北欧映画のハリウッドリメイクについて



いよいよデヴィッド・フィンチャー監督、ダニエル・クレイグ主演の「ドラゴン・タトゥの女」ハリウッドリメイク版の特報が出てきた模様。ちらっと観る限りでは割に面白そうな気配で、ワタシはこのリメイクが封切られたら、一応観てみようと思っている。
昨今は北欧発のヒット・ムービーをハイエナのようにハリウッドが漁って(それまでにフランスやスペイン、日本や香港など他国のヒット映画のリメイクを散々やってきて遂に北欧に至ったのだけれど…)、あっというまにガツガツとリメイクする風潮があり、実にゲンナリではあるが、「ドラゴン・タトゥの女」については、ミカエル役をオリジナルで演じたミカエル・ニクヴィストよりも、ダニエル・クレイグの方が役に合っている(ダニエルの方がもう少しモテそうなジャーナリストに見えると思う(笑))ように思うし、映画全体の雰囲気も悪くなさそうである。問題は、オリジナルで強烈なリスベットを演じたノオミ・ラパスに対して、リメイク版のリスベット役ルーニー・マーラがどのような存在感を発揮できるか、というところであり、そこに作品の成否もかかっていると思われる。

北欧のヒット映画のリメイクというと、もうじき公開になる「ぼくのエリ」(原題「LAT DEN RATTE KOMMA IN」)のリメイク「モールス」(原題「LET ME IN」)があるが、これなどは全く観る気のしない1本。リメイクに意味があるのは、オリジナルに改良の余地がある場合や、オリジナルがあまりに古かったり、または限定公開で広く世間の目に触れなかったりした場合、そしてワタシだけの基準かもしれないけれど、リメイク版に贔屓俳優が出演する場合だけだと思っているので、近作で、ワールドワイドに公開されていて、瑕瑾もないものをわざわざ舞台となる土地や原語を変えて作りなおす事にどんな意味があるのかさっぱり理解できない。そんなにまで英語の台詞じゃないと納得できないのかしらん。傲慢な。字幕が出れば十分じゃないの。ちっとは英語以外の言語にも馴染みなさいよ。


「モールス」 ただ英語版に置き換えているだけのような気配も…

あの物語は、樹氷がきらきらと輝く、なにもかもが凍てついた、さなきだに寒い北欧の、神秘的でもの寂しい冬の雪の中の物語だから余計に詩情が湧くのである。しかも、主役の二人の少年少女の演技もルックスも完璧だった。音楽も物語にピッタリと合っていた。なかんずく、「ぼくのエリ」の魅力のかなり大きな部分にオスカーを演じた少年カーレ・ヘーデブラントのプラチナ・ブロンドと真っ白な肌という、まごうかたなき北欧のルックスがある。彼のいかにも北欧の少年らしいルックスが静かで哀しい物語に趣を添えていたのだ。


北欧の冬景色


絵に描いたような北欧の少年 カーレ・へーデプラント


そしてエリを演じるリーナ・レアンデションの目の表情と圧倒的な表現力も重要だ。ただの可愛い「少女のようで少女ではないもの」ではなく、何百年も人の血を啜って生きてきた、そうすることでしか生きて来られなかった魔物の臭いと、知りあった人々がやがて老いて死んでいき、時代が進んで風景や世界が変わっても、自分だけは永劫12歳の姿のまま、この世の果てに独りきりで存在していかなくてはならない、という永遠の闇の孤独を抱えた者の気配が、その不思議な疲れと諦めを宿した目の中に色濃く漂っていた。
リーナ・レアンデションのエリは完璧だったと思う。


少女でもなければ人でさえないエリを演じるリーナ・レアンデション


プラチナ・ブロンドとブルネットも絵的にコンビネーションが良かった

ハリウッド版のキャストやスチールを一応見たが、ハリウッドでリメイクしたら薄めて甘く味付けした万人向けのシロップになった、という典型的なリメイクに他ならないと思う。観なくても分かる。だから観る必要はない。というか、何故作る、そんな無意味なものを、という感じが強くする。


残念リメイクとしてもう1本、ワタシの愛するジェイク・ジレンホールが出演した「マイ・ブラザー」(原題「BROTHERS」)がある。オリジナルのデンマーク版「ある愛の風景」(原題「BRODRE」)を見ていないので論拠が弱いが、双方観たうちの母などは、素朴だけどオリジナルの方がいい、とハッキリと言い切った。女性監督ならではのきめ濃やかな目線が効いていたのではなかろうか。


スザンネ・ビア監督 「ある愛の風景」


リメイク版を単体で観ても、演技は上手いかもしれないのだが、トビー・マグワイアはやはり、この役を演じるには小柄で線が細すぎるという観が否めないし、ナタリー・ポートマンの妻も、彼女でなくても誰がやってもいいような雰囲気であり、ジェイクが演じる弟は、ジェイクではやはり彼の素の「いい人」な部分が役柄にはちょっと不適だったと思う。何と言うか、もっと荒れて危険な感じがないとね。



ワタシのイメージとしては、この兄と弟は「インディアン・ランナー」で兄弟を演じたデヴィッド・モースとヴィゴ・モーテンセンのような感じがハリウッドでリメイクするならばベストだと思う。(「インディアン・ランナー」のヴィゴはちと危険すぎだけど…)「マイ・ブラザー」は主役の三人が、役者としてはそれぞれに上手いのだが、役にはそれぞれにミスフィットなので、部分的にいいところもあったのだけど、どうもしっくり来なかった。


今回の「ドラゴン・タトゥの女」は、既に書いたとおり、オリジナル版はミカエルがどうもね…とワタシは思うので、ダニエルの演じるミカエルにはちょっと興味がある。ミカエルがハンサムでやたらに女にモテるという設定でなければオリジナルのミカエル・ニクヴィストでもよいのだが、ニクヴィストは腹も出た中年体型のうえにアバタ顔で、なにゆえにそうまで魔的にモテるのかさっぱり説得力がない。ただのオッサンである。


オリジナルのおっさんミカエル

ダニエルも原作の異常な設定ほどモテる感じがするかどうかは微妙だけれど、ニクヴィストよりはもう少しそれらしい雰囲気が出そうである。彼の水色の目とブロンドは寒い北欧の地に似合いそうだし。最近ずっと痩せ気味なので、顔は尚更にシワっぽい気配だけれども(笑)適役ではなかろうかと思われる。
日本公開は来年の2月でまだ半年以上も先だが、アメリカでも今年の12月のクリスマスシーズンの封切りらしいので、さほどのタイムラグもなく入ってくる事にはなる。この先、情報が少しずつ出てきそうなのでおいおいにチェックしていこうと思う。


一段とシワっぽくなってはいるが、引き締まっている分オリジナルのミカエルよりは○かも


リメイクというのは、難しいものだと思う。まるまるオリジナルをコピーして、キャストと原語が変わっただけ、みたいなリメイクだったらリメイクする意味など皆無であり、オリジナルに字幕をつけたものを観ればいいだけだし、変に作り変えてオリジナルに手を加えすぎても、またエッセンスが欠けてしまっても、オリジナルに対する冒涜になりかねない。いずれにしてもリメイクする事になにがしか意味が見出せないと、ただのフィルムと予算の無駄使いという事になってしまう。リメイクは、よほど上手く出来てナンボであって、大抵はリメイクというだけで冷ややかな目で見られがちなものであるが、はてさて「ドラゴン・タトゥの女」はどういうリメイクになるだろうか。

コメント

  • 2011/06/07 (Tue) 07:15

    あら、私も偶然そのトレイラーを見つけて昨日見たところざんす。悪くなさそうだなあと私も思いました。多分私も見ると思います。
    なんだったか忘れたけど、オリジナル映画では映像化されてないところがちらっと映像化されていたような。勘違いかもですが。
    ダニエル相変わらずシワシワですね。でも確かにあのオッサンよりは適役かもしれません。クリストファー・プラマーがでているのもなんだか見逃せない気持ちがしますし。

    ほんとハリウッドは海外版のリメーク多いですよね、オリジナル映画みればそれでいいじゃん、とか思いますが。英語のセリフじゃないと納得しないっていうより、識字率低いんじゃないの、とまで思いたくなるリメークの多さ。ま、でも海外もの映画はあんまり見ない、邦画が好き、字幕じゃないし、読むの面倒じゃんっていう日本の友達結構いるからそれと同じ事なんでしょうねえ。






  • 2011/06/07 (Tue) 22:23

    Sophieさん。リメイク版「ドラゴン・タトゥの女」はなかなか面白そうな気配でしたね。デヴィッド・フィンチャーだから「ゾディアック」っぽいテイストの作品になるかしら。C・プラマーが大富豪のお爺さん役ね。オリジナルより威厳があるかも。寒いところのロケでダニエルのシワも余計に深くなっちゃってる気配だけど。(笑)

    で、海外映画のハリウッド・リメイクですが、制作サイドからすると、ネタがないのでとにかく世界中から当たったものを漁ってリメイクしなくちゃ、オリジナル脚本の良いのなんか待ってたら殆ど映画なんか作れない、という事なんだろうし、観る側からすると日本などと違って識字率が一定じゃないし、字幕読むのが面倒な人も多そうだし、そもそも字幕を読みながら外国の映画を観る、という習慣が浸透してないのかもですね。ここ20年ばかりで少しマシになってきたと思うけど、昔はハリウッド映画の中に異国人が登場しても台詞はムリヤリに英語だったものね。今は異国の人の台詞はさすがにその国の言葉になって字幕が出るようになってるので、少し進歩したんでしょうけど、まだまだだなぁ、って感じがします。そういえば今、日本でも映画や海外ドラマの吹替え版がけっこう人気だというのは、字幕読まなくていいからでしょうね。ワタシは最近の声優の吹替えは変なクセがあるからキライなんだけど、日本で強固に吹替え版が廃れないのも、アメリカ人の字幕嫌いと大差ないかもね(笑)

  • 2011/06/08 (Wed) 23:16

    WOWOWで録画しておいた「ミレニアム・ドラゴン・タトゥの女」2・3を、先々月ようやく見たんですよ。
    やっぱり面白かったですわ。WOWOW、実は5月で契約解除しました。最近面白い映画が少ないし録画DVDがたまる一方で・・今はBSプレミアムが充実してますね。先週はマックィーンで今週はドロンですもん。
    と話はそれましたが、このリメイク版、リスベット役はオリジナルのノオミ・ラパス以上は無理でしょうねぇ(と決めつけてる)kikiさんと同じくもっぱらダニエルに期待してます♪
    そういえば、元の宣伝ポスターってすごく過激らしいですね。
    一番上の画像のダニエルが隠してる腕の下の方には、ルーニー・マーラーの上半身裸の胸にピアスが見えるとか。
    リメイクというとすぐ浮かぶのが「インファナラ・アフェア」→「ディパーテッド」・・なんか許せない気がします。

  • 2011/06/09 (Thu) 07:25

    ジョディさん。WOWOWは各ジャンルをまんべんなく放送してるし、出入り自由な空気が取り得ですが、映画好きにはちょっと物足りない感じがしますね。他の映画chの方がいいかも。確かにBSプレミアは最近頑張ってますね。ドロン特集はいいのだけど、またしてもラインナップに「サムライ」が入ってないとは!…ガックリ。

    で「ドラゴン・タトゥ」ですが、これ、リスベット以外の部分で雰囲気は悪くなさそうな映画ですよね。このポスター、過激というのもあるかもだけど、ダニエルもルーニー・マーラーも人相が悪すぎ。殊にダニエルの顔は照明の加減で一層凄いことになっちゃってますね。狙いだろうけど、どうなんだろ。なんだか凶悪犯みたい。
    で、確かにここ10年ばかりのハリウッドリメイクの中で、あんなにパクリまくってアカデミー賞貰っちゃだめでしょう、というのは「ディパーテッド」ですね。節操なさすぎますわね…。

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