「前略おふくろ様」

~前略おふくろ様…うまく言えません~
日本テレビ制作 倉本 聡 脚本



ワタシは1よりも2のほうを漠然と覚えているのだけど(1と2の設定の違いは主人公の勤める料亭が違うぐらいで他の顔ぶれは大差ない)、井上堯之の音楽に滝田ゆうのイラストのタイトルバックも強いインパクトがあった。「傷だらけの天使」の時とは打って変わった東北出身の修行中の板前を演じるショーケンに、子供ごころにも、傷天とはエライ違いだなぁ、と思って見ていた。この頃のTVドラマは面白かったと思う。今は今で今なりに面白いんだろうけど、何せここ数年、全く観てないので分らない。観たいという気もしない。今はあまりTVドラマに関心がないのだ。「前略おふくろ様」は、昨今、日テレプラスで時折放映しているので、たまたま観られた時に観るともなしに観たりするのだが、倉本聡の脚本もこの頃が一番良かったような気がする。

滝田ゆうのイラストがいかにもな味わいを出していた


1と2で店は違うが、主人公が勤めるのは深川の料亭で、主人公を取り囲むのは鳶の一家(ピラニア軍団)や、遠い親戚の女(海ちゃん=桃井かおり)、鳶一家の娘(坂口良子)、料亭の先輩や同僚(梅宮辰夫、小松政夫など)、そして故郷でサブの手紙を受け取る気丈な母(田中絹代)などである。
勤め先の料亭は、1では分田上(わけたがみ)という店で女将は北林谷栄(若女将に丘みつ子)だった。2では川波という料亭になり、おっとりした女将さんは八千草薫が演じていた。(このおっとりしすぎて仲居にもバカにされてしまう八千草薫の女将さんを何故か凄くよく覚えている)

 

ショーケンの「~なわけで」「~しており」「~するしかなく」というような独特の口調のナレーションは、のちの「北の国から」の純の語りに受け継がれるのだが、そういえば「北の国から」を観たときに、あ、この語りはサブちゃんの語りじゃないの、とちょっと懐かしく思った事を思い出す。

「前略おふくろ様」シリーズは田中絹代の遺作と思われているが、最後の仕事はNHKドラマ「雲のじゅうたん」のナレーションであるらしい。全盛期には鎌倉山に御殿を構えた田中絹代も年を取り、いつしか映画は斜陽産業になり、その間に豪邸も売り払われた。数多い兄や姉の生活の面倒を看てきた絹代は最後に一人残ったパーキンソン病の兄を、仕事を断って5年間自宅で介護した。兄の介護で蓄えを使い果たした絹代は映画だけに生きてきた大女優の誇りを曲げて生活のためにTVドラマに出なくてはならなくなった。そんな絹代の実人生を知ってから「前略おふくろ様」に出演した回などを改めて観ると、過酷な晩年の境遇を感じさせない、またはその状況をバネにして染み出したかのような、たくまざるほんわりとしたユーモアや、体や表情全体からにじみ出る味わいなどに、実に何とも言えないものを感じる。
「前略おふくろ様」は、絹代の最晩年の姿を観られる作品でもある。

 蔵王のロッジで働く母

その他、とにかく出演者の個性が強烈な事は他に類を見ないほどで、『恐怖の海ちゃん』のモモイ(ブサかわいい)に、「オニイちゃんさぁ」と大好きな海ちゃんの呼び方を真似てサブに呼びかける鳶っちょの利夫を演じる川谷拓三。拓ボンはこれで大ブレークしただけあって、今観ても独特の持ち味や台詞の間合いが面白い。また、ニヤニヤしていたかと思うと急にブチ切れるテンションの一瞬の振り切れ度合いが拓ボンならではだ。バンツマならぬ半妻さん役の室田日出男も柄にハマっていた。



2で板前として出てくる志賀勝も含めて、これがキッカケで売り出したピラニア軍団の俳優は三人とも、もう他界している。やはり若い頃に体を酷使し、ストレスの多い生活をしたせいなんだろうかと思ったりして。小松政夫は昔も今もほとんど変っていないという感じがするのは気のせいか。海ちゃんのオヤジさんに大滝秀治。この人も昔からこんな感じでやってるんだなぁ、と妙に感心してしまう。梅宮辰夫はこれで板前を演じた事がキッカケで料理に目覚めた、というような事を何かで読んだがうろ覚えなので定かではない。いずれにしても寡黙で男気を感じさせる板長役はなかなかハマっていた。?での八千草の女将さんに惚れられている感じなども違和感がなかったと思う。



ワタシは八千草薫という女優がなんとなく好きなのだけど(この当時の売れっ子脚本家は倉本聡も山田太一も八千草薫の大ファンだったらしい)、この当時幾つだったのか知らないが、つやつやとした非常にきれいな肌をしていて、今、ハイビジョンの超クリアなカメラでこの頃の顔を写したとしても毛穴も見えない美肌じゃなかろうかと思われる。八千草薫は可愛い、とは言われるが上手い女優だと言われる事はあまり無いような気がするけど、じっくりみていると八千草薫ってとても上手い。肌がきれいといえば、坂口良子も、桃井かおりも、ほんのり桜色で肌理の細かいキレイな肌をしている。女優たちは肌も髪もツヤツヤだ。八千草薫の登校拒否の娘を演じるのは木之内みどり(現・竹中直人夫人)。登校拒否が問題化し始めた時期だったのかもしれない。



そして、ショーケン。BIGIの服を着て、肩で風を切って歩いていた傷天の修の次に、この時折どもったりするシャイな板前を演じて、その後随分と役の幅が広がったのだろうと思うが、子供の頃はマカロニ刑事のショーケンが大好きだったので、半人前の板前・片島三郎を演じるショーケンは、イマイチだなぁ、被害者キャラだしピリっとしなくて、などと思っていた。最近になって再見してみると、昔大好きだったマカロニや修よりも「前略おふくろ様」のショーケンの方が好ましく感じる。短髪で、白い板前シャツに紺の印半纏を着て、グレーのマフラーを襟元にねじ込んだ姿が妙にいなせに見えたりするのは、どんな衣装もサクっと着こなす着こなしの良さのせいだろう。そういえば、このドラマでは川っぺりでつるつる滑る里芋の皮を剥きながら台詞を言うのが難しくて大変だった、でも倉本聡は実際に自分でも里芋の皮を剥きながら台詞を言って試してみてから書いているので、出来ませんとは言えないし、てにをはも一言一句変える事はできないし、毎回苦労した、というような事をショーケンは「ショーケン」の中で書いていた。

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ドラマからは昭和50年代の空気がぷんぷんと漂ってくる。そして、倉本聡お得意の、ウジウジした重箱の隅をつつくような登場人物のキャラ設定がおかしみに繋がるあたりも、「北の国から」シリーズのスペシャルの後半(純や蛍が大人になってからの2時間スペシャル)や、それ以降のドラマでは、おかしみに繋がらずに暗く澱んでゲンナリするばかりなのが、「おふくろ様」ではコミカルとシリアスがうまい具合に物語の中でブレンドされていて、東京の下町・深川界隈という設定からかもし出される風情とともに忘れ難いドラマを形作っているのだと思う。

コメント

  • 2010/10/01 (Fri) 21:45
    はじめまして

    ショーケンのファンです。

    サブちゃんたちのお写真いっぱい。うれしいです。

    こちらの記事を、ウチのブログにリンクさせてください。どうぞよろしくお願いいたします。

  • 2010/10/01 (Fri) 23:16

    kikiさん、
    これ、とっても面白そうですねえ。見たいなあ。わたしは幼い頃あまりドラマや歌番組なんかを見せてもらえず(バラエティで欽ちゃんだけは見せてもらえてました・・・)、そのせいか高校くらいまではドラマにはさほど興味を持たず、大学生になってトレンディドラマ全盛になってからドラマっ子になった感じです。
    昔のドラマは骨太なものが多い気がしますね。出演陣も豪華版!!
    田中絹代のエピソード、泣けますね。わたしも八千草薫好きです。可愛い(余談ですが「悪名」シリーズの「悪名無敵」に娼婦役で出てるんですよ。頭に赤いリボンをちょこんとつけてて、はすっぱな物言いをするけども可愛さが滲み出ています!)。先月かな、TBSのCSチャンネルで「シャツの店」という鶴田浩二・八千草コンビのドラマが放送されてて、絶対見るぞう!と意気込んでおりましたが、録画を頼んでいた父が最終回を予約しそこなったためゲンナリ。一話目だけ見て止めてしまいました・・・。
    そしてさらに残念なことには我が家のケーブルテレビでは本作見れなさそうです(涙)。
    ショーケンは東北出身の板前役とのこと。ズーズー弁が聞けたりするのでしょうか?方言ものに弱いワタクシです。
    また余談ですが、最近田宮ファンのわたしは今月「白い影」が一挙放送されるとのことで浮足だってうかれてます(笑)。これって以前スマップ中居で放送されたもののオリジナルだそうですね。知らなかった。中居くんのが初ものと思ってました。脱線すみません。
    最近はケーブルテレビで昔の作品が見れるので有難いことですね。

  • 2010/10/02 (Sat) 09:26

    showken-funさん。
    こんな記事で良かったら、どうぞリンクしてください。
    ショーケンは、公私ともに活動が始まって元気そうですね。

  • 2010/10/02 (Sat) 09:56

    ミナリコさん。これはドラマの世界でもエポックな作品の1つに数えられていると思うので、いま観ても郷愁だけでなしに面白いです。ワタシは子供の頃にリアルタイムで観てたのだけど、大枠の設定以外は殆ど忘れていたので、観ているうちにあ~そうだった、そうだった、こういう人が出てたんだね、こういう話だったね、と思い出しました。なぜか、これや傷天を観ていると、この頃ショーケンがやっていたチョコレートのCMも同時に思い出すんですよ。頭の中でセットになってるみたい。そう、昔のドラマは骨太だし、いい俳優が沢山存命だったから脇役もとても充実してたし、昔は1クールが半年ぐらいあって長かったから、連ドラも1クール26話ぐらいあったんですよ。長くじっくり拵える事ができたんで、それも幸いしてたのかもしれませんね。ショーケンは山形出身という設定だけど、そういえば台詞は訛ってませんのよ。誰に対しても「です、ます調」でしゃべる実直な青年の役です。これとか傷天なんかはファミリー劇場とかでも放映したりするような感じなので、日テレプラスが見えなくてもチャンスはありますよ。それにDVDも出ていると思うので、それこそ半額の日にちょこっと観てみるのはいかが?
    お、「シャツの店」ね。これはNHKのドラマだったんですが、NHKは自分とこのドラマ放映権を他局に売ってるようなのでTBSチャンネルでも観られたんですね。これも下町の話で、浅草出身の山田太一の脚本ですね。ちなみに太一と較べるとよっぽど下町育ちのワルガキっぽい倉本聡はノテっ子のお坊ちゃんなんです。人は見た目だけじゃ分りませんわ。あ~、最終回を録画しそこねちゃったのか…。最終回がやっぱり盛り上がるところなのでねぇ。可愛い奥さんが頑固亭主をぎゃふんと言わせるんですのよ、ほほほ。それは残念。次回に期待ですね。
    そうそう、最近は各種有料チャンネルで昔のドラマや映画をじゃんじゃん観られるから嬉しいですね。で、田宮二郎の「白い影」。ワタシは未見なのだけど、そりゃもう最近のなんちゃってリメイク版よりもオリジナルの方が良いに決まってます。影のある外科医を演じる二郎なんてはまり過ぎってもんでしょう。ミナリコさん、ウキウキですねぇ。

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