ROME [ローマ]

-時に下世話に、時にドラマティックに-
2005~2007 英/米 マイケル・アプテッド他 監督



英国BBCと米国HBOがタッグを組み、巨額の予算を投じて作ったローマ史劇のTVドラマ。日本では2007年夏のWOWOWの放映が初だが、ワタシはその頃スターチャンネルを契約していて、WOWOWは観ていなかった。
先ごろシネフィルで放映が始まり、たまたま1回目を観た。エミー四部門受賞と謳いあげていたが、さほどの出来でもないような…と思ったのだけど、連続物だというので取敢えずその後も留守録して、なんとなく観ているうちに段々面白くなってきた。
カエサルからアントニウス、そしてオクタビアヌス(のちアウグストゥス帝)と移り変わる権力者、彩りにクレオパトラ、というあたりの、あの最も有名な紀元前ローマの物語を描いているのではあるが、正攻法で撮ったら今更珍しくもなんともない話を、視点を変え、二人のローマ兵を主役に持ってくる事でマンネリを回避することに成功した作品。史劇を英語で作る場合には、ミャ~ミャ~レロレロのアメリカ英語はご法度で、重みを出すためにイギリス英語が必須となり、英国俳優が起用される。そんなわけでHBOとBBCが手を組んだのだと思うけれど、キャストはほぼUK出身の俳優、女優で占められている。

主要キャストは万人のイメージに沿う俳優がキャスティングされていて、違和感がないのもいい。ユリウス・カエサルを演じるのはちょっと馬面のキアラン・ハインズだが、まぁ、何となくイメージ通りですね。アントニウスを演じるジェームズ・ピュアフォイも、若い頃のリチャード・バートンをちょっと縦に伸ばした感じで適役。ブルータスお前もか、のブルータス(ブルートゥス)を演じるのは、クールなブリティッシュ・アクセントでイヤミな若者を演じる事が多いトビアス・メンジーズ。(「説得」でルパート・ペンリー=ジョーンズの恋敵を演じていた。「カジノ・ロワイヤル」ではMの秘書を演じていたっけ)メンジーズもハマリ役と言えそうだ。


カエサル(左)とアントニウス

ブルートゥス

その他にもあの映画やこの映画で観た顔があれこれと出てくるが、ワタシ的にはこのドラマで初めて観た主役の二人、ローマの第13軍の百人隊長ルキウス・ヴォレヌスを演じるケヴィン・マクキッドと、その部下の兵士ティトゥス・プッロを演じるレイ・スティーブンソンが、やはりなかなか魅力があったと思う。この二人の兵士は架空の人物だろうと思っていたが、実は二人とも「ガリア戦記」に名前の出てくる実在の人物であるらしい。二人は共に百人隊長同志でライバル関係にあったようだが、ドラマの中では隊長と部下という関係である。ドラマでの設定は、名前以外は殆どフィクションと思ってさしつかえないのかもしれない。


親の血を引く兄弟よりも…な兄弟仁義の二人組

その他には、少年で登場して、後半で青年になるオクタビアヌスも、適役の俳優がそれぞれ演じている。オクタビアヌスって、白皙で、細身の冷淡な美青年で、冷静で明晰、というイメージだが、やはり、ちゃんとそういう雰囲気が出ている。少年時代のオクタビアヌスの方がなかなか魅力的なキャラ設定だった。オクタビアヌスといえば、エリザベス・テイラーの「クレオパトラ」でのロディ・マクドウォールのオクタビアヌスが、やはりイメージの中で根強い。そのルックスを踏襲した感じの手塚治虫のアニメラマ「クレオパトラ」のオクタビアヌスが、実はオカマなのでクレオパトラにはとことん冷淡だった、という設定も面白かった。そういえば、このアニメラマにもカエサルが癲癇で泡をふくシーンが出てきたっけ。「ROME」にもカエサルが癲癇の発作を起すシーンがある。手塚のアニメラマに登場するカエサルのキャラ・デザインと、「ROME」でカエサルを演じるキアラン・ハインズも似ている気がする。つまり、誰もがイメージする通りのキャスティング、ということなのだと思う。


少年時代のオクタビアヌス 知性派でクールだが子供なのでまだカワイイところもある

いやはや。それにしても百人隊長ルキウスを演じるケヴィン・マクキッドの古代ローマなルックスはどうであろうか。まさに胸像の顔、古代ローマの顔、遺跡の大理石像そのもの、という感じである。ケヴィン・マクキッドはルトガー・ハウアーとダニエル・クレイグを足して2で割って0.8をかけた、という感じ。他の役で観たらいいかどうかは分らないが、ルキウス・ヴォレヌス役はドンピシャリだった。役が、というよりも、その姿、面構えだけで○。三重丸。赤いマントに甲冑に赤い飾りのついた冑など被って、剣など抜いて斜めに構えたら、もう言葉など要らない、という感じである。いや、別に甲冑など着ていなくても古代ローマの男である。立っているだけでも絵になる。ワタシが演出家だったら、この人が扮装してカメラの前に立っただけで嬉しくて口笛を吹いちゃうかもしれない。何もしなくても出来上がってるものね。古代ローマだもの。この顔は。この体は。






あまりに古代ローマなルックスなので、ついつい写真を3枚連続載せてしまった

生真面目で融通が利かず、勇猛な兵士でありながら惚れた女房には非常に弱いヴォレヌスと、「固い契りの義兄弟」な弟分として、時に助けられ、時に助けて、戦乱の世を生き抜くプッロ役のレイ・スティーブンソンも190cm超の長身にユーモラスな味を湛えて儲け役だったと思う。プッロのセリフを始めとして、このドラマはローマ史劇のわりに(だから?)折々下世話な表現も入ってくるが、それもドラマを決まりきった型にはめないための味付けであろう。やり過ぎるとゲンナリだが、味付けや息抜き程度に、裸体や、ラブシーンや、下ネタゼリフなどが入るのがミソというわけである。まぁ、なくてもいいと思うけれども、あってもさして邪魔にはならない。

このドラマの下世話の代表格は、カエサルの姪で自己中心的で淫乱な策謀家のアティアというキャラクターである。このアティアはオクタビアヌスの母でもある。暑苦しいアティアを演じるのはポリー・ウォーカー。ワタシがこの女優を初めて観たのは「魅せられて四月 」(1992)という映画で、当時はなかなか素敵な感じだったのだけど、暫くぶりに観たら化け猫系の脂ぎったオバハンになっていた。その脂ぎった具合が、アティア役にはピッタリだった。



そのアティアと取りあえず関係を持ちつつも、未亡人の彼女に結婚を迫られた際、冷笑を浮かべてそれを退けるアントニウス(ジェームズ・ピュアフォイ)も割に複雑なキャラを割り付けられていて面白い。これまでに描かれてきた、酒好き、女好き、あまり頭よくない、という感じの平板なアントニウス像と較べると、かなり興味深い人物になっている。親分のカエサルと同様、煮ても焼いても食えない人物として、陰翳を持ったキャラ設定である。親分カエサルがポンペイウスとギリシャで決戦を控えて、手勢の乏しさに、援軍に来い、と使者を寄越しても、鼻で笑って使者に即答せず、出発を引き伸ばす様子など、けっこうクセモノである。




このアントニウスが以前にその豪腕を見込んで高給で取り立てる、と申し出たのに、遮二無二兵士を辞めたくてそのオファーを蹴ったルキウス。惚れた女房の傍にずっと居るために兵士を辞め、ローマに留まって商売を始めようと思うのだが、見込み違いが重なり、資金も底をつき、万策尽きて仕方なく再び軍人に戻る事になる。
そうよルキウス、あなたにそろばんは似合わなくてよ。軍人になるべく生まれ着いているのだもの。あなたが握るのは剣だけよ。
アントニウスに復帰を願い出ると、彼は恩着せがましく前に言った条件で雇ってやる、と言う。(その実、足元を見て有無を言わさず値切る)その代わり自分に対して絶対の忠誠を誓わせる。そしてアントニウスは忸怩たる思いのルキウスをハグし、その首筋に「お帰り」とキスをする。別に二人ともゲイではないが、このシーンはなかなか妖しくて良い。ルキウスは家族のため、生活のために、「暴君に身売りした…」と激しくめり込む。めり込んでも仕方が無い。イヤイヤ甲冑を着て、冑を被り、アントニウスに従ってギリシャのカエサルの元へ向かうのだ。


…おかえり Chu!

女もふんだんに出てくるが、「ROME」は根底に男騒ぎな気分が流れているのも特徴だ。大昔のギリシャやローマなんて、そっち系の元祖でもあるし(笑)というのは冗談だけれど、このアントニウスのChu!はその場の戯れごとであるが、固い契りの兄弟仁義、ルキウスと部下プッロの友情にも、幾分、そういう気分がにじまない事もない。男の友情というのは、どんな場合も、幾らかそういう色合いが滲むものなのかもしれない。




苦楽も生死も分かち合うかのようなルキウスとプッロ

そして、この二人はれっきとしたローマの軍人(ルキウスなんて隊長ですよ)なのに、何故か途中で一時期、剣闘士になってしまうらしいのだけど、それなどもこれから先の見所として楽しみである。古代ローマといえば剣闘士は外せないアイテム。ドラマの中に剣闘士を盛り込むために、主役が一時期、剣闘士に身を落とす、というのはやや強引な設定だが、制作サイドの気持ちは分る。

全22話の「ROME」。クレオパトラなどは後半にならないと出て来ないだろうけれども、なかなか面白いので、何話か観たところで、随時感想をUPして行こうかしらん、などと思っております。

コメント

  • 2011/10/22 (Sat) 20:04

    ケ、ケヴィン……学校の美術室の棚の上に、こういう顔の人が並んでましたね(笑)
    はぁ~DNAってすごいわ。
    J-comでシネフィルが見られるので、今度チェックしてみます~。

  • 2011/10/23 (Sun) 16:44

    xiangさん。シネフィルイマジカが入るのであれば、さっくりとご覧になってみてください。毎週火曜に2話ずつ放映されていくようですわ。残念ながら吹替え版の放映なのが難ですが、WOWOWでも吹替え放送だったようなので、DVDで観ない限り原語は聞けなさそうです。どうしても本人の声でセリフが聴きたい俳優がいるわけでもないので、まぁいいかって感じも。ともあれ、まだ序盤なのでこれから盛り上がっていきそうですよん。ケヴィンのアグリッパの胸像的ルックスをお楽しみに。
    あ、そうそう「女検死医ジョーダン」観てみましたわ。ウッディ役のジェリー・オコンネル、確かになかなかキュートですね。ウッディ役の方がルックスが引き締まってて弁護士役よりいい感じなのは何故かしら?と思ったら、あれって4、5年前のドラマなんですね。だから今より若いので、顔の輪郭などがシャープなわけですね。今ちょっと下膨れ気味だものね。にしても、子供の頃の姿から考えたら随分すらっとして二の線になったなぁ、と思います。188cmあるらしいけど、それってコリン・ファースやジェラルド・バトラーとほぼ同じ身長だから、かなりの長身ですね。あのコロコロのおむすびみたいだったボクちゃんが、よく伸びました(花丸)って感じです。ふほほ。

  • 2011/10/26 (Wed) 17:12

    kikiさん:
    「ROME」見ましたよ!
    いやぁ何というか、非常に汗臭く、かつ埃っぽいドラマですね(笑)
    最初は私の知識不足もあり、何となく…という感じだったのですが、見ているとあっという間に目が離せなくなり、深夜だというのに2話続けて見てしまいました。
    ルキウスは期待に違わぬ石膏像っぷりだし、その割にプッロとのやりとりは見ていて微笑ましいし。この間は2人がテントの中で寝るシーンがあり、思わず“背折り山”を思い出してしまいましたよ。
    ドロドロの権謀術数の合間にイチャイチャありグロテスクあり(あの筏…ひぇ-)で、何だか楽しくなってきました。しばらく続けて見てみようと思います。

    それにしても…あの小娘クレオパトラはどう見れば良いのでしょうね。(プッロったら…え?…えぇ?)
    kikiさん、ぜひ感想をアップしてくださいませ!

  • 2011/10/26 (Wed) 22:06

    xiangさん、ご覧になりましたか。あはは、そうなんですよ。汗臭い上に、歴史劇で凄くお金をかけているというのに、重厚さとか格調高さなんてものは無くて、妙に下世話で折々エログロもありなんですが、それが低俗という線までいかずに程ほどにアクセントになっている、という感じなんですね。ワタシも当初「なんだ、これは?」という感じだったんですが、妙に後を引くというか何というか、次が気になってくるんですよ。後引き納豆みたいなドラマですね。ある意味、ニュータイプの史劇かもしれません。
    ルキウスとプッロ。二人とも何となくナイスでしょう?けっこう二人で珍道中を繰り広げるんですよ。最初はカエサルの鷲の紋章探しの旅に出たりしてね。ルキウス役のマクキッドはこの後「グレイズ・アナトミー」にも出ているようですが、この頃が一番ナイスなルックスだったような感じです。
    小娘クレオパトラは、よくあるパターンを避けよう、という意図のキャラ設定でしょうね。妖艶でも知的でも絶世の美女でもなく、ジャンキーでイっちゃってる系のヤバい小娘がオジサンを惑わす、という感じですね。新機軸かも。これはこれでアリかな、とも思ったリしてます。それにしても、あのヘアスタイルはヅラだったのか(笑)近々また、感想第2弾をUPしますね。

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