「ステート・オブ・プレイ ~陰謀の構図~」(State of Play)

-やはりBBCドラマは面白い-
2003年 英 BBC デヴィッド・イェーツ監督



春先にAXNミステリーで放映された時には、ジョン・シムとケリー・マクドナルドの吹替えの声がワタシにはどうも耳障りで観賞を中断してしまったのだけど、このドラマは出来が良いらしいというのは分かっていたので、昨今また放映され始めた為、録画しておいて吹替えに耐えつつも観賞してみることにした。まだ中盤までしか観ていないけれども、期待にたがわず面白い。何しろキャスティングも顔が揃っているものね。吹替えの声は相変わらず耳触りではあるけれど、今回はぐっと我慢である。

一応ざっくりとした梗概をご紹介すると、
ある日、エネルギー委員会の調査官を務めていた女性が自殺した、というニュースが飛び込んでくる。委員長である労働党下院議員スティーブン(デヴィッド・モリッシー)は、騒ぎ立てるマスコミ対策として記者会見に臨むが、その場で泣き崩れてしまう…。二人の関係を怪しいと睨んだマスコミはさらに騒ぎ立てるが、同じ日に15歳の黒人少年が射殺される事件も勃発していた。一見、何の関係もないように見えた2つの事件の背景には、予想もしなかった陰謀が渦巻いていた。一見関連のない2つの事件を繋げる国家的陰謀を嗅ぎ取った新聞記者マカフリー(ジョン・シム)が、真相をめぐって巨大権力と繰り広げる熾烈な駆け引きとその真実の行方をスリリングに描く。 というもの。

以前、吹替えにゲンナリして観賞を早々に中断したため、仕方なくこれのハリウッドリメイク版である映画「消されたヘッドライン」がちょうど放映されたのを見たのだけど、主役の新聞記者に、演技力はともかくも、でぶちんでロン毛という見た目に暑苦しいラッセル・クロウが扮していて、字幕だから吹替えが耳ざわりってことはなかったが、今度はクロウの姿が暑苦しくて目障りだわ…と思いつつどうにか観賞し(毎回何かが観賞の妨げになるのである)、話の筋を把握した。リメイク版も頑張ってはいたようだが、今回改めて本家のBBCのミニシリーズを見ると、やはりこっちの方が断然面白い。主役の新聞記者もヘチョヘチョ系ではあるがジョン・シムの方がキュートだし、編集部長も狐ばあさんへレンよりビル・ナイの方が良い。女性記者役も、映画ではレイチェル・マクアダムスが演じていたが、やはり本家のケリー・マクドナルドの方が良い。映画では割愛されていたキャラだと思うが、ジェームズ・マカヴォイが演じるフリー記者のダンも印象的である。


いつも同じヘアスタイルのような気がするジョン・シム


カッチョいいぜ、ビル・ナイ


やはり赤い唇のマカヴォイ先生

疑惑の渦中の議員を演じるのはデヴィッド・モリッシー。これは映画版のベン・アフレックとイメージ的には大差ないが、苦悩していると見せかけつつ煮ても焼いても食えない怪物性を宿している雰囲気は、やはりデヴィッド・モリッシーの方が上である。というわけで何から何まで、やはりオリジナルのドラマ版の方が良い。ただ、議員の奥さん役はドラマ版ではポリー・ウォーカー、映画ではロビン・ライトが演じていて、これはどちらもOKだった。個人的にはロビン・ライトの方が好ましいが、ポリー・ウォーカーもどっかり中年体型(「ROME」ではあまりのドッカリぶりにちょっと引いた)になる前で、まだ憧れの女性役に辛くも及第、という感じではあった。


辛うじてドッカリ中年になる前のポリー・ウォーカー

ネタに迫る記者たちのメインはジョン・シム演じるマカフリーであるが、ドラマ版では彼をメインとする記者達の群像劇という側面もあり、彼らのキャラ付けやコンビネーションなどもドラマの面白味を増している。けしてジョン・シムのマカフリーだけがスタンド・プレイで目立っているような作りではないのである。特ダネをあさるフリー記者役でマカヴォイが登場するシーンなども面白い。街角のコピー屋の店員がゲイで、彼から、ある人物の人相風体を聞き出そうと、女性記者デラ(ケリー・マクドナルド)が現金を渡して尋ねても捗々しい情報を得られないのに引き換え、店に入る前にさりげに結婚指輪を外したダン(マカヴォイ)が、ゲイらしい店員に好意的な笑顔で質問すると、何の見返りもないのに店員はつるつると欲しい情報を吐き出してしまう。マカヴォイ先生の美少年ルックスを生かした演出が効いている。その他、記者達が欲しい情報を取るためにどうやってその場その場で機転を利かせるかなども随所に描かれていて興味深い。



真相を追う記者達の身辺にキナ臭い事が起き、警察も関ってくるのだが、記者達と何かと接触する警部役で、ジョン・シムが出演する作品には必ず顔を見せているような気のするフィリップ・グレニスターが登場する。多分、シムと仲良しなのだろう。もしかするとこのドラマでの共演から仲良しになったのかもしれない。(笑)フィリップ・グレニスターはアバタ顔で体格もよく、デカ(刑事)役者、というイメージである。


デカ俳優のグレニスター 背後はビル・ナイ編集長

また、ワタシの中で大佐役者というイメージなのが、議員を演じるデヴィッド・モリッシー。何故かというと、印象に残ったドラマでいつも大佐役を演じているから。(「分別と多感」でのブランドン大佐および「オリエント急行の殺人」でのアーバスノット大佐など) ワタシがこの人を最初に見たのはダニエル・クレイグの日本未公開作品「some voices」(2000年)での兄役である。精神病を患う困ったちゃんの弟(ダニエル)に手を焼きながらも、なんとか弟の面倒を看ようと苦闘するシェフの兄役は好印象だった。また、「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ」(1998年)ではジャッキーの姉ヒラリーの夫役も良かった。その後、ハリウッドで「氷の微笑2」などというしょうもない作品に出てしまい(とほほ…こんなの断ればよかったのにねぇ)、ハリウッドデビューの機会は生かせなかったようだが、本国UKではTVを中心に手堅く活躍している俳優である。


大佐役者 モリッシー

女性記者デラを演じるケリー・マクドナルドを最初に観たのは、あの懐かしい「トレイン・スポッティング」である。キュートな小悪魔系で肌が綺麗だな、という印象だった。前述の「some voices」にもダニエルの彼女役で出演している。そのまま危険な小悪魔系の女優になっていくのかと思いきや、素は手堅く地味な人柄なのか、「ゴスフォードパーク」のメイドさんなど、可憐で地に足のついた感じの女性役が多くなってきた気がする。昨今では「ボード・ウォーク・エンパイア」の印象が強い。


女性記者役のケリー・マクドナルド

このケリー演じるデラは、先輩記者のカル・マカフリー(ジョン・シム)にほのかに想いを寄せているのだと思うが、当のマカフリーは友人である下院議員スティーヴン・コリンズの妻アン(ポリー・ウォーカー)に昔から密かに恋をしているという設定である。地下鉄のホームで自殺したとされる女性が夫の愛人だったと知って動揺し、更にはマスコミの餌食にされかけたアンが助けを求めたのは昔からの夫の友人である新聞記者マカフリーだった。ずっと気持ちの底で抑えては来たのだが、アンを憧れの対象として見つめてきたマカフリーは、相手が弱っている時につけこむような真似はしたくない、友達の妻なんだし…と思いつつ、慰めを求める彼女に迫られると到底断れない。このへんの男の揺れる純情をジョン・シムがキュートに演じている。



マスコミにかぎつけられるからホテルじゃないところに逃げたいというアンを自宅に匿うマカフリー。用事がある振りをして夜、家を出るが、家の中で二人きりにならないように彼なりに自制心を働かせたりしているわけである。リビングにアンがいるのを声をかけずに暫し見つめるシーンなど、心の底に想いを封印してきたのだが、アンが好きでたまらない、という感じがよく出ていた。ポリー・ウォーカーはそう高嶺の花という感じでもないように思うけれども、90年代前半までは美人女優のポジションで色々な作品に出ていたと思う。

ヘラルドの編集部長であるキャメロン・フォスターを演じるビル・ナイはこの役でBAFTAのベスト・アクター賞を受賞したというので、後半にどんどん見せ場が出てくるのではないかと思われるが、まぁ、とにかく出てきただけでもなんだか嬉しい人ではある。スラリと長身で見た目にも涼しいし、ジョン・シムやマカヴォイとのスリーショットなんて、なかなか絵になっててこれも観ているだけで嬉しい。フリー記者であるマカヴォイ演じるダンがヘラルドの編集部に初めて来た時に、「みろ、あのいきがったサマを」などとお気に召さない様子なのだが、マカフリー達に役に立つからと言われてシブシブと彼を呼び寄せ、「いいか。俺を絶対にオヤジ、と呼ぶな」というシーンなども、ふふふ、という感じである。



来週から後半にさしかかるのでますます面白くなるとは思うけれども、これはやはりBBCのドラマ版の方が断然面白いので、「消されたヘッドライン」しか観ていない方、または双方未見の方は機会があれば「ステート・オブ・プレイ」をご覧になることをお薦めします。(レンタルDVDもある模様)まぁ、何せBBC制作のドラマというのはあまり外れは無いし、ましてやこれは社会派サスペンスとして出来の良さに定評のある作品なので太鼓版。売り出し途中のマカヴォイを眺めるのは特にファンじゃなくても結構楽しいですわよん。

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さて。2月の記事でオモシロそうだから期待する、と書いた海外ドラマについてだけれども、「PAN AM」も「CAMELOT」もあまり面白味を見出せず、2~3話見たものの、どうにも興が乗らずに早々に観賞をやめてしまった。面白かったという方もいらっしゃるかもしれないけれど、ワタシ的には「PAN AM」は展開がユルくてイマイチだったのと、出演者に殆ど魅力が無かったのが興ざめの原因のような気がする。「MAD MEN」で注目を浴びた60年代をフィーチュアしたドラマではあるが、60年代を舞台にしたというだけで当る程世の中は甘くない。「CAMELOT」は全体におどろおどろしい雰囲気で、魔女エヴァちゃんはともかくも、肝心のアーサー王を演じる若手の俳優が、当初懸念されたごとくにチョンチョロリンのシャビーな若造で魅力のカケラもなく、こんなのがあれこれワガママ言ったって陰謀めぐらしたって、ちゃんちゃらおかしいわ、という気分になってしまい、早々に干渉を中止した。

一方、現在、放映が始まっている海外ドラマは結構面白いものが出てきている。まず、今年のゴールデングローブ賞の最優秀ドラマ賞を獲った「HOMELAND」は見応え十分。先がどうなるのか非常に興味深い。話の骨子としては「ある愛の風景」とも共通する、アラブで捕虜になっていた兵士の苦悩が描かれているが、本作では、彼がその間に何を経験したのか、果たして彼は転向したのか、という疑惑を巡る物語である。彼は「英雄」なのか、それとも「国家の脅威」なのか…。



筆舌に尽くし難い捕虜生活の辛酸を舐めて8年振りに故国に帰った兵士を、「バンド・オブ・ブラザース」のダミアン・ルイスが演じている。打って付けのキャスティングである。彼を怪しいと睨んで執拗に内偵するCIAの偏執狂的な女性局員にクレア・デインズ。これでゴールデングローブの主演女優賞を獲っただけあって、のめりこみ型の病的なCIA局員を鬼気迫る演技で表現している。クレア・デインズといえば、ワタシ的には、昔、美少年だった頃のデカプーと共演した「ロミオとジュリエット」の素朴なジュリエットしか記憶にないのだが、本作のクレア・デインズはまさに「座敷女」的な怖さ、ウザさでかなりの迫力である。役造りなのか、年を重ねたせいか、表情に険があり、精神病を病みつつもそれを隠して、ひたすら激しい思いこみで猪突猛進するCIA局員役をなりきりで演じている。こんなのに目をつけられたら大変だ、と毎回思ってしまう。まだ2回までしか放映されていないので、もう少し回が進んでからレビューを書こうと思うけれども、これは確かに面白い。

また歴史劇では、「BORGIA(ボルジア 欲望の系譜)」もちょっと濃いけど割に面白いドラマである。何せ、ボルジア家の物語だからドラマ性には事欠かないし、時代もルネッサンス期で美術や衣装や撮影は頑張っているし、脚本もしっかりとしているようなので、暫くは楽しめそうだ。


「ボルジア 欲望の系譜」


ボルジア家といえば血塗られた陰謀、毒薬、暗殺というイメージだけれども、チェーザレやルクレツィアなどに代表される世にも稀なる美貌の一族でもあった。美貌と残忍と陰謀と淫蕩がボルジア家の血統である。チェーザレ・ボルジアといえば、ワタシがボルジア家について初めて知ったのは、少女の頃に読んだ、あの塩野七生の「チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷」による。懐かしい。著者の塩野七生ほどにはチェーザレに惚れなかったけれども、ボルジア家とローマ法王庁とルネッサンス期が混然一体となって織り成す歴史ドラマの印象は記憶に残っている。チェーザレが父によって敷かれた枢機卿への道をなげうって剣を取った、というのもハッキリと覚えている。今回のドラマでチェーザレを演じているのはマーク・ライダーという甘っちょろい二枚目の小僧で、どうも「優雅なる冷酷」という感じでもないが、まだドラマが始まったばかりであり、おとっつぁんのロドリゴも枢機卿の一人で法王にはなっていない時期なので、この先どんどん残忍さに加えて怖さとクールさが出てくるのかどうなのかチェックしたい。



一方、ルクレツィアを演じる女優があまり美人ではないのが些か難点ではあるが、ドラマの中で「不美人な私」といわせているところをみると確信犯的にあまり美人ではない女優をキャスティングしているのかもしれない。兄や父の陰謀に利用され、政略結婚を繰り返しながら段々に太々しさを発揮するようになる過程で美しくなってくるという設定なら、それはそれでオモシロそうである。

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というわけで、ドラマも予約録画しておいて、折々時間のある時に固めて観ているが、なんかもう、あれやこれやと沢山流れているので録画設定も大変である。原作者のグリシャムがプロデューサーをやって、ノリノリで制作しているという感じの「ザ・ファーム」はちゃんと観ていないのだけど面白いのかしらん。あまり食指が動かないのだけど…。やさぐれた秘書の役で久々のジュリエット・ルイスが出ているらしいのだが、「ザ・ファーム」まで手が廻らないので未見である。7月はNHKでもAXNミステリーでも「Sherlock」が放映されるし、なんと契約しているビデオ・オンデマンドにも「Sherlock」のSeries1が入ってくる事が分かった。もうじきSeries1の日本版DVDが出るので(出るけど、微妙に価格が高いようだ。ダメである)、ようよう解禁て事かもしれないが、遅い。海外ドラマの放映や、DVD化ひとつとっても、日本の対応の遅さ、ダメさ加減が露呈しているような気がする今日この頃である。

コメント

  • 2012/06/25 (Mon) 23:20

    おばんです!BBCドラマは面白い、同感です。というかイギリスもの大好き。イギリスの役者さんたちってたいていポアロかミス・マープルシリーズに出ててあ、あの時の人だ!ってな感じで親近感かんじやすいのかも。
    逆に「オリエント急行」のデヴィッド・モリッシーのアーバスナット大佐は早く見たかったのだけど。日本で放映されるまで時間かかりすぎだよね。ホントに。そしたらシャーロック2はまあ、早い方かな。今年早々に知り合いのカナダ人の男の子が見て、ネイティブでも聞き取るのが大変な英語(?)だって言ったのでオリジナルで見るの断念しました。あ~あと一月か、待ち遠しい☆

    kikiさんのベランダ想像するだにうっとりします!クチナシ、ラベンダー
    あじさい、そしてフクシア。大好きなお花ばかり。そうフクシアがまだ咲いてるのか、気になっていました。その昔「フューシャーピンクのトップと黒のパンツの組み合わせがおすすめ」ってブルック・シールズの本に書いてあったのを思い出した。。。

    最後に、ルクレティア・ボルジアは、マルティーヌ・キャロルで決まりですな。えッ!?古すぎる?、やっぱり★

  • 2012/06/26 (Tue) 22:06

    ジェーンさんも英国もの大好きなんですのね。そうそう、大抵の俳優はポワロかマープルにゲストで出ているから、ブレイクしてから振り返って見る楽しみもありますね。でもNHKで放映権を取ったドラマって版権問題がややこしいのかしらん。DVD化も遅いし、必ず吹替え版を作るから手間とコストが懸かるのか、なんかモタモタと遅い感じがするのは気のせいかしらん…。確かに「オリエント急行~」に比べるとSherlock2は早い方かもしれないけど、それは巷で話題になっているので頑張った結果の7ヶ月遅れ、なのかもね。…どうにも遅い。そして、ジェーンさんはまだSeries2を観てないんですね?それなら余計に待ち遠しいですわね。Series1に輪をかけた面白さ、というかSeries2の方が段違い並行棒に面白いですわよ、お楽しみに。

    ジェーンさんも花お好きですのね。大体、四季を通じて何かしら花が咲くように鉢を置いてあるのだけど、なおかつ香りのいい花が咲く時期というのはまさにベランダは至福の場所。今はまだ暑くないし、涼しい風が適宜吹き抜けて、花に水やってから一服しつつ本を読むのも休日の憩いのひと時ですわ。今年は睡蓮の栽培に手を出そうか否か、現在、思案中。

    マルティーヌ・キャロル!「ボルジア家の毒薬」ね。ワタシは映画は未見でスチール写真しか観た事ないのだけど、好事家の間ではこのルクレツィア役のマルティーヌ・キャロルは評判が良いらしいですね。今のところ、やはり彼女が決定版なのかもね。

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