ROME [ローマ]

-ルキウスとプッロ、さらに波乱万丈-
2005年~2007年 英(BBC)/米(HBO) マイケル・アプテッド他 監督



特に期待せずに何となく観始めたところ、意外に面白くなり、適宜、録画しておいておもむろに観ている「ROME」。長年カエサルに付き従って闘い、ともに軍籍を離れたルキウスとプッロだったが、かたや白いトーガをまとった地区政務官となり、かたや町の雇われ殺し屋に身を落とした上、縄付きの身となってしまう。生死を分かち、苦楽を共にしてきた兄弟仁義な二人に、どうしてそんな大きな差が…。その陰には、他人の人生を意のままに操るカエサルというメフィストがいた…。というわけで「ROME」、中盤にて大盛り上りの巻き、でございます。
エジプトを平定し、クレオパトラを手懐けた(手懐けられた?)カエサルがローマに凱旋するのに従って戻ってきたルキウスとプッロは退役して一般市民になる。宿無しのプッロは相変わらずルキウスの居候。以前、武士の商法で商売を始めようとして目算が外れたルキウスは、暫くボヤっとしていたが女房に尻を叩かれてその妹の肉屋を手伝う事になるが、すぐに町のヨタ者と揉め事を起こしてしまう。揉め事がこじれて喧嘩出入りが避けられなくなったところに、ジャコーンと登場したカエサル。なんと、自分の推薦で地区政務官に立候補せよ、とルキウスに直々にお達しを告げに来たのだった。ルキウスは独裁的なカエサルの推薦で政治家になるなんてイカン、と当初は断るのだが、うまく丸め込まれて立候補するハメになってしまい、仕組まれた通りに当選する。剣を持たずにはどうしても世の中を上手く渡って行く事ができないルキウス。気の進まない肉屋の手伝いに戻るか、カエサルの誘いに乗るか、の二者択一を迫られて、仕方なしに後者を選んだのだ。が、プッロは、あれだけ共和制を信奉しているルキウスが、カエサルが実は独裁者だと分かっているのに口先で丸め込まれて節を曲げた事に釈然としない。ルキウスの白いトーガ姿を見て、「洗濯屋みたいだ」と悪態をつく。いやいや。ここでもルキウス役のケヴィン・マクキッドはトーガがやたらと似合っちゃっている。それこそ、アウグストゥス帝の大理石像みたいである。しかしまぁ、古代ローマのトーガというのは、どうしてあんな長い布をわざとヒダヒダさせてぐるぐる巻いたりしてたのだろう。キモノほどではないが面白い衣服である。


プッロは洗濯屋みたいだ、と悪態をつくが…


洗濯屋みたいかもしれんが、似合ってるだろう?


俺の、俺の、俺の話を聞け~~~

さて、ルキウスを立候補させにやってきた老獪なカエサルは、ルキウスには特別な幸運がついていると見込んでいる。幸運の上に腕も立つし、勇猛な隊長として名前も通っているので、民衆の人気取りの為に「曲がった事が大嫌い」な廉直な男、ルキウス・ヴォレヌスを自分に都合のいい手駒にしようと思い付くのである。
第9話あたりから、カエサルの政治家としての狡知や、ぬえのような得体の知れない怪物性がクローズアップされてきて、それもなかなか面白い。口とお腹は常に別物。それは紀元前の昔から政治家には必須の条件なのだ。


終身独裁官の地位に着くカエサル

また、中盤ではプッロが大きくフィーチュアされてくる。その魅力的なキャラ設定が全開に生きている。演じているレイ・スティーヴンソンもまさにピッタリ。根はいい奴なのだが、時に制御できないほど凶暴になるプッロ。忠実な大型犬のようでもあり、純情で孤独な少年のようでもある。軍籍を離れてヒマになってしまうと、手持ち無沙汰なプッロは居候をしているルキウスの家で、いやが上にも自分が持たないものを思い知らされる事になる。それは「家族」。その場限り楽しければいいや、で生きてきたプッロも、幸せなルキウスを見ていると女房子供が欲しくなってくる。そして、彼の視野には自分が助けた物静かな女奴隷・エイレネだけが浮かび上がっていた。…というわけで、夜半、ひとり寂しいプッロが酒を飲みつつエイレネを呼び、ご主人さまに呼ばれて仕方なくやってきたエイレネに、自分の生い立ちをとつとつと語るシーンなど、中盤はいやがうえにもプッロが可愛く、そして可哀想に思えて仕方がない展開になっていく。


手痛い失恋から裏稼業へと身を落として遂に罪人になるプッロだが…

プッロは奴隷女が産んだ子供であり、父親もまた奴隷だったのだろうと自分で思っている。その母の悲しげなグレイの瞳がエイレネと似ている、と述懐する。プッロが奴隷のエイレネに純情を抱き、簡単に手を出さなかった理由に、彼女に亡き母の面影を見た、という事があるのだろう。代々ローマの軍人だったルキウスのヴォレヌス家と違い、プッロは生まれつき宿無しなのである。野良犬なのである。刹那的に生きてきた宿無しプッロが生まれて初めて純情を抱いた女は自分の奴隷だった。プッロは彼女を解放して、結婚しようと勇み立つ。ヴォレヌスに保証人を頼んで、町角の登録所へいってエイレネを解放する手続きをするシーンなど、へぇ~と興味深かった。奴隷はそんな風に登記され、管理されていたのか、と。しかし、喜んで自分の妻になるかと思ったエイレネにはヴォレヌス家の男奴隷である恋人がいた。これでエイレネと結婚できると喜ぶその男を、ショックと憤怒のあまり殺してしまうプッロ。プッロの暴力に怒ったルキウスは、プッロを叩き出して絶縁するが…。生まれて初めて愛した女には他に恋人がいた。ルキウスに借金をして奴隷から解放したのは他人の女房にするためではない。強烈な、予想もしない失恋である。ここで寅さんならカバンを持って上着を肩にかけ、あばよ、と旅に出るところだろうが、プッロはそんな事ではおさまらない。どうしても血を見る事になってしまうのだ。


予想もしないプッロの愛情をぶつけられて当惑するエイレネ

退役軍人は一時金の支給こそあるものの、それが尽きるとただの食い詰め者になってしまう、というのも興味深かった。さすがのローマも軍人恩給制度はまだなかったのだろう。第10軍の隊長だった男が、政務官になったルキウスに、退役兵士たちに土地をくれるようカエサルに頼んでくれ、と陳情に来る。カエサルは辺境の土地を与え、僅かな金でそれを納得させるようルキウスに命じる。

ルキウスの家を叩き出されたプッロは食い詰めて野犬のようになり、そういう食い詰め者を飼っている闇稼業のフルベという男(元祖マフィア?)に雇われ、僅かな金のために恨みもない相手を殺す、裏街道の殺し屋に身を落としてしまう。仕置人ともいえない、ただの殺し屋である。酒に溺れ、段々すさんで行くプッロ。遂に殺しを目撃され、捕らえられる。檻に入れられた容疑者を壇上に乗せ、被害者の代弁者と加害者の代弁者が公衆の前で弁護合戦を繰り広げる、元祖公開裁判の様子も興味深かった。ケダモノ!と物を投げつけられる檻の中のプッロ。物陰で一方的な裁判の成り行きを見つめ、闘技場での極刑を言い渡されるプッロに暗澹とするルキウス。



二人が闘技場のようなところで闘うシーンをちらっと見たので、どうして剣闘士になってしまうんだろう?と思っていたのだが、それは殺し屋になり果てたプッロが刑罰として闘技場に放り込まれ、剣闘士たちと闘わされるという刑を受けていたのだった。当初は闘う気もなく、早く殺せ、と体育座りをしていたプッロだが、所属していた第13軍団について悪口雑言を言われてブチ切れ、猛然と立ち上がると鬼神のようにバッタバッタと一人で何人もの剣闘士をなぎ倒す。そして闘技場の真ん中で「第13軍団!」と吠える。
物陰でその姿を涙目でみつめるルキウス。



だが、もはや疲労困憊のプッロの前に巨人の剣闘士が現れる。さしものプッロも一巻の終わりかと思いきや、おっとどっこい。ちょっと仲違いはしていても、固い契りの義兄弟ルキウスが黙っちゃいない。いまや政務官である自分の立場もかなぐり捨てて、第13軍団の栄光を守るため、そのために闘ったプッロを救うため、ルキウスは闘技場に踏み込んでいって剣を握る。このシーンは「グラディエーター」と「300」が一緒くたになった感じで、なかなか見せる。男の世界である。



ルキウスは巨人の攻撃を受けつつもこれを撃破し、ヨレヨレのプッロに肩を貸して闘技場を去る。まさに東映任侠映画的フィーリング。お供さしてもらいます、の世界である。



実はプッロが請け負った殺しは、自分を非難する男を裏から手を回してカエサルが殺させたものだった。そんな裏事情をルキウスもプッロも知るよしもなかったが、「プッロを助けてはならない」と釘を刺されていたのに助けてしまったルキウスは、プッロとともにローマ市民の人気者になってしまい、カエサルはいよよ民衆の受けを狙って、ルキウスを元老院議員に推薦する。罰を覚悟していたルキウスには驚天動地だが、そこには元老院の中でも公然と腕のたつ用心棒(=ルキウス)を従えて歩きたいというカエサルの思惑があった。しかし、それでもなお、起こるべくして暗殺は起こる。カエサルは血まみれで全身刺されまくって元老院の冷たい床に息絶える。というわけで、このカエサルの暗殺で「ROME」前半の終了となる。



プッロの涙の純情物語もあれば、ついにルキウスに過去の不貞を知られたその妻ニオベが自殺するなど、二人の元兵士の人生行路はまさに波乱万丈であるが、ルキウスが元老院議員にまでなってしまうというのは、さすがにちょっと驚いた。でも前半終盤のクライマックスは、やはり闘技場での第13軍団の誇りを賭けた闘いであろう。孤軍奮闘で力尽きかけたプッロの元へ、禁じられていながらも踏み込んで行くルキウス。行くなと言われりゃ、なお行きたがる。男気質(かたぎ)は止められぬ…というやつである。いやはや、男騒ぎである。プッロも鬼神のようだけれど、ルキウスがカッコいいんですよ、これまた。マキシマスとレオニダスが一瞬まざってる感じで。ふほほ。だって、ねぇ。カエサルのひきで政務官になったからといって、常にカストルとポルックスのように一緒だったプッロをここで見殺しにしたんじゃ男じゃありません。何がどうだって誰に止められたって行かなくっちゃね。



最初は、史劇のわりになんだかなぁ、な演出やセリフもあって、一体これは何なんだ、と思って見始めた「ROME」だけれども、なるほど、なかなか面白い。そして前半の幕切れで、おずおずとながら手を繋いで歩くプッロとエイレネ。エイレネはプッロの純情にほだされたのか?それともストックホルム症候群に過ぎないのか?そして最愛の妻に死なれたルキウスはいかに? …というわけで、またもクレオパトラが登場するであろう後半も目の離せない「ROME」。まだもう少し楽しめそうです。

コメント

  • 2011/11/14 (Mon) 16:38

    んふふ、待ってました「ROME」!(笑)
    kikiさんの解説でハタと気づいたんですが、このドラマって何だか“講談”みたいなんですよね。(いや、講談ってちゃんと聞いたことはないですけども。)テンポが速くて張り扇の似合う感じ。これが、歴史上の実在する人物が主人公だったらなかなかこうはいかなかったでしょうから、そのあたりも上手いなぁ~と思いますね。後半も楽しみです。

    ローマは一度だけ行ったことがあるのですが、遠近感がむちゃくちゃになりそうなほど大きな建物が多かったのが印象的でした。今だったら、ケヴィンにトーガを着せてフォロ・ロマーノに立たせた絵葉書なんかがあったら買っちゃうかも(笑)

  • 2011/11/14 (Mon) 23:24

    xiangさん。
    講談調ね~。なるほど。考えてみなかったけど、そういうノリもあるかもですね。ふほほ。
    ワタシは任侠映画っぽい部分もあるな、と思ったりしました。第11話目の闘技場シーンで、ルキウスとプッロがやけに東映任侠映画なフィーリングだったので、部分的に任侠映画のポスターのキャッチ風味で書いてみたんですね(笑)あれって、七五調で切れがいいんです。でもそういう「止めてくれるな、おっかさん」的な調子が、xiangさんのいわゆる講談調ってことなのかもしれませんわね。任侠映画のフィーリングが講談調と言えるのかも。
    そうそう、ルキウスとプッロ、架空の人物かと思いきや、「ガリア戦記」に名前が出てくるんですって。二人とも百人隊長でライバルだったらしいです。でも記述は僅からしいので、ドラマでは名前だけ使って背景などは勝手に設定しているみたいですが。
    ローマって、あちこちに無造作に古いものがゴロゴロしてるようなイメージです。古い建物もしっかりと残ってるんでしょうね。なんだかんだ言っても紀元前から長い歴史があるんですしね。「ROME」を映画化してキャストをもう少しスターにすると、ケヴィン・マクキッドとレイ・スティーブンソンは、ダニエル・クレイグとジェラルド・バトラーで置き換え可って感じもしますが、でも、この役はやはりケヴィンとレイのものだな、という感じですね。(笑)

  • 2011/11/15 (Tue) 12:19

    そうですねぇ、ローマは石の文化だけに遺跡が文字通りゴロゴロ残っています。そして何もかもが“バカでかい”という形容がぴったり(笑) バチカンなどは大きい上に装飾過多なので、見ただけでお腹いっぱいになりました。宗教の力ってすごい。
    それはともかく、ローマには元老院議事堂なども残っているんですよ(本物の内部はあんな階段状じゃなかったですが)。「ROME」全話を見てからイタリア旅行、というのも楽しそう♪

  • 2011/11/15 (Tue) 23:24
    Re: タイトルなし

    xiangさん。
    ローマはあまり広くないところに、古いものがゴテマンとある、というイメージだったのですが、建造物がそんなにどでかいとは知りませんでした。石造りの巨大な建物がガンガン建っている、という感じでしょうかね。あ~バチカン。派手ですね。護衛兵もあの制服ですしねぇ。ワタシはイタリアだったら、ローマじゃなくてフィレンツェやベネツィアに強く惹かれます。ローマは日本に帰る前にちらっと寄ればいいかしらん、という感じなのだけれど、実際に行ったら、わー、凄い、わー凄い、という感想のオンパレードになりそうな…。ふほほ。

  • 2011/11/16 (Wed) 09:57

    はい。私もフィレンツェ→シエナ→アッシジ(どこも良かった!)と回った後のローマ・バチカンだったので、なおさらショックが…(笑) “清貧”を絵に描いたようなアッシジとバチカンでは、とても同じ宗教とは思えません。
    ちなみにローマ&バチカンへ行かれるなら、“ラングドン教授”シリーズを原作&映画で予習されるとなお楽しめそうです♪

  • 2011/11/17 (Thu) 00:44

    アッシジなんて聖地巡礼みたいですね(笑)
    ラングドン教授シリーズね~。はいはい。そういえばあれ、原作は一度も読んだ事がないんですわ。映画で観たらもういいか、みたいな気になっちゃって。まぁ、でも原作の方が面白いんでしょうね。ローマに行くような機会があれば、携えて行きますわ。ふほ。

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