくというのは人間にはムリな仕事ではありましょうね。大体、こういう仕事をする人はシングルで居ないとダメじゃないのかしらん。そして現役で活躍するのは限られた年数だけで、後は人知れず引退して一般市民に戻るようにしないと、ずっと続ける事は不可能だろうなぁという気がする。



現在はシリーズ7か8ぐらいまで制作されているらしく、かなり顔ぶれも変わっているようなので、ずっと見続けている人は「今ごろ何書いてんの~」という感じでもありましょうが、確かにBBC制作らしく、よくできたTVシリーズで、終始さもありなんとうなづきながら興味深く観賞した。

コメント

  • 2010/05/17 (Mon) 17:02

    うほほほ、MI-5。kikiさんご覧になりましたのですねん。そうですよね、あの頃が一番引き締まってて、マシューかっこいいかなと。ま、若いしね。でもほんとあのおばさんエリーには私も大不満。っていうかもうちょっと誰かいないんですかとよく思いました。でも個人的にはkikiさんにとってうざかったトムの私生活は私のマシュー萌えツボでしたのよん。歯磨いてたり、ボクサーショーツで階段から下りて来ちゃったり。かわいらしい。マシューの後を引き継いだルパート・ペンリー・ジョーンズも別のオースティンもので見てて、割にいいなと思ってたけど、マシューがいなくなってからMI-5は見てないです。ホント、スパイって言うのはなかなかに辛い人生ですよね。人にもおおっぴらに話せる職業ではなし。

  • 2010/05/17 (Mon) 22:10

    Sophieさん。観てみましたわよ。マシュー、若いよね。ドラマも緊迫感があって面白かったです。シリーズ1~3全話観たわけじゃなく、梗概を読んでおもしろそうなエピソードをピックアップして観ました。まだやってるのかと調べたら現在シリーズ8まで出来てるとかで、驚きましたわい。で、あのおばさんエリー、ドン引くよねぇ。トムのプライベートにゲンナリした云々も、トムがどうこうじゃなくて、あのエリーおばさんが生活につかれた地味なブサ顔で自己主張しまくるのがウザくって見ちゃおられんて感じになっちゃったのねん。もうちっといい感じの女優だったら良かったに…。マシューのトムは退場間際の2、3話が何か可哀想な感じで良かったですわ。ルパート・ペンリー・ジョーンズは目と目が離れて暢気そうな顔ね。たまたまオンデマンドサービスに1~3が入ってたのでシリーズごとに何話か観て、面白かったんだけど、この先のシリーズまではもうフォローしなくていいかな、という感じも(笑)

  • 2012/09/17 (Mon) 01:17

    今更なコメントで恐縮ですが、私は最近ちゃんとMI5を見始めました。
    (以前、シリーズ2の途中まで見ていたのですが、仕事と生活が忙しくなり、「ドラマは明るくないと自分が辛い」と思うようになっていたので、遠ざかっていました。)
    結構、木偶の坊にも見えるトムが好きだったので、シリーズ3で早々にリタイアしたのは悲しかったです。まあ、マシュー・マクファーディンの他の作品をあまり見ていないのですが。

    それで、ついさっきシリーズ2をちゃんと見ようと見直していたところ、若き日のカンバーバッチ君が出演してました。 テロリストにそれとは知らず情報を流して金儲けしてしまった下級公務員という役柄で。。金髪で。。
    10年くらい前の作品だと思うのですが、顔が今と変わらないので、笑ってしまいました。
    あの声は、まだなかったですね。まあ、役柄上も不要だったんでしょうけど。
    こうやって、地道にキャリアを重ねてたのね~、と。

    マクファーディンの声は低くて、いい声だと思います。
    今も活躍されているんでしょうね。
    MI5は、密度が濃くて、こちらに体力があれば面白い作品だと思います。
    思うに、海外ドラマの中でも、BBCの短いシリーズはとても脚本がいいように思います。密度が濃くて、物語の織り交ぜ方が上手い。
    やっぱり、演劇がステータスを確立している国ならではの層の厚さ故なのでしょうか。

  • 2012/09/17 (Mon) 22:01

    ココさん
    最近、またちゃんとMI-5を見始められたんですね。最初の方のシーズンとか、あまり見なくなっているから改めて観ると新鮮かもですね。
    そうそう、トム・クイン役のマシュー・マクファーディンもやはり何よりも声が良いんですよね。低くて落ち着いた知的な声です。あと、目も綺麗なブルーで憂いがかっていてなかなか良いです。マシュー・マクファーディンを日本で一躍有名にしたのは「プライドと偏見」なんだろうと思いますが、あの時はヌボーっとしてフランケンぽいし、ダーシー役ではやはり何といってもコリン・ファースがダントツだと思うので、マシューはMI-5の方がいいように思います。彼ははどちらかといえばドラマ俳優のようなので映画にはあまり出ませんが、BBCなどのドラマに出て着実にキャリアを積んでいっているようです。

    おお、初期MI-5にバッチ君も出てたんですね。ははは、2002年のあたりというのは、BBCの人気番組にちょこちょこと出演するという事が多かったみたいですね。「Hawking」以降、ちょい役はなくなったのかな、と思いますが。彼は当初、あそこまで深い声ではしゃべってないですわね。なんでもタバコを吸って、少し低い声にしたんだとか。若い頃はもっとライトな声でセリフを言ってますよね。

    MI-5は面白いし、緊迫感とスピード感はかなりのものなので、本当に質は高いんですが、何しろしんどい話が多いので、精神的に元気な時か、ああいうものが凄く観たい!という時じゃないと観られないんですよね。疲れちゃって。観たいという気になった時がチャンスですから、バッチリと観賞されてください。BBCのドラマは「だってBBCだからね」という感じで、どこか質については信用してますよね。あそこまでクオリティを保つのは大変でしょうが、やはり見識がきちんとあるんじゃないでしょうか。大事ですよねぇ、見識は。日本のTV局はそれがなくなったのでダメなんだと思います。

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