読書のジレンマ



小説でも他のジャンルのものでも、面白い本を読み始めると
早く先に読み進みたいという欲求と、
そんなにドンドン読むとあっという間に読み終ってしまうから抑えなければ
という二律背反する感情の狭間に落ちる。
ワタシは今、面白い小説を読んでいるので、それをあっという間に
読み終ってしまわないように、極めて短い通勤時間のあいだ
地下鉄の中でだけ読む事にしている。
夜、寝る前に読んではならない。また、時間のある時に読んではならない。
どんどん読み進んでしまうから。
そして、あっという間に読み終えてしまうから。

周知のごとく、面白い小説というのは世間にそう多くはない。
まして、本当に面白い小説となればごく一握りだ。
一挙に読み進んで、物語の余韻に浸っている間はいいが、
暫くたってそれが落ち着いてくると、その後やってくるのは
茫漠とした「祭りのあと」の空白感だ。

ああ、宴が終わってしまった。
桜は散ってしまった。
また、これほど深く余韻を楽しめる作品にはいつ会えるだろうか。
それまでの空白をいかにして埋めたら良かろうか、と。

知人に、本はかなりの速読で、何巻物であっても
読む時には一気読みしてしまうという人がいる。
ワタシが行き帰りの地下鉄の中でだけ読んでいる、と言うと
ひょえ??!そんな事はとても出来ない、とのけぞっていた。
速読を訓練したわけではないが、生来読むのが早いので
人の何倍ものスピードで1冊の本を読み終えてしまうらしいこの知人には
コマ切れにちびちびと読み進む事の方が困難らしい。

世の中にはいろんな人がいる。
たとえば一度読んだ本にはもう目もくれず、次から次へと
新しい本にしか興味が湧かない人もいる。
ワタクシの場合、気に入った本は何度も何度も折に触れ読み返す。
暫くぶりに読むと昔は気付かなかった新たな発見があったりして
お気に入りの本というのは、底が尽きない。

そして、新しく出会った本については
その場限りの娯楽を与えてくれる作品なら一気読みしてもいいが、
本当に面白い作品は到底一気読みなんかできない。するわけにいかない。
読めば読んでしまうけれども、あっけなく読み終えてしまうのがイヤなのだ。
物凄く先を読みたいけれども、じっくりと引っ張りながら少しずつ読むのである。
引き伸ばされた祝祭を楽しむように。
そうは言っても、物事には終わりが必ずあるので
いつかは祭りも終わってしまうのだけれど。

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