「ペネロピ」

~そのままの君でいけ~
2006年 英/米  マーク・パランスキー監督



いまごろ書くよ(観たよ)シリーズ第2弾。今回は「ペネロピ」。封切り時に全く興味がなく、そのままずっと興味のなく打ちすぎようとしていたのだけど、初老になったナイジェル・ヘイヴァースがちょっとだけ出てくるというたむさん情報により、折りしも半額サービス中なので観てみる事にした本作。
これが、意外に面白い映画でございました。食わず嫌いをまた反省させられた1本。
名家の一人娘に生まれながらも、先祖の受けた呪いのためにブタの鼻で生まれてきてしまったペネロピ。というわけでブタの鼻をつけたクリスティナ・リッチであるが、これが案外似合ってて可愛い。(少女時代のペネロピを演じる少女もブタ鼻が似合っていて可愛かった) ああいう鼻が調和する顔立ちなのかもしれないが、別にこのままでいいじゃないの、可愛いし。少しすれば見慣れるわよ、なんて思ってしまったワタシは無責任ですかしら?Penelopeはペネロピ、と発音するのか、ふ?ん。遠い昔、「サンダーバード」にペネロープというブロンド美人が出てきて(でも人形の上、吹き替えは黒柳徹子だ)、お嬢様の彼女はいつもパーカーという運転手つきの車で移動しつつ、国際救助隊の仕事を脇から助けていた。ペネロープって、コケティッシュでしかもお嬢様チックな名前だな、という印象が漠然と残っているのは、この人形劇の印象によるところが大なワタシ。ペネロープだとオトナっぽいがペネロピとなると非常に幼い雰囲気になる。面白いもんですね。


別にこのままで可愛いじゃないの (ちょっと観月ありさにも似ている気が…)

そして、今回ほほぉ?と思ったのは、落ちぶれた名家の倅マックスという触れ込みでペネロピの前に現れるギャンブル中毒の男を演じるジェームズ・マカヴォイ。これまで「ラストキング・オブ・スコットランド」、「マクベス」、「つぐない」と観て、作品はともかくマカヴォイには全く来なかったワタシなのだけど、今回は「お!」と思いましたね。初めて、確かにいいかも、と鏡ごしに彼を観ながら段々恋するペネロピにニヤニヤしつつ、うふふふ、ちと素敵じゃない?相変わらず唇赤いけど、と楽しく観賞。ああいうボサったヘアスタイルの方が似合う気がするな、マカヴォイ。何を見ても「お!」と思うかどうかはともかく、今回はツボに入った。弱いくせに下手の横好きでギャンブルにとりつかれて道を誤りかけている男、という設定も良かったかもしれない。

 マカヴォイ

小柄なクリスティナ・リッチとのスクリーン上の相性もバッチリ。これはベストなキャスティングですね。二人とも芝居が上手いので、ペネロピの顔を見ないまま鏡越しにいい具合にコミュニケーションしていた間と、ついうっかりとピアノを弾く彼の背後に現れたペネロピにマックスが驚いて飛びすさるシーンは二人のセンシティヴな心理がよく伝わってきて非常にメリハリのある流れになっていた。マックスに恋したペネロピはまさに命がけの勢いで自分からプロポーズをするのだが、マックスはこれを断る。ブルータスお前もか、だが、彼にはペネロピのプロポーズを受けられない理由があったのだった…というわけで、自分の容貌に絶望していた上、初恋にも破れたペネロピはマフラーで顔を覆って一人、夜の街に彷徨い出る。彼女は母の盲愛という檻から出て、外の世界を目指したのだ。クリスティナ・リッチはペネロピが自らの殻を脱ぎ捨て、身を捨てて生活費を稼ごうと町角の証明写真機で自分を撮るシーンで、アッパレ感と痛々しいものを同時に感じさせるという演技力を示し、やっぱり上手いなと感心した。今回の彼女は、心の痛みを感じさせるシーンが殊更良かったのだけど、マカヴォイの方はなんでもない素に近いような(素のままというのではなく素っぽい空気をうまく出している)鏡越しのシーンのあれこれが特に良かった。カエルの置物を笛にして、ぴゅーと吹いてみて一人で喜ぶシーンなどニクイばかり。これ儲け役だなぁ。



このペネロピの人生を閉ざし、禁忌の壁で厚く覆っていたのは、彼女のブタ鼻を誰よりも恥だと思っていたその母ジェシカ(キャサリン・オハラ)だった。娘の顔を誰よりも気にして世間から遠ざけ、ずっと屈辱的な思いをさせてきたのは、この母の思いこみと愛情の裏返しのような差別意識。(世間はあなたを珍しいからもてはやしているだけ。しゃべるブタだと思っているのよ)
こういう寓意的な状況でなくても、母親のこうした種類の愛情が子供をがんじがらめにし、窒息寸前にする例というのは世間にも多くあるだろう。母ジェシカを演じるキャサリン・オハラは、他でもこういうタイプの母親を演じていたような気がしたが、蒙昧な母を演じさせるとピカ1かもしれない。
そして、この困ったおっかさんが金持ち専門のお見合いサービスから選んだ婿候補の一人、エドワードを演じるのはサイモン・ウッズ。どこかで観た顔だと思ったら、「プライドと偏見」で長女の結婚相手を演じていた俳優だった。そしてこのエドワードの父を演じていたのがナイジェル・ヘイヴァース。(たむさん、確かにそのまま少しオジサンになってましたね)できの悪い息子に手を焼くおとっつぁんの役だった。リンゼイ卿も、もうそんなお年に…。

そして、予想もしないところでアゴ姫(リース・ウィザースプーン)がガサガサと下品にしゃべりまくりつつ登場。アゴ姫も芝居が上手いってことなのだろうが、今回はとことん下品な感じで突っ走っている。宅急便を原チャリで運んでいるねーちゃんの役なのだけど、せり出した顎で、眉間にシワをよせてしゃべりまくる様子はチープで1ミリの品もない。が、アゴ姫、キュートぶっているよりも、こういうガサツな女の役の方がハマって見えた。「鼻を整形でもしたの?」とマフラーで顔を覆ったペネロピに尋ね、「ワタシも整形したいのよね、耳を」と言うのだが、いや、あーたは顎を削った方がよくってよ、と突っ込んだのはワタシだけではあるまい。なんでこんなところにアゴ姫がちょろっと出てくるのかと思ったら、この映画は彼女の制作であるらしい。アゴ姫はなかなかやり手である。
余談だが、アゴ姫とペネロピが出会うパブのバーテンさんがなかなかいい感じだった。

 ガサガサのアゴ姫

衣装や美術面でもなかなか小味な可愛い映画で、ペネロピのマフラーの色合いや柄、彼女の服、彼女の部屋の内装など、独特のセンスで雰囲気がよく出ていた。総体に黄色いフィルターのかかった色調は、「アメリ」の画面を思いださせる。赤やグリーンの発色がとてもキレイだ。その鼻を世間に知られるのを懼れる母のせいで、家に閉じこもったまま育ってきたペネロピ。部屋はおとぎの部屋状態。その部屋のありようと、この画面の色調がとてもマッチしていた。

ラスト、ペネロピが教え子たちを相手に、「この物語の教訓は?」なんてやらかすところはちょっと蛇足のような気がしたけれど、ファンタジックで可愛らしい自分探し物語として、よく出来た映画だったと思う。でも、鼻がそのままでずっと押し通すか、あるいは呪いが解けても自分の意志で元の鼻に戻すという設定になっていればもっと良かったのにねぇと思ったけど、まぁ、よしとしますか。

コメント

  • 2009/01/22 (Thu) 19:06

    kikiさん、ペネロピ楽しめたようですね。マカヴォイ君もちょっときましたか? マカヴォイって、「ウィンブルドン」で、ポール・ベタニーのダメな弟をやってますし、「ナルニア国物語」では、下半身が獣の、パンみたいな役をやっておりましたが、あまり印象に残らなくて、「キング・オブ・スコットランド」はパスし、「つぐない」もdvdでようやく見たんです。そしたらなんと、よかった。で、kikiさんがあんまり~、というので、マカヴォイが私にはどうしてそんなに良かったのか、と考えてみたのですが、たぶん、あの妹を糾弾するシーンの「怒り」の表現がとてもピュアで、男の人が怒りを爆発させる、というのを近頃あまり見たことがなく、非常に鮮烈な印象でした。セクシーでさえありました。今度のボンドの予告編でも、ダニエルが怒りを湛えた眼をしていました。動体視力の弱い私としては、その展開の速さにすでに恐れをなしていますが、あの眼は見なくては、と期待しています。

  • 2009/01/23 (Fri) 00:18

    マカヴォイはウィンブルドンにも出てましたっけ。全然覚えがないですね。「ナルニア国~」はパスなので観てませんが、いずれにしても出だしの頃は目立たなかったですね。「ラストキング・オブ・スコットランド」は、マカヴォイどうこうよりも(彼も上手いですが)映画として面白いし、出来もいいですよ。一度ご覧になってみては?まぁ、たむさんの苦手そうなシーンが幾つかあるので無理にお薦めはしませぬが…。「つぐない」の怒りシーンに目が行きましたか。ふぅん。ワタシは「つぐない」はお話全体に乗れないものを感じてどうもダメでした。映画全体の空気感が苦手なものを醸し出していた模様。「QOS」では、確かにボンドは哀愁とともに怒りも湛えてますね。めまぐるしいけど、頑張って劇場で観賞してください。一番後ろの方の席で画面全体がよく見える状態の方がいいかも、ですね。(笑)なんせもう、バンバンかっとんで行くので。

  • 2009/01/23 (Fri) 00:41

    「ペネロピ」のマカヴォイ、いいですよね~。私はこれで彼に惚れましたわ。勢いで2008年のNO.1映画をこれにしたぐらい(笑)。

    ちなみに、私もkikiさんと同じく、アゴ姫(笑。すごいネーミング)に「あんたが整形すんのは顎でしょ!」と突っ込んだクチでございます。

  • 2009/01/23 (Fri) 06:58

    mayumiさんもこれのマカヴォイに来ましたか。他の映画では特に来ないんだけど、なんだかこの作品での彼はちょっと違う感じですわね。ワタシも、あら、ふぅん…って感じでした。そして、やっぱりアゴ姫のセリフに突っ込みました?あははは。「耳」って何言っちゃってんの?って感じですよね。この映画のアゴ姫のガサガサぶりは誰かに似ている気がしてしょうがないんだけど、思い出せないわ~。

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