「Sherlock」 Series 2 「The Reichenbach Fall」 ざっくりの感想

-宿命の二人-



待ちに待った「The Reichenbach Fall」。 …いやはや。Series 2 最終の第3話は凄い事になっていた。
今回、殊に際立っていたのが、モリアーティを演じるアンドリュー・スコットの変幻自在の怪演ぶり。新たなカイザー・ソゼ的人物像を造形していた、とHUFF POSTのエンタメ欄にレビューが載っていた。実に悪夢のようなクリミナル・マインドっぷりだった。受けて立つベネディクト・カンバーバッチのシャーロックももちろん文句なしの演技で、シリーズ2の最終話に最高潮にその演技が研ぎ澄まされていた。
「A Scandal in Belgravia」 ざっくりの感想が好評だったので、今回も興ざめなネタバレをできるだけ避けつつ、ざっくりの感想を。

冒頭、いきなり、セラピストにショッキングな事を告げるワトソンの憔悴した表情で幕を開ける「The Reichenbach Fall」。



打ちひしがれるワトソン君から遡ること3ヶ月前、シャーロックは更に一層、世間的な名声を手中にしていた。盗まれた名画を取り戻し、また誘拐事件を解決して賞賛され、関係者から感謝のプレゼントを手渡されるシャーロック。公の席で、レストレードから例の「鹿撃ち帽」が恭しく手渡されたりもする。アマチュア探偵に大活躍されて面目丸つぶれのスコットランドヤードの精一杯の嫌がらせ?であろうか。(笑)今回は「A Scandal in Belgravia」以上に、シャーロックが鹿撃ち帽を被るシーンが印象的だ。憮然としながらも記者の求めに応じて帽子を被らざるをえないシャーロック。(アンダーソンとサリー・ドノバンが後方で笑っている)そんなマスコミの寵児になっているシャーロックを嘲笑うかのように、モリアーティは着々と邪悪な計画を進めていた…。


仕方なく鹿撃ち帽を被って苦笑いするシャーロック 一応被って歯をみせるところがカワイイ

というわけで、今回のモリアーティはシリーズ1の最終話「The Great Game」を上回る怪物くん状態である。次から次へと遊戯的に邪悪な事を思いつき、好敵手シャーロックとの命をかけた知恵比べに勝つ事のみに全精力を傾注して、その事を淫らなまでに楽しんでいるマスター・クリミナル。アンドリュー・スコットは得体のしれないヌエのような男をなりきりで演じ切っている。あの爬虫類のようなヌラリとした気持ち悪い感じ、にょろにょろと絡みついてくるのに触感はヒヤリとしているような感じや、シリアスになったり、冷酷になったり、突如奇声をあげたりと、奇想天外、縦横無尽の悪役ぶりで他を圧倒している。まさにエポック・メイキングな悪役ぶりである。そして、芯から楽しそうに演じている。楽しかったんだろうなぁ、きっと。


マスター・クリミナル モリアーティ

今回はシャーロックとモリアーティが二人でお茶を飲む、というシーンがある。自分はたとえ捕まっても、いつでも自由の身になれる、ということを証明するために派手に捕まったモリアーティが、結局は証拠不十分で(裏から陪審員を脅して)自由の身になる。そのニュースを聞いたシャーロックは、モリアーティが221Bを訪ねてくることを予期してお茶の用意をするのである。ここでの二人の会話も見所だ。


Tea for two

また、シリーズを通して今回初めてマイクロフトが創立発起人である「ディオゲネス・クラブ」が登場するのもひそかな見所かもしれない。このクラブは人付き合いが嫌いな人間ばかりが集まるクラブの為、会話はむろんのこと、足音も控えて静かに過ごさなくてはならないのだが、ワトソン君が靴音をたててクラブ内に入り、「マイクロフト・ホームズはどこですかぁ?誰か知りませんかぁ?」などと大声を張り上げたために、会員が静かに読書している部屋から職員につまみ出されるという一幕がある。



そして、アマチュア有名探偵から一転して、シャーロックが容疑者扱いをされてしまうという展開もあり、手錠をかけられたシャーロックとワトソンが町の裏通りを走り回って逃げるという見せ場もある。手錠で繋がれた二人なんて、ふふふ。ふふふふ。
そして、モリーとのシーンもさらに一層、印象的になっている。「君は本当に僕を助けてくれるか?」なんて真顔で言うシャーロック。モリーにシャーロックが頼んだ事は何だったのか。
ふふ~む、モルグに勤めるモリーが手を貸すといえば…ね。


そんな真剣な顔で、また純な女心を利用したのかシャーロック

タイトルの「The Reichenbach Fall」というのは、原作においてシャーロックとモリアーティが取っ組み合いつつ滝壺に落ちたスイスの滝の名であり、ひいては二人の宿命の対決を象徴するタイトルであるのだろう。しかし、この「Sherlock」シリーズ2の「The Reichenbach Fall」においては、滝はさらっと冒頭に、「オークション会場から盗まれたターナーの名画」としてしか登場しない。21世紀においては、シャーロックとモリアーティはわざわざスイスくんだりまで行って滝の傍で取っ組み合ったりはしないのである。ロンドンの建物の屋上(もっと言うと、いつものお馴染みの病院の屋上)で二人は対決するのだが、いやもう、このシーンは凄い。アンドリュー・スコットベネディクト・カンバーバッチのガチンコ勝負だが、どちらかといえばアンドリュー・スコットの闊達自在でビザールな悪役っぷりを、カンバーバッチがクールに受ける芝居をするのだけど、二人とも存在感が立っている。だって宿命の対決だもの。そしてこのシーンの成り行きはある程度予想された事とはいえ、かなりショッキングだった。そして、エンディングはこれも予想されたごとくに、おっと、やっぱりそういう事か、という幕切れである。まぁ、だろうとは思ったんだけど。
しかし、謎は残されているのであり(モリアーティだって本当にあのままなのかどうか知れたものじゃないし)、この先はどうなるんだ、とウズウズしつつ次のシリーズまでまた1年も待たされるかも…というのは、なかなかにしんどい事ではある。1年は引っ張り過ぎじゃなかろうか。でも新シリーズはNew Yearの恒例って事になるような気もするのだけど…。は~~~。
ともあれ、きっとシリーズ3が作られるに違いないので、先は長いけれど、また楽しみに待つと致しましょう。



それにしても期待にたがわない出来で、とても満足度の高い一篇だった。
このシリーズは、スティーヴン・モファットとマーク・ゲイティスというコンビの他に、スティーヴ・トンプソンという3人目のライターが3話のうちの1つを受け持っているのだが、「The Reichenbach Fall」はこの人の脚本である。これはワタシだけの感想かもしれないが、シリーズ1の時も、シリーズ2でも、なんだかやり過ぎで、トリッキー過ぎて疲れるなぁという印象のエピソードは、マーク・ゲイティスの脚本だったりする。興味を惹く事件が無くて暇な時に、殆どヒステリーの狂人に近くなるシャーロックを描くのはマーク・ゲイティスの脚本である。それはそれで面白いし、原作のホームズ像の一面をアレンジしていると言えなくもないのだけど、観ていてちょっと疲れる。それゆえに、「The Reichenbach Fall」がマーク・ゲイティスの担当じゃなくて良かったなぁ(ごめんね)、なんてひそかにちょっとほっとしたりして。
しかしまぁ、この先、シリーズ3を作るとしたら、どういう具合に展開していくのだろうか。完全にオリジナルにエピソードを作るのか、「帰還」以降の原作からヒントを得てアレンジして作っていくのか…。いずれにしても、さぞや頭が痛い事だろう。でも世界中のファンが首を長くして待っているので、頑張って傑作を生み出してほしいと思う。
それにしても、シリーズ2、おおいに楽しめた。まさにザッツ・エンターティメント!なシリーズだった。

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コメント

  • 2012/02/10 (Fri) 17:47

    こんにちは。S1-E2は面白いけど(二人の掛け合いとか)ちょっと中だるみだったので、「滝」の脚本が同じライターと聞いて心配してたのですが、素晴らしかったですね!3作の中では最高の出来ではないかしら。すごい緊張感のある緻密な展開、音楽(sinnerman、いいですね!)出演者たちの熱演、どれも文句なしでした。ジョンの精神状態が心配なので、原作よりも早くシャーロック帰ってきて~~と叫びたいです。あのティーセット素敵でしたね。評判になって注文殺到で品切れだそうで。

  • 2012/02/11 (Sat) 16:11

    rosarindさん
    これ、毎回、全3話のエピソードはどういう展開にするかというのは、あらかじめ、モファットとゲイティスでディスカッションを重ねて、考えて考えてプロットを構築しているんでしょうね。で、実際に書くのはそれぞれ1話ずつ分担して書くので、本筋と関係ないところでそれぞれのライターの持ち味が出たりするんでしょうね。ワタシはシリーズ1の2話目は悪くなかったと思ってるんですよ。(毎回2話目って少しカラーが違いますよね)むしろ爆弾でキリキリさせられまくる3話目の方がちょっと見ていて疲れたんですね。でも、今回は3話どれもがそれぞれに良かったです。3話目はやっぱりショッキングな展開もあって圧倒的でしたね。いかに肉を斬らせて骨を断つ作戦とはいえ、ワトソン君にあまりにも精神的に負荷をかけすぎですよねぇ。彼が二度と立ち直れなくなったらどうするつもりなのかしらん…。ティーセットに注文殺到なんですか。なんだかもう、多方面で凄い事になってますね。(笑)

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