「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-MEN: FIRST CLASS)

-世界で最も恐ろしい生き物、それは…-
2011年 米 マシュー・ヴォーン監督



「X-MEN」も「ウルヴァリン」も未見なので、これまでに何度か予告編を見ても「ふぅん」としか思わなかった本作なれども、何故かふとマイケル・ファスベンダーに興味が湧いたのと、よく見たら昨今お気に入りのジャニュアリー・ジョーンズも出ているし、ちびっこ演技派ジェームズ・マカヴォイ先生もご出演につき、何となく観てみる事にした。
監督はマシュー・ヴォーン。マシュー・ヴォーンといえば、ワタシ的には「レイヤー・ケーキ」の人なのだが、昨今、世間ではすっかり「キック・アス」の人という事になっているようだ。その「キック・アス」も、少し前にDVDで斜め見してみたが、ワタシ的にはかなりのナニコレ映画だった。要は、クロエ・グレース・モレッツが少女ながらキレのいいアクションで、当るを幸い、敵を殺しまくる部分が受けているのだろうけど、そういうシチュエーションやアクションに何の興味もないワタシにとっては、何やらもう、ひたすら唖然とするような映画で、マシュー・ヴォーンはこの先一体どこへ行くのか、どこへ行きたいのか?と首を傾げた。

本作は、1944年のナチの収容所から話が始まる。冒頭から暫くは重厚感のある絵作りで、マーベル・コミックの映画化だという事をふと忘れてしまう雰囲気だった。怒りにより、金属を捻じ曲げ、意のままに動かす能力を噴出させることのできるエリック少年。彼の特殊な能力を発揮させるキッカケが激しい怒りであることに気づくのがケヴィン・ベーコン演じるセバスチャン・ショウ(最初に登場した時はドイツ名前だったが失念)。激しい怒りが強烈なパワーを産みだす、というのはどことなく納得のいく設定だ。怒りって他の感情よりも一段階グワっと強いパワーを有しているという感じがする。

ケヴィン・ベーコンは第二のウィレム・デフォー、という雰囲気。独特のご面相ゆえにヒールにもすいっとハマるのである。本作では英語の他にドイツ語やロシア語も操りつつ、楽しそうに敵役を演じていた。ただ、彼が「ヘルファイヤークラブ」という名の結社を隠れ蓑にしているなんて事は、本作を見ている間はしかとは気づかなかった。下着の女性がウヨウヨ居たところが、それだったわけなのね…。



この前観た「レッド・バロン」はドイツ映画なのに英語のセリフでガックリきたが、本作はドイツ語、フランス語、ロシア語、そして英語という具合に、珍しく多言語なのが興味深かった。第二次世界大戦下の収容所から入って、60年代初頭の冷戦時代がメインになるので、全てを英語だけで済ませるというわけにはいかなかったのだろう。ケヴィン・ベーコンのドイツ語はなかなかの雰囲気。努力賞よ、ケヴィン!また、マイケル・ファスベンダーはドイツ人なのでドイツ語はいわずもがな、フランス語も流暢に操るシーンがあった。ハリウッド映画としては(娯楽映画なのにも関らず)かなり英語字幕が出るシーンがあって珍しい気がした。

で、何故か淡く興味の湧いたマイケル・ファスベンダー(「300」にも出ていたらしいのだけど、どの役をやっていたのだっけな…)ではあるが、当初MAXだった興味が映画中盤で半分になり、映画が終わると綺麗サッパリと雲散霧消してしまった。それは彼の芝居がマズいから、とかではなく、役の雰囲気にとても合っていて、存在感は強烈にあった。でも、いまどき日本人にも居ないかも、と思ってしまうほどに胴長短足で、小顔で手足の長い俳優ばかりを見慣れていると、大きな長い顔に細長い体つきであまりバランスが良くないのも何か珍しい。却って個性になるのかな、などと思ったりした。まだ若いのか、けっこう年なのか分りにくいタイプだが、ダニエル・クレイグと同じくシワっぽくなりそうな…。
両手を前に出して、懸命に手の平から気を送るようなポーズをしている時、重いものや大きなものを動かそうとして、今にも血管がキレそうな顔でブルブルと震えつつ対象物に意識を集中するシーンに力が入っていた。



ちびっこ演技派マカヴォイ先生は、やはり芝居が確かなので安心して観ていられるし、今回はとても役に合っていたので強い存在感を放っていた。中盤からは怪物大戦争みたいになってくる映画を、そのぴりっとしたセリフ回しと表情で、要所要所で締めていた。彼の明るい青い眼が常に強調されていたのだが、あれはそのように照明を当て、あとで幾らかエフェクトをかけているのかもしれない。それほど、いつもその目の明るいブルーが鮮やかに発色して見えた。ちっと肉付きがよくなったせいか、本作ではあまり貧弱には感じなかった。マカヴォイ先生といえば、これもワタシを唖然とさせたナニコレ映画の「ウォンテッド」にもご出演だったっけ。…あれはマカヴォイにとって過去恥部ではなかろうか。あれで全米ブレイクしたので、そうでもないのだろうか。アンジー先生は毎度ああいう映画にばかりご出演なのでさもありなん、という感じだったけれど。



ワタシの最近のご贔屓のジャニュアリー・ジョーンズは、相手の心を読み、テレパシーで語りかける事ができ、体が一瞬にしてダイヤモンドで覆われるクール・ビューティのミュータントを演じており、セクシーで悪女っぽい雰囲気がなかなか良かった。役にはとてもハマっていたと思うし、演技もそれらしい感じがよく出ていたと思うけれども、プロデューサーは彼女の演技を「最低」と貶しているとか。別に悪くはなかったと思うのにそういう評価をされてしまうのは、このところ売れてきていい気になっているらしいジャニュアリーの態度を苦々しく思っている人が業界にちらほらといるんだそうな。まぁ、ゴーマニズムも似合えばそれでいいのだが、十分に力をつけ、押しも押されもしなくなってから発揮しないと、あっという間に潰されるのでご用心よ、ジャニュアリー。
余談だが、彼女の「ジャニュアリー」という名は本名だそうで、日本だったらさしづめ「睦月ちゃん」という感じだろうか。相変わらずクールでいながらコケティッシュな持ち味がよく出ていたが、体はちょっと痩せすぎな気もした。



その他、それぞれの場所にちらばっていた若いミュータントたちは、売り出し中の若手が演じている。あのおとなしげなニコラス・ホルトが「ビースト」と呼ばれるミュータントになろうとは(笑)

人間同士を戦争させて滅ぼし、あとをミュータントで乗っ取ろうというショウの計画を嗅ぎつけたチャールズとエリック、そして若手ミュータントたちは、戦争を阻止すべくキューバのピッグス湾上空に赴くが…。というわけで、キューバ危機に話の山場をぶつけてくるという設定は途中から読めるものの、戦争回避のために、(エリックは個人的な復讐のために)命掛けで尽力したミュータントに四方八方から放たれるミサイルの嵐は、世界で最も恐ろしい生き物=人間の恐ろしさの真骨頂ともいえるシーンだった。
わー、凄いミサイルの数、と思って見ていたら、ふと脳裏に「300」のクライマックスのシーンが浮かび、空が真っ黒になるほどの矢を放たれたレオニダス王にエリックのパワーがあれば、片手をかざして気合を入れ、ウワ~~ンと矢の向きを逆に回転させてペルシャ軍を返り撃ちにしてやれたのにねぇ、と思ったりもした。

見終えて「X-MEN」が観たくなったわけでも「ウルヴァリン」が観たくなったわけでもなかったし、ジャニュアリー演じるエマに、「エリックでしょ?」と呼びかけられたエリックが「いや、俺の名前はマグニートーだ」という決めのセリフも、マグニートーをそもそも知らないワタシからすると、バシっと決まったんだか、そうでもないのかハッキリとしないのだけれど、ともかくも131分間、退屈しないで観終える事ができた。ワタシ的には前半が良かった気がする。一切の予備知識なしに観に行ったのだけど、そもそもの発端のお話なので何も知らなくても特に困らなかった。
ヒュー・ジャックマンがお約束として1シーンだけ、ちらっと顔を見せていた。

コメント

  • 2011/06/26 (Sun) 21:18
    私も

    kikiさん、おひさしぶりー!
    またむしむしと暑くなってきたけど、お元気にされてる?
    私も未だマシュー・ヴォーン=レイヤー・ケーキの人です。
    Xメンとは縁がない人生と思ってて、マシュー&マカヴォイくん
    という理由だけで見たけど、面白かったわー!
    ちびっこ演技派マカヴォイ先生(笑)より
    今回はファスベンダー氏に目が釘付けでした(笑)。
    300では、長髪で細身ですごいジャンプして斬りかかかってた人よ~
    kikiさん。確かに全身写るとあれ?なバランスが人間完璧ではない
    でよいのではー?マカヴォイくんも似たりよったりだし。
    J・ジョーンズ、私も凄くハマってたと思う。彼女の60年代
    ファッションとゴージャスな体型は素敵でした。
    冒頭の世界を飛び回るファスベンダー氏、まるでダニエル・ボンド
    みたいなクールさでした。そーいえば、ダニエル、年貢納めたね。
    サツキより、同業者ということで釣り合い取れるよねー。

  • 2011/06/26 (Sun) 23:20

    acineさん、ご無沙汰してます。
    元気ですよ~。少し暑くなってはきたけど、まだまだ序の口だしね。
    acineさんはいかがお過ごしですかしらん。相変わらずお忙しいかしらん?
    ファズベンダー、お気に召したのね~。ワタシもちょっと気になったんだけどハマるほどではなかったかな(笑)「300」でジャンプして切りかかってた人が確かに居たけど、どんな様子だったかまでは思い出せないわ~。パっと出て来ない。確かに彼は今どき珍しいバランスの悪さが個性や持ち味になってるかもしれませんわね。マカヴォイ先生は相変わらずちっこかったけど、やっぱり出てくると締りますね。J・ジョーンズ、なかなか良いでしょ?彼女が出ている「MAD MEN」はご存知かしらん。あのTVシリーズもなかなか面白いですよ。
    あら、ダニエル、あの女優と入籍?サツキとは5年も宙ぶらりんで来て、今回は随分電撃的だったのね~。まぁ、本当に「出会う」と、そういうものなのかもですね。

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