映画の中の1920年代および30年代



この前、「ミッドナイト・イン・パリ」を観た際、トレーラーもあれこれと目にしたが、ついに劇場で「ホビット 思いがけない冒険」のトレーラーがかかるようになり(あと半年で封切りだものね)、また、バズ・ラーマンがリメイクした「The Great Gatsby」のトレーラーも目にした。バズ・ラーマンがギャッツビーをリメイクすると知ったのは結構前だけれども、ギャッツビー役がデカプーことディカプリオに決まったと知って興味索然。観る予定リストからは外していた。けれど、トレーラーを観て少し考えが変わった。タイトルデザインからしてアールデコ満載。そして忘れていたけれどヒロイン、デイジーをキャリー・マリガンが演じるのである。

これはハマリ役だと思う。トレーラーでもふわふわとしてそれらしい感じだった。美術とマリガンに免じてギャッツビーもやはり観に行こうかしらん…と転向したりして(笑) というわけで、「ミッドナイト・イン・パリ」でも大いにフィーチュアされていたが(言わずもがなだが付け加えると1920年代のパリに登場したスコット・フィッツジェラルドは「The Great Gatsby」の原作者)、1920年代、30年代の文化全般(美術や服飾、音楽、小説、絵画、工芸品、車、建築など)すべからく優美で洗練されているので大好きなワタクシ。殊に1920年代はローリング・トゥエンティと呼ばれ、1929年の大恐慌が来るまで、今日も明日も浮かれて日が暮れ、日が昇る、というようなジャズとシャンパンとチャールストンダンスの時代だった。今回は映画に現れた1920年代および30年代について。

バズ・ラーマンの「The Great Gatsby」は本国アメリカでは今年のクリスマスの公開。気合が入っている。日本で年内の封切りはあるのか無いのか分らないがトレーラーが劇場で流されるという事は、年内には上映されるのかもしれない。来年早々のお正月映画扱いだろうか。ともあれ、トレーラーを観る限りでは、1920年代の雰囲気がよく再現されているようだし、美術も時代考証がきっちりとなされていて豪華絢爛である。衣装も頑張っている。キャリー・マリガンのデイジーも、トビー・マグワイアのニック・キャラウェイもかなりハマッている感じである。



ワタシにとってただひとつの問題は、主役のギャッツビーを演じるのがデカプーだ、という事である。デカプーは若い頃は小味な映画に出ていて、俳優として面白い存在だったのだけど、タイタニックの大ブレイク後、一時の低迷を乗り越え、ほっそりした美少年から普通の体格の少し人相の悪い中年になってくるに従って、ワタシにとっては殆ど魅力のない俳優になった。人相が悪くなったから魅力がなくなったというのではなく、俳優として現している空気に魅力が無くなったのである。あれこれと頑張っているけれども彼が頑張っていてもあまり見る気にならない。若い頃の方が演技も上手かったような気がするのだけど気のせいだろうか。ギャッツビーをディカプリオが演じるのではなく、例えば、旬のライアン・ゴスリングあたりが演じるのであったら、ワタシはもう今か今かと公開を待ちわび、1も2もなく諸手を挙げて映画館に駆け付けたと思う。想像するだにワクワクする。ゴスリングくらいスマートなルックスの方が、後ろ暗い事をあれこれとやって、かなりムリをして一財産築き、憧れのデイジーに求愛するという生涯の夢に向って爆走し、もう一歩というところで挫折する男のロマンティシズムが詩情を伴って表現されたのではないかと思うのだけど、デカプーじゃねぇ…。ファンの方には申し訳ないが、う~むという感じである。



何かもう、後ろ暗いどころじゃなくて見るからに悪い事やってそうだもの。いかにも胡散臭そうだ。人に言えない事をしこたまやってお金儲けたに違いない、としか見えない。いつからか、あの眉間に1本深く刻まれた縦ジワが表情に険を作っていて、どこから見ても人相がよろしいとは言えない顔つきになっちゃっている気がする。

ついでながら、ゴスリングが1930年代(40年代かもしれない)の衣装を着た姿を観られるのは「Gangster Squad」という新作。日本では今年秋の封切りらしい。この映画のゴスリングは、「ドライヴ」といい勝負のカッチョ良さだと思われる。トレーラーでスリーピースのスーツなど着たゴスリングを見ると、ギャッツビーでもそのままいけそうな雰囲気で、あ~あ、デカプーじゃなくゴスリングでギャッツビーを観たかったなぁ、とついつい思ってしまうワタシなのだけれど…。ともあれ「Gangster Squad」は大いに期待して待ちたいと思う。


「Gangster Squad」のゴスリング そのままギャッツビーでもいけそうな感じである

さて、映画に現れた1920代から30年代にかけてであるが、
男性の方は1920年代から1940年代ぐらいまで、あまりファッション的に大きな変化はないように見えるのだが、女性の1920年代はビーズの時代である。ビーズのキャップにビーズのバッグ。ローウエストのワンピースに巻きあげストッキング。長い柄のついたシガレット・ホルダー。1920年代は女性が長かった髪を切って社会に進出した時代だ。ニューヨークに摩天楼が次々に建ったのもこの時代からである。
映画の中の印象的な1920年代ファッションというと、「コットンクラブ」でダイアン・レインが被っていたビーズのキャップである。あのキャップはもう、いかにも1920年代だと思う。ダイアン・レインのファッション以外にも、「コットンクラブ」は全体的に1920年代の空気感がよく出ていた映画だと思う。



この時代、ヘアスタイルはショートボブが流行った。前髪やサイドをピンカールさせた髪なども流行っていた。このピンカールさせたショートのブロンドといえば、ジョディ・フォスターが少女時代にヴァンプを演じた「ダウンタウン物語」がある。この映画での彼女は体つきは少女なのにヘビーメイクが似合い、妖艶なムードを振りまいていた。「ダウンタウン物語」は全員ローティーンの子供を使って、1920年代の雰囲気をパロディとしてよく出していた。


少女ながらに妖艶なジョディ・フォスター 彼女はローティーン時代が最も美しかったと思う

また、1974年版のグレート・ギャッツビーの衣装はアカデミー賞の衣装デザイン賞を取っただけあって、よく時代色を出していたし、パステルカラーをうまく使った色調なども洗練されていたと思う。ロバート・レッドフォードの衣装はキザ過ぎてひっくり返りそうになったが、確かにオシャレではあった。女性のファッションも、例のビーズのキャップや、デイジーのジョーゼットやオーガンジーのドレスや帽子など、ひらひら、ふわふわしたヒロインの雰囲気を衣装でよく出していたと思う。



「シャネル&ストラビンスキー」でも20年代のムードが衣装や車や住宅などにスタイリッシュかつ色濃く出ていて見事だった。



1930年代が主な時代背景であるものに、アガサ・クリスティのポワロ物がある。ポワロ物の映像化は、いかにこの時代の色を効果的に出せるかという部分も全体の雰囲気を造り出す重要なファクターなので、美術や衣装や小道具には気を抜けないのである。何度も書いているがディヴィッド・スーシェのポワロ物はこの点が本当に見事で、毎度感心させられる。
アガサ・クリスティつながりで書くと、1930年代の色が上手く出ていた映画といえば、ワタシは「アガサ愛の失踪事件」を挙げたい。アガサ役で登場したバネッサ・レッドグレイヴの30年代ファッションは見事だった。何といっても彼女が幾つか被って現れるクロッシェ帽のデザインの素敵だった事や、毛皮のコート、バッグや靴などのデザインも、いかにもこの時代のセンスを反映していて良い。バネッサ・レッドグレイヴはこの時代のファッションがとても似合う人である。


優雅な鉱泉治療のホテルにて

いかにも1920~30年代風なワンピースのバネッサ・レッドグレイヴ

また、1920年代、30年代の小物として外せないのがアールデコ・デザインのシガレットケースである。昔の喫煙道具はオシャレで美術品としても値打ちのありそうなものが多いが、ワタシは1つでいいから、この時代のアンティークのシガレットケースが欲しいと思って機会あるごとに、手の届く範囲で状態のいいものを探している。

1920年代から30年代というのは、車も優美だ。大きくて、曲線が優雅で何とも言えない。ゆったりとした大きくて優美な車にクロッシェ帽を被って乗り、パフパフとクラクションを鳴らしつつ運転したい、というのがワタシの密かな夢である。




例えばこんな感じで…

建物では、アールデコのいい建築が世界のあちこちに残っているけれども、最もこの20年代から30年代を象徴する建造物といえば、ニューヨークはマンハッタン、レキシントン・アベニューに聳え立つ、あの優美なクライスラー・ビルではなかろうかと思う。クライスラー・ビルって独創的で素敵な建築である。飾りに取り付けられた鷲の頭さえも、えもいわれない。アメリカにもニューヨークにも取りたてて惹かれるものはないワタシだけれど、唯一このクライスラー・ビルだけは生涯のうちに一度ぐらいは観に行ってもいいかな、とふと思ったりする。トゥー・ウィークス・ノーティスというラブコメの中に、思いがけずこのクライスラー・ビルについて、女好きのおちゃらけ社長のヒュー・グラントが意外な思い入れで語るシーンがあり、どうでもいいようなラブコメだったが、クライスラー・ビルが映るシーンだけはその美しさをしみじみと眺めた記憶がある。


独創的かつ優美なクライスラー・ビル

鷲の頭を象った装飾の上で撮影する女流写真家マーガレット・バーク-ホワイト
彼女はクライスラー・ビルの中にスタジオを構えていた …ステキである

そんなわけで、全てが優美で洗練されていた1920年代、30年代。ワタシはこの時代のものが殆ど全て好きである。音楽であれ、建築であれ、ファッションであれ、雑貨であれ、車であれ、建築であれ、装飾品であれ、なんでも好みに合うのである。だから、この時代のカラーをうまく再現した映画は好きだ。トレーラーを観る限り、アールデコをふんだんに押し出して美術も衣装もなかなか良さそうだし、絵的に1920年代を上手く再現してあるようなので、デカプーには目を瞑って、やはり「The Great Gatsby」が封切られたら観に行くとしましょうかしらん。美術や撮影は一見の価値はありそうだものね。

コメント

  • 2012/12/15 (Sat) 10:38

    はじめまして
    私自身20~40年代が好きなもので
    映画のレビューもなるほどなあ・・と
    思うところがありました
    アールデコの建築はいいですね
    都内の建築物を訪ねて歩いています

  • 2012/12/15 (Sat) 20:48

    henry gさん 初めまして。

    20年代から40年代、いいですよね。
    アールデコの建築にも目がありません。
    都内の建築めぐりも楽しいですよね。
    とにかく、無くならないうちに、壊されないうちに
    ここというところは見ておかないと、ですね。

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