「アナザー・カントリー」(ANOTHER COUNTRY)

~うら若きコリン・ファース
1983年 英 マレク・カニエフスカ監督



少し前に映画チャンネルで放映されたのを録画して、先日、超・久々に観賞。
ルパート・エヴェレットはどうでもいいワタシにとっては、うら若いコリン・ファースを観賞するための作品ということになる。昔、封切り当時に観た時には、あまりコリンは印象に残らなかったのだけど、今観るとコリンしか印象に残らない映画。ひょろりと長細く、手前勝手なルパート・エヴェレットのガイに対して、筋がね入りのコミュニストでマルキシズムにどっぷりと浸っているコリンのジャドは、シャキっと芯が一本通っていて、頑固一徹なそのキャラと若々しいルックスは、シャープなイギリス発音の英語のキレとともに「やっぱりナイス」というに尽きる。コリンは何といっても「高慢と偏見」が一押しではあるものの、本作におけるコリンも捨て難い味わい。(というかこの映画はコリンとパブリック・スクールの雰囲気以外に観るべきものはない)

スッキリさわやか

陰翳深い映像の中、きっちりとした服装の学生たちが、カツカツを靴を鳴らして歩き、どうでもいいような瑣末な事で額を寄せ合って密談したり、一計を案じたりするパブリック・スクール的世界。学校にいるうちにしかるべき役割や役職を経験しておかないと、学校を出てから花形の官僚や政治家にはなれないとあっては、下らなかろが瑣末な事であろうが、ムキにならずにおらりょうか、というところだろうか。



ガイ・ベネット(ルパート・エヴェレット)は、良家の子息で次期「代表」を狙う野心家だが、同性愛の性癖を持っている。冒頭に同性愛行為を人に見られて自殺する同級生のエピソードが出てくるが、禁忌の強かった時代の事とて、こういう自殺者はパブリック・スクール物のお約束。だが、そんな事がありつつも、ガイは校内で見かけたブロンドの学生ジェイムズ(ケーリー・エルウィス)に恋をする。



なんだかガイの恋愛も逢引もおままごとのようだし、恋されるジェームズ(エルウィス)もイマイチな感じで垢抜けず、夢心地になるような恋愛か~という感じだけれど、観ていて不思議なのは、この浮かれトンビでちゃらちゃらしたガイと、主義主張のハッキリしたアカの闘志であるジャド(コリン)が何故、友達なのだろう~~~という事だ。ジャドのような人はガイみたいな奴を蛇蝎のごとく嫌いなんじゃないのかしらねぇ。不思議といえば、名門の出で決められたコースを辿ってきたらしいガイはともかく、特権階級の生まれではないらしいジャドがぶつぶつと文句を言いながら権威主義の塊のようなイートン校に何故入ったのだろう~という事もある。最高の教育を受けるために仕方無く~うーん。どう考えたって合わないじゃないの(笑)資本論を隠れて読まなくちゃならないような学校で、闘志ジャドはなんとするのか。


若~~~いコリン

取り澄ました顔で、堅苦しい服装をして、シャビーな権力闘争に明け暮れている学生たちは滑稽にしか見えないが、でも、きっとこんな風だったんでしょうね。(今でも~)それにしても軍事教練のシーンでの、ルパート・エヴェレットの軍服姿のヘチョヘチョな事ときたら…。なで肩で首が長いと、何を着てもナヨっちく見える。
余談だが、ルパート・エヴェレットはこの役の上だけでなく、実際もゲイである(やっぱりね)ことを、売り出して数年後にカミングアウトしたけれど、うっかりカミングアウトしたら、潮が引くように仕事のオファーがなくなったとか。本作で注目され、引く手あまたで欧州の映画にあれこれと出ていたと思ったら、ある時からパタっと消息を聞かなくなったのはカミングアウトののちに、干されちゃったからなのだね、と随分あとになって知った。再び仕事が来るようになるまでに随分廻り道をしてしまった、と語っていたらしい。
そうでしょうねぇ。正直者は損をする。

そのエヴェレット演じるガイは、恋人に付文をしたのを代表レースのライバルに横取りされて、居並ぶ幹部学生たちのただ中でお尻を鞭打たれるという情けない懲罰を喰らい、しくしくとすすり泣き、挙句が学校の権威主義とそこに集う特権階級の連中に憎悪を抱くようになり、ジャドの主義にかぶれていく、という筋書きで、同じような男子の寄宿制学校のお話でも、少女漫画だったけれど萩尾望都の「トーマの心臓」の方が、よほどテーマ性が深かったなぁと思う。


ウルトラ撫で肩のルパート・エヴェレット

ハンチクなガイの悩みよりも、自分に遺書を残して死んだ年下の学生の死と愛、人種的問題や宗教的な苦悩を幾重にも抱えつつ、仮面を被って日々をやりすごすユーリの悩みの方がずっと重く深そうだ。そして、「トーマの心臓」でもユーリやトーマ、エーリクよりも、ユーリの苦悩をじっと見守るオスカーに目が行っていたワタシ。「アナザー・カントリー」でもジャドを演じるコリン・ファースに目が行くのは自然のなりゆき~
ともあれ、コリンが出ていなかったら、今更けして見る事もなかった作品だろうけれど、やはりコリンだけは良いですね。コリン演じるジャドがのちにスペイン内乱に参加して命を落とすというのも、さもありなんと思いつつ、ちくりと胸を衝かれる。
これは実話をベースにしたという舞台劇の映画化。貰った病は重いというが、ふとした事から共産主義に靡いて、ロシアへ渡り、そのままずっとスパイ活動に従事して、かの地で生涯を終えた男の、そもそもの発端の物語だ。



英国の名門校での禁断の同性愛など似たような道具立ての映画に「モーリス」があるが、あっちの方が出来がいい。ただ、本作の陰翳の深い映像は、名門校(=英国上流階級)の権威主義や特権意識、古い因習などを視覚的にじわーっと表していたと思う。

コメント

  • 2013/08/09 (Fri) 15:24

    Hello!kikiさん!
    「聖(セント)トリニアンズ女学院」「聖(セント)トリニアンズ女学院2」ご覧になりました?すでにご覧になっていてお好きでなかったら無視してくださいな。

    ルパート・エヴェレットとコリン・ファースのセルフパロディ満載!抱腹絶倒な映画です。後年この映画を作るため「アナザー・カントリー」作ったんじゃないかしら(冗談)って勘ぐってしまうくらいww。さすがにイギリス!ひねりが効いていますよ。舞台は女子ボーディングスクール。あのガイとジャドのなんだか悲惨なボーディング(パブリック)スクールではなく、めちゃめちゃ楽しそうで私も若かったらこんな学校行きたいと思うような・・・ちと危険かな?

    出てくる女の子達もめっちゃかわいくてタフでクールなのよ。これがデビュー作のジェマ・アータートンのヘッドガール(寮長)が超格好良くって。「2」では、卒業してMI7(?)で活躍してるって設定だからダニエルの「慰めの報酬」であっけなく殺されてしまうのが「そんなんアリ?」と突っ込みを入れたくなるほどだった(最近やっと007観たの。エヴァちゃんがシリーズ最初で死んじゃったのでその後はどうでもよくなってw)
    ポワロやミス・マープルに出てたタルラ・ライリーやモデルのリリー・コール(秋川リサに似てるよね)、ミーシャ・バートン、ジュノー・テンプルなど若手の活きの良い女優さんがずらり。それぞれ個性ある制服の着こなしを観るのも楽しいし。

    さてさて、ルパートとコリンに戻って。ルパートが何たって最高!このなで肩のゲイの役者さん、いつもどこか浮いてるようでちょっぴり気の毒に思っていたのだけれど、ここにきてぴったりのハマリ役だったと思うよ。寛容でかわいくてしたたかな女校長カミラ!(これって「処刑人」のウィレム・デフォーに匹敵する怪演だわ)このカミラの昔の彼が他ならぬコリン。。。ここでもう笑ってしまうのだけど、二人のシーンにはいつも「慕情」がBGMに流れて。。。「高慢と偏見」のあのダーシーの名場面(のパロディ)もいくつか登場!!「高慢と偏見」のファンに方々には、いやコリン・ファースファンには受け入れて貰えるのだろうかと少々心配になってしまうほど。でも、私はイギリス的シニカルコメディ大好きだから面白かった!それにしてもイギリスの役者さんって懐が深いわね。これ「2」は「英国王のスピーチ」と同時期みたいだから。コリン君いや今やコリン御大はかえって気分転換になって良かったのかもしれない。

    「2」では、終盤がグウィネス・パルトローの「恋におちたシェイクスピア」のパロディになっていて我が愛しのトビー・ジョーンズも出番は少ないけどいい味だしてますよ。(1から出てます)気分が落ち込んだ時や疲れた時コレを観ます。まだまだ私が気付いてないパロディがあるのかも?と毎回新鮮な気持ちで観られる映画です。「アナザー・カントリー」が本当にアナザー・カントリー(別世界)になってしまいますよ(笑)

    映画「アナザー・カントリー」は、例の「裏切りのサーカス」のモデルとなったケンブリッジ・ファイブのひとりガイ・バージェス(つまりルパートがやったガイ・ベネット)のイートン校時代の話。同僚ダブルスパイのドナルド・マクリーンもモデルとなってるらしい。で、何と、この優秀なスパイ外交官ドナルド・マクリーンって実際にルパートの大叔父に当たるんだって!?(カクニンは取ってないけど)

    上流階級(イートンやオックスブリッジ出身)とゲイとスパイってなぜか3点セットになっているのね、イギリスでは。ついでに「恋におちたシェイクスピア」でルパートが演じたライバルの劇作家クリストファー・マーロウもケンブリッジ出身のダブルスパイ(+ゲイ)だったというから犬も歩けば棒じゃあなくてスパイに当たりそう、イギリスではね。さらについでだけれど徳川宗家第16代家達(いえさと)公は、明治初期にイートン校に留学された優れた政治家・外交官でいらっしゃるのだけどあのう・・・そのいわゆる薔薇族であられたようで。。。ここでもイートンが絡んでくるのね。(嗚呼!削除されませんように)

    では最後にコレも。。。シシングハースト・キャッスル・ガーデンご夫妻の夫ハロルド・ニコルソンとガイ・バージェスは生涯友人だったみたいで「アナザー・カントリー」の元々の舞台脚本の(せりふの)中にも名前が出てくるよ!まあ、常識を超越したご夫婦だったみたいだからお互い仲良くバイで・・・と。
    (嗚呼、削除されませんように!)
    日本における白洲次郎と正子かな?ってkikiさん言ってたけど、次郎氏は確かに戦後外交官みたいなことされたり正子奥様は青山二郎や小林秀雄たちのある種の芸術家グループに関わっていたのでやはりこの2組の夫婦はう~ん、似てるかも。まあ、ハロルドはオックスフォードで次郎はケンブリッジだったけれどね(笑)












  • 2013/08/10 (Sat) 10:22

    ジェーンさん
    「聖トリニアンズ女学院」て初耳でしたわ。へー、そんなのがあったんですね。コリンとルパート・エヴェレットがそんなパロディ作品に嬉々として出ているというのも、いかにもUKっぽいですわね。英国王の合間に気分転換にコメディに出て、セルフ・パロディに興じるというのも、英国的余裕でナイスですね。コリンたら。
    確かにね、アメリカのコメディよりも、「モンティ・パイソン」の昔から、イギリスのシニカルなコメディの方が捻りが効いてて面白いし、好みにも合うざます。そのうちどこかで流れてくるかもしれないし、または半額デーにでもチェックしてみるとしますわ。

    ルパート・エヴェレットが実際にも「アナザー・カントリー」関連の人物と血縁があったらしいというのも初耳でしたわ。ふーん、そうなのね。面白い。ケンブリッジ・ファイブについては、最近また新たな本が出たりしてスポットが当ってますね。これも「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」が映画化されたことの効果かな。そう。何故かパブリックスクール→オックスブリッジという経歴の連中からスパイが輩出され、しかもゲイ率高しなのね。英国独特でしょうね。まぁ、いかにもで好きですけどね。ふふふ。

    シシング・ハーストのご夫妻は、互いにバイで好きなように生きていて、互いに束縛しない関係だったんでしょね。二人が了解していれば、かえってそういう方が上手くいくのかも。ススんでるけど、うまくいけば理想的な関係だな、と思わないでもないですわ。

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