「アガサ・クリスティ 蒼ざめた馬」(Agatha Christie's The Pale Horse)

-コリン・ブキャナンのイケメン時代-
1997年 英 (TVM)



AXNミステリーで時折思い出したように放映している、クリスティ原作ミステリーのドラマ化。原作を読んでいないので脚色の出来がどうなのか分らないし、ドラマとしても大した出来ではないと思うのだけど、ワタシ的には割に最近、ジュリア・マッケンジー主演のミス・マープル物として脚色された「蒼ざめた馬」よりも、こちらの方を面白く観た。このドラマの取り得は1にも2にも主演のコリン・ブキャナンがまだイケメン時代に撮られたものである、という事と、「MI-5(spooks)」では、ニコリともしない般若のような顔の鉄の女ロスを演じていたハーマイオニー・ノリスが、猛烈なアイラインとつけ睫で出てきて、ブキャナンに振られる貴族の令嬢を演じている、という事に尽きる。ちなみに「蒼ざめた馬」とはヨハネ黙示録に出てくる、その背に死(黙示録の四騎士のうちの1人)を乗せて走る馬(死を象徴する馬)。

コリン・ブキャナンを最初に見たのは「ダルジール警視」だった。ブルドッグのような顔の叩き上げのオッサン、ダルジールとコンビを組む、若くてイケメンでインテリのパスコー警部補を演じていた。このドラマはずっと見ていたわけではなく、時折、たまたま出くわした時に見た、という程度だったのだけど、ブキャナンは最初に見かけた頃はそこそこイケメンだったが、後の方になったら随分オッサンになったなぁ、という印象がある。ダルジール警視とさして差もないオッサンになってしまったような…(笑)


コリン・ブキャナン(左)


このシリーズに出ているうちに、最終的にはこんなオッサンに。どっちがダルジールだか…

そのコリン・ブキャナンがまだ若くてキュートな皮ジャンを着てバイクに跨る彫刻家を演じている、この「蒼ざめた馬」は、オッサンになった姿を先に見ていたせいで、つくづくと若いなぁと思った。イケメン老いやすく光陰矢のごとし、である。昨今ではある程度年を取っても、若い頃とさして雰囲気の変らない人も増えているので、ブキャナンのような真っ向微塵の老けっぷりはオーソドックスではあるが少数派になってきているような気もする。「蒼ざめた馬」を撮った頃と前後して始まった「ダルジール警視」に11年ばかりレギュラー出演しているうちに、すっかりオッサンになってしまったわけである。老けっぷりはともかく、TVドラマをメインに仕事をしていて、人気長寿ドラマに長らくレギュラー出演し、そのドラマを卒業した後、次なるキャリアを積み重ねつつある、という点で、俳優としてのありようがトム・ウォードと似ている気もする。


キュートだったブキャナン


これからどんな役を演じていくのか興味深いトム・ウォード

また、UKの刑事ドラマには「ダルジール警視」のように、オッサン、またはおばちゃんのボスとイケメンの部下、というコンビのものがある。おばちゃんのボスとイケメンの部下というコンビではブレンダ・ブレッシンが女性警部を演じている「Vera ヴェラ~信念の女警部~」がある。ブレンダ・ブレッシンのヴェラは我儘を言ったり、自分の考えを曲げずに部下と時に衝突したりはするのだけど、この人特有の持ち味で、ヒステリックにならず、媚びも売らないが、どこか可愛いおばちゃんという雰囲気が良い。


ヴェラ(ブレンダ・ブレッシン)

そして、この頑固な愛すべきヴェラに仕え、独身の彼女の体調を気遣ったりしてくれる若いイケメンの部下ジョー(イケメンだが女房子持ち)を演じているデヴィッド・レオンが無精髭系のハンサムマンでなかなかGood. シブい中年を主演に持ってきた場合、身近なところにイケメンを配してバランスを取るわけなのだろうけど、こういうコンビっていうのは、見ていて妙にしっくりくるものだな、ふふふ、と思ったりしている。


イケメンの部下ジョー(デヴィッド・レオン)

閑話休題。
「蒼ざめた馬」は一種の巻き込まれがたスリラーのようなものだろうか。ブキャナン演じる彫刻家のマークはスノッブな令嬢ハーミアと観劇に行くが、飽き飽きして先に劇場を出る。通りで偶然に神父が撲殺される現場に出くわしたために、殺害容疑をかけられて捕まってしまう。ハーミアが保釈金を払って、マークは自由の身になるが、容疑を晴らすために殺害された神父が持っていた紙切れに書かれた名前のひとつ、タッカートン家を訪ねる。その家の令嬢ティリーはハーミアの知り合いだったのだが、ハーミアとマークが訪れたあと、ティリーはほどなく病死してしまう。神父の死とティリーの死は関連があると思ったマークは、ティリーの友人ケイト(ジェーン・アッシュボーン)と共に、謎を探りはじめ、やがてロンドン郊外の村にある、かつては宿泊所だった「蒼ざめた馬」という名の古い家にたどり着く。そこには「3人の魔女」と呼ばれる女性たちが住んでいた…。


不気味な「蒼ざめた馬」の家

というわけで、ケイトという女性が現れて、貴族の令嬢ハーミア(ハーマイオニー・ノリス)は隙あらば好き好きビームを出してマークの気を惹こうとするものの、あっさりとマークに振られてしまうのだが、本命ケイト役の女優も別に綺麗というわけではなく、頬骨とエラの張った我の強そうな顔をしていた。


ロスの時よりコケティッシュなハーマイオニー・ノリス


ケイト(ジェーン・アッシュボーン)

原作も60年代の設定なのかどうか分らないが、このドラマではそのぐらいの時代設定のようで、女子の衣装や化粧にサイケデリックな雰囲気がある。ハーマイオニー・ノリスも、そんな時代色の出たヘアスタイルやメイクアップで出てくる。まばたきするたびにバチンバチンと音のしそうな黒いつけ睫が重そうだ。鉄の女・ロスを演じたときとはかなり雰囲気が変って、マークに振られたのに、捜査に都合よく利用されてもちょっと文句は言いつつも協力してしまう気のいい令嬢の役でそれなりにハマっていた。愛嬌のあるイケメン、コリン・ブキャナンは彫刻家の青年役。背が高く、しっかりした体つきで、ヘアスタイルや明るい色の髪など、この頃のブキャナンがジョン・レノンを演じる機会がもしあったら、なかなかいい感じだったんじゃないだろうかと思った。それはさておき、ブキャナンは声と話し方がユアン・マクレガーに似ている気もした。




2.5cmはありそうなつけまつげ


いかにも60年代の若者、という感じのコリン・ブキャナン

ミステリーとしては、とりたててどうという事もないような話で、「マクベス」の三人の魔女にひっかけて、古い館に住む、黒魔術を操ると思われている三人の魔女と呼ばれる中年女たちが登場したりして、おどろおどろしげな雰囲気をつけたしのように出しているのも、なんだかなぁ…という感じではあるが、さきに書いた通り、マープル物に脚色しなおされた「蒼ざめた馬」(2010年)よりは面白く見た。マープル物の「蒼ざめた馬」には、トム・ウォードが出ていたから見てみたのだけど、チョビ髭を生やして出てきて、あっという間に殺されてしまうなんとか大尉の役で、こんな役引き受けなくたっていいんじゃないのぉ?と思ってしまうぐらいにトホホな役だった。それが不満だったこともあるし、話自体もそんなに面白くなかったしで、見なくてもよかったわ、チェ!という印象しか残らなかったのだけど、この「蒼ざめた馬」は、コリン・ブキャナンがちょっと可愛かったのと、般若のハーマイオニー・ノリスも60年代風のメイクとファッションでちょっとだけ可愛かったので、そのへんを含めてそこそこ楽しむ事ができた。

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