「エンド・オブ・ウォッチ」 (END OF WATCH)

-I love you, man-
2012年 米 デヴィッド・エアー監督



日本未公開のまま、そのうちDVDだけ出るのかと思っていたら、一応、公開された作品。丸の内東映で映画を観るなんて何年ぶりか。普段殆ど足を向けない映画館ではあるものの、久々のジェイクの出演作ゆえに観にいってみた。
全編、実録風のリアル感を出すことを目指して作られたような映画。警官も犯罪者も何故かビデオカメラを持ち歩いて、やたらに撮っているという設定になっていて、そのカメラの映像という目線も折々混ぜてドキュメンタリー・タッチの映像を繰り出そうとしているのだけど、正直、あそこまであっちこっちでビデオカメラで撮っている設定にしなくても、普通に撮ればいいじゃないの、という気がしないでもなかった。



ジェイクはスキン・ヘッドで、「ヨー、ヨー、メーン」的な口調の若手警官。向上心があり、将来は刑事になりたいと思っていて大学の法学部を目指して勉強などもしているが、青白モヤシ系ではなく肉食男子系のキャラである。相棒のメキシコ系の警官を演じるのはマイケル・ペニャ。既に結婚していて妻とはラブラブである。二人は警察学校からの相棒で、親友であり、熱血警官同士でもある。本作の肝は、この二人の固い友情にある。いわば実録風LAPD的バディ・ムービーといったところだろうか。



この二人が日夜パトロールに廻っているのは、LAのサウス・セントラルという、この世のゴミタメのようなヤバい地区。ブラック系とヒスパニック系のストリート・ギャングが抗争を繰り広げているエリアで、LAPDの協力のもと、ロケも実際にそのエリアで行われたらしい。
だから、緊迫感と臨場感はかなりのもので、まぁ日夜、こんな感じなんだろうねぇ、という空気感はビシビシ伝わってくる。確か、ロケハン中だかなんだかに、ジェイクもこの地区で銃撃事件を目の当たりにした、というニュースが出ていた記憶がある。

ドキュメンタリー風な仕上がりを狙った映画なので、通常の映画っぽい映画とは文法が異なる作品だ。パトロール中の車中でのアホアホな会話や、プライヴェートで女房や恋人と過ごす様子、同僚とのロッカールームやオフィスでの絡みなどから、一転して現場に急行し、吐き気のするようなものと面と向ったり、普通見過ごしてしまうようなところを勘を働かせて踏み込んでお手柄を立てたり、銃弾の雨あられの中を掻い潜って戻ったりする様子が、「パトロール警官の日常」という括りの中でひとしなみに描かれている。



この地区の警官にはヒスパニック系が多そうである。また、アグリー・ベティのアメリカ・フェレラが演じる婦人警官は、高校卒業の資格もないわよ、という台詞があったが、警官たちは平均的な教育水準もあまり高くはないのだろう。しかし、彼らは警官を目指し、そして警官になり、制服を着て、日夜、危険が渦巻く犯罪多発地帯でパトロールに励んでいるわけである。言葉は乱暴でも、やり方は強引でも、使命感はたっぷりと持っているのだ。思うに、制服のパトロール警官と陸軍などの兵卒は、そのありようも、メンタリティも、かなり近いものがあるのかもしれない。



女は適宜摘み食いのワンナイトスタンドで済ませてきたようなジェイク演じる警官ブライアンは、アナ・ケンドリック演じるジャネットと出会って結婚を決める。本作でのアナ・ケンドリックはキュートの一言。「マイレージ、マイライフ」の効率第一主義のような生意気な小娘役もそれなりに可愛く演じて雰囲気を出していたし、こういう、いかにも理想的な彼女、という感じのキュートな彼女もさくっとこなす。それぞれ自然でムリがない。賢くて上手い。若手女優の成長株という感じである。



マイケル・ペニャは、いかにもな相棒役を手堅く演じていた。彼が演じるザヴァラは小柄で勇猛。火事で燃える家の中に幼い子供が取り残されていると知ると、消防隊の到着を待たずに燃える家の中へ駆け込んでいく。ジェイク演じるブライアンは、相棒が駆け込んで行ってしまったので、やむなく自分も火の中に飛び込んでいく。ブライアンは相棒を「Z(ズィー)」と呼んでいる。ザヴァラの頭文字をニックネームにしているわけだが、本作中では、ブライアンが相棒に呼びかける「Z!」という声が、かなり頻繁で印象に残った。



とにかく、僅かなプライヴェートの時間を除けば、狭い車の中でずっと一緒に行動しているわけなので、コンビを組む相手と気が合わなかったら到底、耐えられないという事になってしまうだろうこの仕事。息が合わないと、一色即発の危険な時に、意志の疎通も図れないだろうし、とにかく息の合う相棒とコンビを組まないと成り立たない仕事だろうなぁ、とつくづく感じた。ブライアンとザヴァラは女房や恋人を愛しているのとは別枠で、相棒を心の底から愛しているわけである。互いに命を預ける間柄なわけだから、熱い信頼関係がなければ一日だってコンビを組む事はできないだろう。何も事件の起きない田舎町ならともかく、毎日、無事に仕事を終えて戻れるかどうか分らないような危険地帯の担当なのだ。気の合わない奴と喧嘩しながらでは、すぐに命を落としてしまいそうである。



結婚式で、同僚から祝福されたブライアンは花嫁と踊り、そして、祝ってくれる相棒に呟く。"I love you, man"と。 このLoveは、骨折り山的な愛とは異なるプラトニックな愛であろうか。女房子供の事を思えば、何があろうと生きていたい彼らだろうが、いざとなった時には相棒の為に死ねるというこの心理は、最前線の兵士や、犯罪多発地帯の警官には自然に発生するものなのかもしれない。全ては日常的に命がけ、という状況のなせるわざなのだろう。

ピッタリと息の合ったブライアンとザヴァラのコンビは、手柄を立て続けに立てて目立つ存在となる。そして、彼らの存在を疎ましく思ったヒスパニック系の組織は、ストリートギャングに二人の暗殺指令を出す。ある夜、パトロール中に刺客の罠にハマった二人は、血みどろの銃撃戦に巻き込まれていくが…。

というわけで、監督がサウス・セントラル地区の出身だという事もあって、その町がザラリとした皮膚感を伴ってリアルに感じられたし、LAPDの協力を得て、15年も現役だったという元パトロール警官がテクニカル・アドバイザーとして撮影に参加。しかもこの人は所長役で出演もしているとのこと。…ふぅん、あのちょっとシブい所長さんは元LAPDのパトロール警官だったのねん。ジェイク演じるブライアンがこの所長に憧れている、というセリフがあるが、それは全面協力してくれたこの人へのオマージュのようなものだったのかも。しかし、素人とは思えない自然な演技で(まぁ、警官時代を思いだして素でやっていただけかもしれないが)、なかなかカッチョ良かった。

で、お目当てジェイクであるが、随分男臭くなったなぁ、という印象。彼がマッチョ系になって久しいが、これまでの役はマッチョでも、どこかナイーヴなラインが残るキャラが多かったけれども、今回はナイーヴさは影を潜めた、ごく一般的な肉食男子系のキャラであり、スキンヘッドで、体も筋肉がしっかりとついてそれなりに分厚いし、改めて、ジェイクが意図的に行ってきた肉体改造と従来のイメージの打破というのは、一応の成果を見たのかな、という気がした。



昔の「繊細なボク」的ジェイクが懐かしいような気もするのだけど、彼はひと色に染まりたくない俳優だろうので、現在、公開待機中の「Prisoners」では、ちょっとクセのありそうな刑事を演じていて、今回の「エンド・オブ・ウォッチ」とは全く異なる顔を見せてくれそうである。
ファンとしては、若くてイケメンのうちに、いい感じのロマンス物にももうちょっと出て欲しいなぁという気がするけれども、今後の活躍には引き続き注目していこうと思っている。

コメント

  • 2013/08/27 (Tue) 00:28

    kikiさん

    いつもなら観にいくはずのないジャンルではありますが、ジェイクの出演なら、ライアンゴズリングのLAギャングストーリー同様、一人で鑑賞にでかけました。観終わったあと、意外に尾をひく映画でした。kikiさんのおっしゃるように画面のあのざらざら感と音楽が良かった。メキシカンギャングの女がレディーガガにちょっと似ていたように思えました。 (^-^)
    アナ.ケンドリック、ほんとに可愛かったですね!マイケルペニャも最近よく見かける俳優ですが、この人も良かった。
    ジェイクも悪くない、上手いし、いいんですが、もっと炸裂する感じで見たいなあ。スキンヘッドと筋肉はジャーヘッドを思い出しました。まあ、ひいきの俳優のおかげで色々な映画を見ることができて、掘り出し物にも会うし、いいことですわ。

  • 2013/08/27 (Tue) 21:57

    ふうさん
    これ、あまりあっちこっちで上映してない映画みたいですが、そちらでご覧になれてよかったですね。
    で、映画ですが、生々しい迫力もあったけれども、これは結局のところ実録風味のバディ・ムービーなので、警官二人の友情がテーマなんですよね。ああいう猛烈な地区を担当している警官の大変さというのはよく分ったけれども、とどのつまりはバディ・ムービーであって、それ以上でもそれ以下でもないので、ふうさんがジェイクの「炸裂感がない」と思ったのはその辺に由来するのかなと。
    アナ・ケンドリックは可愛かったですね。ああいう普通に可愛い女の子もムリなく演じられる事がわかりましたわ。

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