「Sherlock」 Series 2 「A Scandal in Belgravia」 ざっくりの感想

-A Woman of Affairs -



本国ではシーズン2の第2話目「The Hounds of Baskerville」が昨夜放送されたばかりという時期に、第1話目の「A Scandal in Belgravia」を既に観る事ができてしまったというのは、実に不思議な気持ちだけれど折角観る事ができたので、興ざめにならぬ程度のネタバレもありつつ(?)、ちょこっと感想をUPしてみようかと思う。

いやもう、とにかく「A Scandal in Belgravia」は見所満載だ。シリーズ1の第3話目でサスペンデッド状態になっていたモリアーティとのプールでの対決はどうなったのかも気になるところだと思うけれど、まさに絶妙の落とし方(かわし方)で大いに笑った。これは見てのお楽しみ。

その他、シャーロックの活躍を伝えるワトソン君のブログはネット現象を引き起こすまでの人気ブログになっているという設定で(1日平均1800~2000アクセスらしい。やるなぁワトソン君)、シャーロックもお陰で時の人扱いをされたりする。マスコミのカメラを避けるためにたまたま被った帽子が、例のトレードマークの鹿打ち帽(あれは鹿打ち帽らしい。鳥打ち帽だと思っていた)だったりするなど、茶目ッ気たっぷりのビクトリアン・シャーロック・イメージへのオマージュである。
ワトソン君の人気ブログのお陰で一般の依頼人もあれこれとやってくるし(依頼内容を最後まで聞かずに、一言のもとに選別する様子も笑える)、やんごとなきあたりからも依頼が舞い込む。

起き抜けで裸にシーツを纏っただけのシャーロックがバッキンガム宮殿に連れて行かれ、待ち構えていた兄マイクロフトに何と言われようと(「一度ぐらい大人らしく振舞えないのか!」)服を着ず、挙句の果てに話も聞かずに帰ろうとして、マイクロフトにシーツの裾を踏まれ、あやうく宮殿内ですっぽんぽんになりそうになったりする。あははは。アイリーン・アドラーの全裸シーンが物議を醸したらしいけれど、シャーロックもちらっと上半身のヌードを披露するのである。サービス精神旺盛ですね。



またホームズ物にそぐわないとして放映後に一部で物議を醸したらしいアイリーン・アドラーのヌードも、下品にならぬようにうまく撮られているし、モファットはある程度の批判的反響は折込済みで、確信犯的にアイリーン・アドラーをヌードで登場させたのだろう。話題にもなるし、盛り上がるし、アイリーン・アドラーのキャラ的にも、あのいきなりのヌードはアリだろう。なにせアイリーンはそういう意表を衝く性格なのだし、なんたってこれは「ベルグレイヴィアのスキャンダル」なんだから、ちっとぐらいスキャンダラスであるべきなのだ。ちなみに、シャーロックを鞭打つシーンではアイリーンはシャーロックのコートを羽織っている。



"Dominatrix"と呼ばれる、女のプロ(もしくはSMの女王サマ?)であるアイリーン・アドラーを演じるのはララ・パルヴァー。凄い美人というわけではないが、色気と迫力があり、適役だったと思う。誰かに似ているなぁと思いながら見ていて、目をむき、薄い唇を四角く開いて顎を突き出したシーンで、あ、分った、ジョーン・クロフォードに似てるんだ、と膝を叩いた。


Dominatrix

目がぎょろっと大きく、赤い大きな薄い唇が印象的で、顔や雰囲気がとても似ている。ジョーン・クロフォードは「ハリウッド・バビロン」の著者ケネス・アンガーに「魔女」と呼ばれているが、貧しい生い立ちからウェイトレスなどを経てダンサーになり、さらに女優になって成功。1930年代にはMGMのトップ女優になり、数々の浮名を流し、何度も結婚し、離婚して、結局は金持ちの未亡人として余生を送りつつ老いてからも映画に出演した。華やかな成功とスキャンダラスな私生活という典型的なハリウッド女優の人生だ。ダンサー上がりだけれども、アカデミー主演女優賞を取っている実力派でもある。とまぁ、ジョーン・クロフォードはある意味、女のプロといえなくもないわけで、ララ・パルヴァーのアイリーン・アドラーがどことなく魔女・ジョーン・クロフォードに似ているというのは、キャスティング的に正解なんだな、と妙なところで納得した。


ジョーン・クロフォード



アイリーン・アドラーの顧客の一人が英王室の人間であったり、また彼女が「保険として持っている」写真が格納されたスマートフォンを巡ってCIAも動くなど、内容は大元の「ボヘミアの醜聞」に較べて当然ながら21世紀的に格段にキナ臭くなっているし、背後にモリアーティの影もちらちらする。とにもかくにも、それまで恋愛とは全く無関係に来たシャーロックの前に、いきなり全裸で現れ、数々の謎と誘惑を振りまく一筋縄ではいかない女(あなたを打ちすえた女として、あなたは私を忘れないわ)、アイリーン・アドラーのキャラ造形が上手く出来ていた。誰に対しても、相手がどういう人間で、どういう生活をしているのか、どんな職業かなどをほんの一瞬で見抜いてしまうシャーロックが、アイリーンにはその観察力が通じず、ハテナマークしか浮かんで来ないというのも、彼としてはありえない事態で、幻惑されると観察眼も鈍るのだね、と何だか微笑ましかった。



彼女の命ともいえる携帯のパスワードを巡るシャーロックとのやりとりも見所だ。また、アイリーンがシャーロックにメールを送るたびに、着信音として彼女の「Ah!」という声がするなど、いや~、もう、やってくれます。
また、アイリーンがワトソンに「あなた、嫉妬してるの?」と言い、ワトソンが「僕らはカップルじゃない」と答えると「いえ、カップルよ」と間髪を入れずに切り返すシーンなどもニヤニヤしてしまう。



今回は、シャーロックが頭脳だけのクールで無機質な男ではなく、かなり人間的な面をあれこれと出すようになっており、人としても一段階成長する、というか、情緒的に少し人並みになるという部分が最大のポイントだろう。アイリーン・アドラーに対しては勿論だが、いつものように思うサマ言いたい事を言って傷つけたモリーに珍しく謝るシーンなども、その表れだろう。また、シャーロックがクリスマス・ソングだのイギリス国歌だの自分で作曲した曲だのをバイオリンで弾くシーンが出てくるのも印象的だ。



兄マイクロフト(マーク・ゲイティス)もかなり出番が多く、シャーロックとツーショットの印象的なシーンもあったりして、見せ場テンコモリである。また、ラストについては視聴者それぞれに解釈を委ねるという形であろうか。

なにぶんワタシの英語力では、聞き取れたところと、大筋で分ったところと、さっぱり聞き取れなかったところが混在しているので、細かい台詞はUKからDVDが届いたらサブタイトルを読んで確かめようと思うけれども、確実にシリーズ1よりも深みと面白味が増しているシリーズ2は、味わい深く、じっくりと楽しめそうな気がする。スティーヴン・モファットもマーク・ゲイティスも、自分たちがコアに「シャーロック・ホームズ」のファンだから、ファンだったらこういうものが観たいだろう、という事を十分に知り尽くして楽しみながら作っているので、とにかく心にくいばかりにツボを衝いてくるのだ。

*****
余談だが、事業体制をパナソニックと一本化することになった三洋電機が、本社から「SANYO」の看板を取り外した、というニュースが少し前に出ていたが、「Sherlock」のタイトルバックでもお馴染みの、ロンドンはピカデリー・サーカスにずっと前からある「SANYO」の電飾広告は今後どうなるのだろうか?(昔、ロンドン旅行で、地下鉄からピカデリー・サーカスの出口を上がっていく時、派手な「SANYO」の電飾を目の前に見て、一瞬、あれ、新宿西口?なんて錯覚したのを思い出す)



もしもピカデリー・サーカスに「SANYO」の電飾がなくなったら、ちょっと淋しい気もする。あれってもう、ピカデリーのランドマークになっているような気がするのだけど…。

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コメント

  • 2012/01/11 (Wed) 00:03

    こんばんは。 レア情報を本当にありがとうございました。多謝です。
    いま感想をUPするのはちとフライング気味かな~という気もしたのですが(笑)4日の記事のあと、感想を求めて検索で来る方々がいらしたので、折角だから感興が薄れないうちに書いておこうかな、とざっくりと書いてみました。これは本当に楽しめました。感想に共感いただいて嬉しいです。
    お陰さまで実は第2話目も10日の早朝に観ることができてしまいました。早朝は動きが早いので見易いというのもあって(笑) で、「魔犬の伝説」は21世紀的にどういうオチをつけるのか、という興味だったんですが、なるほどそう来たか、と思いつつ、これはワタシ的には何かイマイチな印象でした。セリフも聞き流し気味でザックリとしか観ていないせいもあるのですが…。ご覧になったら感想をお聞かせください。 ワタシ的には第3話目がオモシロそうでかなり期待度、大でございます。

  • 2014/06/22 (Sun) 00:15

    kiki様のおっしゃるように、この回は今までの9話の中でも傑出していますね。
    いろいろな要素がてんこ盛りで、それがまた見事な構成で。

    戦闘服勝負はアイリーンに軍配が上がりました。(私的にはヌードよりも彼女の性癖の方がインパクト大でしたが:笑)
    初っ端でペースを握られちゃったのは、シャーロックには誤算だったことでしょう。
    それを皮切りに、火花を散らしながら幾度も剣先を突き合っていくわけですが、実に見ごたえがありますね。
    どちらかが劣勢に見えたたかと思うと、次の瞬間には反撃に転じる。まるでオセロの石が引っくり返っていくような鮮やかさ!

    クリスマスのシーンでは、レストレードも来ていて「あぁ本当に友達なんだな~」とあらためて思いました。
    ジョンのガールフレンドはシャーロックの知る限りでも4、5人目。短期間しか続かないのはシャーロックのせいなのかしら。(マイクロフトも少しはジョンの私生活を考慮してあげたらいいのにと思ったり)


    自分が結構ルックスとしてイイ線いってることを、シャーロックは昔から自覚しているのでは。(きっと十代の頃から、少数でしょうが熱狂的なファンがいて、ずっとツレない素振りを通してきた中で、必要に迫られればあざとく女心を利用してきたのかな)

    今まで見てきて、あってもいいんじゃないかなあと思うシーンが一つあります。
    原作やジェレミー・ブレットのホームズではエンディングを、「さあコベントガーデンに急ごう。まだ演奏会に間に合うはずだ」みたいなセリフでよく締めくくっていますが、「SHERLOCK」にはありませんよね。作曲できるほど音楽にも造詣が深いはずなのに。
    でもこの作品にそういうエンディングは似合わないのかな。


    そうそう、関連記事一覧のページの『「バッチ君とマーティン、「Sherlock」Series4出演を契約』のタイトルが本記事に、リンクが上手く対応しておらず、ひとつ前の『「Sherlock」Series3、最初の~』の記事に繋がってしまっているようです。

  • 2014/06/22 (Sun) 22:34

    Debbyさん

    そうですね。S2はこれとEP3があるので、突出したシリーズになっていると思います。陥没しているような観のある「犬」でさえも、S3の3本と比べたら上出来かな、と思います。どうしてS3はあそこまで妙な事になってしまったのか…。

    このエピソードは、とにかく脚本が巧いのと、俳優がハマっているのとで、丁々発止のいいエピソードでしたね。
    クリスマスのシーンは、今回のS3のテイストに繋がるような、シャーロックらしからぬアットホームな雰囲気でしたけれども、その中でシャーロックが一人だけ浮いている感じが良かったんですわね。S3では、あまりにもべったりとなれ合いに慣れすぎたあげくに、はしゃぎ過ぎ、奇をてらった話にしすぎたという印象があります。

    そうですね。S2までの「SHERLOCK」では、あまりエンディングにワトソン君とどこかに出かける、というような設定は似合わない感じだったけれども、これからは作り様によっては、コンサートを聞きに行く、というような事で締めくくりにできるかもしれませんね。でも、そういう平和な形で終わるエピソードがあまり無いかな(笑)

    おお、リンク先が変になっている件、ありがとうございます。
    修正しておきますわ。

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