Are you willing to die? 久々の再会



ワタシは飽きっぽいという宿痾を抱えているので、あんなに愛した「カジノ・ロワイヤル」でもそうしょっちゅう観ていたのでは萌え尽き症候群を起こしてしまう。そこでここ2ヶ月弱ばかりは「カジノ」を封印していた。3ヶ月以上は観ないで置こうと思ったのだけど、昨今日本版の発売で、身辺で昨日も見た、今日も見る、という声がサワサワ、サワサワと起こっていて、やっぱり面白い、日本語字幕が出ると感情移入し易くてウットリだわぁなどと言われると「あぁ、ワタシも新鮮な気持ちでウットリしたい…」と少し周囲が羨ましくなり、新鮮な気持ちになるためにはもう少し封印した方がいいのだけど、禁断の玉手箱を開けて久々にボンドさんと対面することにした。

モノクロの「Yes. Considerably.」から、一転して極彩色のオープニングへ。この主題歌を聴くと、やはり劇場で最初にドキドキしながらスクリーンを見つめた期待感が甦ってくる。ワタシは、このオープニングのアニメーションのボンドさんの動きがとても好きなのだけど、殴られた時の体の反動とか、殴り返した時のネクタイの跳ねあがり具合とかが、本当に絶妙な間合いと角度で、とてもいい。  
♪武器を取れ、どこからも助けは来ない …あぁ俺の体を流れる冷たい血 その名は分っているはず く???。 でも冷たくないなぁ。ボンドさんの血は相当に熱い血である。

そしてモンテネグロの列車のシーン。丁丁発止とやりあったあと、バッグを肩にさっさと食堂車を出て行くヴェスパーを見送って、「ぷふん」と鼻で笑うシーンだが、猪口才だけど面白い女だな、という感じである。やっと噛み応えある女に出会った、という笑いのようにも見える。ちと噛み応え有り過ぎだったが…。


ぷふん

この後、ホテルに入り、化粧室のヴェスパーにドレスを持ってきて、凄い早口で、けれど息を抜いた独特の発声でダニエル・ボンドが言うセリフ。「君にはファビュラスでいてもらわないと困るんだ。君が入ってきて俺にキスすると、他のプレイヤーが君の首筋に見とれてカードの事を忘れる…どうだい、俺のために、やってくれるかな?」という時の、語尾の「You can do that for me?」の言い方が、またこれ、罪なぐらいにひそやかな抑揚なのである。やっちゃうやっちゃう、ワタシで良ければいくらでもなんでもやってあげてよ、と毎度思うシーンだ。

そして非常階段の死闘。前にも書いたけどヴェスパーをル・シッフルの泊まっている階に一緒に連れていく必要はない。見せ場を作るために脚本に無理が生じているシーンであるが、まぁ、そういう事には眼をつぶり(だってそのシーンがないとボンドとヴェスパーは魂で繋がらないわけだから)その後シャツを着替えてプレイを再開したボンドは、しかしヴェスパーがカジノに戻ってこなかったのに内心中っ腹である。「なんだよ、全く。俺にだけ仕事させやがって」かどうか知らないが、なんだかムカっ腹なご様子で部屋に戻ってくる。ドアを開け、カードキーをヤケクソのようにそこらに放り投げる。「なんで戻ってこなかったんだ」と文句を言ってやるつもりでいると、ワイングラスが欠けているのが目にはいる。気がつけばシャワールームから水音がずっとしている。ここでシャワーを着衣のまま頭から浴びているヴェスパーを見て、はっと胸を衝かれるボンド。初めて見た時から気になる女だったのだが、ここで彼の心は決定的に彼女に引き寄せられるのだ。彼女の中に潜む「不安な少女」を感じたボンドは、その横に迷わず着衣のまま座る。強気で、口を開けば小憎たらしい皮肉しか言わないヴェスパーが、そっと彼の太い腕に頬をつける。その瞬間、彼女の痛みが伝わったかのように一瞬はっとするボンド。その後いたましげに彼女をじっと見つめる視線が優しい。この時の「寒いかい?」という問いかけの声がまた、ねえ…。



そしてあのヴェスパーのテーマともいうべき音楽。音楽効果絶大。この曲はここぞというところで流れるのだけど、どの場面でもとても情感を盛り上げるのに寄与している。翌朝のシーン。バルコニーでマティスと話す時のボンドの顔はなんだか少しはれぼったい。二人で何時までシャワーに打たれていたんだか…。いくらお湯でも、いい加減にしないと風邪をひいてよ。


ソニー!

その後、毒を盛られてヘベヘベになりアストンに。SOSを出し、本部から「指示をよく聞け」といわれて泣き笑いのようなシワシワの顔で「I’m all ears」という時は一瞬、やたらジェームズ・カーンに似ている。脂汗をいっぱい掻いて、瀕死の状態のシーンでも売りの青い瞳のアップ。どんな場面でも非常にキレイに発色している。とにかく、いつでもどこでも常に、彼の瞳は澄んだブルー。曖昧な色に映っている場面はなく、常にきっちりとブルーなのだ。


常にBlue


拷問の後、誰もいない砂浜を二人で占領し、「君は本心が見えない。だから君が好きなんだ」というシーンの顔は光線の加減でなんだかマイケル・キートンにとても似ている。


キートン顔

折角いいセリフを言っているシーンなのに、もうちっと別なアングルで撮れなかったものだろうか。そして、この本心を見せない女のために、仕事さえ投げ打つボンド。冷たい血どころではない。あつあつの熱湯状態である。裏切られても、その肉体が滅んでも、一人の女を愛しつづけるのだ。純情一途な人殺し。それがダニエルのボンドなのである。

                  >>この記事へのコメント