「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」

~運命と兄弟愛~
2010年 米 マイク・ニューウェル監督



ずっと日本での入りが悪い事についてぼやいてきたワタシですが、ブラッカイマー作品としては北米であまり伸びず、特に日本では揮わなかった感じなれども、その他の国と地域も含めた全世界興収では既に3億ドルを突破したとかで、ゲームがベースの映画としては「トゥームレイダー」を抜いて1位らしい。欧州で稼ぎましたかね、筋肉王子。今後DVD化されるとその収益も加算されて、更にいいセンまで行くでしょね。となると、ジェイク自身も意欲を燃やしているという続編もアリになってきたかしら。きゃ?、楽しみ。ただ、その折のヒロインはもっと華のある女優にお願いしたいかな。ティピカルな冒険活劇には、ティピカルな美貌のヒロインが望ましいのは、やはり動かぬ本音。
(これまで珍しくネタバレを避けてきたワタシだけれど、もうじき公開も終了なのでちょっと内容を変えてネタバレもあり)
で、地元の北米でメガヒットにまではならなかった(北米での最終興収は1億ドルあたりの見込み)原因の最たるものに、なんだか猫も杓子も3D時代に(困った風潮ですが)3Dじゃなかった事と、あの湾岸戦争への批判と風刺がストーリーに盛り込まれた、という事がありそう。なんだかんだ言って、脳天気に観たいファンタジーに、アメリカ人にとっては苦い過去を蒸し返されたのが敬遠されたような。(でも、それをやっちゃったところがこの作品のいいところでもあると思ってますが)そしてヒロインとしてのジェマの地味さに加え、アクションファンタジーにジェイキーが主演するという事の違和感あたりも含まれそうですが、どちらかといえばスタッフもキャストもUK主体でロンドンで撮影し、プレミアもロンドンで行い、欧州市場に気合を入れていた(大元のゲームもヨーロッパ発みたいだし)気配のある本作。全世界興収的には大成功みたいなので、まずは狙い通り、なのかしらん。何はともあれ、良かったよかった。北米の興収ばかりが全てじゃないものね。

そして、やっぱり本作におけるジェイキーは観れば観るほどナイスでございます。
野性味もあるけれどもそれだけが全面展開しているわけではなく、甘さも憂いも場面ごとにいい具合に加味され、ちょっとむさくるしくてもどことはなしに品があり、acineさんの表現通りに濃いようでも涼しく、少年のようで青年であり、男臭そうでいて爽やか王子であり、という雰囲気が、ジェイキー生来の育ちのいいお坊ちゃん的な持ち味をベースに、よ~く出てました。



そして名台詞も2つばかりあるざます。

タミーナ「短剣を守ること、それが私の運命だった」
ダスタン「今日から二人の運命にしよう」
…言うねぇ。ヒューヒュー。
そして、もう1つのキメの一言。
「運命は自分の手で作るものです」
そう。運命は決められた事ではなく、自分で変えていくもの、なんざましょうね。

とにかく、あまりにも登場人物が次々に死んでしまうので、砂で時が捲き戻らなかったら、シェークスピアもびっくりな大悲劇になっちゃったところである。何しろ筋肉王子本人さえ、一度死んでしまうものね。父親殺しの咎で自分に追っ手をかけた兄タスが、短剣の宝石を押してくれる事を信じて、一か八かの賭けに出るシーンはダスタンをジェイクが演じている事の効果がよく出ておりましたね。あの目で「兄さん!」なんて一生懸命な顔されたら、ねぇ。とりあえず短剣の宝石を押してみなくちゃ、とタスならずとも思うだろう。

また、時を捲き戻して父王を殺した嫌疑を晴らし、真犯人を成敗したいダスタンなれども、時間の砂時計にナイフを刺し、そのまま際限なく砂を流出させ続けると、砂時計が割れて砂嵐が起こり、全世界が滅びる、とかきくどくタミーナの主張を受け入れて、自分の悲願は捨て、短剣を守護する彼女のさだめを自分も引き受けようとするあたりも、全体にトントンとスピーディな流れの中でドラマティックな部分として印象に残る。


人はそれを運命と呼ぶ

最終的にはそんな時をかける王子の奮闘で、ほどよきところまで時間が捲き戻り、大間違いをただすことができたわけだが、時間の砂をめぐるクェストの中で、互いに毒づきあい、当初はいかに相手を出しぬくかしか考えていなかった王子と姫が次第に惹かれあい、大事な存在になるまでの記憶が、筋肉王子の方には残っているが、共にあんなに冒険をした姫には無くなっている。時が戻っているので、冒険の旅に出る前の彼女に戻ったからだが、少し前の初対面の時と筋肉王子ダスタンの中で何かが変わっていることをタミーナ姫の方も漠然と感じ取る。しかし、決死の短剣争奪戦のドサクサにチューもして(何もあんなところであんな時にチューしなくても…と思うのだけど、時間が戻るとポライトネスな関係になるのでチューどころじゃないわけである)、絶叫とともにあんな別れかたをしたのに彼女にはその記憶はない。というか、それは捲き戻り書き換えられた歴史の中で失われた事実であり、もはやダスタンの記憶の中にしか残っていないのだ。これからまた、二人で良い関係を築いて行く事はできるだろう。ダスタンはそう確信しているが、一方で騙し騙されながら命がけで砂漠を旅する間に二人の間に生まれた何かが永遠に消え去った事に対して、かすかな愛惜もあるかもしれない。ラストのダスタンの紳士的な様子には、そんな想いもにじんでいるように見えた。



そして、ここでもドラマティックで悩ましい砂漠の光景がモノを言う。砂漠の光景って何故か魅力的だ。実際に行ってみたいとは全く思わないし、からからに乾いて暑くて苦しい場所なのに、なぜか心を惹きつけるあのビジュアル。大昔に観たミュージカル映画の「星の王子さま」に♪砂漠はなぜ美しい~(Why is the desert so lovely to see~)というナンバーがあったっけ。

砂漠はなぜ美しい~
なぜだろう~
すばらしいわけがある
砂漠は井戸を隠してる



どこかにオアシスを内包している死の砂漠。砂嵐と蠍。烈日の昼と満天の星が輝く夜。
「砂漠は清潔だ」というロレンスの言葉通り、カラカラなので雑菌もいない。ジェイキーも意外に砂漠での撮影が多い俳優なのだが(「ジャーヘッド」、「レンディション」そして「プリンス・オブ・ペルシャ」)、「砂漠の撮影は嫌いじゃない。砂漠はあったかくて清潔だよ」と言っている。

お話の軸になっている兄弟愛も、さらりといい感じで描かれてましたね。けっこう、兄達に好感を覚える人も多いようで、これはキャスティングがさりげに上手かったのかな。長男タスを演じているリチャード・コイルも次男ガーシヴを演じているトビー・ケベルもUKの俳優。…というか、ジェイキー以外の主要キャストは殆どUK出身の俳優ばかりなのだけど、これは一応歴史劇なので、英国の発音でそれなりのクラシカルな空気を台詞まわしなどにも出したい、というブラッカイマーの計算かららしい。まぁ、確かにディズニー作品であろうとも、ミャーミャーレロレロなアメリカ英語よりは説得力があろうってものですね。ジェイキーも特訓して英国発音で台詞を言った、というのだけど、そう言われてみればなんとなく英国風の発音で綺麗に話しているな、という感じではあります。


兄たちとダスタン 「プリンス・オブ・ペルシャ」はもう1本の「Brothers」でもある

老いた王とそれを取り巻く3人の王子たち、という構図もそれなりに決まっていたし、シャラマン王(ロナルド・ピックアップ)が、筋肉王子を傍に置いて話す時、小さな子供にするように頬に触って、本当に可愛くてしょうがないと思っている感じがよく出ていた。
「偉大な戦士は闘わない。わしが市場でみつけた少年は、そんな偉大な戦士になれる素質があるはずだ」
愛される息子役には黙っていてもすぐなりきれるジェイキー。
きっと撮影現場も和気藹々だったのね。容易に想像できるわ。


老いた父王と息子

暗殺団ハッサンシンの襲撃や、それらを迎え撃っての闘いも大迫力があり、スピーディで盛り上がってます。ありがちな蛇の多用も、またか!と思わないではないけれども、この手の物語ではお約束でもあるので目をつぶっておきましょう。

ダークホース的な儲け役だったのが、ンバカ族のナイフ投げの名手・セソ(スティーヴ・トゥーサント)。凄腕で寡黙、義理に厚く、じっと黙って周囲を見ながら、自分なりの基準で行動を決める。こりゃカッコイイものね。この役は美味しかったわね。おまけにナイフ投げっていうのが、またえもいわれずカッコイイものであるし。一撃で三人を倒す、なんてね。ヒュ~ヒュ~!

そんなわけで、ワタシ的にはジェイクの勇姿に加えて砂漠の光景や、それに被る音楽もよし、ほどよきエキゾティシズムも味わえて、好物の揃った映画だったのでこれまでに4回観ましたねぇ。(もしかするとあと1回行くかもしれない)現状では公開中に1本の映画を複数回観に行った自己記録では「カジノ・ロワイヤル」の4回とタイ。終了までにあと1回行けば新記録という事で、梅雨入りしてジメジメした空気の中、ワタシをおおいに楽しませてくれました。これぞエンターティメントの効能。

3年ぶりのジェイクの新作という事だけでも気分的にはプレミアがつくところに持ってきて、爽快感100%の仕上がりで観賞後は晴れ上がった空のような気分になること請け合いの「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」。早くDVDが出てほしいな。まったりと自室で寛ぎながら、好きな時に好きなだけ筋肉王子に逢いたいものだと今から早くもDVD化を待ち望むkikiでございます。

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