「パイレーツ・ロック」(THE BOAT THAT ROCKED)

~60's Pops~
2009年 英/独  リチャード・カーティス監督



これが封切られた頃、「ラブ・アクチュアリー」の監督が放つ!みたいな謳い文句とともに散々トレーラーが流れたのだが、なんだか引っ張られなくてスルーしてしまった。「ラブ・アクチュアリー」ってやたらファンが多い映画だけれど、ワタシはどうもそこまとは思えませんで(コリンが出ていたので観たというのが実際のところ)。ゆえにこれも、その惹き文句では引っ張られないなぁという感じになったのだった。でも、食わず嫌いもなんなので今ごろ観てみたら…あはは、いいですね。ちと長いけど。「ラブ・アクチュアリー」より好ましかった。それにしても、ちょっと観ない間にケネス・ブラナーがヒットラー顔になっていることときたら…。
それにしても、英国も60年代には国営BBCしかラジオ局がなく、ポップスは1日45分しか流されなかったなんてビックリだけど、外貨をしこたま稼いだからというので、ビートルズが女王から勲章を貰っても、そんなテイタラクだったんですねぇ。今昔物語である。
そこで公海上に船を浮かべて、そこから海賊番組を放送しちゃえ、というわけで24時間ポップスを流していた海賊ラジオ局が登場し、英国民をおおいに楽しませていた。…というわけで24時間途切れ目なしに、船の上にいるメンバーだけで番組を繋いでいくってのはゆるくないでしょうねぇ。あの人数でよくやってましたわね。



海賊ラジオ局のオーナーにビル・ナイ(マフラー使いがキマっている)、DJにフィリップ・シーモア・ホフマン(ホフマン族・族長)を始め、「Jの悲劇」でダニエルを追い廻すキモイ奴を演じていたリス・エヴァンスがすっきり細身で伝説のDJギャヴィン役でカッチョよく現れたり、でぶっちょだけど女性には手が早いデイヴ(ニック・フロスト)やら、オクテのサイモン(クリス・オダウド)やら、クールなマーク(トム・ウィズダム:ワタシはこの人がちょっと気になり、調べたら「300」に出演していた首を切られちゃう若い兵士役だった。なかなかのハンサムマンなり)やら、その他、この映画でしか観た事のない俳優もけっこう居たのだけど、みんなそれぞれに60年代イギリスという空気を出していてナイスだった。また、平たい顔でキャピキャピとDJグルーピーの一人としてジェマ・アタートンが登場してきたりして、あら、またジェマが、と思った。色々出てますね。


リス・エヴァンス(左)とビル・ナイ

そして、なんといっても全編を彩る60年代ポップスの数々。60年代の曲というのは余計な装飾や技巧がなく、シンプルでストレートなポップスであり、聴いていて無条件に楽しくなっちゃう曲ばかりだ。そして、そんなポップスたちと男子や女子のサイケデリックな服装というのはなぜかひどくマッチしていて、特に女の子の、あの先っちょだけ外巻きにカールした髪に、バチバチしたつけ睫、ミニスカートにカラータイツで「うふふ」なんて小首なんかかしげられると、思わずニコニコしちゃうってもんでしょうか。知っている曲も知らない曲もあったが、どれもが耳に心地よい。神経症的な曲なんて、この頃の流行り歌には無かったんでしょうね。曲使いで一番受けたのが、伝説のDJ、ギャヴィンと伯爵と呼ばれるフィリップ・シーモア・ホフマン演じるアメリカ人の人気DJがある事から対立し、決着をつけようとマストをよじ登って高飛び込みを競うシーンの背景に流れていたのが、イーストウッドの「荒野の用心棒」のテーマ。エンニオ・モリコーネ作曲。これもモロに60年代臭のする音楽だ。



洋上で24時間ポップスを流し続ける違法な海賊局と、それを取り締ろうと躍起になる当局との攻防、海賊ラジオ船に集う人々の脳天気で心温まる人間模様が、ゴキゲンなポップスに乗せて描かれる。海賊局を潰そうとヒステリックになる大臣にヒットラー風味のケネス・ブラナー。次にヒットラー映画が企画されたら演じるのはこの人しか居ないだろうというぐらいなヒットラー顔。元妻のエマ・トンプソンも、ワンシーンだけちょろりと貫禄の出演を果たしている。ヒットラー顔の大臣の参謀役・トゥワットで登場するのはジャック・ダヴェンポート。ワタシはこの人を「リプリー」で初めて観たのだけど、その名前といい、風貌といい、正しいイギリス発音の台詞廻しといい、いわゆるジョンブルとしてイメージするイギリス男の典型じゃなかろうかと思う。けっこうダンディで上手いし、声が低くていいですね。


多分、意図的にそういうルックスにしたのだろうヒットラー風味のケネス・ブラナー(左)と
ジャック・ダヴェンポート(右)

何があろうとロックンロール魂で24時間放送を続ける海賊船の面々。どんな通告も妨害も横槍も無視して放送を続ける彼らに業をにやした大臣は、やがて強硬手段に訴え、彼らの海賊船は哀れタイタニック号の憂き目をみるが…。

というわけで、官憲の横暴にもどこ吹く風で反骨を押し通す彼らはそのままロック魂であり、気持ちよく「ロックンロール!」と叫び、ロックし続けるわけである。ホフマン族の族長は、ここぞというキメの台詞を全て持って行ったという感じ。(最後のシメのキメ台詞はビル・ナイ)ちょっとカッコつけすぎだけど、まぁいいか。
シメにデヴィッド・ボウイの「レッツ・ダンス」が出てくるとはねぇ。
「レッツ・ダンス」。何年ぶりに聴いたことかしら。ビル・ナイのダンスがキマっていた。

コメント

  • 2010/06/30 (Wed) 23:28

    kikiさん、こんばんは。
    この作品、仏留学時代に「Good Morning England」っていうタイトルで封切られてて、観たいなあと思ってたけど結局観ずじまいで、いつかDVD借りよ、と思ってました。CMがポップな感じで面白そうだったです。
    わたし、ビル・ナイって結構好きなんですよね。「シャンプー台の向こうに」っていう英映画に出てて、怪しげな美容師役だったんですけど、とっても印象に残ってまして。クニャクニャしたイメージです。K・ブラナーは最近の作品はよく知りませんが、エマ・トンプソンと共演して、監督も務めた「愛と死のあいだで」っていうサスペンス映画、随分昔で筋もよく覚えてませんが、伏線がうまく張られたうまい作品だったと思います。邦題はかなりイケてませんが・・。
    英国俳優には大好き~!っていう人はいないんですけども、気になる俳優というのは何人かいて、この人が出てるなら観てみたいなあ、と思わせる人たちです。
    なので、この二人が出てるということでかなりポイント高し、です。P.Sホフマンは「リプリー」「レッドドラゴン」くらいしか観てないですけど、この人も強烈な印象を残す人ですね。ふむふむ、やっぱり本作観るべし!でしょう。
    そしてデビボの「レッツ・ダンス」が聴けるのですね。60年代ポップスとは程遠い、アメリカナイズされた曲だと思うけど、作品的には合ってるのでしょうか??この曲の良さが最初は分からなかったですが、あの「ア~ア~ア~ア~」っていう印象的な出だし、今聴くと懐かしさでいっぱい。「レッツ・ダンス」から路線が大幅に変わってしまって、それを皮肉ったような「ベルベットゴールドマイン」というJ.Rマイヤーズ主演作品を観て、ボウイ・ファンだったわたしはかなりショックを受けたんですけども、話は割に面白くて、C.ベイルがちょいキモなイモ兄ちゃん役で出てましたっけ。ボウイは楽曲提供を頼まれたらしいけど、脚本を読んでかどうかは知りませんが、ちょいと自分に批判的なこの作品に自分の曲を貸すことは許さなかったとか。でもこの映画のサントラ、とても素晴らしい出来で、わたしはCD買ってずいぶんと聴きこんだものでした。

  • 2010/07/01 (Thu) 00:28

    この作品、面白かったですよね。ビル・ナイ、お洒落でダンディーでした。
    で、私もkikiさんと同じく、マーク役の俳優さんがなかなかイケメンだわ♪と思いました。そうですかー。「300」で首切られてるのか・・・。
    私は最初、ケネス・ブラナーがわからなかったんですよ。「はて。どこに出てたかしら?」って。後から思い返して「あれかー!」と。かなりイメージ違いました・・。

  • 2010/07/01 (Thu) 07:16

    ミナリコさん。ワタシ的にはあまり期待しないで観た作品なので、案外ナイスだったなぁって感じでした。DJ役の面々がみんな何となくかわいいしね。確かに評判は良かったのだけど、自称洋楽好きみたいな人がロック大好き!ハッピー!音楽ってサイコー!みたいなノリで書いているレビューを目にするにつけ、うへ…と引いた気分になってスルーしちゃった感じ。でも観て良かったですわ。さらりとユーモアがあってタッチやテンポが好ましい映画でした。BGMに流れる60'S POPSもナイスだったしね。
    で、ケネス・ブラナーですが、ワタシが彼を最初に観たのもその映画ですわ。サスペンスでしたっけね。途中までは良かったけど案外拍子抜けなラスト、みたいな印象があったのだけど…違う?ビル・ナイ、好きだという人多いですよね。ずるい奴やイヤな奴も演じられる、オシャレな爺さんですわね。ワタシはUKの俳優はけっこう好きな人が多いので、企画的に面白そうだと食指が動きやすいです。
    P.S.ホフマンはいい俳優ですよね。好きというほどでもないけれど、なんだか気になる俳優なので、彼が出ていると何となく観たくなるというのはありますわ。
    「レッツ・ダンス」は本編締めくくりの、みんなでダンス!みたいなシーンで流れるんですわ。60'sという事と無関係にダンスということで入ってくるんだけど、「あら、レッツ・ダンスだわ」とニヤリとしました。別に好きな曲ってわけでもないのにね。これが流行るちょっと前に「地球に落ちて来た男」を新宿かどこかに友達と観に行った記憶があります。リバイバル上映されてたんですね。で、「ベルベット・ゴールドマイン」はね、ワタシは100%ユアン狙いで観に行きました。他には目もくれずユアンだけを観て帰ってきた、という感じ。J.Rマイヤーズは背も低いし目と目が離れすぎだわ、とか思ってたりして(笑)あそこに出てた赤いほっぺのちょっとキモイ少年がベイル氏だったというのも最近まで気付きませんで…。今年に入って久々に観てみたんですが、昔はこの映画の何がいいと思ってたのだろう…と唖然としてしまったりして(笑)ブロンドのユアンがカート・コバーンにソックリだ、と一緒に観に行った友が受けてたのを思い出します。

  • 2010/07/01 (Thu) 07:21

    mayumiさん。最近、体調お悪いのですかしら?お大事にね。
    これ、さらっとしてPOPでかわいらしくていい映画でしたね。ウジャウジャ捻くってない60年代POPSをフィーチュアしてるだけあって、何か心持ちのいい映画でしたわ。ビル・ナイ、一人でキメまくってましたね。ラストのキメの台詞もポーズも彼だったし。あ、リス・エヴァンスもかなりキメてたなぁ。俳優は映画によってまるで別人ですね。ケネス・ブラナーは面白がってああいう風采にしたんでしょうけど、うっひゃ~~、と思いましたわ。マーク役の彼はなかなか素敵でしたがほとんど台詞もなくってねぇ。若く見えるけどもう30代半ばですね。これという役がつかないうちに年とっちゃいそう(笑)

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