「エージェント・マロリー」(HAYWIRE)

-彼女を女と思ってはいけない-
2011年 米 スティーヴン・ソダーバーグ監督



これは、映画としては大した出来じゃなかろうとも、豪華な顔ぶれの男優陣が女子格闘技界の星ジーナ・カラーノの脇を固めるという構図がいやがおうでも興味をそそるのでチェックしていた作品。ユアンとミヒャエルの2ショットなんてのもあって、ワタシ的にはニヤニヤものだったし、映画もスピーディでアクション・シーンにパンチが効いていて、そこそこ面白かった。それも主人公を演じるのが女性格闘家であるからこその面白みではあろうけれども、本気出してんじゃないの?というぐらい気合の入った格闘シーンはさすがの迫力だった。
元海兵隊員で、フリーランスのスパイとして活動するマロリー・ケイン(ジーナ・カラーノ)に、民間軍事企業の社長ケネス(ユアン・マクレガー)からバルセロナでの人質救出という仕事の依頼が入る。バルセロナで初めて顔を合わせた他の3人と組んで、人質救出を成功させるマロリーだが、仕事を終えて戻った彼女を待っていたのは、新たなケネスからの仕事の依頼だった。気が進まないながらもケネスとの最後の仕事としてしぶしぶ引き受けたマロリーだが、そこには思わぬ落とし穴が待っていた…。



というわけで、冒頭は逃亡中らしいマロリーが、雪まみれの寒そうな戸外からドライブインに入って一息ついていると、男(チャニング・テイタム)が彼女を追って店に入ってくる。二人は暫く会話していたかと思うと、男が矢庭に彼女にコーヒーをぶっかけ、殴りつける。女子を相手になんちゅう狼藉を!と思ってしまうが、遠慮なしにやれ!と言われて女子を相手にチャニング・テイタムは頑張ったのに違いない。普通の女優が相手だったら、観ている方もイタイタしくて目を逸らしてしまいそうだが、どっこい、この女を女と思ってはいけないのである。振り回されたり投げ飛ばされたりしていたマロリーが反撃に転じると、これまた実に強烈。同情しなくてOKね、と観ていてスッキリするぐらいに大の男を思いっきりやっつける。爽快である。


冒頭からなかなかの迫力です

一応のサスペンス仕立てのストーリーはあるものの、この映画はアマゾネス系の女とイケメンたちが格闘し、男たちが彼女に殴られ、蹴り跳ばされるのを、(そしてヘロヘロになった男たちが(というかミヒャエルが)、ある種の愉悦の表情を微かに浮かべるのを)フシギな爽快感を持って眺める映画である。最初はチャニング・テイタムが、次にはミヒャエル(マイケル)・ファスベンダーが、最後はユアン・マクレガーが、彼女の鋭いパンチと蹴りを喰らってダウンする。そして最後の最後に、かつてのラテン・ラヴァーのおぢさんもやっぱり、彼女の攻撃にダウンしちゃうんだろうねぇ、きっと。というわけで、実に徹頭徹尾、マロリーを演じるジーナ・カラーノありきの映画だが、そこに絡む俳優の人選がいい。チャニング、ミヒャエル、ユアンといった若手から中年のハンサムマン達とは別に、アントニオ・バンデラスやマイケル・ダグラスといったクセモノオヤジ達もそれらしい役で登場する。


だいぶ、髭が白くなったバンデラちゃん


いかにもなマイケル・ダグラス

マロリーとかつては男女の関係にあり、強引にウラのある仕事を依頼するケネスを演じるユアンは、最近体を絞っているのか、ここ数年見た中では一番痩せて刈り込んだ髪がよく似合っていたが、ユアンは年齢を重ねるごとに、ケネス・ブラナーに似てきているような気もする。暫く「いい人」や被害者系のキャラばかり演じてきたユアンだが、ここではそのキュートなルックスで小悪党を演じている。小悪党のユアン、ふふふ。でも、どこか情けなくて、なんとなく可愛い。それはやはりユアンならではなのだろう。


ケネス・ブラナーに似てきた気のするユアン

ユアン演じるケネスが、バルセロナの人質救出の次に強引にマロリーに依頼したMI-6絡みの仕事でマロリーと組む、やはりフリーのスパイのポール役でマイケル・ファスベンダー登場。相変わらずちょっとシワっぽくて、ちょっと老けて見えるのだけど、ミヒャエルが出てくると、うふふん、と嬉しくなる。



お互いに待ち合わせ場所で初めて落ちあったときに、マロリーとポールが妙に嬉しそうに微笑み合うのが、なんとなく良かった。二人は夫婦を装って、MI-6がマークしているというある重要人物に接触する、というだけの任務でアイルランドのダブリンで会う。二人は夫婦としてホテルにチェックインする。部屋に入った二人が、それぞれ片方がシャワーを浴びている間に、相手の持ち物に対してスパイらしい行動をするところがふふふ、という感じ。スティーヴン・ソダーバーグは初期の007シリーズ、特に「ロシアより愛をこめて」が好きなのだとか。このホテルで互いに持ち物を探り合うシーンは、そんなテイストが出ていると思う。



結局のところ、ミヒャエルの出番は「あれ?ここでもう終わり?」と思ってしまうほどあっけないのだが、ホテルの部屋でのマロリーとの格闘シーンはなかなかの迫力でインパクトがある。ミヒャエルも遠慮しないで彼女を壁に突き飛ばしたり、床に投げ飛ばしたりするのだが、勿論がっつりとお返しを喰らう。でも、マロリーに痛めつけられつつも、う~、う~と苦しむ表情の下に微かな愉悦が潜んでいるように見えたのは、ミヒャエルの演技力か、それとも、彼のMッ気が思わず出てきちゃったからだろうか?(笑)ともあれ、ヘロヘロになりつつ、何故かうっすらと恍惚の色が浮かんで見えたミヒャエル演じるポールは、その格闘シーンを残してわりにさくっと姿を消してしまう。ミヒャエルったら、痛めつけられに出てきたのね…。



チャニング・テイタムは名前と顔だけ知っていたが、動いているのを見たのは今回が初。イケメンではあるが、この先、第一線で生き残っていかれるかどうかは未知数という感じがした。



さて。タフな元海兵隊員のスパイ、マロリーを演じるジーナ・カラーノ。何となく毛を黒く染めたドリュー・バリモア、または逞しくしたレイチェル・ワイズという感じもするのだけど、ゴムのような弾力性と強靭さを感じさせる体つきや、気の強そうな顔がいい。タフでいて、ちょっと愛嬌もあるし、ドレスアップするとそれなりにはゴージャスになる。サイボーグみたいな贅肉ゼロの体型ではなく、バネと弾力のありそうな、ゴムマリみたいな雰囲気が動きの躍動感を生んでいた。ごく一般的なキレイ系の女優がこういう役を演じると、体も引き締めてサイボーグ系のシルエットになり、カッコいいけどありきたり、というか、作り物みたいな雰囲気になりがちで、しかもアクションは一応、トレーニングをやって撮影に臨むのだろうけれど、カット割を工夫してやっているように見せているだけ、という事になりがちだが、ジーナ・カラーノはなまじな男より走るのが速く、とにもかくにも格闘家だけにアクションのキレと迫力はバッチリである。その格闘シーンは、彼女も相手の俳優も「遠慮しないでやっている」感が漂っているのが良い。ジーナ・カラーノ、アクションは格闘以外も全てノースタントでこなしたらしいが、女ボーンという感じもなきにしもあらずである。



また、タフなマロリーだが、とことん窮地に陥ると、やはり最後に頼るのは大好きな父の懐、というわけで、作家でもあるマロリーの父を演じるのはビル・パクストン。穏やかなインテリという感じのパパから、随分な肉食獣系の娘が育ったものだけど、このパパの家があるのはニュー・メキシコだったか、ちょっとした高台に建てられた、とても住み心地の良さそうな窓の多いモダンな家で、なかなか素敵だった。

***
豪華な俳優陣はそれぞれカメオ出演的で、彼らのポテンシャルからいえば勿体ないような使われ方をしているのだけど、チャニング・テイタム以外、ユアンもミヒャエルもバンデラちゃんもマイケル・ダグラスも、みな楽しそうに自分の役を演じていたような気配が漂っていた。チャニング・テイタムは楽しむ余裕はなく、一生懸命やっていた感じだった。

これも続編がありそうな気がするけれど、毎回、男前が何人か登場して、マロリーと虚虚実実の駆け引き、および生きるか死ぬかの格闘を繰り広げるという展開だったら、ゲスト俳優の人選によっては、なかなか面白いのではないかという気がする。次は誰がマロリーに蹴られる役回りがいいかなぁ。これの続編があって、例えばライアン・ゴスリングが出演したりしたら、ワタシは絶対に観にいきます。はい。

コメント

  • 2012/10/26 (Fri) 15:19

    はじめまして。
    ワタクシも確かに、ユアンはケネス・プラナーに似てるなぁ、とこの映画を見て思いました。
    それにしても脇がえらく豪華な作品でしたね。たいした時間でもないのに、マイケル・ダグラスが出るとぐっと雰囲気が締まるのもため息ものでした。

  • 2012/10/27 (Sat) 09:52
    Re: タイトルなし

    大庭綺有さん はじめまして。
    やはり、ユアンはケネスに似てきたと思われました?最近、とみに似てきたなぁと感じますね。身長とか体つきなども似ているような…。知らない人に兄弟だと言ったらすぐに信じそう(笑)
    で、本作ですが、無用なまでに豪華な俳優陣は、ソダーバーグに頼まれてカメオ出演を楽しんだ面々、という感じでしたね。ヒロインが地味めだから脇を飾ったんでしょうね。娯楽映画だから、それはそれで妙な面白味があったと思います。

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