東京駅ラプソディ



先日、仕事で丸の内方面に外出したついでに、ちらっと復元なった東京駅の様子を見に行ったのだけど、まぁ平日だというのに丸の内側は大変な人だかりで、一体何が行われているのか、と思うほどの盛況だった。特に何かイベントがあったわけではない。ただ、復元なった東京駅の見物に、平日の昼間、時間のある人が押し寄せただけである。平日の午後にも関らず、休日であるかのような人出に嫌な予感がしつつ、東京ステーションホテルの玄関の方へ歩いていってみると、嫌な予感が的中していた。東京ステーションホテルには昔の面影は全くなく、ガラス張りのやたらモダンなエントランスに変貌していて、駅舎を大正時代の姿に戻しても、ステーションホテルが全面改装されて、妙にモダンになっちゃったら復元の値打ちが半減以下になるじゃないのよ…と溜息が出た。

数年前、東京駅の工事が始まらないうちに一度ステーションホテルに泊まっておかなきゃ、と思い立った時には既に休業に入ってしまっていた東京ステーションホテル。まぁ、いいや。駅舎も昔の姿に戻すことだし、ステーションホテルも設備を補強するぐらいで、内部はさして変えないだろう、などとタカを括っていたら、さにあらず。全面改装が行われてしまったのであった。…愕然。写真を見ると、昔の雰囲気を残しているのは、2FのBar Oakだけのようだ。新装オープンの東京ステーションホテルで、ワタシが行ってみたい所は、この2FのBar Oakだけという事になりそうである。南側のコンコースのドームも戦前の姿に戻されたのだろうけれど、松本の開智学校風のデザインで大正チックではあったが、妙に新しいのでちっと安っぽく見えない事もない。ローマのパンテオン風の天井の下にぐるりとステーションホテルの部屋の木製の窓枠が並んでいた復元前の天井が、ふと懐かしく思われたりもした。


復元されたドーム天井 どことなく松本の開智学校風味である


戦災を受け、応急処理で天井をつけた復元前のドーム 何となく懐かしい気も…

復元するだけでなく、免震構造にも造り変えたという東京駅。そういう面では、今回の工事は実に結構だと思う。久しい前から、三階建てでドーム屋根だったという戦前の東京駅の姿を是非見たいと思っていたので、復元なった時代に生き合わせた事はラッキーだったとつくづく思う。東京駅の保存・復元を機会あるごとに訴えてこられた建築探偵・藤森先生もさぞ深い感慨に浸っておられる事でしょう。



でもステーションホテルはねぇ…。レトロ嗜好のワタシとしては、ステーションホテルは断然、改装前の方が趣きがあって良かったと思う。東京でも1,2を争うレトロなホテルだったのに…。多分、ホテル側としては内装が綺麗になって、増築された3階部分には高額なスイートも作ったし(駅の上で80万て…誰が泊まるの?)、集客能力UPも見込めるし、使い勝手も良くなったしで結構づくめなのかもしれないが、ワタシの個人的な希望を言えば、出来る限りこのホテルの内部も昔の姿を残して欲しかった。川端康成や松本清張がコンコースを行き交う人を眺めながら小説を書いていたという部屋はどうなったのだろう?もうないのだろうか。つくづくと、しまったなぁ、という感じである。いつでも行かれると思って先送りにしていたら、ステーションホテルも変貌して昔の姿は消えてしまった…。「いつかそのうち」はダメである、と何度も思い知らされてきたのに。またも地団駄である。は~~~~…。
どうして全面的に造り変えてしまうのだろう。目に見えない裏側の設備を補強して、電気関係や水回り、ネット回線などは最新の設備が使えるが、部屋の内装は昔のまま、という具合にどうして出来ないのだろうか。まるごと作り変えたら意味がないんだよ。分らないかなぁ。全然分かってないんだろうなぁ。
今回の全面改装で東京ステーションホテルは、クラシック・ホテルとしての味わいを失った。横浜のニュー・グランド旧館や、箱根の富士屋や、日光の金谷や、奈良の奈良ホテルが、あの昔ながらの姿、昔ながらの客室を残していなかったら、そこに何の価値があろうか。東京ステーションホテルだって同じ事である。Bar Oakだけが辛うじて昔の姿をとどめた事に感謝すべきなのだろうか? む~~~~。むぬ~~~。



東京駅も折角、昔の姿を取り戻したのだけど、ドーム屋根を斜めの角度から写真に撮ると、背後に必ず邪魔っけな高層ビルが写ってしまう。再開発で「TOKYO STATION CITY」とか銘打って、駅舎の背後の八重洲側の東西に高層ビルを建てたからだが、邪魔っけである。皇居や東京駅に近いあたりは高層ビルを建てられないという規制があれば良かったのに、と思わなくもない。ニョキニョキと建ちすぎである。丸の内側でも、丸ビルも新丸ビルも新しく高層化されて人を集めているようだけれど、ワタシは昔の8階建てぐらいのレトロチックな丸ビル、新丸ビルが何となく好きだった。皇居を見下ろすのは不敬だから、丸の内界隈は高層ビルを建ててはいけないという規制が長らくあったと思うのだけど、この規制はいつ取っ払われたのだろうか。不敬云々はともかく、丸の内一帯の景観を、堂々と、整然と、見晴らしよく保つためにも、高層ビル規制は撤廃しない方が良かったのではないかと思われて仕方がない。あの一帯は三菱村なので、丸の内の再開発と高層ビル化というのは三菱さん主導で何年も前から計画されてきたのだろう。確かに便利にはなるし、建て替えは国際化や経済の活性化や時代の流れなどの必然によるとは思うのだけど、パリみたいに、高層ビルを建てずに街の姿を整然と作る、または保つという発想がどうして無いのかな。もう高層ビルには、いい加減ウンザリなんだけど…。東京にこれ以上、1本の高層ビルも要らないとワタシは思う。


高層ビルが邪魔っけだ

ともあれ、文句を言ってもステーションホテルは全面改装されてしまったのだから仕方がない。一応、東京駅の丸の内口の顔である赤レンガ駅舎は、遂に本来の姿を取り戻したわけではあるし、この復元に伴うお祭り状態の狂想曲が鎮まったら、唯一ステーションホテルの中でレトロなムードを残しているBar Oakのカウンターで憩いつつ、静かにカクテルでも啜りに行こうかと思っている。

コメント

  • 2012/10/12 (Fri) 07:34

    お久しぶりです。
    わたくしも行って参りました東京駅。kikiさんがおっしゃるようにカメラ小僧や物見遊山者が集ってました。
    わたくしが気になったのはエレベーターの内装。kikiさんが感じられたことと同様、これもチープなリフォームで、まるでプラモデルみたい。
    夜景も見ましたが、ライトにLEDを使用しているせいか、ここのところ新築だろうが改築だろうが東京はみんな同じような「やわらかい(やわらかすぎる)」光線で照らされる建物ばかりになった気が致します。
    LEDには効用もございましょうが、威厳や風格が失われるような気がするのです。
    kikiさんもおっしゃるように東京駅からの眺めで芸術の着想を得られるような、そんな雰囲気はすでに失われてしまっている。
    まあ、空中権を周囲のビルに売ってリフォーム代を捻出したのですから、周りが高くなるのは致し方ないですし、これらの風景は後々目に慣れてくると思いますが、向かいの威厳や歴史のあった郵便局もぶち壊し、駅周辺の都市計画者はいったいどういう神経しているのかしら?
    エッフェル塔が建った時もポンピドゥーセンターが建った時もパリ市民らには反感があったと言われるけど、今は文句いう人は居ません。
    果たして東京駅は今後馴染んでいくのでしょうか。
    電気代高くつくけどせめてライティングは昔ながらの「やわらかすぎない」「威厳や歴史を照らす」ランプにして欲しいと願うのはわたしだけでしょうか。

  • 2012/10/12 (Fri) 23:12

    sanctuaryさん こんばんは。
    ステーションホテル、やはりチープ感を感じられました?なんだかねぇ。薄っぺらい感じですよね。ワタシはエレベーターには乗ってみませんでしたが、想像はつきます。そうそう、空中権を売ったんでしたっけね。空中権ってなんだか殆どマンガみたいですね(笑)
    まぁ、東京駅の外観そのものは、ひとまず昔の姿に復元されたわけですから、それはそれで意味のある事だったと思うし、悪ければ中曽根政権の頃に赤レンガの駅舎は取り壊されて、駅そのものが何の特色もない巨大なビルになっていたかもしれないんだから、それを思えば、大正時代に建った時の姿に、少なくとも外見だけは戻った事は多としなくちゃならないんでしょうけれどね…。ワタシはクラシックホテルとしてのステーションホテルにもこだわりがあったので、あの薄っぺらなリニューアルには甚だ興味索然です。なんでも壊したり、新しくすればいいってもんじゃないってことがどうして分らないのかしらん。まぁ、建て替えた方が利益になる人が多いってことなんでしょうけれどね。今回の全面改装には本当にガッカリです。
    sanctuaryさんは照明にこだわりを持っておられるんですね。「威厳や歴史を照らす」照明、確かにあらまほしきところですが、暫くはLED時代が続くんじゃないでしょうかしらね。それもこれも時代の流れということで、せんかたなし、ということなんでしょうね…。

  • 2012/10/14 (Sun) 23:32

    kikiさん、こんばんは。
    先月中旬、日帰りで東京に行った折、東京駅を利用しました。まだ工事が終わる直前でしたが、レトロな駅舎をカメラに収めることができました。でも、kikiさんもおっしゃるように、撮りたいアングルにどうしても高層ビルが入ってしまい、構図的に美しくないんですよね。

    私は外観しか撮れませんでしたが、今月初めに娘が学校の研修で東京に行った際、駅舎のドーム天井を撮影してました。私も今のブームが落ち着いた頃また東京に行って、じっくり見たいと思います。

    ホテルの方はもともと用がないので気にしていませんでしたが、こちらの記事を読んで、確かにそれは残念だと思いました。

    • ようちゃん #-
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  • 2012/10/15 (Mon) 00:28

    ようちゃん。そうなんですよ、高層ビル。邪魔なんですわ、非常に。前はそんなものなかったはずなのにおかしいなあと思ったら…。駅舎は残す代わりに周辺を開発しちゃったのね。まぁ、駅舎の内部もステーションホテルは改装されちゃったけど。今回の東京駅の復元は、外見を元に戻すだけじゃなく、ステーションホテルのリニューアルもかなりの目玉事業だったんでしょうね。ワタシはホテルにはガックリきて興味を失ったけれども、一応、駅舎が昔の姿を取り戻した事だけはよしとしなくては、と思っています。なくなるよりはいいものね。天井はやけに新しい感じです。雰囲気的に松本の開智学校を想起させるデザインです。

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