「ホビット 思いがけない冒険」(THE HOBBIT: AN UNEXPECTED JOURNEY)

-隅々までファンタジックな映像とマーティンのリアクション芸-
2012年 米/ニュージーランド ピーター・ジャクソン監督



「ロード・オブ・ザ・リング」三部作にはさして乗れなかったワタシなのだけど、これはマーティン・フリーマンがいかにもホビットにハマっていそうだし、日本にも宣伝に来てくれたことなので、一応観にいこうかしらんね、というわけで、友とマーティン・ホビットの大冒険を見てまいりました。飛び出し不要のワタシたち。もちろん2Dにて観賞。でも全然問題ありませんでしたわよ。映像のスケール感も、戦いのシーンのスピーディな動きも、全く2Dで大丈夫。
飛び出しって迷惑なのである。メガネも邪魔だし、無駄に高い料金も御免こうむる。というわけで、3Dのみの上映だったら観てなかったところだけれど、2D上映ありがとう。お陰で170分の長尺でお尻はやや痛くなったけれども、意識としては全く飽きずに冒険譚の発端編を楽しむ事ができた。

冒頭、イアン・ホルムの老ビルボと、イライジャ・ウッドのフロドが登場。「指輪」三部作ファンには嬉しいのかもしれないが、ワタシは改めて前三部作にあまり乗れなかったのは、このへんの顔ぶれが苦手だったからかしらん、と思ったりした。それはさておき、イアン・ホルムのビルボは60年前の冒険を回想し、甥のフロドに伝えようと書き残す。
物語は60年前に戻り、ビルボはマーティン・フリーマンにスイッチ。このスイッチした時の嬉しい感じをどう言えばいいだろう。マーティン・フリーマンてやっぱり顔に愛嬌があって可愛い。(イアン・ホルムの顔は愛嬌に乏しいのだ)目や眉毛の動きでつける独特の表情が何ともいえない。



牧歌的なホビット庄の、食糧たっぷりの快適な家で、ちんまりと日々の平安の中に埋もれて暮らしていたビルボは、突如現れた「灰色の魔法使い」ガンダルフ(イアン・マッケラン)から冒険の誘いを受けるが、いかに迫られても断る。しかし、めげないガンダルフは強引にビルボの家にさすらいのドワーフ達を呼び寄せてしまう。彼らは東の果てに鉱物のとれる豊かな国を持っていたが、邪悪なドラゴン、スマウグに襲われ、国を奪われてしまった。以来さすらいの民となり、戦いの旅の中で幾人もの同胞を失い、いまや13人だけになってしまっていた。しかし、国を取り戻したいという一族の長・トーリン(リチャード・アーミティッジ)の決意は固く、もはや執念と化していた。ガンダルフは彼に助力し、旅の成功のためには、是非ともホビットの力を加えるべきだ、と強引にビルボを引きずり込む。

突如押しかけてきたドワーフに備蓄食糧を全て平らげられ、騒々しさに辟易し、冒険になど金輪際出る気のなかったビルボだが、翌朝目覚めて、昨夜のらんちき騒ぎが嘘のように整然と片付いた我が家から邪魔者たちが退散したのを知ると、一抹の寂しさとともに冒険への誘惑を感じる。そして、結局、自ら旅の仲間に加わるのである。このガンダルフの誘いを断ってほっとしたのも束の間、ドワーフに次々と押しかけられ、勝手に食糧を漁られ、酒を飲まれ…というあたりは、マーティン・フリーマンのささやかなリアクション芸がつるべ打ちで、彼の表情をみているだけでも楽しい。
そしてドワーフたちが暖炉の傍で歌う♪寒き霧まく山なみを越え、古き洞穴の地の底をめざし…という望郷の歌。この歌、なかなか良いです。耳に残る。



で、13人のドワーフに、いつ魔法を使うの?って感じのガンダルフと、ビルボを加えた総勢15人が東の果ての高い山を目指して進むが、とにかく途中には邪悪な連中がウジャウジャといて、彼らの行く手を阻んでくる、というのはお約束。いやそれにしても、一難去ってまた一難。とにかく戦いに次ぐ戦いで、息つくヒマもない。大変である。そして、ピーター・ジャクソンのファンタジー映画は、「指輪」にしても「ホビット」にしても、実に画面の隅々まで見事にファンタジー・ワールドが構築されていて、オトナの観賞に立派に耐えるものであるし、今回もエルフの国の引きの映像など実に美しいと感心したけれども、毎度う~む、と思ってしまうのは、オークとか、トロルとか作り物系の敵キャラのクリーチャー・デザインのグロさ、ばばっちさである。毎回、同じ人が担当しているのだろうけれど、そのばばっちさ加減がどうもあまり好きになれないのだ。別に綺麗に作る必要はないと思うのだけど、必要以上に悪趣味に汚いのもちょっとゲンナリしてしまう。綺麗なものはとことん綺麗だが、ばばっちいものも、とことんばばっちいのである。


ひゃ~~、ばばっちい!

ここらへんで綺麗なものについて書くと、エルフの王妃、ガラドリエルは、何年たっても変わらぬ姿でケイト・ブランシェットが演じているが、彼女のスラリとした立ち姿の美しい事は特筆もので、白い優美な衣装の似合うことと、その衣装を着ての身のこなしの絵になっていることは実にタダモノではない。こういう扮装をして妖精を演じてサマになるのは欧米人ゆえであり、こういう物語の実写映画化が可能なのは、ハリウッドのお金と欧米人の容姿あってこそである、と当たり前の事をしみじみ実感した。また、ファンタジー映画は数あれど、このシリーズは背景やセット美術、エルフの住む谷のイメージや、ホビット庄ののどかな様子など、映像が実にセンスが良くてファンタジックで美しい。プロダクション・デザインとコンセプチュアル・デザインがしっかりといい仕事をしているからだろうけれども、他のファンタジー映画と較べて抜きん出ていると思う。







また、素で出てくるとあまり好きなタイプの顔ではないのだけれど、この映画でトーリンの扮装をしているとハンサムでいい感じに見えるのがリチャード・アーミティッジである。この人は「MI-5」で真っ黒な裏切り者のルーカスを演じていた俳優だけれども、「ホビット」では英雄キャラで、どことなく「300」のジェラルド・バトラーあたりと似たような雰囲気だ。戦場で、白い体のばばっちい奴(名前を忘れた)に襲いかかられて、樫の木片を盾にして、倒されつつも応戦するあたりなど、レオニダス王が巨人に剣をはじきとばされ、冑をもぎ取られてあわや!というシーンを思い出した。(そういえば、ジェラルド・バトラーって、女の尻を追い廻し、ここ数年はつまらない映画にばかり出ていて、「300」の栄光はいつしか遠い過去になっていきつつある。俳優は作品が全てなので、私生活はどうだろうと出演作に魅力がないのはダメである)





そして、大した魔法を使えない?魔法使いのガンダルフを演じるイアン・マッケランも全く変わらぬ姿で登場する。この爺さん、とんがり帽子に杖を持って、いかにもな魔法使いだけど、苦難の時にもあんまり魔法を繰り出さないわね。魔法使いのくせに全然役に立たないじゃないのよ、とも思ったが、まぁ、魔法使いがついているからといってピンチの時には杖を一振りしてホイホイと助ける事ができるんだったら、クエストには何の苦難もなくなってしまうわけなので、魔法もほどほどという事になっているのだろう。



マーティン・ホビットの見せ場はいろいろとあるけれども、肝はやはり、地底に潜む餓鬼・ゴラムとのなぞなぞ合戦シーンだろうか。ゴラムの声はアンディ・サーキスが担当しているが、このCGキャラの表情が実によく出来ていて笑わせてくれる。それにしても、"Precious"を「愛しいしと」と訳したのは、名訳というか、妙訳というか、不思議なおかしみがあっていい。 …そうか、あそこで偶然にビルボは運命の指輪を手中にするのだね。



あれやこれやといろんな敵が出てきて、けっこう闘ったと思うけれども、これはまだまだ発端編。これも三部作で、あと二本が順次封切られる。どれも3時間近いんだろうか。そうなんでしょうね。つくづく体力と気力とお金が満ち溢れてるなぁ、と思うわけだけれども、トーリンの敵である、邪悪な龍のスマウグの声はバッチ君が担当してるんだったっけね。龍の声が聞けるのは次回作からかしらん。するとバッチ君の声とマーティン・ホビットにつられてまた観に行かねばなりますまいね。



170分と3時間近い作品ながら、飽きさせない展開と、飽きさせない映像でバッチリとファンタジーの世界に束の間遊べる「ホビット 思いがけない冒険」。これは掛値なしに面白かった。そしてこういう映画こそは劇場で観ないと意味がないので、DVDではなく上映中に劇場でその映像世界に身を浸したいものである。それにしてもねぇ、子供の頃に見た絵本の挿絵がそのまま生きて動いているような、こんな映画を極めて自然に作って見せられるというのは、アメリカの資本と欧米人の俳優の容姿あればこそである、と何度もしつこいようだけど今更ながらに実感。
お芝居とか作り物とかの感じがなく、妖精も王様も魔法使いも小人も、ごくごく自然なのだ。つくりもの感がないのは見事である。そこには資金や容姿だけではなく、イメージを具体化できる才能というものが欠かせない。ファンタジーの実写化を、自然に、見応えあるものに作るというのは、実に実にハードルの高い作業であるなぁ、と今回は殊更に強く感じた。

今年、劇場で見る映画はこれが見納めになる。見納めにふさわしい、実のぎっしり詰まった3時間の冒険譚を楽しむことができた。

コメント

  • 2013/01/06 (Sun) 23:05

    kikiさん、今年もよろしくお願いします。
    私、このホビットにはとっても惹かれるものがあるんです。kikiさん同樣、指輪物語の方はそれほど見たいとは思わなかったんですけどね。
    年末に観に行こうと思っていたのですが、諸事情のため未だに観ていません。
    次のレディースデーには行こうと思います。

    • ようちゃん #-
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    • 編集
  • 2013/01/06 (Sun) 23:51

    ようちゃん 今年もよろしくお願い致します。
    へぇ~、これに関心をお持ちなんですね?3Dじゃなくてもけっこう楽しめましたけど、ふと我に返ると、ここまで途方もない金と手間をかけて子供向け童話を映画化するって何なのかしらん?とも思っちゃったりしてね。ワタシ的にはマーティン・フリーマンが出ていなければ100%パスだった筈の映画ですが、まぁ、悪くはなかったですよん。レディースデーに2Dで見れば十分だと思います。

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