そのベタな世界観にハマれるか

「007カジノロワイヤル」の今回のタイトルに就いては、あちこち覗いてみると肯定派7割、ちぉっとねー派3割という感じだろうか。

ワタシもご他聞にもれず、公開前にYouTubeでオープニングタイトルの部分は劣化した動画で見ていた。曲は特にいいと思わなかったが、グラフィックスの方には無条件に身を乗り出した。ゲーム画像みたいだとかいう意見もあるが、まあ、それでいいのである。
ある種のキッチュ感も含めて、このグラフィックスには掴まれた。カジノだからモチーフとしてはトランプやルーレットで世界観を作りやすいとも言えるけれど、ふぉふぉーん、ヤルなと思った。

この万華鏡のごとく常にあちこちが動いている世界の中で、ボンドの影絵は幾人かの敵を次々と殴り、或いは銃で撃ち(ここで出てくる弾はトランプのマーク。またはトランプそのものが手裏剣みたいに繰り出されたりもする)、やがて「James Bond 007 status confirmed」となって、カメラの前までトランプとお札が乱舞する中を悠然と進んできて、いやがうえにも青い目の目立つ大アップの見得で本編突入となる。ヒュ?ヒュ?もんである。



モーションキャプチャーであろうボンドの動きを、ややスローテンポにしているのが動作に力を与えている感じもある。
まあ、ウダウダ言うまい。
要は、ワタシは見るなりこのグラフィックスには掴まれたのだ。
そして、劇場で観て、その鮮やかな色彩を堪能した。劣化したネット動画では色もくすんで全体に色調も暗かったので、ひとしお発色の鮮やかさが沁みたのかもしれない。体ひとつで、次々と敵をなぎ倒して進んでいくボンド。くねくねと腰をひねったり、ぷるぷると胸や腹をゆすったりするねーちゃんは一匹も現われない。このカラフルな万華鏡世界は、非情な裏社会に生きる男たちの世界である。そこに唯一存在する女性は、ボンドの心の中に住むヴェスパーだけなのだ。

ダサく感じたとか、くどいと思ったという向きもあるようだが、そもそも007のオープニングタイトルですっきりスマートなものなどあったかどうか(全部観ているわけでもないので断言できないが)記憶にない。スッキリとシンプルに造ることもできたかもしれないが、こういうオープニングを持ってくるという今回の製作陣のセンスが、良くも悪くも自分の感性と合ったのだと思う。だから、何度も観に行ってしまうことになるのだろう。

でも、劇場で観てみて、予想外の収穫があった。それは例のクリス・コーネルがシャウトする主題歌である。主題歌がいい、という人も結構いるし、公開前からいい、いいと言っている人もいたのだけど、YouTubeで聞いた時の印象は「………」という感じ。可もなく不可もないが、格別いいとも思われない、というものだった。よく言われているように、80年代のロック風味バリバリである。微妙な古くさ感だ。
そして、劇場で観てみたら、なんとダッサい字幕がついてきた。うへ!と当初は思ったのだけど、ベタな言葉で「オレの生きてる非情な世界」について歌っているという事がそれでわかり、「無慈悲」とか「欺く」とか「裏切り」とか「冷たい血」だとかのベタなキーワードが、一応作品のエッセンスを伝えているという事がわかると、このダサ感が逆に高揚感に変ってきた。
不思議なものである。歌であるからには音だけではダメで、歌詞の意味がわかるとそこで何かが化学変化を起こすのだ。
今でも曲そのものは、そんなに良いという感じはしないし、これがサントラ盤に入らなかったのはお互いのために(クリス・コーネルにとっても、デビッド・アーノルドにとっても)良かったのだろうと思う。サントラ盤は早速購入して、気持ちよく聴いている。このインストゥメンタルの中に、あれがぶち込まれてもいかがなものかと思われる。その意図はなんであれ、コーネルのご意見で入れなかったのは正解だった。
全体の音楽の中で、主題歌だけが浮き上がっている感じがある。奇妙な違和感がある。だけど、そのコテコテな「オレ様世界」が導入部としては妙に効果的なのだ。ベタな世界観にハマって高揚するのはけっこう快感なのである。
この感じは、ある種東映の任侠映画の主題歌のフィーリングに近いとも言える。(マニアックかつ古い喩えで恐縮)
必ずしもスマートなものだけが、観客の心をつかむわけではないのだ。
なんだかクセになりそうなコテコテ世界なのである。

♪Arm yourself because no-one else here will save you…

気がつくと鼻歌でサビの部分を口ずさんでいたりする。おそるべきそのパワー。
クリス・コーネル 侮りがたし。

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