「ミレニアム2 火と戯れる女」 (FLICKAN SOM LEKTE MED ELDEN)

~原作から読むか、映画から観るか~
2009年 スウェーデン/デンマーク/ドイツ ダニエル・アルフレッドソン監督



さきごろ「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」を観て面白かったので、2と3は原作を先に読んだのち、「ミレニアム2 火と戯れる女」を見てきた。小説を映画化した作品の場合、原作を先に読むか、映画を先に見るか、という命題がつきまとうわけだが、それについて、久々に考えさせられた。
映画が先か、原作が先か、というのは一概にこうだ、と言えないものがあり、ケース・バイ・ケースだと思うが、どうも「ミレニアム」シリーズの場合は、映画化作品から先に観た方がいいような気がする。映画を観る気がなければ原作を読んでしまってOKだが、未読だったらそのままの状態で映画を見ないと、興がそがれて乗れなくなる観は否めない。筋書きを知っていても楽しめる場合もあって、一概に原作は読まずに映画を観るのがベスト、とも言えないのだが、原作を読んだのちに映画を観て、それでも面白かったと思えるのは、かなり映画の出来が良い場合に限られる。
「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」は映画を先に見て、原作は未読なので、映画自体を楽しめたのだが、「ミレニアム2 火と戯れる女」は筋書きを知っていて観ると、かなり冗長な印象がある。殊に前半はそういう印象が強かった。あの二分冊の長い原作を要領よく刈り込んで、しかも原作に忠実に脚色しているのはエライと思うのだけど、映画としては何かダレる感じがするのは演出のせいだろうか。


長い髪は似合わんねぇ


おっさんミカエルと婆さんエリカ

リスベットが活動する後半は動きが出てきたので映画に意識が戻ったが、前半は何かかなり退屈したので、何故、モテモテでセクシーな独身の男前という設定になっているミカエル役を演じているのは、こんなお腹の出始めた、顔があばた気味な、後頭部もちょっとヤバくなりかけてる、ごく普通の団地のお父さんみたいな俳優なんだろう~(スウェーデンではとても有名な俳優らしいのだけど)甚だ魅力に欠けるわ、とか、そのミカエルの不倫相手で同僚でもある人妻のエリカは、もうちっと魅力的な美人の筈なのに、演じている女優の顔はほとんどお婆さんに近いじゃないの、老けすぎよ、とか、本筋に関係ない感想ばかり頭に浮かんでくる始末。そんなわけでノオミ・ラパス演じるリスベットが登場するシーン以外は、何か退屈でピリっとしないという印象だった。そのリスベットも刈り上げたショートヘアというイメージがあったのだけど、今回は無造作に伸びた髪で登場し、何かイメージが違う。それでもノオミ・ラパスはやはり原作のリスベットの雰囲気をよく出しており、彼女が続投していなかったら、かなりキツイ事になったかもしれないな、と思ったりもした。


こういう感じはお約束だが…

リスベットはドサクサ紛れにミカエルが告発した実業家から大金をくすねて、ストックホルムの一等地に億ションを買うのだが、その億ションも原作を読んでいると、もっと広く、もっと贅沢な造りを想像するが、映画で観ると案外質素である。でも、それはロケでおりおり映るストックホルムの街に馴染んだ建物であり、IKEAの家具の似合う内装である。そのあたりも英米仏と異なるスウェーデンのカラーなのかもしれないな、と思ったりした。

「火と戯れる女」の原作はかなり面白く読んだ。リスベットの過去が明らかになるエピソードでもあり、とにかく息もつかせない展開で一気読みに近い状態で読み終えてしまった。それだけに自然と映画版についても期待していたのだけど、原作通りに作っているのにどうしたわけか映画に入り込めず(原作を単調になぞっているだけ、のように見えた)、かなり距離をおいて眺めている状態だった。一番の原因は、ザラについて、何故公安があんなにも神経質に対応したのか、全てを隠蔽しようとしたのか、の説明があっさりしすぎていたように思う。「火と戯れる女」の映画版がピリっとしない原因の最たるものに、ザラの描き方が浅い、という事があるだろう。徐々にベールを脱いでいく亡命スパイの正体、みたいなものをもっとサスペンスフルに見せないと効果的ではない。それに、ザラを演じている俳優も、何かもにゃっとした顔つきでインパクトが薄い。金髪の巨人もインパクトが薄く、俳優と演出双方での、ザラ廻りのもわっとした印象が、総体にピリっとしない感じの映画になってしまった原因かな、という気がした。

サービスデーに観たのだが、サービスデーの割に満員というわけでもなかったし、映画の出来としても1作目ほどの事は無いと思う。 「と思う」という書き方になっているのは、原作を先に読んでいるから冗長に感じるのか、読まずに観ればそれなりに手に汗握るのか、の判別がつかないからだ。でも、なんとなく平板な印象は拭えない映画だという気がする。2と3は続き物でもあるし、原作を読まずに観れば良かったという感想になるのは自明のような気がするので、「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士」は、ワタシはもう観ないと思う。

クライマックスで土の中のリスベットを観た人は、「キル・ビル2」を想起するかもしれない。ワタシは、あら、キルビル入っちゃってるのね~、などと思って原作も読んだし、映画も観た。ブライドの場合は棺桶に入れられていたので、もっと脱出が困難ではあったのだが(あの脱出方法には笑う他ないが…)、リスベットもなかなかの超人ぶりで、頭に小口径とはいえフルメタル・ジャケット弾を撃ち込まれているのに、ゾンビのように土中から甦るのである。そんな事は可能なの~~~~ちょいと~!!!

「ドラゴン・タトゥーの女」を観た後は、もうこれで出来上がってるんだから別にハリウッドでリメイクしなくていいんじゃないの~と思ったのだが、「火と戯れる女」はハリウッドでリメイクした方がもっとピリっとして面白くなるんじゃないかと思われた。何より、ハリウッド版はダニエル・クレイグがミカエルを演じるわけなので(多分1~3まで映画化すると思う)、頭の中でミカエルがダニエルのイメージになっているため、オリジナルのシリーズでミカエルを演じるミカエル・ニクヴィストは、モッサリした、ただの冴えないオッサンにしか見えなくなってしまった。


ワタシの脳内ではすっかりミカエルはダニエルのイメージになっている

それにしても、スウェーデンはあのガルボ様やビヨルン・アンドレセンを生んだ国。北欧美人という言葉があるぐらいだから、美形率が高いのかと思いきや、この映画などを見ていると、殆ど一人も美形が出て来ないのにちょっと驚きを隠せない。考えたら、イギリスだって表に出てくる俳優やスポーツ選手やロック歌手などはイケメンも多いが、一般人のイケメン率はかなり低い感じがしたし、女性についてはもっと美人率が低い感じではある。(英国のドラマって、女優に華がない場合が多い)スウェーデンでも、俳優なのにどことなくモッサリして垢抜けなかったり、そこらの一般人と大差なかったりするところも、素朴なスウェーデン映画の特質が現れているのかもしれない。

コメント

  • 2010/10/01 (Fri) 19:55

    あら、もうやっていたのですね。見に行こうかなと思っていたが、これを読んでらDVDまで待とうかしらん、という気になりました。やはり見たい気持ちはあるのですがなかなか足の向かない渋谷だし。
    なるほどー、冗長だったのですね。まあ確かにこの人(Stieg Larsson)話長いよなーってところは随所に見かけるけど、やはり人気に応えるためできるだけ忠実に仕上げたのがちょっと裏目にでているのでしょうか。ま、何はともあれ映像で見るのは楽しみでもありますが・・・。

  • 2010/10/02 (Sat) 09:14

    Sophieさん。やってたのよ。行ってきたわよ、渋谷のスペイン坂の上まで。まぁ、ワタシの感想はあくまでワタシの感じ方だから、あなた、3の方を観てみてはいかがかしらん。けっこう1週間ぐらいでタイムテーブルが動いてるので要注意だけどね。同じ渋谷でもユーロスペースよりはずっと行き易い場所だし(笑)1作目はともかく、これは知らずに観た方がもうちっとハラハラできたんじゃないかって感じです。ワタシは半分ぐらい映画と関係無い事を考えつつスクリーンを眺めていた、という感じだった。でも、クライマックスのあたりでけっこうリアクションしてる人も居たので、知らなければ面白いのかなぁ、と思ったりしたわ。

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